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2017-09-11
高脂肪食で長寿に?!
Link de Diet 2017.9.11 , EurekAlert 


より多くの人々が80-90歳代まで生きるようになるにつれ、
老化における健康と生活の質の問題の研究が進められてきている。

最新の研究により、高脂肪食、すなわちケトン食が
寿命を延ばすだけでなく身体的強度も高める可能性が明らかになった。
米国カリフォルニア大学デイビス校の動物実験から。

「この結果に、私は少し驚きました」と論文の上席著者で栄養学者のラムジー氏は話す。
「私たちは、若干の差があることは予想していました。
けれども私は、高脂肪食と高炭水化物食のマウスの寿命の中央値の差が
13%にも上ったことに感動しました。

その差を人間にあてはめると7-10年に相当するでしょう。
しかし、同じくらい重要なことに、それらのマウスは
晩年にも健康の質が保たれていたのです」

ラムジー氏は、老化につながる仕組みを見つけることに
過去20年を費やしてきた。老化は、げっ歯類と人間の両方にとって、
ほとんどの主要な疾病に対する寄与因子となる。

いくつもの先行研究で、
カロリー制限がほとんどの動物の老化を緩やかにすることが示されてきたが、
氏は高脂肪食が老化現象に与える影響に関心を持っていたという。

ケトン食は多くの健康上の利点があるとして人気を得てきたが、
ケトーシスの状態が何を生じるかについてはまだよくわかっていない。

炭水化物の摂取量が極端に少ないと、
身体は主要な燃料源をブドウ糖から脂肪に変え、
エネルギー産生のためにケトンを生じる。

今回の実験では、マウスを次の3群に分けた。
①高炭水化物食群
②低炭水化物+高脂肪食群
③ケトン食群(脂肪エネルギー比89-90%・糖質エネルギー比1%未満)

当初は、高脂肪食が体重を増やして寿命を縮めることを懸念し、
各群の食餌カロリーを統一したものにした。

「私たちは食餌を考案するにあたり減量に重点を置くのではなく
代謝を見ようとしていました。それは老化にどう影響するのでしょうか」とラムジー氏。

結果、ケトン食はマウスの寿命の中央値を有意に延ばし、
記憶や運動機能を向上させたほか、
老化に由来する炎症マーカーの上昇を抑制したという。

これは、同様に腫瘍発生率に影響を及ぼした。
今回の結果は、人間にもおおよそ当てはまるものではないか、
などとラムジー氏は話している。

出典は『細胞代謝作用』。 (論文要旨)  
2017-09-06
読売新聞 2017年9月3日

医学ジャーナル誌「Lancet」からの報告

9つのリスク回避で認知症は予防可能?

認知症にはなりたくないと思っていても、
予防のために何をすべきなのか、分からないことも多い。
そもそも、認知症は予防できるのだろうか?

英国の医学ジャーナル「Lancet」の認知症予防・介入・ケア委員会は、
生涯を通じて9つのリスクをコントロールし、脳の健康状態を改善できれば、
認知症の35%は予防できる可能性があるとする専門家24人からなる研究グループの見解をまとめ、
アルツハイマー協会国際会議2017(英・ロンドン)で発表するとともに、
Lancet( 2017年7月20日オンライン版 )で同時公開した。

回避可能な9つのリスクを検討

最新の推計によると、全世界の2015年の認知症患者数は約4,700万人で、
低・中所得国における急激な人口増加を背景に、2050年には約3倍になるとみられている。
認知症に伴う総コストは年間8,180億ドル(2015年)で、
医療以外の介護に当たる家族や社会の負担となるコストが約85%を占めることから、
社会を挙げての対策が急がれている。

認知症を発症するのは主に65歳超の高年期であるが、
脳の変化はその数年前から始まっていることが多い。

そこで、小児期(18歳未満)や中年期(45~65歳)のリスク因子にも目を向けて認知症予防に取り組む必要がある。

研究グループは小児期、中年期、高年期における9つの”修正可能な”リスクとして、
小児期では(1)教育期間の短さ(15歳超での教育が継続されず小学校が最終学歴)、
中・高年期では(2)高血圧(3)肥満(4)難聴、
高年期では(5)喫煙(6)抑うつ(7)運動不足(8)社会的孤立(9)糖尿病を挙げ、
各リスク因子の認知症発症への影響をモデル化し、
完全に排除できた場合に認知症症例全体の何パーセントの予防につながるかを推算した。

その結果、これら9つのリスク因子全てを完全に排除できれば、
認知症の35%を予防できる可能性が示された。

認知症の主要な遺伝学的リスクとして、認知症の危険要素と見なされてい
るアポリポ蛋白(apo)Eのε4アレルの存在がある。
このapoE ε4を標的とする治療方法が確立された場合でも、
それにより予防可能な割合は認知症全体の約7%とみられており、
上記のリスク回避の重要性がうかがえた。

すべての認知症の発症遅延・予防につながるわけではないが、
この予防戦略の効果を最大化するには9つのリスクに対する
安全かつ効率的な対策をとる必要があるとしている。

(あなたの健康百科編集部)
2017-08-19
がんの「代替医療」、標準治療より死亡率高い 米研究
8/19(土) 12:19配信 AFP=時事

【AFP=時事】代替医療を選択したがん患者の死亡率は、
標準治療を選択した患者より最大で5倍程度高くなるとする研究結果を、
米エール大学医学大学院(Yale University School of Medicine)の
スカイラー・ジョンソン(Skyler Johnson)氏らの研究チームが発表した。

18日にAFPの取材に応じたジョンソン氏によると、研究チームは
米国で最も一般的な4種類のがん──乳がん、前立腺がん、肺がん、結腸がん──と診断され、
効果が証明されていない代替医療を1種類以上受けることを選択した患者281人を抽出した。

研究チームは上記患者らの治療後の健康状態を別のがん患者560人と比較した。
その際には年齢や人種、その他の健康要因も考慮した。

平均すると、代替医療を選択した患者の診断後5年以内の死亡率は、通常医療を選択した患者の2.5倍以上だった。
ジョンソン氏はAFPに対し「いくつかの理由から、私はこの数字は実際より小さくなっていると考えている」と述べた。

まず、このデータは初期の治療しかカバーしていない。
つまり代替医療を最初に選択した患者の中には、がんが進行する中で標準治療に移行し、
そのおかげで生存期間が延びた人もいるかもしれない。

また、代替医療を選択する患者は標準治療を選択する患者よりも
健康で、若く、収入と学歴が高い傾向があり、
このことによって生存率が高まっている可能性もあるという。

ジョンソン氏は、患者たちは代替医療に難色を示しがちな医師には正直に話したがらない傾向もあり、
代替医療を選択した患者の正確な人数は分からないが、
現在提供されているがんの代替医療をすべて合わせると、
数十億ドル(数千億円)規模のビジネスになっているのではないかと述べた。

【翻訳編集】 AFPBB News

2017-08-13
Link de Diet 2017.8.3 , EurekAlert 

ルテインは、加齢に伴う認知機能の低下(認知的加齢)に対して保護的役割を果たすかもしれない、
という米国イリノイ大学からの研究報告。

研究チームは、25~45歳の成人60人を対象に体内のルテイン濃度と認知機能の関係を調査した。
ルテインはホウレンソウやケールといった緑色の葉物野菜、あるいは、アボカドや卵に含まれる栄養素である。
ルテインは、身体で作ることができない栄養素なので、食事から摂る必要がある。

ルテインは脳組織に蓄積するが、目にも蓄積するので、ルテイン濃度は非侵襲的に測定できる。
参加者の目のルテイン濃度は、点滅光への反応によって測定された。
その後、参加者は、頭皮に電極を取り付け、脳の神経活動を測定し、注意力を判定するタスクを実行した。

その結果、目のルテイン濃度が比較的高い中年の参加者は、同世代のルテインの少ない人々よりも、
より若い人たちと同じ神経反応を有することが確認されたという。

「緑の葉物野菜、卵、アボカドなどの栄養豊富な食品は、
色々な健康上の利点と関連することがわかっているが、
今回得られたデータは、認知機能に効果をもたらす可能性があることも示している」
と主任研究者のネイマン・カーン教授は話している。

これまで、ほとんどの研究が、認知機能が既に低下している高齢者に焦点を当ててきたという。
研究チームは、若年から中年の成人を対象として、
ルテイン濃度の高い人と低い人では、顕著な違いがあるかどうか調べた。

「人々は加齢とともに、特徴的な老化現象を経験するが、
研究では、このプロセスが予想よりも早く始まることが示された。
30歳代でなんらかの差異が見られることさえある」と筆頭著者のアン・ウォークは述べている。

「ルテインで老化現象を遅らせることができるのであれば、
最大の効果を期待できるときにルテインが豊富な食品を消費するように勧めるべきである。」

出典は『加齢神経科学の最前線』。 (論文要旨)      
2017-07-31
認知症は身体活動で如何に予防されるのか
Link de Diet. 2017.7.24 , EurekAlert


加齢に伴う認知症やその他の障害の予防に対して身体活動が有効であるという研究はたくさん発表されている。

本研究は、身体活動が脳内の代謝に対してどのような影響を与えているのかについて検討した、
世界初のものであるという。フランクフルト・ゲーテ大学の研究者らによる報告。

身体活動が脳に及ぼすと考えられる有益な作用についてより深く解析するために、
老年医学者とスポーツ医学者が連携して検討を行った。

65歳から85歳の被験者60人の記憶力と脳内代謝についてランダム化比較試験で検討をした結果、
定期的な運動は身体的フィットネスを向上させるだけで無く、
脳代謝にも有益な作用をもたらすと言えそうだというのである。

研究者らはこの研究を高齢者のスポーツと代謝に関する
MRIを用いた研究という事でSMART研究と名付け、検討を行った。

初回測定で、身体活動性に関するパラメータと、心血管性フィットネス、
認知的パーフォーマンスを測定することに加えて、MRIを用いて脳内活動を解析、
核磁気共鳴スペクトロスコピー法で脳内の代謝と脳構造についても測定した。

この検討に引き続いて、被験者はエアロバイクを用いた週当たり3回の運動セッションを12週間にわたっておこなった。
一回あたりの運動は30分間であり、被験者の体力レベルに応じて負荷は変更されていた。

被験者はさらにプログラムの最末期において、身体活動が脳に対して与えた影響を検討する為に初回と同じ検査を実施した。
研究者らはさらにどの程度の運動を行う事が被験者のフィットネスレベルを増進させるのかについても検討した。

予想されたとおり、身体活動は脳代謝に影響を与えていた。
身体活動性を高めることで、脳内でのコリンの増加を抑制したのだ。

コリンの増大は神経細胞の損失の結果として起こり、アルツハイマー症では典型的な症状である。
運動介入群では、身体活動は脳内のコリン濃度を安定化させることに役立っていたことがわかったのだ。

一方で、コントロール群でのコリンレベルは増大していた。
被験者の身体的フィットネスも勿論増大しており、
トレーニング期間後で心血管性効率が改善していることがわかった。

全体的に言って、これらの知見から、運動が身体的フィットネスを増大させるだけではなく、
細胞を保護するような作用を持っている事が示唆されている、とまとめられている。

出典は『トランスレーショナル精神医学』。 
2017-07-20
Link de Diet 2017.7.10 , EurekAlert 


高齢者を対象とした16年間の追跡調査において、健康的な生活習慣があることが、
生存率および身体機能が高いことに相関することを見出した、というスウェーデン、ウプサラ大学からの研究報告。

この調査では、平均年齢71歳のスウェーデン人男性1,104人が対象となり、参加者はアンケート調査を完了した。
そのうち369人が、16年後、平均年齢87歳の時点で評価された。

その結果、喫煙しないこと、健康的な食事を維持すること、肥満でないことなどの生活習慣の因子が、
その後の16年間での、生存率および身体機能が高いことに相関することが確認された。

調査では、教育、生活環境、身体活動などの生活習慣に関する情報を得るために、アンケート調査を使用した。
また、7日間の食事記録から導かれた修正地中海食事スコアに従って、
地中海食の順守について評価し、さらに、参加者の心血管リスク因子も測定した。

平均年齢87歳で『自立して生活できる高齢者』は、認知症と診断されていないこと、
ミニメンタルステート検査のスコアが25以上であること、
介護施設に入所していないこと、日常生活の私的な活動を自立して行えること、
屋外を独りで歩くことができること、として定義された。

参加者の男性の57%が85歳まで生存し、平均年齢87歳の時点では、参加者の75%が『自立した高齢者』であった。
自立した高齢者であることは、喫煙しないことや、地中海食の順守率が高いことと相関していた。
標準体重または過体重であり、胴囲が102cm以下であることは、
自立した高齢者であることと相関しており、生存率が高いこととも同様の相関が確認されたという。

出典は『米国老人医学会雑誌』。 (論文要旨)
2017-07-19
コーヒー摂取は全死亡のリスクを低減?!
Link de Diet 2017.7.11 , EurekAlert 
  

コーヒーを1日におよそ3杯飲む人は、コーヒー以外を飲む人より、
長生き出来る可能性があるようだ、という国際がん研究機関(IARC)等からの報告。

コーヒー摂取と健康結果との関連を検討している先行研究では、結果が矛盾していた。
しかしながら、その後、米国と日本の大規模研究において、
全死因のリスクにおけるコーヒー摂取の潜在的な有益な影響が明らかにされた。
今回は、欧州からの報告である。

今回の研究では、EPIC研究(がんと栄養に関するヨーロッパの前向き調査)のデータを使用し、
イギリス、フランス、デンマーク、イタリアを含む10のEU諸国の521,330人(35歳以上)のデータを分析した。

食事は、質問票と面接により評価された。
コーヒーの摂取量は、デンマーク(1日あたり900ml)で最も多く、
イタリア(1日あたり92ml)で最も少なかった。
コーヒー摂取がより多い者は、若く、喫煙習慣有り、飲酒習慣有り、肉類の摂取が多い、
果物・野菜の摂取が少ない傾向も示した。

結果は、16年間追跡後、約42,000人は、がん、循環器疾患、心不全、脳卒中などで死亡した。
食事と喫煙習慣などのライフスタイル要因で調整後、コーヒー摂取が最も多かった群は、
コーヒーを全く飲まなかった者と比し、総死因のリスクが最も低かった。

カフェイン抜きのコーヒーには、同様の効果があることもわかったという。
サブグループ(14,000人)において、代謝性バイオマーカーも分析したところ、
コーヒーを飲む者は、コーヒー以外を飲む者より、健康的な肝臓であり、
血糖コントロールも良好である可能性が示唆された。

カフェイン抜きのコーヒーを飲んでいる者に関し、
調査時期とは異なる時点でのカフェイン含有のコーヒーを
摂取している可能性を除外することができなかったことから、
カフェイン含有とカフェイン抜きのコーヒーの摂取については、
分離して検討するのは単純ではないとのことである。

「今回の知見は、コーヒーを飲むことが安全であるだけでなくて、
ヒトに対し保護的健康効果が実際にある可能性があることを示唆する
これまでのエビデンスに付加するものである。

更なる研究が必要であるが、我々は、今回のヨーロッパでの大規模研究の結果は、
世界中で示唆された先行研究結果を支持することを確信する」とエリオ・リボリ教授は述べている。

出典は『内科学年報』。 (論文要旨)     
2017-07-19
Link de Diet 2017.7.11 , EurekAlert 


コーヒー摂取は、心疾患、がん、脳卒中、糖尿病、呼吸器疾患、腎臓疾患
などの死亡リスクの低減と関係するようだ、というハワイ大学等からの報告。

カフェインの有無には関わらず、コーヒー摂取は、
低死亡率と関連しているようだ。

先行研究において、前向きコホート研究で、コーヒー摂取は、
死亡リスクの低減との関連性が示唆されているが、非白人でのデータはほとんどなかったという。

今回の研究では、多民族コホート研究(がんに関連するライフスタイルリスク
要因を検討している、人種的に最も多様な研究である)における、アフリカ系
アメリカ人、ハワイ先住民、日系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、白人、
185,855人(45歳から75歳)を対象としている。

食事、生活習慣、家族歴、既往歴に関し質問で調査した。
平均フォローアップ期間は、16年である。

結果は、コーヒーを1日1杯摂取した者は、コーヒーを飲まなかった者と比し、
総死亡率が12パーセント低減した。この関連性は、
コーヒーを1日2~3杯摂取した者においてより強く、総死亡率は、18パーセント低減した。

さらに、カフェイン有り、カフェイン無しでは、同様の傾向を示し、総死亡率は低かったという。

「これまで、非白人におけるコーヒー摂取と死亡率との関連性については、
利用可能なデータはほとんどなかった。ライフスタイルと疾患リスクは、
人種、民族等背景によって変化する可能性があること、
1つのグループの知見が、必ずしも、他のグループにあてはまるわけではない
ことから、今回の調査結果は重要である」と、スティアワン准教授は述べている。

出典は『内科学年報』。 (論文要旨)      
2017-06-22
産経新聞 2017.6.22

その薬、必要ですか? 医療に「賢明な選択」を 
患者と対話、過剰見直す活動広がる

 
その画像検査は本当に必要か。 
薬の量は適切なのか-。

医療の「賢明な選択」を探ろうという米国発の活動が国内でも広がり始めた。
医師が患者と対話を深め、無駄を省いて副作用を防ぎ、医療の質を向上させる試みだ。
 
副作用の連鎖

「あまりにも処方薬が多過ぎる」。群星沖縄臨床研修センター(沖縄県浦添市)の徳田安春医師が
2年前、関東地方の病院に勤めていたときのことだ。重症で転院してきた80代の男性は
統合失調症やパーキンソン病など複数の疾患があり、薬を16種類も処方されていた。

徳田医師は一つ一つの薬がいつ、どんな症状の段階で処方されたかを調べた。
すると、鎮静剤や抗精神病薬で飲み込む力が衰え、
パーキンソン病の薬が便秘を招き下剤が処方され
…と副作用の連鎖が起きていることが分かった。   

慎重に観察しながら薬を3種類に減らすと、               
男性は自力で食事を取れるまでに回復した。

「必要な薬は使うべきだが、選別と選択が必要」と徳田医師。      
米国発祥の「Choosing Wisely(チュージング・ワイズリー、
賢明な選択)」という活動に触発され、国内普及の旗振り役となってきた。

5つのリスト

米国では「治療の30%は不要」との推論もあり、
患者の体に負荷が大きい過剰医療は改めるべきだとの声が
医療界でも2010年ごろから高まっていた。

それに応えて臨床医たちが無駄な治療の撲滅に立ち上がったのが、     
12年に米内科専門医機構財団が始めた「賢明な選択」キャンペーン。   
同財団の呼び掛けに、内科学会や小児科学会などが見直すべき診療行為を  
5つずつ挙げ、インターネットで公開。科学的根拠も明示した。
 
「5つのリスト」と名付けられ、現在では70を超す学会が参加。    
計500近い項目がリストアップされている。

「頭痛で脳波検査をしない」
「明らかなウイルス性呼吸器疾患に抗菌薬を使わない」
「20歳以下の女性に子宮頸がん検診をしない」
などを列挙。    

活動はカナダ、イタリア、英国、オーストラリアなど10カ国以上に広まった。
 
日本でも昨年10月「チュージング・ワイズリー・ジャパン」(CWJ)が発足。
6月1日には日本医学会がシンポジウムで取り上げた。

 一緒に決める
 
CWJ代表で佐賀大名誉教授の小泉俊三医師は
「医療費削減が目的と誤解しないでほしい」と話す。
「大事なのは患者と医師がじっくり考え、     
望ましい医療を一緒に決めること」と強調する。

賢明な選択のリストを参考に、根拠に乏しい検査や投薬を漫然と続けるのを避け、
効果が高く副作用の少ない医療を実現するのが目的。        

医師が治療方針を一方的に押し付けるのではなく、            
患者の価値観も踏まえ意思決定を共有することを目指す。

過剰医療の背景には、出来高払いの診療報酬制度や、医療過誤訴訟に医師が身構える実情もある。
「念のため、と医師はやり過ぎてしまうが、過ぎたるは猶(なお)及ばざるがごとしだ」(小泉医師)

市民・患者の立場からCWJに参加する医療ジャーナリストの北澤京子京都薬科大客員教授は
「早期発見と早期治療を患者は望むが、過剰診断や過剰治療のデメリットも伴う」と指摘。           
「患者が納得できる治療方針の決定につながる」と活動の意義を語る。
 
CWJは今後、国内の学会に「5つのリスト」を挙げてもらうよう働きかける考えだ。
一般市民の会員も募集中。

問い合わせは、メールでchoosingwiselyjapan@gmail.com。
2017-06-20
産経新聞 2017.6.20
【技あり!ほねつぎの健康術】
(29)体力付ける「四股体操」


健康のためにウオーキングを始めたのに、足腰を痛めて来院される方がいます。
原因はオーバートレーニング、つまり歩き過ぎです。

体力に見合わない運動負荷をかけないように、
自分の適切な運動量を導き出せるのが「片脚での立ち上がり検査」です。

家庭にもある高さ約40センチのいすに座り、片脚だけで立ち上がることができれば、
1日約4500歩、45分ほどのウオーキング運動を行える体力があるといえます。

立ち上がれなければ、4500歩も歩こうとすると身体に無理がかかり、
あちこちに痛みを引き起こす可能性があります。
このような場合、背骨と骨盤の柔軟性を高める四股体操が有効です。

両脚を肩幅よりやや大きく開いて立ち、腰を落としながら両手を両膝にあてて胸を張ります。
力士が四股を踏む要領です。お尻を少し後ろに突き出すようにしながら、
さらに腰を落としていくと、股関節に突っ張りを感じます。

このとき、5秒程度かけてゆっくり息を吐きながら腰を落とし、
また5秒かけて息を吸いながら腰を戻しましょう。
これを10回程度繰り返します。

正しく行うと、股関節の突っ張り感が消えていく感覚が分かるでしょう。
難しい場合はいすに座って行いましょう。
柔軟体操を習慣化することで全身の筋力を上げ、結果的に体力アップを図れます。

(奈須開生)=次回掲載は7月4日予定

                   


問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475
2017-06-09
ちょっとの運動でも、幸せな気分になれる!?
Link de Diet 2017.6.2 , EurekAlert


気分を上げるために、ジムに行く時間がない場合でも、ただ椅子から立ち上がり、
動き回るだけで主観的幸福感は改善できるかもしれない、
という米国コネチカット大学からの研究報告。

客観的に評価し、質問票を用いて主観的評価を行い、
これらの関連を調査した。

その結果、軽度の身体活動は、心理的幸福感の高まり、
うつ症状の低下と正の相関があった。

中等度の身体活動の場合は、心理的幸福感の高まり、
疼痛の程度の低下と正の相関があった。

座位行動は、心理的幸福感の低下、
うつ症状の増加と有意な相関があった。

高強度の身体活動では、主観的幸福との関連は見られなかった。

「人々に運動を勧めるために、幸福感に与える運動の強度を明らかにすることは
とても重要であるかもしれない」と研究者らは述べている。

出典は『健康心理学雑誌』。 (論文要旨)      
2017-06-06
産経新聞 2017.6.6
【STOP!メタボリックシンドローム】
“医食同源” 科学で解明


 ■短鎖脂肪酸と受容体の働き

食による病気予防や治療の考え方“医食同源”の科学的解明が進んでいる。

食物繊維など健康にいいとされる食物は、どんなメカニズムで体に作用するのか。
注目されているのは、腸内細菌が食物を分解して作る短鎖脂肪酸と、
その刺激を受け取り、体のさまざまな機能と関わる受容体の働き。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や
生活習慣病に対する予防医学への波及が期待されている。(宮田奈津子)

                   ◇

 ◆ブラックボックス

食と腸内環境、生活習慣病についての研究に取り組むのは、
東京農工大農学研究院の木村郁夫特任准教授。
食物が腸内細菌叢(そう)に届いてから、
体に作用するまでのメカニズムを明らかにしている。

研究内容は2013年に英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載され、
昨年はネイチャー本誌に日本の最先端食品科学に取り組む研究者の一人として紹介されている。

木村特任准教授は「数多くの腸内細菌が共生する腸内細菌叢について多くのことが分かり、
健康への影響についての研究も進んでいる。
しかし、その先に何が起きているのかは“ブラックボックス”のままでした」と振り返る。

◆食物繊維が肥満抑制

例えば体にいいとされる食物繊維。
野菜などに多く含まれるが、どのように健康に影響するのか。

食事で摂取した食物繊維が腸に届くと、腸内細菌が分解し、短鎖脂肪酸という代謝産物を作り出す。
短鎖脂肪酸はエネルギー源になると同時に、細胞内の受容体と結びついて新たな作用を生み出す。

まず、交感神経に存在する受容体GPR41。
短鎖脂肪酸の刺激を受けると交感神経を活性化。
その結果、体温上昇が起こり、エネルギー消費量を増やす。
もう一つの受容体GPR43は白色脂肪細胞にあり、
インスリンシグナルを抑制、脂肪蓄積を抑える。

木村特任准教授は「受容体の活性化によって、食物繊維は肥満を抑制する」と説明する。

◆機能性食品の開発へ

食物を由来として腸内細菌によって作り出される代謝産物は、
細胞にある受容体を刺激する“シグナル”のようなもの。
シグナルを受けた受容体の働きが、エネルギー調整や免疫機能など、
体のさまざまな機能と関わっているのだという。

食物繊維のほか、青魚に含まれるDHAやエゴマ油といったオメガ3(不飽和脂肪酸)、
ココナッツオイルなど健康にいいとされる食べ物が数多く存在し、注目される。
その効果の“なぜ”が解明されつつある。

木村特任准教授は「食と健康の関係は、科学的根拠を証明していく時代。
食物がどのような代謝産物を作り、どの受容体に作用するのか。
一つ一つを調べることで食物本来の機能や健康への影響が分かる。
生活習慣病を予防する機能性食品の開発などにつなげていきたい」と話している。

                   ◇

【用語解説】腸内細菌叢(腸内フローラ)

人の腸管には500~1000種、100兆個の細菌が共生している。
乳酸菌などの摂取によって、いわゆる“善玉菌”と呼ばれる体にいい働きをもたらす菌を優勢に保つと、
病原菌の定着阻害や免疫系活性化につながる。

一方、高脂肪食や食物繊維が不足した食事を続けると細菌の共生が崩れ、“悪玉菌”が増加。
肥満といった代謝性疾患やアレルギーなど免疫疾患につながる可能性が指摘されている。

2017-06-06
産経新聞 2017.6.6

耳が遠い 認知機能低下も、補聴器検討を


糖尿病で通院する70代女性は最近、少し大きな声で話してもらわないと聞こえにくいと言います。
耳鼻科で補聴器を勧められたものの、「年寄りくさいから嫌」といって、利用しようとしません。

年を取ると耳が聞こえにくくなるのは、加齢にともない内耳の感覚細胞が障害を受けたり、
内耳から脳へと音を伝える神経経路や中枢神経系に障害が現れたりすることで、
音の伝達が悪くなるためです。

人との会話が困難になるなど日常生活に支障が出るまでに
聴力が低下した状態を「難聴」と呼びます。

加齢による難聴は、低い音より高い音が聞き取りにくくなります。
ゆっくり進行することで聞こえにくくなっていることに気づかない人も多いのですが、
日本では1千万人超いると推計されています。

最近の多くの研究で、加齢が原因の難聴が認知症のリスクであることが分かってきました。

2011年の米国の研究では、正常の人に比べ聴力が中等度低下している人は
認知症のリスクが約3倍、高度の低下で約5倍高くなっていました。

難聴が認知症のリスクとなるのは、耳から入る情報が少なくなることで
脳が衰えてくることが原因の一つと考えられています。
難聴の人は、危険を知らせる物音やアナウンスが聞き取れなかったり、
会話に苦労することで人との交流や外出の機会が減ったりすることが関係するようです。

また、脳の聴覚をつかさどる部分の機能低下が起こると、それを補うため、
認知機能に関係する脳の他の部位も聴覚のために動員するようになります。
これが負担となることも、認知機能が早く低下する原因のようです。

聞こえにくさを感じている人は、まず治療可能な他の病気がないか診断してもらうことが大切です。
診断の結果、加齢しか原因がない場合は、補聴器を使って聞こえやすくしておくことで、
認知機能が低下するのを遅くできる可能性があります。

冒頭の女性に補聴器を使うメリットを説明すると、
それならばとさっそく補聴器を使うようになりました。
以前は外来の待合室で自分の名前を聞き漏らさないようにと、
呼び出す声に常に注意を傾けていたそうです。
補聴器で聞こえるようになったことでリラックスして待っていられるようになったと喜んでいます。

最近はいろいろな種類の補聴器がありますので、
「年寄りくさい」と決めつけず、耳鼻科医に勧められたらぜひ試してみてください。

(しもじま内科クリニック院長・下島和弥)
2017-05-26
読売新聞 2017年5月25日

肉やパン、乳製品など…
欧米型食事でも死亡リスク1割減


野菜や果物、大豆製品など健康に良い食品を多くとる人は、
少ない人に比べて死亡するリスクが2割低くなるとする調査結果を、
国立がん研究センターなどの研究チームが発表した。


チームは、食事の内容を

〈1〉野菜や果物、大豆製品、キノコ、サンマやサバなどの
   脂の多い魚などを多く食べる「健康型」
〈2〉肉やパン、乳製品などを多くとる「欧米型」
〈3〉ご飯、みそ汁、魚、漬けもの中心の「伝統型」

の3パターンに分類。

岩手、茨城、大阪など9府県の男女約8万人に、摂取する食品の頻度や量を
記入してもらったデータを使い、参加者の食事をタイプごとに点数化した。
約15年間にわたって健康状態や死因などを追跡した。

その結果、「健康型」の点数が高い人は、
低い人に比べ、死亡リスクが2割低かった。

病気別では、循環器疾患による死亡リスクは3割、
脳血管疾患では4割も低下した。

また、「欧米型」の点数の高い人も、
低い人に比べて死亡リスクは1割低かった。
適度な量の肉類や乳製品、コーヒーなどの摂取が影響したとみられる。

「伝統型」は、点数と死亡リスクに関係が見られなかった。

研究を主導した溝上哲也・国立国際医療研究センター疫学・予防研究部長は
「野菜や果物を十分取れる和食に、肉や乳製品を適度に加えることが
長寿の秘訣。日本人の寿命が延びたのも、こうした食事のお陰」と話している。
2017-04-03
Link de Diet 2017.3.22 , EurekAlert


運動があなたの身体を健全に保つという事は、これまで何度も報告されてきている。
免疫力を増強し、頭をスッキリさせ、眠りやすくなったり、筋のトーンを維持し、
健康寿命を引き延ばすのだ。

研究者らはこの運動の効果が細胞レベルに起因するものではないかと考え、検討を試みてきた。
しかしながら、どのような運動が加齢とともに低下する身体機能のカギとなるような
組織細胞の再生に関わっているのかについては、比較的ほとんど知られていないのが現状だ。

運動、とりわけ自転車こぎやウォーキングなどの有酸素的高強度インタバルトレーニングが、
細胞をより多くのタンパクが生成されるように促し、ミトコンドリアにそのタンパクを供給、
さらにたんぱく質を生成するリボゾームが、
細胞レベルで加齢を抑制する様だという事がわかってきたという
メイヨ・クリニックの研究者らによる研究。

これまでの知見によれば、加齢プロセスを遅らせるということになると
運動プログラムを行う以外に代わりになるものはない、と研究者は指摘する。
運動の代わりになるような薬を飲んで加齢を遅らせたりすることは、できないのである。

研究では、2種類の年齢グループで構成された男女36人ずつに
3種類の異なった運動プログラムを実施してもらった。
年齢群は18~30歳の若年群と、65~80歳の高齢者群である。

運動の種類は、高強度インタバルトレーニングをした場合と、
筋力トレーニングを行った場合と、
筋力トレーニングとインタバルトレーニングを組み合わせたグループの三群である。

ついで研究者らは、被験者の大腿筋群のバイオプシー検査を行い、
筋線維組成の分子的構成の違いが被験者感でどの程度見られるかを分析した。
また、被験者の除脂肪筋量やインスリン感受性についても検討された。

結果、筋力トレーニングは筋量を増加させるのに有益であった一方で、
高強度インタバルトレーニングは細胞レベルでの有益性を最も多く導く事がわかったのだ。

インタバルトレーニングをした若年層群はミトコンドリア能で49%の増加率を示し、
同じく高齢者群では69%の増加率が見られたのだ。
インタバルトレーニングはさらにインスリン感受性を改善したが、
これはおそらく糖尿病罹患リスクの低下を示唆するものである。

しかしながら、インタバルトレーニングは
加齢に伴う筋量低下を改善する上では、あまり有効ではなかった。

もしも一つの運動形式を選択しなくてはならないのだとすれば、
高強度インタバルトレーニングを行う事は推奨できるものの、
週当たり3~4回のインタバルトレーニングとともに、
筋力トレーニングを数日間行う事を組み合わせることが有益であると考えられるのだ。

いずれにせよ、運動を全くしないのに比べたら、する方が良い。

研究者らが強調しているのは、本研究の焦点が推奨運動を決定することに置かれているのではなく、
むしろどのように運動が分子レベルで影響を与えるのかについて理解することであるとしている。

加齢に伴って、ミトコンドリアでのエネルギー生産の力は徐々に低下する。
様々な運動形態と年齢層のサンプルを用いたプロテオーム分析や
RNA配列検討のデータを比較することで、研究者らは運動によって
より多くのミトコンドリアたんぱくの暗号化に関わるRNAが複製され、
筋力増強に有益であるタンパクが生成される事が明らかとなったのだ。

最も印象的な発見は、筋中のたんぱく組成である。
検討されたサンプルの中には、高強度自転車漕ぎトレーニングで
加齢性のミトコンドリア機能減少が抑えられるどころか改善し、
筋力増強に有用なたんぱく質も増加していたのだ。

高強度自転車漕ぎトレーニングはさらに被験者のリボゾームの若返りにも貢献していたようだ。
これは細胞内のたんぱく質ブロックを生成する際に関わっていると考えられる物質である。

研究者らはミトコンドリアたんぱく質の合成増加が確固として増加したことも明らかにしている。
たんぱく質プロファイルの中の各組成の増加が意味するところは、
ミトコンドリア機能と筋肥大が改善された事に関連していると考えられるのだ。

運動によるこれらキーとなるようなたんぱく質などの変化能力によって、
運動がいかにして健康をもたらすのに有益であるのかを様々な面から実証することになる知見であるといえるのだ。

筋細胞は、それ自身があまり分裂しないという点で他の細胞に比べて特異的な面を持っている。
脳細胞や心筋細胞と同様に、筋細胞は減少し、簡単には再生できない。
これらの細胞に関わる機能は全て、加齢とともに低下していくことが知られているのだ。

肝細胞と異なり、筋細胞は容易に再生可能ではなく、様々なストレスによるダメージは累積していくことになる。
しかしながら、運動がリボゾームの機能やミトコンドリア機能を再生したんぱく組成を変化させるという事になるのであれば、
その他の脳細胞や心筋細胞などにおいても若返りが起こる可能性が見いだされるかも知れないのである。

これらの経路、つまり運動が行う若返りのマジックの機序を理解する事ができるならば、
加齢というものをより目標達成可能な標的として検討していくことも可能になるのである。

研究者らは今後、運動による身体の様々な組織に対する効果性を
より詳細に導き出すことを検討するとしている。さらに臨床的に見て
最も有効にこれらの方法を達成する手段についても検討したいとしている、

しかしながら、現在のところ、活動的な運動が
最も健康を補強する上では有益な手段であると研究者らは指摘する。
運動が加齢を抑制するというのはそういう意味では確立された基本的な考えであって、
それを置き換えるものは存在していないのだ。

出典は『細胞代謝作用』。 (論文要旨)      
2017-03-31
読売新聞 2017年3月31日

風邪を引けない時に摂るべきは?


仕事や試験、旅行など大事な予定を控え、「絶対に風邪を引きたくない」というタイミングがある。
風邪にはビタミンCの補給がいいというのはよく耳にするが、
この度、ビタミンDの摂取と風邪や気管支炎などの「急性気道感染症」に関する研究結果が出された。

英国のロンドン大学などの研究グループによると、
連日または週1回、サプリメントでビタミンDを摂取すると、
急性気道感染症の予防に有効だという。

研究の詳細は、2月18日発行の医学誌「BMJ」( 電子版 )に掲載されている。

25件の試験を解析

研究グループは、ビタミンDのサプリメントが
急性気道感染症にどのような影響を及ぼすかについて
検討した過去の試験を統合的に解析した。

解析したのは、これまでに行われた25件の試験で、
0~95歳の1万1,321人が含まれていた。
そのうち、1万933人分については、個別患者データが得られた。

25件のうち12件の試験について、参加者はビタミンDサプリを毎日摂っていた。
3件は週1回の摂取、7件は1~3カ月に一度まとめて摂取をしていた。
残る3件は、毎日の摂取に加え、1~3カ月に一度の大量摂取もしていた。

これら25件を解析したところ、ビタミンD摂取群では、
ビタミンDサプリに似せた偽サプリメントを摂取した群に比べて、
急性気道感染症のリスクが12%低下していた。

続いて、大量摂取をしていなかった15件の試験について解析したところ、
ビタミンD摂取群では、偽サプリメント摂取群に比べて、
急性気道感染症のリスクが19%低下していた。

その一方で、大量摂取をしていた10件の解析では、
ビタミンD摂取による急性気道感染症のリスクに対する効果は見られなかった。

さらに、このリスク軽減効果は、はじめに測定したビタミンDの充足具合を判定する
「血清25-ヒドロキシビタミンD」の値が、
25nmol/L未満と低値だった群で、25nmol/L以上と高値だった群より大きかった。

研究グループは、「ビタミンDサプリメントの摂取は、安全に急性気道感染症を予防してくれる。
とりわけ、ビタミンDが不足気味の人や、
一度にまとめて大量のビタミンDを摂取しない人で高い効果が得られた」とコメントし、
「今回の解析結果は、ビタミンDサプリメントの新しい可能性を示すものだ」と評価した。

風邪対策には、ビタミンDのサプリメントがよさそうだ。
水分補給、たっぷりの睡眠と併せて試してみるのもいいかもしれない。


2017-03-24
Link de Diet 2017.3.22 , EurekAlert 

  
がんを検出して、腫瘍が増殖している位置も特定できる新しい血液検査を開発した、
という米国カリフォルニア大学からの研究報告。
この方法によって、生検などの侵襲性外科手術を行わずに、早期にがんを診断できるかもしれない。

がんの血液検査は、腫瘍細胞が死滅して放出したDNAをスクリーニングすることによって作用する。
このような試験は、がん患者の血液中に微量の腫瘍DNAを検出できる可能性があることを示している。
しかしながら、結果は、腫瘍がどこに存在するかを示していない。
腫瘍の位置を特定することは、効果的に早期発見するために重要となる。

研究チームは、腫瘍細胞を検出し、腫瘍細胞の位置を特定できる新しい手がかりを血液中に発見した。
腫瘍が身体の一部に増殖し始めると、腫瘍と正常な細胞は、栄養素や場所を奪い合い、
その過程で正常な細胞が死滅する。正常な細胞が死滅すると、
そのDNAが血流中に放出され、影響を受けたDNAがあった組織を識別できる。

この方法では、CpGメチル化ハプロタイプという特定のDNAシグネチャーをスクリーニングする。
CpGメチル化ハプロタイプは、DNA分子中の複数の隣接CG配列に、メチル基が付加したものである。
体内の各組織は、メチル化ハプロタイプに特有の特徴によって同定できる。

「この発見は偶然によるものであった。はじめのうちは、従来の方法で、がん細胞シグナルを探し、
そのようなシグナルがどこから来ているか調べようとしただけであった。
ところが、他の細胞からのシグナルも見て、両方のシグナルをまとめると、
腫瘍の有無や腫瘍がどこで増殖しているか、実際に判断できたのである。」
と主任研究者のクン・チャン教授は述べている。

研究者らは、新しい方法を開発するために、10の異なる正常組織
(肝臓、腸、結腸、肺、脳、腎臓、膵臓、脾臓、胃、血液)の
すべてのCpGメチル化パターンについてデータベースにまとめた。

研究者らは、カリフォルニア大学サンディエゴ校ムーアがんセンターの
がん患者の腫瘍サンプルと血液試料を分析し、
がんに特異的な遺伝子マーカーのデータベースを作成した。

研究チームは、参加者の血液試料をスクリーニングした。
参加者には、腫瘍がある者も腫瘍がない者がいた。
研究者らは、がんマーカーのシグナルと組織特異的メチル化パターンを探した。
このテストは、二重認証プロセスのように機能する。
ただし、肯定的な整合を与えるために、両方のシグナルのうち、
統計的なカットオフを超える大きさをもつものを組み合わせる必要があるという。

出典は『ネイチャー遺伝学』。 (論文要旨)      
2017-03-24
Link de Diet 2017.3.15 , EurekAlert 


断食風の食事を周期的に摂ることで、膵臓細胞を再プログラムしてインスリン産生を回復し、
糖尿病を改善できる可能性があるという。米国南カリフォルニア大学の動物およびヒト細胞の実験から。

低たんぱく質・低糖質・高脂肪で低カロリーの食事を周期的に摂る、という断食「風」の食事法で、
膵臓でインスリン産生をする新たな細胞の成長が促進され、1型・2型糖尿病の症状を軽減させることが、
ヒト細胞およびマウスを用いた実験により明らかになった。

研究を指揮したロンゴ教授は「断食風の食事と普通食のサイクルによって、
インシュリンの非産生細胞を産生細胞へと本質的な再プログラムが行われたのです。
膵臓細胞の再生を活性化させることにより、
末期の1型・2型糖尿病だったマウスを救うことができたのです。
また、1型糖尿病患者から採取したヒトの膵臓細胞でも、
インスリン産生を回復させました」と話している。

<インスリン抵抗性と枯渇を逆転>
1型、および末期の2型糖尿病において、膵臓はインスリン産生を担う
β細胞を失い、血糖値はいっそう不安定になる。今回の研究では、
マウスの食事を毎週4日間、断食風にすることで、糖尿病が著しく改善することが示された。
マウスたちには健常なインスリン産生を取り戻し、インスリン抵抗性が低下、
血糖値がより安定するようになった。これは、病態が末期のマウスにさえ見られたという。

この食事サイクルは、通常であればマウスの胎児のみに起こる遺伝子のスイッチ切り替えを、
おとなのマウスにも引き起こしたのだ。
その遺伝子は、ニューロゲニン-3(Ngn3)と呼ばれるたんぱく質を作り始め、
それにより、インスリン産生をする新しく健康なβ細胞が
生成される。

<次のステップ:臨床試験>
ロンゴ教授らのチームは、1型糖尿病患者より提供された膵臓細胞を
用いた実験から、Ngn3たんぱく質は飢餓によっても発現が増加し、
インスリン産生が促進することをつきとめた。これらの結果から、
断食風の食事が人間の糖尿病を緩和できることが示唆された。

ほかにも断食風食には、いくつもの健康上の利点が見つかったという。
1か月のうち5日間は断食風食にするという食事法を3か月続けた被験者らは、
がん、糖尿病、心臓病、その他の加齢に伴う病気のリスクが低くなったという。

また、先行研究では、神経変性疾患の多発性硬化症の症状軽減や、
がんの化学療法の効果を高める、内臓脂肪を減少させるなどの可能性が示されている。

ロンゴ教授は、糖尿病治療法として実用化を目指すべく、
米国食品医薬品局による大規模な試験が待たれるとしている。

出典は『細胞』。 (論文要旨)      
2017-03-22
Link de Diet 2017.3.21 , EurekAlert


緑の葉物野菜、ブルーベリー、植物たんぱく質をたくさん食べ、
ココナッツオイル、パームオイル、抗酸化サプリメントは
、制限または回避したほうが良いらしい。
米国・国立ユダヤ医療研究センターなどからのレビュー報告。

緑色の葉物野菜、特にブルーベリーやイチゴなどのベリー、
豆などの植物たんぱく質は、
心血管機能をサポートするとされている。

このような食品を組合せると、植物ベースの食事パターンとして、
血圧を下げ、血糖を安定させ、アテローム性動脈硬化の初期段階で形成される
動脈プラークを破壊するものとなるという。

ただし、これらの食品は、ジュースにブレンドしたり、
抗酸化サプリメントに混ぜたりするよりも、
まるごと摂取するべきであるとのことである。

オリーブ油、キャノーラ油、ヒマワリ油、ナッツ類は、
一価不飽和脂肪および多価不飽和脂肪の健康的な供給源であるが、
カロリーが高いため、適度に摂取することが必要である。

なお、食事中のコレステロールは、制限する必要があり、添加脂肪、
揚げ物、卵、内臓、加工肉、加糖飲料、ココナッツ油、パーム油などが
豊富な南部型の食事パターンは避けるべきである。

グルテン含有食品は、患者が感受性またはアレルギーをもつときに限り、避ける必要がある。
グルテンフリー食は、人口の約1~2%のセリアック病患者において、早期の罹患率と死亡率を低下させる。
非セリアックグルテン過敏症は、人口の6%に影響する可能性があるという。

「毎年、何千もの研究が発表されているので、私たちは矛盾したタイトルを目にする。
私たちは、入手可能な最善のピアレビュー研究に基づいたリアルタイムの処方を提供するように、
このレビューを共同で制作したのである」と共著者のニール・バーナード博士は語っている。

出典は『米国心臓学会雑誌』。 (論文要旨)      
2017-02-28
Link de Diet 2017.2.27 , EurekAlert 


5種類のナッツ(マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンド、ピスタチオ)を調べたところ、
がん細胞の増殖を阻害できる保護的な分子メカニズムがあることを見出した、
という独イェーナ大学からの研究報告。

「ナッツには、心臓や心血管系に良い物質、
または、肥満や糖尿病の発症を防ぐ物質が
豊富に含まれていることが以前から知られている」
とウィープケ・シュラマン博士は述べている。

また、いくつかの研究においても、大腸がんに対する保護効果が示されているという。
「私たちがこれまでに知らなかったことは、
ナッツがもつこのような保護効果が何に基づくのかということである。」

研究チームは、本研究で、この疑問に対する答えを見つけたようである。

この研究によると、ナッツは健康に良い効果を与えるようだ。
特に、活性酸素種を無害化する身体の防御機構の活性化に関与しているという。
例えば、紫外線、様々な化学物質、または食物代謝産物などによって生成される物質は、
がんの発症の原因となるDNA損傷を引き起こす可能性がある。
「身体には、反応性酸素種を無害化する一連の防御機構がある。

研究チームは、この防御機構がナッツに含まれる物質に促されることを示している」
とシュラマン博士は述べている。

研究者らは、5種類のナッツ(マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、
クルミ、アーモンド、ピスタチオ)の効果を調べた。
試験管の中でこれらのナッツを人工的に“消化”し、
得られた消化産物が細胞系に与える影響を分析した。

研究者らは、保護酵素のカタラーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼの活性が、
処理する細胞において増加することを実証した。
さらに、消化産物は、このような処理をしたがん細胞において、
いわゆるプログラム細胞死を誘導することも判明したという。

「我々は、調べたすべての種類のナッツにおいて、
この効果が媒介されていることを示すことができた」
とマイケル・グレイ教授は述べている。

研究者らは、次に、ナッツを焼くことによって、
このような保護効果が小さくなるかどうかを調べたいという。

今回調査対象としたナッツのほとんどは、実際には、焼いたものが主に摂取されるので、
さらに研究が進めば、科学者は、その結果に基づいて、
適切な栄養アドバイスができるかもしれないとのことである。

出典は『分子発がん』。 (論文要旨)      
2017-02-28
Link de Diet 2017.2.27 , EurekAlert 


5種類のナッツ(マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンド、ピスタチオ)を調べたところ、
がん細胞の増殖を阻害できる保護的な分子メカニズムがあることを見出した、という独イェーナ大学からの研究報告。

「ナッツには、心臓や心血管系に良い物質、または、肥満や糖尿病の発症を防ぐ物質が
豊富に含まれていることが以前から知られている」とウィープケ・シュラマン博士は述べている。

また、いくつかの研究においても、大腸がんに対する保護効果が示されているという。
「私たちがこれまでに知らなかったことは、
ナッツがもつこのような保護効果が何に基づくのかということである。」

研究チームは、本研究で、この疑問に対する答えを見つけたようである。

この研究によると、ナッツは健康に良い効果を与えるようだ。
特に、活性酸素種を無害化する身体の防御機構の活性化に関与しているという。
例えば、紫外線、様々な化学物質、または食物代謝産物などによって生成される物質は、
がんの発症の原因となるDNA損傷を引き起こす可能性がある。
「身体には、反応性酸素種を無害化する一連の防御機構がある。

研究チームは、この防御機構がナッツに含まれる物質に促されることを示している」
とシュラマン博士は述べている。

研究者らは、5種類のナッツ(マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、クルミ、アーモンド、ピスタチオ)の効果を調べた。
試験管の中でこれらのナッツを人工的に“消化”し、得られた消化産物が細胞系に与える影響を分析した。

研究者らは、保護酵素のカタラーゼおよびスーパーオキシドジスムターゼの活性が、
処理する細胞において増加することを実証した。
さらに、消化産物は、このような処理をしたがん細胞において、
いわゆるプログラム細胞死を誘導することも判明したという。

「我々は、調べたすべての種類のナッツにおいて、
この効果が媒介されていることを示すことができた」とマイケル・グレイ教授は述べている。

研究者らは、次に、ナッツを焼くことによって、このような保護効果が小さくなるかどうかを調べたいという。
今回調査対象としたナッツのほとんどは、実際には、焼いたものが主に摂取されるので、
さらに研究が進めば、科学者は、その結果に基づいて、適切な栄養アドバイスができるかもしれないとのことである。

出典は『分子発がん』。 (論文要旨)      
2017-02-21
Link de Diet 2017.2.13 , EurekAlert 


精製穀物の代わりに全粒穀物を摂取すると、消化の際にカロリーを減らして、
代謝を促進することでカロリー消費量を増やしてくれることが示唆された。
米国タフツ大学の研究。

多くの先行研究では、食物繊維や全粒穀物が慢性疾患のリスクを予防することが示唆されてきた。
今回の研究では、どれくらいの全粒穀物や食物繊維が体重管理に影響を与えるかを定量化し、
全粒穀物や食物繊維とより良い健康状態との関連を検討した。

研究では、40-65歳の男女81名に8週間の無作為単純盲検比較研究を行った。
対象者を2群に分け、まず最初の2週間は同じ食事を摂取してもらった。
その後、対象者はグループごとに精製穀物か、全粒穀物かのいずれかを摂取した。

食事内容の違いは、主に穀物の種類と食物繊維の量であり、
エネルギー、微量栄養素、食品や食事構成は同じであった。
参加者は、提供された食事だけを食べ、食べなかった食事は戻し、
日常の運動は継続して行った。

そして、対象者の体重、代謝率、糞便中のエネルギー損失量、
血糖、空腹感や満腹感を調査した。

その結果、栄養推奨量(RDA)の全粒穀物を食べた者では、安静時代謝と
糞便のエネルギー損失量を考慮すると1日100kcal近くカロリー消費量が
多かった。この消費カロリーは、30分程度の散歩に匹敵する。

糞便のエネルギー損失量は食物繊維によるものではなく、
食物繊維が、他の食品の消化に与える影響によるものであった。
また空腹感や満足感等の食事の満足度は、2群の間で同様の結果であった。

研究者らは、全粒穀物食が安静時代謝を増加させたことに対しては、
食事による影響を受けやすいため、解釈に注意が必要であると述べている。

穀類とは、小麦、米、オート麦、大麦やその製品をいう。
その中で全粒穀物は、胚乳の外側部分に栄養素が豊富に含む玄米や全粒小麦粉を指す。
穀類は精製することで食感が良くなるが、食物繊維やビタミンB群、
鉄などの栄養素は失われてしまう。

米国保健福祉省の食事ガイドラインの2015-2020年版では、
精製穀物を全粒穀物に置き換えることを推奨している。具体的には、
1日あたり1-2カップの玄米やオートミールを食べることである。

出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)
2017-02-21
Link de Diet 2017.2.17 , EurekAlert 



国際的な共同研究から、ビタミンDをサプリメントで補給することによって
急性呼吸器性疾患を予防するのに有益である可能性が報告されている。

本研究は25件のランダム化比較対照試験のメタアナリシスであり、
のべ11,000人の被験者を対象として検討している。
マサチューセッツ総合病院及びロンドン・クインメアリ大学の研究者らによる研究。

たいていの人はビタミンDが骨と筋の健康を維持する上で重要であるという認識は持っている。
本研究では、この同じビタミンが、世界的に見れば毎年何百万人もの死亡者を出している
急性呼吸器性疾患に対して身体が対抗する上でも有益だということが明らかになったのだ。

いくつかの観察研究で、特定の治療薬を処方していない状態で観察を行った場合に、
ビタミンD濃度が低い被験者は有意に呼吸器性疾患への罹患リスクが高い傾向が見られた。

数多くの臨床試験でビタミンDをサプリメントで補給した場合の保護作用について検討を行っているが、
いくつかの研究から保護効果が見られると報告されているものの、
その他の研究からは明確な因果関係は上がってこなかった。

これらの研究をメタアナリシスして、被験者プロファイルの異なる結果データを集積し、
検討を行ったところ、相反的な結果が得られたのだ。

このような結果の不一致を解決する為、米国、カナダ、英国を含む
12ヶ国の臨床試験の結果をメタアナリシスに導入し検討した。
伝統的なメタアナリシスではそれぞれの研究の総被験者の平均的データを比較するが、
本研究ではそれぞれ個別のデータを用いて、より精度の高い分析を全ての臨床試験に対して行っている。

研究者らは毎日もしくは週ごとにサプリメントでビタミンDを摂取していた場合の最も有意な保護作用は、
もともとのビタミンDレベルが低い被験者(血中25-ヒドロキシビタミンDが25nmol/L以下の欠乏状態)
において見られたと報告している。このケースでは呼吸器性感染症の罹患リスクが半減していた。

またそれ以外の被験者であっても、ビタミンDを定期的に摂取することによって、
顕著ではなくともいくらかの作用がもたらされている事が明らかとなった。
また、周期的に高用量のビタミンDを摂取させるような用法では、有意な結果は得られていない。

急性呼吸器感染症は、米国では救急救命対応を要する入院事象の数百万件分を占めているといわれている。
本研究の結果を考えれば、ビタミンD強化食品を用いる事の有用性が
とりわけビタミンD欠乏状態の人に対して有益である事を支持するものとなるだけでなく、
一般公衆衛生的にも定期的なビタミンD摂取の有益性を示唆するような
インパクトのあるものになると思われる、と研究者は指摘している。

出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)      
2017-02-21
2017.2.20 , EurekAlert 

  
抗炎症性の食事(野菜、果物、魚、全粒穀類などが高い)は、
骨の健康を高め、骨折を予防する可能性があるようだ、
というオハイオ州立大学などからの報告。

研究者らは、女性の健康イニシアティブ(Women's Health Initiative)のデータを調査し、
食事による炎症を引き起こす構成要素のレベルと、骨ミネラル密度と骨折とを比較した。

WHIの対象者は50歳から79歳であり、1993年から1998年まで登録された。
女性160,191人の食事のデータを調査した。
女性が登録の前の3ヵ月間に摂取したと報告した32の食物構成に基づき、
炎症性スコアを割り当てた。

骨密度データは、女性のサブグループ10,290人のものを使用し、
骨折データは、研究グループ全体で収集した。

結果は、6年間フォローアップ後、最も炎症性の低い食事
(食事炎症性インデックスの評価法に基づく)の女性は、
最も炎症性の高い食事の者と比し、骨密度の損失が少なかったという。

この結果は、最も炎症性の低い食事の者は、ベースライン時、
骨密度がより低かったにも関わらず認められたという。

若年白人女性において、炎症性スコアの高い食事と骨折との相関のみが認められたという。
63歳未満の白人女性において、炎症性スコアの高い食事の者は、
炎症性スコアが最も低い食事の者と比し、股関節骨折リスクがおよそ50%増加した。

「この結果は、質が高く、炎症性の少ない食事は、
若年女性の股関節骨折のリスク低減において、
特に重要である可能性がある」と研究者は述べている。

しかしながら、研究グループ全体では、炎症性スコアの高さと骨折には関連が認められず、
最も炎症性スコアが高い食事の女性において、前腕と全体の骨折のリスクがわずかに低減した。
この研究結果の説明として、炎症性スコアの低い食事の女性は、
身体的に活発な傾向が認められ、転倒のリスクがわずかに高かったことが挙げられる。

炎症性スコアが最も低い食事の女性は、研究開始時、全体的に骨密度が低かったが、
炎症性スコアの高い食事の者よりも、骨損失が少なかった。

「開始時の骨密度の低さの理由は、健康的な食事の女性が、よりスリムな体格である可能性がある。
大きな体格の者は、体格を支えるためにより高い骨密度を有する可能性がある」と、
オーチャード氏は述べている。

「今回の調査結果は、質の高い脂質、植物性食品、全粒穀類が多く含まれる食事を選ぶことで、
女性の骨の健康は、恩恵を受ける可能性があることを示唆している」とオーチャード氏は述べている。

出典は『骨及びミネラル研究雑誌』。 (論文要旨)      
2017-02-21
2017.2.20 , EurekAlert 

  
抗炎症性の食事(野菜、果物、魚、全粒穀類などが高い)は、
骨の健康を高め、骨折を予防する可能性があるようだ、
というオハイオ州立大学などからの報告。

研究者らは、女性の健康イニシアティブ(Women's Health Initiative)のデータを調査し、
食事による炎症を引き起こす構成要素のレベルと、骨ミネラル密度と骨折とを比較した。

WHIの対象者は50歳から79歳であり、1993年から1998年まで登録された。
女性160,191人の食事のデータを調査した。
女性が登録の前の3ヵ月間に摂取したと報告した32の食物構成に基づき、
炎症性スコアを割り当てた。

骨密度データは、女性のサブグループ10,290人のものを使用し、
骨折データは、研究グループ全体で収集した。

結果は、6年間フォローアップ後、最も炎症性の低い食事
(食事炎症性インデックスの評価法に基づく)の女性は、
最も炎症性の高い食事の者と比し、骨密度の損失が少なかったという。

この結果は、最も炎症性の低い食事の者は、ベースライン時、
骨密度がより低かったにも関わらず認められたという。

若年白人女性において、炎症性スコアの高い食事と骨折との相関のみが認められたという。
63歳未満の白人女性において、炎症性スコアの高い食事の者は、
炎症性スコアが最も低い食事の者と比し、股関節骨折リスクがおよそ50%増加した。

「この結果は、質が高く、炎症性の少ない食事は、
若年女性の股関節骨折のリスク低減において、
特に重要である可能性がある」と研究者は述べている。

しかしながら、研究グループ全体では、炎症性スコアの高さと骨折には関連が認められず、
最も炎症性スコアが高い食事の女性において、前腕と全体の骨折のリスクがわずかに低減した。
この研究結果の説明として、炎症性スコアの低い食事の女性は、
身体的に活発な傾向が認められ、転倒のリスクがわずかに高かったことが挙げられる。

炎症性スコアが最も低い食事の女性は、研究開始時、全体的に骨密度が低かったが、
炎症性スコアの高い食事の者よりも、骨損失が少なかった。

「開始時の骨密度の低さの理由は、健康的な食事の女性が、よりスリムな体格である可能性がある。
大きな体格の者は、体格を支えるためにより高い骨密度を有する可能性がある」と、
オーチャード氏は述べている。

「今回の調査結果は、質の高い脂質、植物性食品、全粒穀類が多く含まれる食事を選ぶことで、
女性の骨の健康は、恩恵を受ける可能性があることを示唆している」とオーチャード氏は述べている。

出典は『骨及びミネラル研究雑誌』。 (論文要旨)      
2017-02-20
麻木久仁子の明日は明日の風が吹く
読売新聞 2017年2月20日

48歳で脳梗塞、49歳でまさかの乳がん発覚


そして今日も仕事の打ち合わせ中。
元気に充実した日々を送っています

我が家はよく人が集まる家で、大学生の娘の友達が遊びに来てくれることもよくあります。
そんな時には、若い人向けに少しボリュームのある料理を作ったりするのですが、
若い人たちはそれを元気にもりもり食べてくれるので、料理のしがいもあります。
若い人たちのおしゃべりを聞いているのも面白くて。

近頃の若者は年長者にやさしく、時には私もおしゃべりの輪に入れてくれることもあるのですが、
彼らの感性におもいきり笑わされたり、驚かされたりするのはほんとうに楽しいものです。
おかげさまで「これこそ若さの 秘訣ひけつ 」と独りごちている次第。
どんなに年を取っても「いまどきの若いものは 云々うんぬん 」を言い立てる大人にだけはなるまいぞ。
それを言った瞬間から老け込み始めるような気がしませんか?

心の中の若いままの自分にだまされる?

思えば私が頼る人もなく徒手空拳で芸能界に飛び込んだのは、彼らのような年頃のことでした。
あれから三十数年の年月が 経た ったことになりますが、なんだかそんな気がしないのです。
心の中にはいまだにあの頃の自分がいるようで、年を取ったことを忘れそうになります。
忙しさにかまけて自分の体の健康管理をおろそかにしてしまっていたのも、
心の中の若いままの自分にだまされていたからなのかもしれないですね。

48歳で脳梗塞を患い、幸い軽度で済んで後遺症もないのですが、
そのとき初めて 否応いやおう なく自分の体の現実と向き合うことになりました。
要は「自分で思うほど若くない」ということなのです。

それまでとくに高血圧とか糖尿病とか、
これといって数値に表れる異常と縁がなかった私でも、
思わぬ体のトラブルにあった。
まもなく50歳というときに経験した脳梗塞は
「これからの生き方を見直そう」と考える契機になりました。

単に食事や睡眠といった体のことのみならず、
それまでのような「ただ前進あるのみ」というような仕事の仕方もふくめて、
一度立ち止まって、50過ぎてからの生き方のペースを考えてみたいと思うようになったのです。

大台記念で受けた人間ドックで……

その第一歩として、人間ドックに行ったのは49歳の夏のことでした。
それまでにも人間ドックに行ったことはありますが、
今回は「50の大台記念」ということで私にとっては心に期するところがありました。

48歳で脳梗塞になった時に、若年性ということで、
なにか隠れた病気がないか全身くまなく検査していました。
結局どこも悪いところは見つからず、脳梗塞も原因不明に終わりましたが、
ある意味お墨付きをもらったようなもので、
「あとは脳梗塞が再発しないよう体調に気をつけて行けばもう大丈夫」と思っていました。

ですので、何も異常が見つかるはずもないけれど、
一度すべての項目を人間ドックでチェックして、
その「なにも異常がない結果表」を50代のスタートラインに据えたかったのです。

 ところが。ふたたび思いがけないことが起こりました。

人間ドックにはいわゆるオプション項目があります。
男性なら前立腺がんのチェック、女性なら子宮がんや乳がんのチェックといったことです。
さて、申し込み用紙を前にして、子宮がんの検査には迷わず申し込みを決めました。
日頃、生理痛や生理不順に悩まされていたこともあり、
しっかりチェックしておきたいと思ったからです。

一方、乳がん検診はどうかというと、あまり必要ないような気がしていました。
というのも、私は胸の小さな体格でして、当時の私の素人考えでは
「乳がんは胸の大きい人の方がリスクが高い」と思い込んでいたのです。
が、いやいや、今回の乳がんは50代のスタートラインなのだから、とにかく全項目埋めよう。
そんな軽い気持ちで乳がん検診、マンモグラフィー検査を受けることにしたのでした。

不意打ちの結果に「死」が浮かぶ

それなのに。出てきた画像を前に、
お医者さまが首をかしげてしまったのです。「ん?これは」

またしても不意打ちでした。「精密検査をおすすめします」という医師のことばに、
頭が真っ白になりました。夏の暑さの盛りの頃です。
思いもよらない診断にフラフラとクリニックを出ると、
見上げた空が雲ひとつない真っ青な空だったことを覚えています。
その青々しさを眺めていると、街の音がふっと消えていきました。
「死」という言葉が人生で初めて浮かんだ瞬間でした。

いま、日本人の2人に1人が、一生の間にがんになるそうです。
実はがんはとても身近にあるのです。にもかかわらず、
人は自分に降りかかるまでは、あまり意識しないのですね。

私も、それまで全く考えていませんでした。「なんでなんで?」。
健康を確認するための人間ドックのはずが、
思いもしなかった方向へ歯車が回り始めたのです。

主治医の言葉に力をもらう

がんセンターを紹介してもらい、受診の予約を取り、また一から検査をして。

いよいよ結果を聞きにいく日がきます。
ギリギリまで心の中では「ただの乳腺炎でした」
というような言葉を期待しています。

が、先生の言葉は。
「左右の乳房、ともにがん細胞がありました」というものでした。

左右両側同時のがん発症です。「そうだったか」。
かすかな期待は裏切られました。が、 呆然ぼうぜん とする私に、
たたみかけるように先生のご説明が始まりました。

私のがんは早期で、治癒が十分見込めること、両側に発生したことを考えると、
手術後も再発防止策をしっかり取ろうという事。手術は乳房温存で、
放射線治療とホルモン治療を組み合わせて対処しようということ。
丁寧に説明してくださって、30分後には、
「よし! 戦おう! 治すぞ!」という気持ちにさせてくださったのでした。

「これから長いお付き合いをしましょうね」。
先生のその言葉に、どれほど励まされたことか。
生きていてこそのお付き合い。長く生きてこその長いお付き合い。
信頼できる医師にめぐり会えた幸運を感謝せずにはいられませんでした。

いま、術後4年が経過して、5年間のホルモン治療もあと1年。
最後まで主治医の指示にしたがって、やるべきことをしようと思いながら日々を過ごしています。

また、早期に発見できたことで治療の負担が比較的軽くて済んだことを思うと、
ぜひみなさんにも検診を受けていただきたいという思いを強くする今日この頃なのです。

麻木久仁子(あさぎ・くにこ)
1962年、東京都生まれ。学習院大学法学部中退。テレビ、ラジオ番組で司会者、
コメンテーターとして活躍するほか、読書家としても知られ、本の紹介サイトHONZや新聞で書評を書いている。
2010年に脳梗塞を発症。12年には両胸に発症した初期の乳がんの手術を受け、現在もホルモン療法中。
講演会や取材などで闘病体験や検診の大切さを伝えている。2016年には国際薬膳師の資格を取得した。
2017-02-16
Health Press 提供

 
「日常生活支援度Ⅱ(認知症自立度Ⅱ)」と聞いて、
その言葉の意味を正確に説明できる人はどれくらいいるだろうか?

これは日常生活に支障を来すような症状や行動、
意思疎通に多少の困難などが見られても、
誰かが注意さえすれば自立できる状態を指す。

同じく「困難などがときどき見られ、介護が必要とする」状態が、
「日常生活支援度Ⅲ(認知症自立度Ⅲ)」と呼ばれている。

厚生労働省が2012年秋に公表した「認知症施策推進5か年計画/オレンジプラン」によれば、
上記の日常生活支援度Ⅱ以上の認知症高齢者数の将来推計は次のような数字を弾き出している

▶︎平成27(2015)年:345万人(10.2%/65歳以上人口比)
▶︎平成32(2020)年:410万人(11.3%/65歳以上人口比)
▶︎平成27(2025)年:470万人(12.8%/65歳以上人口比)

従来のわが国の高齢化問題は、その「進展の速さ」が問題視されてきたが、
一昨年(2015年)以降は「高さ=高齢者数の多さ」の問題へと転換したといわれる。

その転換年である2015が推計345万人であるのに対し、
東京五輪の2020年には「誰かが注意さえすれば自立できる」状態以上の人口が410万人! 
さらに、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達する2025年になると470万人!!

 それほど急激な増加が予測されるほどの深刻さだ。

認知症予防のための「脳トレ」は何歳から始めるべき?

脳が物事の善悪を理解したり、出来事を理解する機能は、
通常、80歳くらいまでは低下しないという。
一方、認知症は決して高齢者に限られたものではなく、
自覚がないだけで40代の人間でも脳は日々委縮をくり返している。

早い時期から脳を働かせる生活を心掛けるのは現代人の必須事項だが、
ではいったい、精神的な刺激となる日々の活動は、
幾つくらいまで有効性を発揮するものなのだろうか?

ある種の指標となるような研究報告が
『Journal of the American Medical Association(JAMA)』
(1月30日号)に掲載されたので紹介しておこう。

メイヨークリニックアルツハイマー病研究センター(米ミネソタ州)の
Ronald Petersen氏らの研究成果で、次のような具体的な活動を行なうことで、
70歳以上での加齢による認知機能低下リスクを低減できることが判明したというものだ。
コンピュータの使用で30%のリスク低下!

Petersen氏らは、メイヨークリニック加齢研究に参加した
「認知機能の正常な男女1900人超」を平均で4年間に渡って追跡調査した。
研究開始時点の男女対象者の平均年齢は「77歳」であり、
うち当該期間中に「450人超」が軽度認知障害(MCI)を発症している。

また、今回の研究は因果関係の証明をめざしたものではないが、
特定の精神的な刺激となる活動を定期的に行なうと、
記憶障害や思考障害のリスク低下が望まれることが判明した。

研究陣によれば、認知症やアルツハイマー病の遺伝的リスク因子である
「アポリポ蛋白(APOE)E4」を有する人にも役立つそうだ。

今回の研究で試みられ、リスク低減の効果が読み取れた
「精神的な刺激となる活動」の内容と割合は以下のとおりである。

▶︎コンピュータ使用により30%のリスク低下。
▶︎手工芸を行なうことで、28%のリスク低下。
▶︎社会活動に参加することで、23%のリスク低下。
▶︎ゲームを楽しむことで、22%のリスク低下。

70歳以上の人間がこれらの活動を週1~2回以上行なった場合、
月2~3回以下の例に比べて記憶力や思考力の低下が少ないという傾向がみられた。

<作業>ではなく<楽しみながら>が大事

一方、新聞や本を定期的に読む活動レベルでは、記憶力や思考力については
同様の「便益」が認められなかったというから、
やはり「日常習慣+α」の活動を盛り込まないとリスク低下は期待できないということか。

また、前述の「アポリポ蛋白(APOE)E4」の遺伝子リスク因子を有する層に関しては、
コンピュータ使用あるいは社会活動への参加という活動において、
認知機能低下の幾分かの保護効果が読み取れた。

「脳に良いトレーニングには、問題を発見し、
その問題解決のためにモノを動かすなどの、
さまざまなレベルの知的刺激が必要とされる。

しかしながら、これらの知的活動を毎日の決まった作業にしてしまっては意味がないし、
あくまでも楽しみながら行なうことが肝要である」(Petersen氏)

漢字・ひらがな・カタカナを器用に使いこなす日本人の場合、
脳トレの選択肢にもアドバンテージがありそうな気がするが、
そのあたりはどうなのか......。

特に問題集を広げるまでもなく、計算ならば日々の買い物時に合計金額を脳内で弾いてみたり、
財布と相談しながら小銭の使い道を思考する程度でも何もしないよりはいいようだ。
ボケのリスク低減は細やかな喜びからだろう。(文=編集部)
2017-02-07
Link de Diet 2017.2.6 , EurekAlert 

  
脳のコレステロール産生を抑制するように遺伝的に改変されたマウスは、
神経学的障害の劇的な症状を示すことを見出した、
という米国ハーバード大学医学大学院からの研究報告。

健康な脳は、神経細胞が成長して正常に機能するためには、多くのコレステロールが必要であるが、
研究チームは、糖尿病は脳内のコレステロール量を減少させる可能性があることを示唆していた。

今回の発見は、糖尿病において、アルツハイマー病の発症リスクが増加する理由を
説明するのに役立つかもしれない、と筆頭著者のヘザー・フェリス博士は述べている。

これまで科学者は、アルツハイマー病における脳コレステロールの役割を研究してきた。
その理由の1つは、コレステロールを運ぶAPOEというたんぱく質の突然変異が、
アルツハイマー病の最も強い遺伝的リスク因子であるため、とフェリス博士は指摘している。

星状細胞は、脳内の支持細胞の重要なクラスであり、
脳のコレステロールの大部分を生成すると考えられている。
本研究では、コレステロール合成のマスターレギュレーターである
SREBP2という遺伝子がノックアウトされたマウスモデルを作成した。

結果は著しいものであったという。
「正常なマウスと比較して、これらのマウスの脳は非常に小さく、
複数の行動異常がみられる」とフェリス博士は述べている。

「これらのマウスは学習や想起に問題があるだけでなく、巣作りなど、
他の通常の日常的な行動にも行えなくなるものがあるようだ」
と主任研究者のロナルド・カーン教授らは述べている。

「これらの影響のいくつかは、マウスのアルツハイマー病に似ていたが、
はるかに重症であったという点だけが異なっていた。」

奇妙なことに、マウスは、全身の代謝の変化、炭水化物の燃焼の増加、体重の低下なども示した。

「糖尿病とアルツハイマー病の関連についての研究は始まったばかりであるが、
コレステロールがメディエーターになる可能性がある」とフェリス博士は述べている。

他の研究チームは、低濃度のコレステロールではなく、
コレステロール濃度の上昇が脳障害と関連している可能性を示唆しているという。
「しかし、私たちのモデルは、臨床的により意味があると思われる。」

さらに、心血管系のコレステロール濃度を低下させる薬物は、
糖尿病や糖尿病関連疾患のある人に非常に有効であるが、
血液中のコレステロールは(脳関門があるために)ふつう脳に入り込めない。
そのためコレステロール代謝は脳内とそれ以外では大きく異なる、とフェリス博士は指摘している。

出典は『国立科学アカデミー論文集』。 (論文要旨)      
2017-02-07
Link de Diet 2017.1.30 , EurekAlert 


私たちが食事をするときにおこる代謝系および免疫系における栄養素と
細菌のせめぎ合いのメカニズムについてのスイス・バーゼル大学からの研究報告。

私たちが食べるときには栄養素だけではなく、かなりの量の細菌も取り込む。
体内では、摂取したグルコースを身体中に一斉に輸送することと、
これらの細菌と闘うことを同時行わなければいけないという課題に直面している。

細菌と戦うことで、健康な人では免疫系が活性化され、予防効果のある炎症反応が引き起こされる。
しかし、過体重の人では、この炎症反応が著しく低下し、糖尿病に至る可能性があるという。
それが、バーゼル大学とバーゼル大学病院の医師らによって今回初めて実証された。

2型糖尿病(または成人発症糖尿病)が様々な悪影響を伴う慢性炎症を引き起こすことはよく知られている。
したがって、多くの臨床研究では、このプロセスに関与するインターロイキン-1ベータ
(IL-1β)の過剰産生を妨げることにより、糖尿病の治療としている。
糖尿病患者では、このメッセンジャーが慢性炎症を誘発し、インスリン産生β細胞を死滅させる。

■免疫系の活性化

ところが、本研究によると、この炎症にはポジティブな側面がいくつかあるという。
健康な人では、短期間の炎症応答が、糖の取り込み、および、
免疫系の活性化に重要な役割を果たしているというのである。

研究チームは、食事中に腸周辺のマクロファージ(免疫細胞の一種)の数が増加することを実証している。
これらのいわゆる“スカベンジャー細胞”は、血液中のグルコース濃度に応じて、
様々な量のメッセンジャー物質IL-1βを産生する。

そして、IL-1βは、膵β細胞におけるインスリン産生を刺激する。
次いで、インスリンはマクロファージにIL-1β産生を増加させる。
インスリンとIL-1βは協力して作用し、血糖値を調節する。
また、メッセンジャー物質IL-1βの働きで、免疫系にグルコースが供給されて、免疫系の活性が維持される。

■細菌と栄養素

研究者らによると、代謝および免疫系におけるこのようなメカニズムは、
食事中に取り込む細菌と栄養素に依存しているという。
十分な栄養素があれば、免疫系は外来細菌と十分闘える。

逆に、栄養が不足していると、免疫反応は行わずに、
残っているカロリーを節約して重要な生命機能に備える必要がある。
このことにより、飢饉のときに感染症がより頻繁に起こる理由はある程度説明できるかもしれない。

出典は『ネイチャー 免疫学』。 (論文要旨)
2017-02-02
Link de Diet 2017.1.23 , EurekAlert 
  

毎日の食生活で亜鉛をさらに4mg摂ると、
感染症や病気と闘うのに役立つ細胞の健康に有利な影響をおよぼすことが見出された、
という米国オークランド 小児病院からの研究報告。

この量の亜鉛は、亜鉛強化米や亜鉛強化小麦のような栄養強化した作物を用いることで、
栄養不足の人々の食卓に加えることができるという。

研究チームは、食事中の亜鉛を適度に増やすと、
酸化的ストレスやDNA損傷が減少することを初めて示した。

亜鉛は身体の至るところにあり、生命を維持するのに不可欠な多くの機能を促す。
子供の成長を最適に維持し、免疫系の健康のためにも、重要な作用をする。
亜鉛は、体内の炎症や酸化ストレスを制限するのに役立つ。
これらの状態は、慢性心血管疾患やがんの発症に関連することが知られている。

世界中の多くの人々が、精白米や高度に精製された小麦粉やとうもろこし粉を食べている。
これらの食品はエネルギーを提供するが、亜鉛のような必須微量栄養素を提供しない。

亜鉛はおよそ3,000種類のたんぱく質に必須であり、
これらのたんぱく質が体内のどの細胞をどのように調節するかに影響する。
亜鉛が不足すると、DNAの摩耗や損傷を修復する能力が損なわれる。

研究チームは、6週間の無作為化比較試験で、DNA鎖切断を数えることによって、
亜鉛がヒトの代謝に与える影響を調べた。さらに、DNA損傷のパラメータを使って、
適度な量の亜鉛が健康におよぼす影響も調べた。

一般的には、血液中の亜鉛を調べる方法や、成長阻害や病的状態を用いる方法により、
亜鉛の状態が評価されているが、今回用いた方法は、そのような方法とは異なる新しいものであった。

ジャネット・キング博士によれば、このような結果は、
隠れた飢餓や栄養不良の影響を緩和する食品ベースの解決策の計画や評価にも利用できるという。
キング博士は、栄養成分強化が、亜鉛欠乏の解決策として、
維持できる長期的なものであり得ると考えている。



出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2017-01-31
読売新聞 2017年2月1日

[短命県から学ぶ健康]「健康教養」を踏まえる


「健康教養って何ですか」と聞かれます。私なりの健康教養を述べます。


日本人の死因の半数以上は、3大生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病)です。
健康教養の骨子は、まずは生活習慣病対策です。

 生活習慣病は、子供時代からの生活習慣
(喫煙、飲酒、肥満など)の蓄積(加齢)で発症します。

最初は、中間的な生活習慣病、つまり高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロール異常など)などです。
さらに、動脈硬化が進み、老化し、3大生活習慣病になります。メタボリックシンドロームの考え方です。

動脈硬化の進み方の違いが寿命の差につながります。
しかし、動脈硬化の測定は難しいので、関係が深い血圧で代用します。

動脈の中には血液がパンパンに詰まっています。そのパンパン度が血圧です。
動脈が硬くなると血圧が高くなります。ですから、血圧は健康長寿のキーワードです。
高血圧の怖さは症状が少ないままに体がむしばまれることです。

放置すると以下の健康被害が出ます。
〈1〉血管が破れる脳出血
〈2〉心臓のポンプ機能が弱まり、尿量が減り、顔や足がむくむ(浮腫)。肺にも水が 溜た まる
〈3〉腎臓の働きが落ち、尿たんぱくが出る。進めば人工透析
〈4〉動脈が傷つき、そこにコレステロールなどがたまり動脈硬化がさらに進行――。


加えて、高齢社会の現代では屋台骨(骨、筋肉、関節)が大切です。
これがボロボロになった状態(ロコモティブシンドローム)は、寝たきりにつながります。

骨は20歳前に完成します。骨強化には運動です。
骨は力が加わることで強くなります。
無重力状態では骨が弱くなるため、宇宙飛行士は宇宙で運動に励んでいます。

健康教養としてこのメタボとロコモを理解することが大切です。

 (中路重之・弘前大学教授)



2017-01-31
Link de Diet 2017.1.5 , EurekAlert より

  
新しい研究で、地中海式食事法を行った高齢者は,
そうでない高齢者に比べて3年間の経過期間の後、
より脳の容量が保たれている傾向があるようだと報告されている。

ただし、以前の研究で指摘されていたように、
魚介類の摂取が多く肉類の摂取が少ないことは
脳の変化にあまり関連していないようだということがわかったという。
エディンバラ大学の研究者らによる研究。

地中海式食事法は、多くの量のフルーツや野菜、オリヴ油、豆類、小麦やコメといった穀類と、
適度な量の魚介類、乳製品、ワイン、及び制限された肉類や家禽類を用いる食事法である。

加齢とともに我々の脳は萎縮することが知られており、
この萎縮によって記憶や学習に影響が出てくる事があるが、
地中海式食事法を遵守することによって、
このような脳の萎縮を抑制できるかも知れないというのだ。

つまり、地中海式食事法で脳の健康を良好に保てる可能性があるのである。

本研究では、70歳前後の967人のスコットランド人を対象に調査が行われた。
被験者は全て認知症の既往歴のないものである。
うち、562人が73歳前後でMRIによる脳の容積チェックを行い、
外部皮質と呼ばれる脳の外層の厚みを測定した。

この群の中から、401人が76歳時点で2度目のMRIチェックを行った。
これらの測定結果を、被験者がどの程度地中海式食事法を行っていたか
のデータと付き合わせて分析された。

被験者の地中海式食事法遵守率はそれぞれ異なっていた。
地中海式食事法を忠実に遵守しなかった人々では、より忠実に遵守していた人に比べて、
3年間での脳容積の減少具合が大きかったことがわかったのだ。

この食事法の差異は、総脳容積に対して0.5%の割合で関連することが判明していて、
この違いは一般的な加齢による脳萎縮の50%に相当すると推算された。

本研究の結果はまた、脳容積に影響をあたえうる交絡因子である年齢、教育レベル、
糖尿病や高血圧の有無を調整した後でも同様の結果が得られている。

また、灰白質容量(皮質の厚み)と地中海性食事法の間には相関性は見られなかった。

研究者らはさらに、魚介類の摂取量と脳の変化には関連性が見られないことも明らかにした。
以前の研究では、この間にも相関性が指摘されていたのである。
地中海性食事法のその他の要素や、あるいは全ての要素の集合が
脳容積の変化に関係している可能性が考えられる、と研究者は指摘する。

研究者らは、以前の研究では脳容積の測定をある一定の時点でしか測定していないが、
本研究では経時的に行っている事がポイントであると強調している。

また脳容量の測定以前の食習慣も検討されていることから、
食事法によって脳の長期的な保護効果を期待できる可能性があると述べ、
今後のより大規模な研究での根拠の蓄積が必要であるとまとめている。

出典は『神経学』。 (論文要旨)      
2017-01-24
Link de Diet 2017.1.24 , EurekAlert 


関節炎患者の高齢者は、機能的独立性を保つ為には運動を続けることが必要である。

高齢化社会においては運動所要量を満たしていくのは
気がくじけそうになるような量であることも事実であるが、
ノースウェスタン大学の研究者による研究で、
推奨運動所要量の3分の1の量であっても
関節炎患者にとっては有益であるようだと報告されている。

米国政府の運動所要量ガイドラインによれば、週当たり中強度運動を150分行う事が
早死や疾病リスク低減の為には有益であるとされているものの、
実際のところ、関節炎の高齢者ではこの基準を満たした運動量を維持しているのは、
米国ではたった1割に過ぎないという。

研究者らは、この基準量に圧倒されない程度の運動量で運動を少しでも推奨するために、
45分というマジックナンバーがこれらの層に有効な身体活動量を
保証できるかどうかについて検討を行った。

ほぼ3分の1の被験者が2年後の時点で機能改善もしくは高い身体機能の維持を維持していたが、
これらの被験者で最低45分間の中強度運動を少なくとも行っていたものに限定して検討すると、
それ以下の運動量だったものに比べて8割強のレベルで高い身体機能維持
もしくは改善が2年間で見られていることがわかったのだ。
この結果は男女ともに当てはまるものであった。

少なくとも、全く運動しないよりは、
少しの量でも運動した方が良いのである、と研究者は指摘する。

関節炎患者の高齢者で最低限度の身体活動量として
45分間の運動を行う事を目標にするのは、ガイドラインの推奨量を無理やり
満たそうとして動機付けを失ったり様々な弊害をもたらされてしまうよりは、
現実的に達成可能なゴールであると感じられるかもしれないのだ。

身体機能の維持が必要不可欠である高齢者を対象とした
身体運動のタイプと強度について検討したこの研究は、
これまであまり行われてきていない課題を対象とした貴重なものである。

もちろん、現行のガイドラインは重要であり、より多くの運動量が確保できれば、
原理的にはより高い健康効果を期待できるからだ。

しかしながら、より少ない現実的な身体活動量を当面の目標とすることで、
身体機能の保持増進を維持することは、
関節炎などの機能制限のある高齢者にとっての達成可能な
スタート地点であると言えるのである。


現行ガイドラインでは、中強度運動を150分、
少なくとも1回あたりの運動継続時間を10分とすることが
心血管性の健康を増進する上では推奨されると提示されている。

しかし本研究の研究者らは、より少ない運動量で
2年間の継続的な身体活動を行う事に
単純に効果性の有無が見られるか否かの焦点を置いているのだ。

研究者らは、機能的に独立した行動のできる可能性のある高齢者層を検討しており、
また、どのような種類の運動が実際の現場での機能維持や改善を推進するのか
といったことを見極めていくことについても関心を持っているという。

この様な観点では、軽度の運動よりもむしろ中強度運動、
例えばショッピングカートを押したりすることなどのような活動が、
将来的な機能改善を推進する上ではより重要であるということが明らかになったと報告する。

これまで、機能の維持改善が必要とされるような高齢者層の身体活動の強度について、
どの程度の達成を行うべきかについて系統的に検討された研究は存在していないと研究者は指摘する。

本研究では機能性に富んだ身体活動量計を用いる事で、
研究者らは全米1,600人の骨関節炎患者の高齢者の身体活動を検討した。
これらの患者は股関節やヒザ、脚部に疼痛や拘縮が見られる被験者である。

2年間での身体機能の保持増進にもっとも有効な種類の運動は
中強度運動であることには変わらないのだが、
その運動の継続時間はガイドラインが推奨するように最低10分以上行う事
というような条件を付けることはこれらの患者では
必ずしも必要ないのである、と研究者はまとめている。

出典は『関節炎治療と研究 』。 (論文要旨)      
2017-01-20
産経新聞 2017.1.20
「ロコモティブ症候群」防止へメーカー注力 栄養バランス改善食品 冷蔵総菜やドリンクも


高齢になり筋肉や骨などが衰え、運動機能に支障が出る「ロコモティブ症候群」
を防ぐための商品を食品メーカーが展開している。食が細くなり、
タンパク質など十分な栄養を取らなくなることが大きな原因とされ、
各社は手軽に栄養バランスを改善できる冷蔵総菜やドリンクを投入。
日常生活に制限のない「健康寿命」を延ばしてもらおうとアピールしている。

 ◆楽しみ増えた

名古屋市の西山君子さん(73)は、5年前に夫を亡くしてから1人暮らし。
以来、作り置きしたものを何日も食べることが多かった。
娘に勧められ、最近、週に1、2度食べているのが、
フジッコの冷蔵総菜「ベスタデリ」シリーズだ。

「グラタン」「ラザニア」など4種類。
冷蔵庫で1カ月保存でき、レンジで温めるだけ。
「グラタンは子供が小さいころよく作ったので懐かしい。
食事の楽しみが増えた」と気に入っている。

発売は平成25年。新しい殺菌システムを使い、
冷凍食品に比べ肉や野菜などの食感や風味を損なわないという。
28年にパッケージデザインを変更したのを機に、
高齢者向けに売り込んでいる。希望小売価格は409円。

◆気分を変える

入道知生ブランドマネージャーは「手間がかかるグラタンなどは自分で作るのは難しい。
ときどき献立に入れると、カロリーやタンパク質、脂質をうまく補える」と強調する。

同社のホームページでシニア向けの栄養改善をアドバイスしている
管理栄養士で医学博士の本多京子さんは
「ご飯とみそ汁などで簡単に済ませがちな高齢者は、
既製品の洋食をうまく取り入れると、気分が変わり食欲も増す」と話す。

 ◆少量で摂取

一方、味の素は27年に病院や介護施設向けに発売したパック入りの
ドリンクタイプの栄養補助食品「メディミルプチ ロイシンプラス」を、
28年からドラッグストアなどでも販売。
100ミリリットルでご飯1杯分の200キロカロリーを摂取でき、
タンパク質やビタミンなどを補給できる。店頭想定価格220円前後。

「食欲が衰えている人がしっかり飲みきれることが重要。
長年の研究を生かし、筋肉の組成に重要なアミノ酸の一種を強化した」
とニュートリションケアグループ長の山口敬司さん。

明治の「メイバランスMiniカップ」もドラッグストアなどで販売され、
26年の発売以来、売り上げは前年比30~50%増の勢いが続く。
持ちやすいカップ入りで、125ミリリットルで200キロカロリー。
希望小売価格248円。

若い人でも、時間がない朝などに栄養を補給するのにも最適と訴える。
「シニア向けのイメージをなくし、高齢者が抵抗感なく
日常の食事に取り入れ健康維持に役立ててほしい」
とメディカル栄養営業部の不二靖弘グループ長は期待する。

2017-01-13
読売新聞 2017年1月13日
「孤独感」を抱いているとアルツハイマー病に?

認知機能が正常な高齢者79人からのデータ

子どもが巣立っていったり、家族に先立たれたり、友達が亡くなったり...
好むと好まざるにかかわらず、年を取るにしたがって人は孤独にならざるを
得ない。年を取ると物理的、精神的な「孤独」との闘いが始まる。

そんな中、さらに追い打ちをかけるような研究成果が報告された。
「孤独感」を感じている高齢者の方が、アルツハイマー病(AD)発症前の
初期に出現する脳アミロイドの蓄積が多く認められると
米ブリガム&ウィメンズ病院の研究グループにより米医学誌
「JAMA Psychiatry」( 2016年11月2日オンライン版 )に発表されたのだ。

軽度認知障害よりもさらに前段階の症状か

脳アミロイドはアルツハイマー病発症前から蓄積が進むため
AD発病前の進行状態をはかる「目安」とされているが、
その蓄積が「孤独感」と関連することを示した初めての研究だという。

研究グループでは「孤独感はAD発症前に見られる神経精神医学的な
初期症状の1つの感情・行動変化である可能性がある」との見方を示している。

そこで今回、認知機能が正常な高齢者において、
孤独感と脳アミロイド蓄積との関連について調べた。
対象は、65~90歳(平均76.4歳)の高齢者79人。

PET検査で脳アミロイドイメージングを実施し、
孤独感は「交友関係が狭いと感じる頻度」「疎外されていると感じる頻度」
「周囲から孤立していると感じる頻度」の3項目についての自己評価してもらった。
これらの他、不安やうつ、社会的な付き合いや社会的活動についてもデータを収集した。

このうち22人がADリスクに関連するとされるAPOEε4遺伝子の保有者で、
25人でアミロイドの蓄積が見られた。
年齢、性、APOEε4遺伝子保有の有無、不安やうつ、社会的なネットワーク、
社会経済的地位などで調整して解析した結果、アミロイドが蓄積された高齢者では、
蓄積されていないの高齢者に比べ孤独感を抱く頻度が「時々」
または「頻繁」である確率が7.5倍だった。

また、年齢のみで調整したところ、確率は3.1倍となった。
さらに、アミロイドの蓄積量と孤独感との関連は、
APOEε4遺伝子の非保有者に比べ保有者で強かったとしている。

認知機能が正常な高齢者において、アミロイドの蓄積が孤独感に関連していた。
また、この関連はうつや不安、社会的なつながりなどで調整しても認められたと結論づけた。

同グループではさらに、「社会的な孤立感は、AD発症前の軽度認知障害(MCI)よりも
さらに前の段階で見られる初期症状の1つである可能性がある」との見方を示す一方、
「孤独感を抱いている高齢者ではアミロイドの蓄積が進む可能性もある」としている。
2017-01-12
Link de Diet 2017.1.9 , EurekAlert 


身体活動が不足した状態が長く続く場合、
専門家がいわゆる「座り病」と呼ぶような、
様々な健康上の問題を引きおこす。

実際のところ、この様な「座り病」は、
年間で320万人もの死者を全世界で産んでいると計算できるのだ。

医療関連専門職は、身体活動が如何に死亡リスクや心疾患リスクを、
とりわけ中年期の人々において低下させるのかについて、
数多くのデータを元に根拠を確立しつつある。

しかしながら、現在までのところ、高齢者の心疾患に関連した
死亡リスクと運動の有益性についての関連性はあまり検討されて
いないのが現状である。

『米国老人医学雑誌』に掲載された新しい研究で、余暇時間中の
定期的な身体活動がどの程度総死亡率を低下しうるのかについて、 
また心疾患による死亡率も低下しうるのかどうかについて検討を行ったという報告。

この様な高齢者の身体活動を検討するために、
研究者らは65~74歳の2,465人の男女のデータを分析した。
このデータは1997年から2007年にかけてフィンランドで行われた
国民健康調査に参加した被験者のものを用いている。

被験者は喫煙や運動習慣を含む生活習慣についてのアンケートに回答した。
さらに被験者の教育レベル、身長、体重、血圧とコレステロール値についての情報も収集されていた。

研究者らは、本研究の被験者について2013年の段階まで追跡調査を
した。次いでフィンランドの死亡者登録システムにアクセスして、
何人の被験者がこのうち死亡していたのか、
またその死因はなんであったのかを分析した。

結果、中強度の運動を行っていた被験者は、
高強度運動をおこ案っていた被験者とともに、
心疾患や総死亡リスクの低下と関連性が見られ、
総死亡リスクの中には脳卒中や心臓発作による死亡リスクの低下も含まれていた。

これはつまり、身体活動が何らかの方法で
被験者の健康増進に寄与していたことを示唆するデータである。
運動は健康的な体重を維持し、血栓リスクを低下し、
血糖レベルを安定させるのに有益だったと考えられるのだ。
さらに、コレステロールの善玉悪玉比率も健康的な方向に改善されていた。

すでに身体活動レベルが中強度以上の運動を行う習慣がある場合には、
健康状態に有益な作用をもたらしうるという上では十分な状態であると研究者は指摘する。

もしも現状座業中心の生活をしていて、
日々の散歩を適当に行おうというくらいの改善を今後していこうと努力するならば、
健康状態は有意に改善し、心疾患リスクも低下することが期待できるのだ。

いずれにしろ、身体活動による健康効果は高齢者にも期待出来るという裏付けとして
本研究の成果を考慮に入れていくことができるだろう。

出典は『米国老人医学会雑誌』。 (論文要旨)      

2017-01-10
Link de Diet 2017.1.5 , EurekAlert 

  
新しい研究で、地中海式食事法を行った高齢者は,
そうでない高齢者に比べて3年間の経過期間の後、
より脳の容量が保たれている傾向があるようだと報告されている。

ただし、以前の研究で指摘されていたように、
魚介類の摂取が多く肉類の摂取が少ないことは
脳の変化にあまり関連していないようだということがわかったという。
エディンバラ大学の研究者らによる研究。

地中海式食事法は、多くの量のフルーツや野菜、オリヴ油、豆類、小麦やコメといった穀類と、
適度な量の魚介類、乳製品、ワイン、及び制限された肉類や家禽類を用いる食事法である。

加齢とともに我々の脳は萎縮することが知られており、
この萎縮によって記憶や学習に影響が出てくる事があるが、
地中海式食事法を遵守することによって、
このような脳の萎縮を抑制できるかも知れないというのだ。

つまり、地中海式食事法で脳の健康を良好に保てる可能性があるのである。

本研究では、70歳前後の967人のスコットランド人を対象に調査が行われた。
被験者は全て認知症の既往歴のないものである。
うち、562人が73歳前後でMRIによる脳の容積チェックを行い、
外部皮質と呼ばれる脳の外層の厚みを測定した。

この群の中から、401人が76歳時点で2度目のMRIチェックを行った。
これらの測定結果を、被験者がどの程度地中海式食事法を行っていたか
のデータと付き合わせて分析された。

被験者の地中海式食事法遵守率はそれぞれ異なっていた。
地中海式食事法を忠実に遵守しなかった人々では、
より忠実に遵守していた人に比べて、
3年間での脳容積の減少具合が大きかったことがわかったのだ。

この食事法の差異は、総脳容積に対して0.5%の割合で関連することが判明していて、
この違いは一般的な加齢による脳萎縮の50%に相当すると推算された。

本研究の結果はまた、脳容積に影響をあたえうる交絡因子である年齢、
教育レベル、糖尿病や高血圧の有無を調整した後でも同様の結果が得られている。

また、灰白質容量(皮質の厚み)と地中海性食事法の間には相関性は見られなかった。
研究者らはさらに、魚介類の摂取量と脳の変化には関連性が見られないことも明らかにした。

以前の研究では、この間にも相関性が指摘されていたのである。
地中海性食事法のその他の要素や、あるいは全ての要素の集合が
脳容積の変化に関係している可能性が考えられる、と研究者は指摘する。

研究者らは、以前の研究では脳容積の測定をある一定の時点でしか測定していないが、
本研究では経時的に行っている事がポイントであると強調している。

また脳容量の測定以前の食習慣も検討されていることから、
食事法によって脳の長期的な保護効果を期待できる可能性があると述べ、
今後のより大規模な研究での根拠の蓄積が必要であるとまとめている。

出典は『神経学』。 (論文要旨)      
2017-01-03
産経新聞 2017.1.3
がんや認知症、アトピーに人工知能を活用 
創薬・ケアまで初の統合解析 理研が4月から大規模実験

人工知能(AI)を使ってがんや認知症などの治療データを大規模に解析し、
患者ごとに最適な医療を提供するための実証実験を
理化学研究所が4月に開始することが分かった。

医療機関や製薬企業と連携して治療や創薬などを
総合的に進める国内初の試みで、平成32年の実用化を目指す。

実験は東京大や大阪大、慶応大の各病院など全国20~30の医療機関と、
製薬やヘルスケア分野の約10社が参加。
病気はほかに鬱病、発達障害、統合失調症、アトピー性皮膚炎、
自己免疫疾患、関節炎などを当面の対象とする。

医療機関が蓄積してきた数万人規模の治療データのほか、
数百人の患者に小型センサーを装着し日常の運動や心拍、睡眠などを計測。
これらの膨大なビッグデータを理研が新たに開発したAIで解析し、
一人一人の患者に最適な投薬や検査、介護法を見つけ出す。

理研のAIは自ら学んで理解を深める「深層学習」という機能に加え、
複雑な解析を高い精度で高速に行う独自方式を導入。
症状の推移を予測して予防法を見つけることも可能という。

解析結果に基づき製薬企業は新薬を開発。
ヘルスケア企業は日常の健康管理や食生活、運動などの提案を患者ごとに行う。

AIは治療法の選択などで利用が始まっているが、
治療から創薬、健康管理までを一体化した取り組みは国内初という。
患者は自分に最適な医療を統合的に受けられる利点がある。

薬の効果は個人差が大きく、がんやアルツハイマー病では標準的な薬が効かない患者も多い。
その人に合った薬を探す遺伝子検査も行われているが、
ストレスや食生活などによって効き目は変わるため、
日常生活のデータを含む大規模な解析が求められていた。

理研の実験はがんや精神疾患、免疫病など幅広い病気を対象とするため、
炎症など多くの病気に共通する問題を横断的に調べ、
対処法を迅速に見つけられる。

2017-01-02
いきいき快適生活
読売新聞 2016年12月30日
安心・シニア
転倒防止に筋トレと杖

つま先上げ下げ 歩幅広く


年齢を重ねると筋肉の量が減り、平らな場所でもつまずいたり、転んだりしてしまう。
冬は骨折も多い。転倒しない歩き方を身に付け、心配な人は 杖つえ の使用も考えよう。

12月中旬、東京都豊島区で日本姿勢と歩き方協会(東京)の正しい歩き方講座が開かれた。
参加した同区内の主婦(54)は、「体力に自信があったのに、
50代を過ぎてつまずくようになってしまった」と話す。
講師の大矢万里子さんは、「着地した足のつま先が上がっていないためにつまずいてしまう。
特に、すねの筋肉が衰えると転ぶ原因になります」と指摘する。

転ばないようにと、足元を見ながら足裏を引きずるように歩いていては、かえって転倒の原因になる。
正しく歩くポイントを押さえることが大事だ。
まず、前の足はつま先を上げ、かかとから着地する。
後ろ足はつま先で地面をしっかり蹴る。

「できるだけ歩幅を広くして歩く習慣を身に付ければ、
運動量が増え、筋力アップにもつながります」と大矢さん。
室内でも、筋力を鍛える運動をするとよいという。
「筋肉は何歳になってもつく。日常の心がけが大事です」

日本整形外科学会骨粗 鬆しょう 症委員会によると、骨折が最も起こりやすいのが冬場だ。
転んで手をついたために骨折する人も。委員会アドバイザーで鳥取大学教授の萩野浩さんは
「厚着になって動きにくくなることや、屋内との気温差で血圧が変動し、
ふらつきが起こりやすくなるのも要因」と分析する。

大腿だいたい 骨を折って寝たきりになるケースも多く、
特に高齢者は転倒に注意しなければならない。

少しでも不安を感じたら、杖の使用を考えたい。
日体大総合研究所所長の武藤芳照さんは「杖を使えば足にかかる力を分散でき、
無理なくきれいに歩ける。転倒予防に最適な道具だ」とすすめる。

杖の長さ「身長の半分+3センチ」

使い始めるタイミングは、片足立ちをした時によろめく状態が数か月続き、
さらに日常生活でつまずきやすくなったなど、心配に思うエピソードが重なった時だ。
青信号の間に交差点を渡りきれなかったり、
駅でホームと電車の間をまたぐのに不安を感じたりした時にも考えたい。

ただし、合わない杖を使うと逆に転ぶこともあるので、杖選びは慎重に。
長さは身長の半分プラス3センチ程度が目安だ。
直立した状態で地面から手首の付け根までの長さがよい。
先端はゴムでしっかりカバーされているものを選ぶ。

間違う人が多いのだが、杖を持つのは悪い方の足とは反対側の手だ。
例えば、右足が痛い場合は左手に持ち、右足を踏み出すと同時に前へ杖をつく。
選び方や使い方は専門店やリハビリテーションの理学療法士などに聞くとよい。

「痛いままで無理して歩いていると反対側の足が痛くなり、さらに、腰や肩まで痛くなる。
早めに杖を買い、万一の時に使えるようにしておきましょう」と武藤さんは話している。
2016-12-27
産経新聞 2016.12.27

高齢者の血糖下げ過ぎ注意 脳卒中などリスク上昇、主治医と相談を


野田光彦・埼玉医大教授

糖尿病は、血糖が高い状態を放置すると全身の動脈硬化が進み、
目や腎臓などに重い合併症が出る恐れがある。
そのため、血糖を下げることが治療の基本となる。

しかし近年、特に高齢者で下げ過ぎのマイナス面が明らかになってきた。
専門学会が高齢者向けに柔軟な血糖管理の目標値を発表するなど新しい動きが出ている。

目標緩和

血糖の管理には、過去1~2カ月の平均血糖値を反映する「HbA1c」と呼ばれる指標(単位は%)が使われる。
一般成人患者が合併症を防ぐには、これを7%未満に抑えるのが望ましいとされている。

日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が平成28年5月に公表した、
65歳以上の高齢糖尿病患者の血糖管理目標も、基本は変わらない。

だが、例えば75歳以上で特定の薬を使用している人の目標値は「8%未満」に緩和。
さらに、これよりは下げないという下限値(7%)も設けたのが特徴だ。

背景には、血糖を下げ過ぎると高齢者にはかえって有害な場合がある
との研究が、内外で増えてきたことがある。

国内では高齢患者千人余りを13年から平均6年追跡した「J-EDIT」研究が有名だ。
研究を率いた東京都健康長寿医療センターの荒木厚内科総括部長らがデータを詳細に解析した結果、
HbA1cが7~8・4%だと脳卒中の発症は少ないが、
それより低くても高くても発症リスクが上がることが示された。

7%未満だと重症の低血糖が増えるとの研究もある。

SU薬

重症低血糖とは、意識を失うなどの重い症状を伴う低血糖のことだ。
「この発作を起こした人は、心筋梗塞やさまざまな病気のリスクが増えることが明らかになってきた」
と野田光彦埼玉医大教授(内分泌・糖尿病内科)は解説する。

特定の薬、例えば「スルホニル尿素(SU)薬」という飲み薬や
インスリン注射を使用している高齢者は
重症低血糖になりやすいことが分かっており、注意が必要だ。

国立国際医療研究センター(東京)などの研究班が
17~25年の糖尿病患者4500人余りの薬を調べたところ、
SU薬やインスリンの使用は、若い患者より高齢患者に多いことが分かった。

分析を担当した虎の門病院(東京)の本田律子健康管理センター医長は
「高齢患者は長く患った結果、血糖管理に強力な薬が必要な場合が多い。
それを反映しているのでは」と話す。

その後新薬が登場し、SU薬の使用は減ってきたとみられるが、
厚生労働省の調査でも糖尿病患者に占める高齢者の割合は7割に迫る。
注意すべき患者は意外に多い可能性がある。

抵抗感

一方、長年の努力で血糖を低く抑えてきた高齢患者の中には、
目標値の緩和を受け入れにくい人もいるという。
野田さんを主治医として10年近くインスリン注射を続けてきた70代後半の男性もそうした一人。

7%未満を保ってきたHbA1cを「もう少し高くても大丈夫ですよ」と促されても
「今まで頑張ってきたのに」と戸惑いが強かった。
約半年かけてインスリンを徐々に減らし、最近は7%台で落ち着いているという。

「真面目に頑張るタイプの人ほど意識を変えにくい。
高齢者は個人差が大きく一律の正解はないが、
75歳以上でSU薬やインスリンを使っている人は、
一度主治医と話し合ってみるとよいのでは」と野田さんは勧める。

自分の薬がSU薬かどうかは医師や薬剤師に尋ねれば分かる。

インターネットでは国立国際医療研究センターのサイト「糖尿病情報センター」

(http://dmic.ncgm.go.jp/)なども役に立つ。

2016-12-15
読売新聞  2016年12月15日

体の「冷え」なぜ起こる


自律神経の乱れが原因


体の「冷え」に悩む人にとって、これから 憂鬱ゆううつ な季節だ。
とくに女性に目立つ冷え。どういった状況で起こるのだろうか。

寒い屋外などにいると、手足の先が冷たくなり、全身が震えてくる。
東京有明医療大学教授で内科医の川嶋朗さんは
「これは、体の中心を守るため、人体に備わっている機能です」と話す。

体温が奪われてくると、手足の毛細血管が収縮して熱の発散を抑える。
一方、筋肉を震わせることで熱を作る。
いずれも、心臓など重要な臓器の温度を下げないための自衛策だ。

そんな屋外から暖かい屋内に入ると、毛細血管が広がってポカポカしてくる。
ところが、冷え性の人は手足が冷たいままだ。なぜか。
川嶋さんは「自律神経が正しく働いていないためです」と説明する。

体の機能が正常なら、寒い場所では交感神経の働きで血管が収縮し、
暖かくなると副交感神経が働いて血管を拡張させる。
人体はこの切り替えで体温を保っている。
冷えはストレスや生活習慣の乱れなどで、
この切り替えがうまくいかない時に起こる。

熱を生み出すのは主に筋肉。
女性に冷え性が多いのは、男性より筋肉量が少ないためだ。
無理なダイエットが冷えを悪化させることもある。

近年広がる低体温化も冷えを助長している。
「日本人の平均体温はこの半世紀で1度近く下がった」と川嶋さん。
〈1〉エアコンの多用で体温調節機能が低下
〈2〉交通機関の発達などによる運動不足
〈3〉コンビニエンスストアが各地に広がり、
冷たい飲食物を口にする機会が増えた

――ことなどが要因だという。

「体の冷えは、現代文明が引き起こした現象ともいえます」

冷えは体に様々な悪影響をもたらす。
血行が悪くなり、酸素や栄養が十分に行き渡らなくなる。
老廃物も排出しにくくなり、だるさなど体の不調を招く。
さらには体温が下がって免疫が低下し、代謝も悪くなるので、
病気になりやすくなるという研究結果もあるという。

毎食たんぱく質を

冷えを改善するにはどうするか。川嶋さんは
「外から体を温める、体内で熱を作りやすくする、の2点に取り組んで」とし、
膝の上に湯たんぽを置くなど、具体的な工夫を提唱している。

一方、管理栄養士の小山浩子さんは「筋肉をつくるたんぱく質を
毎食、とって」と食生活の見直しを訴える。

例えば、朝食では卵料理やヨーグルト、チーズを添え、
和食なら、納豆や生卵、焼き魚などを一緒にとる。
みそ汁も大豆のたんぱく質がとれる。

糖質や脂肪を効率よくエネルギーに変えるビタミンB群も積極的にとりたい。
豚肉や乳製品、大豆に多く含まれている。
ニンニクやネギはビタミンB群の働きを助けるとされる。
また、唐辛子やカレー粉なども、適度に使えば体温を上げる。

生野菜のサラダは水分が多く、体を冷やしがち。
この時期は冬野菜のダイコンやカボチャ、サツマイモなどを蒸し、
温かくして食べるのがよい。

「ショウガをすり下ろし、ドレッシングに混ぜるのも」
と小山さんはすすめる。
2016-12-14
産経新聞 2016.12.14
74種のレシピを紹介「クローン病・潰瘍性大腸炎の安心おかず」 腸に優しい食事療法のコツ


腸の粘膜に原因不明の炎症が起き、下痢や腹痛などの症状が出るクローン病と潰瘍性大腸炎。
その患者のために、腸への負担が少なく満足感が得られる74種のレシピを紹介した
「クローン病・潰瘍性大腸炎の安心おかず」(女子栄養大学出版部刊、1404円)が出版された。

著者の料理研究家で栄養士の田中可奈子さんは、息子のクローン病発症をきっかけに、
脂質と食物繊維が少ない献立を工夫して最初のレシピ本を平成26年に出版、好評を博した。

続編となる今回は1人暮らしの若い患者も作れるようにと、
主菜と副菜を一つの鍋で同時に仕上げる方法や、
作り置きおかずの活用法なども盛り込んだ。
2016-12-13
飽和脂肪は健康に良い?!
Link de Diet 2016.12.5 , EurekAlert 

  
半世紀以上に渡り唱えられてきた
「脂肪、とくに飽和脂肪はほとんどの人にとって不健康」
とする説に疑問符が投げかけられた。ノルウェー・ベルゲン大学の研究。

今回、加工度の低い炭水化物や脂肪による健康効果は、
非常に似ていることがわかったという。

この研究で行われた無作為比較試験では、腹部肥満を持つ男性38人を対象にして、
高炭水化物食(脂質エネルギー比30%・糖質エネルギー比53%) または
高脂肪食(脂質エネルギー比73%・糖質エネルギー比10%。
脂肪の半分は飽和脂肪)を12週間摂ってもらった。

そして心血管疾患の多くの鍵となる危険因子とともに、
腹部・肝臓・心臓の脂肪量を正確に測定した。

「総脂肪摂取量および飽和脂肪摂取量が非常に多くても、
推定される心血管疾患のリスクは上昇しませんでした」と
研究者であり心臓専門医のニガルド医師は話す。

「高度の高脂肪食を摂っていた参加者にも、
たとえば異所性脂肪(肝臓や骨格筋への脂肪蓄積)、
血圧、血中脂質、インスリン、血糖といった
複数の重要な心臓代謝危険因子においてかなりの改善がみられました」

<高品質の食品は、より健康的>

上記の両群は、エネルギー、たんぱく質、高度不飽和脂肪酸の摂取量や
食品のタイプは同様にし、添加する砂糖の量は最低限に抑えた。

「私たちは、新鮮で加工度が低く栄養価の高い食品に富み、
健康的な食生活における、総脂肪と飽和脂肪の健康への影響を見ました。

この食生活には、小麦粉を主成分とした製品の代わりに、
たっぷりの野菜と米が用いられています」と、
共著者のベウム氏。「脂肪の供給源も、加工度の低いものです。
おもにバターやクリーム、低温圧搾された油などです」

なお、今回の総エネルギー摂取量は正常範囲内としている。

共著者のボルゲ氏は「私たちの発見は、
健康的な食生活の最重要の原則が脂肪または炭水化物の量でなく、
食品の質であることを示しています」としている。

<飽和脂肪は「善玉コレステロール」を増やす>

飽和脂肪は、血液中で「悪玉コレステロール」を増やすことで
心血管疾患を促進すると考えられてきた。

しかし、今回の研究は他の大部分の類似の研究と比較して、
LDLコレステロールの有意な増加を見出すことはなかった。
むしろ善玉コレステロールは、高度な高脂肪食においてのみ増加した。

「脂肪の質が良好であり、かつ総エネルギー摂取量がさほど高くない限り、
ほとんどの健康的な人にとって
飽和脂肪の摂取量が多くても問題ないであろうことを、これらの結果は示しています。
それは、健康的とさえいえるかもしれません」ニガルド医師は述べている。

共著者のダンケル准教授は、「今度の研究で、どういった人々が
飽和脂肪の摂取量を制限する必要があるのかについて調べなければなりません。

しかし、高品質の脂肪を食べることによって推定される健康リスクは、
非常に誇張されてきました。
公衆衛生上、小麦加工製品や高度に加工された脂肪、
砂糖を添加した食品を減らすように勧めることが、
より重要であるかもしれません」としている。

出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-12-02
栄養療法:ビタミンとミネラルの違い

ビタミンは中毒を心配する必要はほとんどないが、
ミネラルは簡単に中毒が起こる。

ビタミンは有機化合物、ミネラルは無機化合物

ビタミンとミネラルとは、どちらも微量栄養素という点では同じですが、
違う点が2つあります。

その1つは、ビタミンは有機化合物なので生物によってつくられ、
燃やすと炭酸ガスと水になることです。
ミネラルは無機化合物で、土や石にも含まれています。

もう1つの相違点は、ビタミンは中毒を心配する必要はほとんどないが、
ミネラルは簡単に中毒が起こるので気をつける必要があるということです。

ビタミンの場合、その最低必要量と中毒になる限界点との差が大きく開いているため、
ビタミンA,D,Kを除けば、少々とりすぎても中毒の心配はまったくといっていいほどありません。

ところが、ミネラルは、ちょっと多量にとっただけで中毒になるものがほとんどです。
たとえばセレンというミネラルは、欠乏症を治す必要量の10倍の量で中毒症状があらわれます。

鉄も過剰にとると胃腸障害を起こします。
カリウム、胴、亜鉛なども過剰にとると問題が生じます。

ガン予防に効果があると評判のゲルマニウムも同様です。
ゲルマニウムには欠乏症などないため必要量もなく、あるのは中毒量だけです。

効果がはっきり証明されていないものには手を出さないほうが賢明です。
ただカルシウムだけは、余分にとっても吸収される量が
厳重にコントロールされているので中毒の心配がありません。
(「あなたに必要なビタミンを教えます」より)

安田和人・帝京大学医学部教授は、ビタミン剤投与の臨床効果に関する研究をしている内科医で、
日本臨床生理学会、日本ビタミン学会、日本臨床栄養学会に所属し、政府の委員会などでも活躍。

「栄養療法」に興味のある方は、安田教授の著書を読まれることをお薦めします。


あなたに必要なビタミンを教えます  安田和人 かんき出版
2016-12-02
栄養療法:「ビタミン」と「酵素」の違い

酵素とビタミンの大きな違いは、酵素が肝臓の働きによって体内でつくられるが、
ビタミンは体内でつくられないこと。
酵素とは、食べ物の消化も含めて、
体のなかの物質が化学的に分解したり合成したりするのを助け、
スピードを速める物質です。

酵素とビタミンとの大きな違いは、酵素がその重要な部分が肝臓でつくられるのに、
ビタミンは体内ではつくられないことです。
といっても酵素も、体の中で細かい部品まで作られるわけではありません。
まず遺伝子が下す命令にしたがって、肝臓で酵素の前段階のアポ酵素がつくられます。

次に摂取されたビタミンが体内で加工され、酵素の部品として働く補酵素となり、
その補酵素がアポ酵素と結合して、正常な働きをもったホロ酵素が出来上がります。
アポ酵素には酵素としての働きはないので、その分だけ酵素が足りないのと同じです。

ビタミンが欠乏すると、部品不足のためアポ酵素はできてもホロ酵素は作られなくなります。
そのために生理機能に狂いが生じ、ビタミン欠乏症になったり、さまざまな病気になったりします。

肝臓が正常に働いていても、もしビタミンが不足するとアポ酵素の割合が増え、
体の中はホロ酵素は足りないのに、アポ酵素はたっぷりある状態が起こります。
すると肝臓は、「もうアポ酵素はつくらなくてもいいんだ」とさぼりだし、
今度はアポ酵素の量も減ってしまいます。

そうなるとビタミン剤をのんでも速やかに酵素が作られず、
欠乏症の回復が遅れるので、要注意です。
(「あなたに必要なビタミンを教えます」より)


安田和人・帝京大学医学部教授は、ビタミン剤投与の臨床効果に関する研究をしている内科医で、
日本臨床生理学会、日本ビタミン学会、日本臨床栄養学会に所属し、政府の委員会などでも活躍。

「栄養療法」に興味のある方は、安田教授の著書を読まれることをお薦めします。


あなたに必要なビタミンを教えます  安田和人 かんき出版
2016-12-02
解毒作用とミネラル

肝臓と腎臓の解毒作用を助ける最も重要なものが、
ミネラルという栄養素であると、私は考えています。

ミネラルとは水素、酸素、炭素、窒素、ヘリウムなどの希ガス以外の元素の総称です。
そして現在のところは、イオウ、リン、塩素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、
マグネシウムのほか、鉄、亜鉛、胴、マンガン、コバルト、ヨウ素、フッ素、
セレン(セレニウム)、クロム(クロミウム)、モリブデン、ニッケルなど
18種類ほどが人体に必要なミネラルであるといわれています。

ミネラルの研究は、世界的にみてもまだ進んでおらず、
今後たくさんの働きが解明されると思います。
しかし、これまでの研究でも、ミネラルは人体諸器官の細胞内外の構成成分となり、
酵素やホルモンや細胞の働きを助け、いろいろな物質が細胞の内と外を移動するのを
調節する機能があることがわかってきています。

それらの研究成果から類推すると、ミネラルが肝臓や腎臓の解毒システムに
大きな役割を担っていることはほぼ間違いないと思われます。

ミネラルは尿、消化液、汗とともに排泄されるために、
栄養素として毎日の食事から補給する必要があります。
不足すると皮膚、毛髪、爪の新陳代謝の低下を引き起こします。

私の経験では、ミネラルを十分に補給している人は、
例外なく毛髪や爪の伸びが速くなります。
したがってミネラルは毛髪と爪による解毒も促進すると考えてよいでしょう。
(「Dr.とおの”新”医学」より)


「Dr.とおの”新”医学:医者が知らない・教えない 病院に行かないための8章
星野十   エイル・パブリッシュング
2016-12-02
山崎正利・帝京大学薬学部教授による講義です。
「長生きしたければファイトケミカルを摂りなさい」(河出書房)も出版されています。

 食品と健康の話題になると、これまでは糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの栄養素に、
食物繊維をプラスした6大栄養素をもって語られるのが一般的でした。

しかし、それらに含まれていないにもかかわわらず、ファイトケミカル(非栄養素)が
古くからなぜ食べ継がれてきたのかを調べるため、
ファイトケミカルの約9割を占めている野菜や果物などの植物性食品について研究を行いました。
この新しい学問を、食品と薬理学を融合させた言葉を使って、独自に「食理学」と呼んでいます。

栄養素は多くても100種類程度、しかしファイトケミカルは
ざっと1万種類くらいになるだろうと考えられます。
学問としての栄養学が確立されて現在まで約100年経ちますが、
私たちはまだ食品成分の一部(約10%)しかわかっていないということです。

医学・薬学と食べ物のかかわりも重要です
。病院などでよく「脂肪や砂糖は少なめに」などとアドバイスされるように、
人間の健康や寿命と食べ物は関係があり、従来の栄養学(栄養素)だけでは
説明できない深い意味合いをもっていることを理解しなくてはなりません。

このようなことを踏まえて、私たちは研究をはじめ、栄養素が体の素材を作り、
生存に必要なエネルギー源を作るのに対し、ファイトケミカルは抗酸化作用、
免疫系制御、解毒酵素誘導など、健康に重要な効果をもたらすことがわかってきました。


赤血球を持たない動物は、イカやタコをはじめとしてたくさん存在します。
しかし、地球上の全動物で白血球を持たない動物は存在しません。
その意味において、白血球は、健康面で話題になりやすい赤血球より
重要度が高いと考えても自然だといえるでしょう。

ファイトケミカルは、その白血球を構成する要素のひとつ、
マクロファージを活性化することがわかりました。

全動物の保有するマクロファージは、体内に侵入した異物を次々に食べてしまう性格が特徴で、
例をあげれば喫煙者の真っ黒な肺の中で必死に活動して肺ガンを防いでいるのもそれなのです。

そして、白血球が作りだす生理活性物質(通称サイトカイン。
免疫をつかさどるホルモンのような物質)の中には、TNF(腫瘍壊死因子)があります。

TNFはマクロファージとの関係も深く、その働きは、ガンを殺す以外に、
ウイルスやバクテリアなどの病原体を排除する作用、傷を治すために炎症を起こす作用、
組織を修復する作用、発熱・睡眠・痛み・食欲などをコントロールする作用など、
多種多様な役割をになっています。

たとえば、風邪などの感染症のときだるくて眠くなるのは、
TNFが睡眠を誘導しているからです。

これらの働きをになう白血球が正常に機能しないと、病気が発症します。
いいかえれば、白血球をいつもよい状態にしておくと、病気を防ぐことができるわけです。
そのためにも、ファイトケミカルは必要とされています。


ガン予防のための国家プロジェクトであるデザイナーフーズ計画がスタートしたのは、
1990年アメリカ合衆国でのことです。さまざまな分野の研究者が世界中から参画し、
「どんな植物性食品がガンを予防する可能性が高いか」の選定をした結果、
トップグループに掲げられたのは、
含硫化合物などのファイトケミカルが効力を発揮していると思われる
ニンニク、キャベツ、カンゾウ、ショウガ、セロリといった淡色野菜でした。

さらに、私たちが研究した結果において、果物におけるファイトケミカルの多い順を示すと、
キウイ>バナナ>グレープフルーツ>マンゴー>ブドウ>オレンジ>パパイヤ>
パイナップル>リンゴ>メロン>イチジク>スイカ>ナシ>モモの順でした。

モモはキウイの6分の1でした。
そして、バナナは黒い斑点のついた熟しすぎた状態の方が、
ガン抑制効果が強く、白血球の活性を一段と高めることもわかりました。

また、ガンを誘発する活性酸素や、発ガン物質に含まれるプロモーター(タバコに含まれる成分など)
に対抗するのは、抗酸化物質や抗プロモーター物質といわれるもので、
これらの物質は両方ともファイトケミカルに含まれています。

ほかにも、人間の体内では、変異した細胞やガン化した細胞も生まれていますが、
それらは私たちの知らない間に白血球を中心とする免疫機構によって
取り除かれていると一般に考えられています。

つまり、ファイトケミカルによってマクロファージをより活性化させ、
ガン細胞をどんどん取り除くという対策もあるのです。


アレルギー性疾患の症状改善に有効な植物性食品として、
シソとショウガを最初に発見したのは私たちでした。

薬に比べれば、即効性や特効性は弱いといえますが、食べ物の中でその作用は傑出しています。
作用は薬以上にマイルドであり、極端な摂り方をしなければ、
服薬で起こる副作用のようなダメージは体にないと思われます。

そして、さらなる私たちの研究によって、
アレルギー症状にかなり有効性が高いと確認できたもののひとつに、
緑茶があります。

そもそも炎症の慢性化が起こると、その刺激によって組織がダメージを受け、
組織を構成するひとつひとつの細胞の遺伝子もダメージを受けてしまいます。
遺伝子がダメージを受ければ、正常細胞はガン化し、
病気としてのガンの発症にもなりかねません。

こうしたメカニズムを考えても、炎症を短期で抑えて長期化させないことが大切であり、
日常的に緑茶を飲むことは、それを可能にするという意味で非常に有効だと思われます。


ファイトケミカルは安定的な物質が多いので、加熱調理でも生のままで食べても問題ありません。
通常は野菜(350g/日)、果物(200g/日)を摂れば十分だと思われます。
必要に応じて、目的にあわせたサプリメントで補充するのもよいでしょう。

野菜は、淡色野菜は免疫力を強める潜在能力が強いという事実はありますが、
当然のことながらビタミンなどの栄養素も人間には大切なため、
緑黄色野菜もきちんと摂る必要があります。

他方、「果物はカロリーが高い」という印象を若い女性はもっているようですが、
これは大きな誤りです。1日200gという果物の量を忠実に守って食べた場合、
1日に必要な栄養素の所要量のうち、果物だけでビタミンC51%、ビタミンA20%、
カリウム18%などを摂取できてしまいます。
しかし、そのエネルギーは1日の所要量のたった5%にしかなりません。

ファイトケミカルの摂取については、忘れてならないのは
10年、20年という長期間で摂取する必要があるということです。

これを続けるか否かによって、動脈硬化、糖尿病、ガンなどになりやすい、
なりにくいといった将来的な健康面の差として表われてきます。
このことは生死の分岐点にもなりかねないので気を配る必要があるといえます。

山崎教授の「ファイトケミカルを摂りなさい!」
http://diet.goo.ne.jp/member/topics/0411_no2/d1.html
2016-12-02
Link de Diet 2016.11.28 , EurekAlert 


カルシウムとビタミンDが不足しているリスクの高い人や骨粗鬆症の治療を受けている患者に対して、
カルシウムとビタミンDサプリメントの利用は、エビデンスから支持できるが、
心血管リスクに対するエビデンスは不十分であるようだ、
という英国サウサンプトン大学などからの研究報告。

骨粗鬆症、骨関節炎、筋骨格疾患の臨床および経済面に関する欧州学会(ESCEO)、
および国際骨粗鬆症財団(IOF)の専門家コンセンサス会議で、
健常な筋骨格老化において、ビタミンD補給を伴うときと
伴わないときのカルシウム補給に関するエビデンスがレビューされた。

「このレビューでは、健常な筋骨格老化、特に骨折リスクの軽減に対して、
カルシウム補給の効能、特にビタミンD補給との併用に関連する、
現在の知識を包括的に評価することを目的としていた。

相反する報告があり、医療従事者、患者、一般の人々の混乱を招いてきたので、
補給により、健康に良くないアウトカムをもたらされるとするエビデンスに
取り組むことが重要であると考えた」とルネ・リッツォーリ教授は語っている。

現在のエビデンスに基づいて、専門家パネルは次のように結論した。

1. カルシウムとビタミンDの補給により、骨折は緩やかに減少するが、
カルシウムのみの補給は強くは支持できない。

2. 骨折軽減に対するカルシウムおよびビタミンD補給のエビデンスは、
カルシウム、ビタミンDの少なくとも一方が不足しているリスクが
最も高い可能性がある患者において、最も安定している。
集団ベースの介入では、説得力のある効果が実証されていない。

3. カルシウムは筋肉生理に密接に関与しているが、最善の臨床エビデンスでは、
カルシウム補給ではなく、ビタミンDの最適化が、転倒のリスクを減らすことを示唆している。

4. カルシウム補給は、消化管副作用、および腎結石のリスクのわずかな増加と関連している。

5. ビタミンD補給も伴い、カルシウムを摂ると、心血管リスクを増加させるという主張は、
不十分なエビデンスに基づくものである。いくつかの研究において、
心血管系における逆の効果、または効果がないことが示されている。

6. この点を最終的に明らかにするには、骨折と心血管イベントを検出するように、
カルシウム補給の大規模な無作為化比較試験が必要になる。

7. 現在のエビデンスに基づき、カルシウムとビタミンDの不足のリスクが高い人、
および骨粗鬆症の治療を受けている人に対して、
カルシウムおよびビタミンDの補給は一般に適切であると推奨する。


「骨粗しょう症による骨折は一般的であり、
骨や筋肉の量と機能を失うことは、深刻な健康状態の原因となる。
国によっては、50歳からの事故による骨折の生涯リスクは、
女性では2人に1人(50%)、男性では5人に1人(20%)になるという。

骨粗鬆症による骨折は生命にも関わり、
実質的な障害や病的状態を引き起こすだけでなく、
骨折のない患者と比べて、生存がおよそ20%低下することにも関連する。

したがって、カルシウムとビタミンD補給の役割は、
個人だけでなく、医療システムや社会全体にも大きな影響を与える、
深刻な健康アウトカムを考慮して評価されるべきである。」とサイラス・クーパー教授は語っている。

出典は『国際骨粗鬆症学』。 (論文要旨)
2016-11-29
Link de Diet 2016.6.1 , EurekAlert 


前炎症性メディエーターの放出を減らして慢性炎症のリスクを低下させるのに
効果的な食品を調査した英国リバプール大学からの研究報告。

本研究では、致命的な慢性炎症を防ぐのに役立つ食品を確認したという。

炎症は、体内で自然に起こるが、経過がよくなかったり、
長引いたりすると、疾患プロセスの原因となる。

炎症が制御できないと、がん、心臓病、糖尿病、
アルツハイマー病など多くの主要な疾患にも関わる。

果物や野菜の豊富な食事でポリフェノールを摂ると、
加齢に関連する炎症や慢性疾患から保護されるといわれている。

ポリフェノールは我々の食事に豊富な微量栄養素であり、
がんや心血管疾患などの変性疾患の予防における役割が、すでに知られている。

ポリフェノールは、摂取量とそのバイオアベイラビリティに応じて、
健康に影響を与える。

T細胞、つまりTリンパ球は、私たちの体を循環する白血球の一種であり、
細胞異常や感染症を見張っている。

T細胞は細胞シグナル伝達分子(サイトカイン)を助け、
サイトカインは免疫応答において細胞間コミュニケーションを助けたり、
炎症、感染、外傷の部位に細胞を移動させたりする。

サイトカインは、果物や野菜を摂ることで調節される。

リンパ球によるサイトカイン放出の調節において、
様々な(ポリ)フェノール類の相対的な効力については、ほとんど知られていない。
そこでシャン・リチャードソン、クリス・フォード博士らは、
ポリフェノールの様々な効力を調べたという。

「この研究の結果は、タマネギ、ウコン、赤ブドウ、緑茶、アサイベリー由来の(ポリ)フェノールが、
慢性炎症のリスクのある人で、前炎症性メディエーターの放出を減らすのに役立つ可能性を示唆している」
とリチャードソンは述べている。

「高齢者は慢性炎症などの影響を受けやすく、
イソラムネチン、レスベラトロール、クルクミン、バニリン酸、
またはこれらの生物活性分子をもたらす食物源を摂り、
食生活を補うことが有効であるだろう。」

出典は『英国栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-27
読売新聞 2016年11月28日
[心に栄養](3)影響し合う脳と腸


「脳腸相関」という言葉をご存じだろうか。
脳と腸は影響し合い、腸が健康だと脳も健康になるという考え方だ。

近年の研究で、腸内細菌群が腸を介して脳に影響を与え、
脳も腸を介して腸内細菌群に影響を与える可能性が指摘されている。

脳のストレスが腸に影響することを端的に示すのが、
満員電車に乗る度に腹痛が起こったりする過敏性腸症候群だ。
腸管には問題がないのに、緊張する場面で腹痛や下痢が起こったり、
便秘や腹部膨満感が続いたりする。
この病気の患者は、成人の10~15%にも上ると言われている。

この患者は、腸内細菌のバランスが乱れている例が多いことも知られるようになった。
国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部部長の 功刀くぬぎ 浩さんは
「過敏性腸症候群の患者の腸内では、ビフィズス菌などの善玉菌が減っていたり、
クロストリジウムなどの悪玉菌が増えていたりするという報告がある。

腸内細菌のバランスが乱れると、腹痛などが起こりやすくなり、
それが強いストレスとなって、腸内細菌のバランスが
更に乱れる悪循環に陥ると考えられる」と話す。

腸内細菌の状態は、うつ症状にも関係する可能性がある。
乳酸菌やビフィズス菌を1か月間摂取した人は、
摂取していない人と比べて、うつや不安などが明らかに減少したという報告がある。

ストレスだらけの日常を健やかに過ごすには、
乳酸菌を含む発酵食品をきちんととることが大切だ。
功刀さんは「食物繊維やオリゴ糖など、
善玉菌の栄養となる食品の摂取も心がけてほしい」と話す。(佐藤光展)
2016-11-26
産経新聞  2016.11.27
【脳を知る】
脊髄の病気 部位によって症状はさまざま


朝晩の冷え込みが強くなり、インフルエンザが猛威を振るう季節もすぐ近くまでやってきました。
この季節は体調を崩しやすいので皆様十分ご自愛ください。

今回は脊髄の病気についてお話をさせていただきます。
足がしびれたり痛みを感じたりすると腰椎の病気、
手の指先がジンジンしびれると頚椎の病気、
と思っている方、半分は正解です。

感覚や運動の中枢は脳にありますので、
脳から手足までの経路のどこが障害されても
手足のしびれや運動障害の原因になります。

神経の伝達は中枢(脳)から末梢(まっしょう)に向かっていきますので、
頚椎が悪い場合は手だけではなく足にも症状が出る可能性があります。
逆に腰椎だけが悪い場合には手の症状が出ることはありません。

あと見落とされがちなのが胸椎(胸髄)の病変です。
あまり耳慣れない言葉かもしれませんが
頚椎と腰椎の間の部分を胸椎と言います。
首でも腰でもなく、「背中」と言った方がわかりやすいかもしれません。

腰椎や頚椎に比べて病変になる頻度が少なく、
慣れていないと胸椎病変に目が届かないこともあるようです。
数件の病院を経て診断に至った患者さんも少なくありません。

胸椎は肋骨(ろっこつ)で体幹と固定されているので
腰椎や胸椎と比べて安定しています。
そのため椎間板ヘルニアのような負荷が蓄積されて起こる疾患が少ないのです。

しかし血流に乏しい部分であるため一旦症状が出ると進行が早く、
症状が強いことが多いのも特徴です。

先日「足に力が入りにくくてしびれる」という訴えで病院を受診した患者さんが
胸椎病変であることを的確に診断された先生に当院を紹介いただきました。

本来直接繋がっていない動脈と静脈がつながり血流に異変をきたす     
「脊髄(せきずい)硬膜(こうまく)動静(どうじょう)脈瘻(みゃくろう)」という病気でした。

動脈の方が圧が高いので静脈に過剰な圧がかかり、
本来の静脈の働きを果たすことができずに流れが滞ってしまい、
脊髄にはれをきたします。

この患者さんは胸椎でこの変化があり、足の症状が出ていました。     
きちんと診察されずに「足の症状だけだから」と
腰椎の検査だけで終わっていれば診断に至っていなかった可能性もありました。

先日手術を受けていただき、無事に元の血流を取り戻しました。
杖(つえ)なしでは歩けなかったのですが、
手術翌日から何の支えもなく歩けるようになり、
この記事が出る頃には退院されていると思います。

手術をしたのは私ですが、初診で診断をつけた先生のファインプレーだと思います。
腰が悪いと思っていても実は胸椎や頚椎の病気である可能性があります。
手足の症状でしっくりこない方は一度、脳神経外科で診察を受けてみてください。

 (済生会和歌山病院 脳神経外科 医長 三木潤一郎)

2016-11-22
産経新聞 2016.11.22
【技あり!ほねつぎの健康術】
(15)「ながらトレ」で若々しく


高齢になると、筋力の低下により膝や腰の痛みなどの症状が出ることがあります。
思うように歩けない、少しの段差でつまずくなど、動くことが苦痛になりがちです。

また、パソコンやスマートフォンの普及で、
若い人が猫背の前傾姿勢で歩く姿も多く見かけます。

年齢に関係なく、背筋をしっかりと伸ばして歩く姿は若々しく見える要素です。

日頃から意識して筋力トレーニングを心がけ、楽しいセカンドライフにしましょう。

筋トレと聞くと苦手意識を持つ人もいるかもしれません。
そうした場合は日常生活のちょっとした時間を有効に使いながら行う
「ながらトレーニング」を心がけてみてください。

まず、胸を張って目線は少し遠くを見る感じで立ちます。
このとき、お尻とおなかに力を入れるだけでも筋肉を使うことになります。

その姿勢を保ちつつ歩くと、歩幅が広くなります。
太ももの筋肉に作用し、膝の保護にもなります。
また、腕を大きく振ることにより上腕筋のトレーニングにもなります。

ただ歩くのではなく、各動作を意識することで、より効果を得られます。

歯磨きのときのスクワットや信号待ちでのかかと上げ、
テレビを見ながらの腹筋など、
自分にあった方法を探してみるのも楽しそうですね。

毎日楽しく無理なく行う、
「ながらトレーニング」の積み重ねは
健康と若さにつながると思います。

(新田綾)
                   ◇

問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475
2016-11-21
Link de Diet 2016.11.21 , EurekAlert


アルツハイマー症患者の日常的な身体活動パタンは健常者のものと異なり、
中強度運動の身体活動量が少ないこと、
また、健常者では活動量がもっとも高くなる朝の時間帯に、
患者群では逆に、より低い傾向が明らかに。

日内変動を理解する事によって早期アルツハイマー症患者の身体活動や睡眠状態を改善する介入を
朝の活動にターゲットを絞ることによって変えられる可能性が期待される。

高齢者にとっては、身体活動は認知症やアルツハイマー症などの認知的減退を防ぐ上での
予防壁となり得る可能性があるにもかかわらず高齢になれば成るほど
身体的な活動生が低下する人たちは圧倒的に多いのが現状だ。

身体活動は脳機能の維持改善にとっても重要であり、
身体活動性が高い人はアルツハイマー症リスクが低いことも知られている。

すでにアルツハイマー症に罹患した人であっても、
身体活動は機能改善や症状の進行を緩め、
疾患に伴う焦燥感や徘徊、睡眠不足などを減らすのに有益である可能性がある。

現在までのところ、アルツハイマー症の罹患初期における身体活動パタンについてはあまり研究されていない。
例えば、症状の進行そのものが日常的な身体活動の低下においてどのような影響をもたらしているのかについて、
信頼できるデータが十分に存在していないのである。

この問題の背景としては、年齢層が研究対象として困難な場合が多いということが挙げられている。
活動的ではないから身体活動を行う割合が少なくなっているという風に大部分は考えられているが、
本研究の示唆するところでは、初期のアルツハイマー症患者であっても
支援さえあれば十分に活動できる余地があるのだ、と研究者は指摘する。

研究者らは、体活動量計を用いて、早期アルツハイマー症患者と健常者の身体活動を測定し検討を行った。
これまでの研究では、身体装着型の活動量計を 用いた計測では、毎秒毎にデータを収集していた。
しかしながら収集されたデータは全てを用いるのではなく、
データの総計を一つのスコアとしてその人の活動量を表すのに用いていたのだ。

本研究では、身体活動の一日を通じた変化量を検討している。
こうすることによって、介入を活動量に応じて変化さえるのに役立ち、
また睡眠サイクルの中断などについても理解を深めることが可能になったのだという。

研究では、92人の被験者を対象に1週間、体活動量計(アクチグラフGT3X)を
装着してもらい検討を行った。

結果、アルツハイマー症患者の日常的な身体活動パタンは健常者のものと
異なっている事がわかったのだ。アルツハイマー症患者は中強度運動の
身体活動量が少ないが、それは日内変動に関連していた。

朝の活動量は一般に健常者ではもっとも高くなるが、この時間帯の活動量が
患者群でより低い傾向が見られたのだ。その事がさらに介護者や認知症を
支援しようとする人々の活動にも影響を与えていることが示唆された。

研究者らは、これらの知見を元に、日内変動を理解する事によって
早期アルツハイマー症患者の身体活動や睡眠状態を改善する介入を
朝の活動にターゲットを絞ることによって変えられる可能性を期待した。

これらの患者にとって有益な活動は、単に近所をウォーキングで歩くというような
簡単なことから始められるという。研究者らの過去の研究では、
高齢者が歩行しやすい地域環境の有益性が指摘されている。

ウォーキング活動がいちばんリスクが低く、安全で、誰にでもでき、
特殊な準備も必要なく、どこでも行えるというような点で
もっとも優れた身体活動である、と研究者は言う。

ストレッチングや太極拳、日常の家事やガーデニングなど、幾つもの
軽度な運動は存在しており、そのどれもが身体活動という点では有益だ。

アルツハイマー症患者はジムに行く必要があるわけではなく、
単純に日常的な活動量を増やし、連続して座ったままでいるような時間を
少なくしていくだけで良いのである。

早期アルツハイマー症患者では、身体活動性が低下することの原因として
認知的減退によって道に迷ってしまったりすることに対する恐れがある、
と研究者は言う。

そのために、これらの患者を積極的に身体活動を行えるように促すこと
それ自体がかなりの障壁を抱えてしまうのである。しかしながら、
初期の段階では十分に身体活動ができる能力が維持されているので、
それを利用しなければますます症状が進行してしまうことになってしまう。
そこでできるだけ身体を活動的にする戦略を立てる必要があるのだ。

研究者らは、今後より大規模の被験者集団を用いて
さらなる検討を行っていくことにしている。
これによって、日中と就寝中の身体活動のデータを集積し、
より多くの検討を加えていくことができる様になる。

睡眠様態が日中活動とどのように関連しているかなどについて明らかになってくれば、
さらなる戦略の構築にも繋がりうることが期待される。

出典は『アルツハイマー病学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-20
読売新聞 2016年11月21日

[心に栄養](2)鉄分不足で産後うつも


心を健康に保つ栄養素として、ビタミンと共に欠かせないのが、
代表的なミネラルである鉄分だ。

鉄は、血液中で酸素の受け渡しを担うヘモグロビンを作るのに欠かせない。
不足するとヘモグロビンの働きが弱まり、全身に届く酸素の量が減って鉄欠乏性貧血が起こる。

脳機能も影響を受ける。横になる度に、脚に痛みやかゆみなどの不快感が生じる
「むずむず脚症候群」が引き起こされ、睡眠障害に陥る人もいる。
更に、焦燥感や集中力低下、興味・関心の低下などのうつ病に似た症状が表れることもある。

鉄は、レバーや赤身肉、魚などに含まれるが、月経のある女性は特に不足しやすい。
30~40歳代の女性の場合、血液中のヘモグロビン値が低い人は20%を超えるとみられている。

出産後にうつ症状が表れる「産後うつ」の中にも、
鉄不足が関係する例があると考えられている。

国立精神・神経医療研究センター疾病研究第三部部長の 功刀くぬぎ 浩さんは
「産後うつはホルモンバランスの変化や環境要因など様々な原因で生じ、
鉄不足も原因の一つと考えられる。
鉄の補充だけで産後うつがすっきりと治る例は多くはないが、
血液検査を行い、調べてみる意味はある」と話す。

体内の臓器には鉄分をためる機能があり、
鉄不足が続くと、蓄えられている貯蔵鉄の量がまず減っていく。

貯蔵鉄の量は、血液中の「血清フェリチン値」を調べる検査で分かる。
鉄は過剰に摂取すると、臓器に悪影響を与えて健康を損なう。
適量を見極めるためにも、この検査は有用だ。

ただ、一般的な健康診断の検査項目には入っていない。
希望する人は医師に相談してほしい。
2016-11-17
Link de Diet 2016.11.8 , EurekAlert 

  
成人期(若年・中年期と高齢期それぞれ)において、
果物と野菜を沢山食べることは、
定期的な運動と組み合わせることで、より良好な認知機能につながり、
認知症の発症を遅らせる可能性があるようだ、というヨーク大学からの報告。

ヨーク大学のアリーナ・コーエン博士研究員らの研究チームは、
カナダの地域健康調査(2012年)において、
対象者(年齢30歳から80歳)45,522人の横断データを調査した。

正常体重、過体重において(肥満ではない)、
毎日10サービング以上の果物と野菜の摂取は、
良好な認識機能との関連が認められた。

中等度の運動が付加されると、
5サービング未満の摂取でもより良好な認識機能を報告したという。

より高レベル身体活動の者では、
毎日の果物と野菜の高摂取とより良好な認識成績との関連にリンクされた。

より高いBMI指数、身体活動レベルの低さ、
果物・野菜の低摂取の者は、より弱い認識機能と関連していた。

先行研究では、若年成人と高齢成人の両方において、
身体活動と果物と野菜の摂取と、
それらが脳に与える影響との関連に関し、ほとんど調査していなかった。

運動不足の割合の上昇、肥満率の上昇が認められることから、
研究者らは、リスク因子のクラスターと認知機能低下との関連があるかどうか、
ライフスタイル要因が認知機能の予防と遅延に
どのように役立つ可能性があるかについて知りたかったという。

出典は『公衆衛生雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-17
読売新聞  2016.11.17

 
冬場になると、入浴中に突然死する人が増えます。
「ヒートショック」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
寒い脱衣所と温かい風呂との温度差によって、
心筋梗塞や脳卒中が引き起こされやすくなるためですが、
それには血圧が関係しています。

暖かい部屋から寒い脱衣所へ移動して裸になると、
体の熱を逃さないように血管が収縮して血圧が上がります。

そのまま、浴槽の熱い湯に急に入ると、
熱い湯が皮膚を刺激し急速に体を覚醒させようとし、
その結果、血管がさらに縮み血圧が急上昇します。

しかし、しばらくお湯につかっていると体が温まり、
今度は血管が拡張、血圧は急速に低下していきます。
ところが、浴槽から出て体を洗うときには、寒さで再び血圧が上がってしまいます。

このように、短時間のうちに、血圧が高くなったり、低くなったり、
変動を繰り返すことで、血管に大きな負担がかかっているのです。
その結果、心筋梗塞や脳卒中の発作を起こしやすい環境が生まれてしまうのです。

とはいえ、冬のお風呂は心身ともにホッとできる大切な時間ですね。
次のことに注意すれば、入浴中の発作の予防につなげることができます。
急激な温度環境の変化を避けることが重要なのです。

まずはお湯の温度を高くしすぎないこと。
お湯の温度は40度を目安に抑えめにしてください。
入浴前にヒーターや暖房などで脱衣室や浴室を温めておき、
お湯との温度差を小さくすることも効果的です。

また、飲酒の直後は血圧が低くなっています。
熱い湯によって血圧が急上昇してしまいます。入浴を控えた方が安心です。
冬の寒い日に外出から帰宅した直後も、体が冷えており、
お湯との温度差が大きいため、一休みしてから入浴しましょう。

(オムロンヘルスケア 医学博士 宮川健)
2016-11-15
Link de Diet 2016.10.18 , EurekAlert 
  

高齢者が、身体の障害等によって自立できない状態で過ごす時間は、
健康的な生活習慣によって短縮できる可能性がある、
という米国ハーバード大学などからの研究報告。

高齢者が日常生活(例えば、食事、身支度、トイレ、ベッドや椅子から立ち上がること、
入浴、家の周りでの散歩)を支援なく行えれば、当然ながら、生活の質の向上を享受できることになる。

研究チームは、人生の後半で健康的な生活スタイルを送ることが、
余生において、高齢者の自立を制約する障害とともに過ごす時間を短縮できるかどうか検討した。

研究者らは、『心血管健康研究』に登録した65歳以上の参加者5,888人の情報を検討した。
そして、25年間にわたって、参加者の健康や生活習慣を調べ続けた。

この研究の男性の参加者は、終末期に障害を伴う期間がほぼ3年間、
女性は4.5年間であった、と研究者らは報告している。

研究者らは、特定の生活習慣が、
人々が身体に障害をもって生活する時間の長さに
影響を与えるかどうかを疑問に思ったという。
そこで検討した習慣は、つぎのものである。

・喫煙
・飲酒
・適切な体重の維持(低体重または過体重であることと比較)
・健康的な食事
・運動
・社会的なつながりを保つ
・適切な社会的支援の確保

研究者らは、本調査から、重要な新しい情報を知ることができたという。
いくつかの因子が、終末期に障害の期間が長くなることと関連しているようであることを報告した。
その因子とは以下のようなものであった。

・喫煙

・活動的でないこと(週ごとの歩行距離(市街ブロック数)の多かった人は、
少なかった人に比べて、障害を経験する年月が少なくなった。
25ブロック多くなるごとに、健常で過ごせる年月がわずかずつ長くなった。)

・不健康な食事

・低体重または肥満

出典は『米国老人医学会雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-14
Link de Diet 2016.11.8 , EurekAlert 

  
成人期(若年・中年期と高齢期それぞれ)において、果物と野菜を沢山食べることは、
定期的な運動と組み合わせることで、より良好な認知機能につながり、
認知症の発症を遅らせる可能性があるようだ、というヨーク大学からの報告。

ヨーク大学のアリーナ・コーエン博士研究員らの研究チームは、
カナダの地域健康調査(2012年)において、
対象者(年齢30歳から80歳)45,522人の横断データを調査した。

正常体重、過体重において(肥満ではない)、
毎日10サービング以上の果物と野菜の摂取は、良好な認識機能との関連が認められた。
中等度の運動が付加されると、5サービング未満の摂取でもより良好な認識機能を報告したという。

より高レベル身体活動の者では、毎日の果物と野菜の高摂取とより良好な認識成績との関連にリンクされた。
より高いBMI指数、身体活動レベルの低さ、果物・野菜の低摂取の者は、より弱い認識機能と関連していた。

先行研究では、若年成人と高齢成人の両方において、
身体活動と果物と野菜の摂取と、それらが脳に与える影響との関連に関し、
ほとんど調査していなかった。

運動不足の割合の上昇、肥満率の上昇が認められることから、
研究者らは、リスク因子のクラスターと認知機能低下との関連があるかどうか、
ライフスタイル要因が認知機能の予防と遅延に
どのように役立つ可能性があるかについて知りたかったという。

出典は『公衆衛生雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-14
読売新聞  2016年11月14日
元気なう
[心に栄養](1)ビタミンDと葉酸


身体の不調は心に影響する。
脳や体が元気になる栄養素をしっかりとって、
心を元気にしよう。

心に良い栄養素として、専門家が真っ先に挙げるのがビタミン類だ。
中でも、ビタミンDや葉酸は、うつ病との関連が複数の研究で指摘されている。

ビタミンDは、皮膚に存在する物質「プロビタミンD」に紫外線が当たると
作られる。日に当たる機会が減るこれからの季節は、特に不足しやすい。

冬季の日照時間が著しく少ない地域では、
春先にかけてうつ症状に悩む人が増える。

「こころに効く精神栄養学」などの著書がある国立精神・
神経医療研究センター疾病研究第三部部長の 功刀くぬぎ 浩さんは、
冬季のうつ症状について「ビタミンD欠乏が関係するという説が有力。

ビタミンDには、脳内の神経伝達物質の働きを良くしたり、
脳を保護したりする働きもあると考えられている」と話す。

そこで重要になるのが、食事からのビタミンD補充だ。
ビタミンDは、キノコ類や魚介類に多く含まれている。

ホウレンソウに豊富な葉酸もビタミンの一種で、
うつ病の予防効果や治療効果が注目されている。

葉酸の欠乏で起きる病気は、貧血などが知られているが、
葉酸はドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の合成にも関係する。
不足するとうつ病のリスクが高まると考えられている。

うつ病患者は健康な人と比べて、
血液中の葉酸値が低い傾向にあるとする研究もある。

葉酸は納豆やレバーにも多い。
市販のサプリメントもうまく活用して、
葉酸を適度に摂取していこう。
2016-11-10
Link de Diet 2016.11.1 , EurekAlert


高齢者には、強すぎない運動を種々度々行うことが最も良いようだ、
という米国コロンビア大学からの研究報告。

“多ければ多いほど楽しいが、汗をかきすぎてはいけない”は、
高齢者にみられる心疾患関連の死亡を防ぐのに役立つ身体活動や
運動の価値を分析して得られた基本的な考え方である。

つまり、過度にではなく、複数の種類の活動に度々参加することに、
保護価値があるという。

本研究では、人々が余暇時間に参加する身体活動がもつ多くの利点のいくつかについて、
さらに、身体活動が心血管の健康とどのように関係するか、検討された。
研究チームは、調査結果が、高齢者が活動的で健康的であるために、
より具体的なカウンセリングを提供する助けとなることを期待している。

研究チームは、様々な民族から、脳卒中のない3,298人に関する情報である、
集団ベースの『北部マンハッタン研究(NOMAS)』のデータを分析した。
NOMASは、脳卒中のない集団において、心臓の健康に関与する医療や
社会経済的要因および他のリスク因子を評価するために設計された。

1993年から2001年に、参加者は、調査のために募集されたとき、
平均69歳であった。その後毎年、参加者は電話でインタビューを受けた。
この分析では、参加者の全体的な健康、1週間において活動的であった頻度、
様々な多くの趣味がどれだけあったか、どのくらいのエネルギーをこのような活動に費やしたか
(努力と持続時間の比(EDR))、を考慮した。

参加者は、散歩、ジョギング、ハイキング、ガーデニングや庭仕事をしたか、
エアロビクス、サイクリング、テニス、ゴルフ、スカッシュに参加したか、
またはウォータースポーツをしたかどうかを尋ねられた。

このデータは、余暇で身体活動に定期的に参加することが度々あれば、
特に、高齢者集団において心関連の死亡を減らすのに役立つという証拠を与えるものである。
様々な種類の活動の多くに参加することが、全面的に有効であることが見出された。

「多くの様々な活動に参加する能力を持つことが、心肺フィットネスに、
より強く関連している。このことは、私たちのアウトカムすべてにおいて、
保護効果がみられた理由を説明するかもしれない。」
と筆頭著者のイン・キュン・チャンは説明している。

激しい身体活動を伴う運動を頻繁に行った高齢者のグループでは、
心臓関連の死亡率が高いことが発見された。

「今回得られた結果は、高強度の運動を高頻度で行うと、
心血管死亡率の面で、頻繁に運動することの有効性を打ち消してしまうことを示唆している」
とチャンは述べている。

「日々の余暇で低強度の身体活動への参加のしやすさを考えると、
この結果は、これが高齢者に勧めている現在の推奨に組み入れることを示唆している。」

出典は『一般内科学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-11-07
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年11月8日

[ビタミンK]骨のたんぱく質を良好に保つ役割


ビタミンKは脂溶性のビタミンです



ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。
水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質を持つもので、
ビタミンB群及びビタミンC等がこれに当たります。

一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油(脂)に溶けやすいもので、
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがこれに当たります。

ビタミンKは、けがをした際に自然に血が固まるなどの正常な血液凝固に必要なビタミンとして発見されました。
凝固のことをドイツ語で“Koaguration(コアギュレーション)”といい、
その頭文字のKを取ってビタミンKと命名されました。

天然に存在するビタミンKには、ビタミンK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)があります。
ビタミンK1は植物に由来するもので、緑黄色野菜、海藻、緑茶、植物油等に含まれています。

一方、ビタミンK2には14種類の化合物がありますが、日常的に食事から摂取するものは、
納豆菌に由来するメナキノン-7と動物性食品に由来するメナキノン-4です。

フィロキノンやメナキノン-7は、生体の中で活性型のメナキノン-4に変換された後、
効果を発揮すると考えられています。

ビタミンKの生理作用

ビタミンKは血液凝固や骨の形成に関与するたんぱく質の活性化を助けるはたらきがあります。
血液凝固におけるビタミンK依存性のたんぱく質は、
プロトロンビンをはじめとする血液凝固因子とよばれる複数のたんぱく質です。
 

一方、ビタミンKは、骨の形成に必要なビタミンでもあります。
骨の形成過程ではコラーゲン等の骨の土台を作っているたんぱく質にリン酸カルシウム等のミネラルが沈着しますが、
このミネラルの沈着には骨に存在するオステオカルシンというたんぱく質が重要な役割を果たしています。

ビタミンKはこのオステオカルシンを活性化してカルシウムとの結合を促すはたらきがあります。
骨が硬いけれどしなやかなのは、たんぱく質が土台となってそこにカルシム等のミネラルが沈着しているからなのです。

他方、ビタミンKは、骨を形成する骨芽細胞において、
骨の主要なたんぱく質であるコラーゲンの合成を促進するはたらきもあります。
また、ビタミンK2の特異的な作用として、骨吸収の抑制作用が報告されています。
 

その他、ビタミンKは、動脈に存在するビタミンK依存性たんぱく質を活性化して、
動脈の石灰化を抑える働きも報告されています。

ビタミンK摂取量と骨密度および骨折の関係

ビタミンKの摂取量と骨代謝の関係については、大規模な観察研究があります。
日本人においては、主に納豆から摂取するメナキノン-7の摂取量が多いほど、
大腿骨の骨折率が低いことが報告されています。

また、欧米における大規模観察研究においても、ビタミンK1の摂取量が多いほど、
大腿骨の骨折率が低いことが認められています。

一方、高齢女性においてビタミンKが不足気味な栄養状態では、
不活性型のオステオカルシン(低カルボキシル化オステオカルシン)が増加し、
大腿骨の骨折リスクが高まることが報告されています。

このように、ビタミンKは、骨密度を高めるというよりは、
骨折の発生率を低下させるという報告が多くあります。
これは、ビタミンKが骨のミネラルの沈着を促進するというよりは、
骨のたんぱく質の質を良好に保つはたらきがあるためと考えられています。

現在日本では、1日の摂取目安量が1mg前後のメナキノン-7を含む
納豆やメナキノン-4を含むタブレット菓子が、
骨の健康が気になる方の特定保健用食品として許可されています。

さらに、45mg/日のメナキノン-4が骨粗しょう症治療薬として処方されています。
また、ビタミンKは栄養機能食品の栄養成分として、血液凝固を助ける旨の表示をすることができます。

食事摂取基準と日本人のビタミンKの摂取量

日本人の食事摂取基準(2015年版)における成人のビタミンKの摂取目安量は
男女ともに150μg/日に設定されています。

平成25年の国民健康・栄養調査におけるビタミンKの摂取量は、
男性で平均227μg/日、女性で平均213μg/日でした。

このことから、男女とも摂取目安量を満たしていると言えますが、
食事摂取基準の目安量の値は、血液凝固を対象に策定されたもので、
骨の形成に必要なビタミンKの摂取量を目安として策定されたものではありません。

最近の研究で、高齢者は若年者に比べて、
ビタミンKの必要量が高まっていることが報告されています。
現在、骨のオステオカルシンの活性化に必要なビタミンKの量は、
おおむね500μg/日と考えられています。

これは納豆なら1パック、ホウレンソウなら小鉢二つ分に相当します。
したがって、特に高齢者の骨代謝においては、ビタミンKが不足している可能性があります。
高齢の女性は特に納豆や緑黄色野菜を意識して摂取するとよいでしょう。
 

ビタミンKの過剰摂取については、メナキノン-4の骨粗鬆症治療薬を
45mg/日の用量で処方しても安全性に問題がないことが明らかにされていることから、
日本人の食事摂取基準(2015年版)では耐容上限量は設定されていません。

ただし、ビタミンKは血液凝固を促進するため、
ワーファリンなどの血液凝固を抑える薬を飲んでいる場合は、
摂取を避ける必要があります。

ビタミンKについてさらに詳しく知りたい方は、             
国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを参照してみてください。

(国立健康・栄養研究所 石見 佳子)
2016-11-02
Link de Diet 2016.10.30 , EurekAlert 


過剰なルテイン・サプリメントは眼の結晶沈着と関連するようだ、
という米国ユタ大学からの研究報告。

近年、眼科医は加齢黄斑変性(AMD)の予防と視力低下を抑えるために、
栄養サプリメントを処方してきた。

今や栄養サプリメントを眼の健康のために摂取することはますます一般的になっている。
しかし、たくさん飲めばそれだけ効果も高まるかどうかは不明であった。

今回の症例研究は、必要以上に患者がサプリメントを摂取した場合に何が起きるかを明らかにしたものである。
研究チームは、AMDや視力の問題がない患者が両眼の網膜の黄斑部結晶沈着のために
網膜クリニックを紹介された症例を記述している。

患者を追跡調査したところ、過去8年間にわたって、患者は毎日ルテインサプリメント(20mg)を、
毎朝のルテインの豊富なブロッコリ、ケール、ほうれん草、アボカドスムージーに加えて摂っていた。
患者のルテイン摂取量はAMD患者の推奨量(1日10mg)の2倍以上だったというわけである。

ルテインは、AMD予防サプリメントして、AREDS2臨床試験の結果に基づいて処方されている。
件の試験で、研究者らはAMDによる失明のリスクの高い患者が
10mgルテインと2mgゼアキサンチンの摂取で、後期AMDの進行を遅らせることを発見した。

ルテインとゼアキサンチンはどちらもカロテノイドであり、
光線による眼の損傷を中和してくれると信じられている。
ヒトはカロテノイドを作れないので、植物性食品やサプリメントの形で摂るしかない。

「我々がその患者の血清、皮膚、網膜のカロテノイド濃度を調べたところ、
サプリメントを摂取していない患者の少なくとも2倍以上だった」
と主任研究者のポール・バーンスタインは語っている。

「患者がルテインのサプリメントを完全に止め、
ルテインの豊富な食事は続けた結果、7か月後に右目の結晶は消失した。」

AREDS2のサプリメントはAMDのリスクの高い患者に対するものだが、
それ以外の一般集団の使用が増加しているという。

バーンスタインの忠告は、「全ての人が眼の健康によりカラフルな果物と野菜を食べるべきだ。
そして眼科でAMDの兆候が発見されたらAREDS2サプリメントを摂取するべきである。」

本研究は症例研究であり、なんら決定的な結論をもたらすものではないが、
推奨量よりかなり多くのルテインを摂取し続けた場合のネガティブな影響を
予想させるものではあるだろう。

出典は『JAMA眼科』。 (論文要旨)      
2016-11-01
Link de Diet 2016.10.17 , EurekAlert 


サプリメントからカルシウムを摂取すると、動脈にプラークが蓄積し、
心臓にダメージを与えるリスクが高まる可能性があるという。

反対に、カルシウムが豊富な食品を多く摂る食生活には
心臓の保護効果があるとのこと。米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究。

研究者らによると、今回の調査結果はカルシウムサプリメントと
アテローム性動脈硬化症について観察したものであり、因果関係の証明には至らないという。

とはいえ、サプリメントの潜在的有害性について増えつつある科学的懸念をさらに増すものだとし、
カルシウムサプリメントを利用する際には、知識のある医師の診察を受けるよう訴えている。

米国では成人の43%がカルシウムを含むサプリメントを利用している。
「ビタミンやミネラルのサプリメント、特にカルシウムは骨の健康のために摂取されており、
多くの国民はたくさん摂るほど良いと思っています」と、研究者のマイコス医師は話している。

「しかし、私たちの研究では、サプリメントの形態での過剰なカルシウムは、
心臓や循環器系の害となるという証拠の根幹になるものです」

先行研究から特に高齢者においては、カルシウムサプリメントを摂取しても、
そのカルシウムが骨格までたどりつかなかったり、尿に排出されなかったりした結果、
身体の軟部組織に蓄積されていると考えられている。

そのため今回の研究者らは心臓や循環器系においてカルシウムが
どのような影響を持つのか興味を持っていたという。

なお、これまでに、加齢にともなってカルシウム系プラークが
大動脈などの動脈に蓄積し、血流を妨げて心臓発作のリスクを高めることもわかっている。

さて今回の研究では、2700人以上を対象に食事アンケートと、
CTスキャンを2回(各回の間隔は10年とした)受けてもらった。
被験者の年齢は45-84歳、男女比は約半々だった。

食事アンケートでは、どのような食品からカルシウムを摂っているかを訊ねるため
120の設問に答えてもらった。他に、薬やサプリメントの摂取状況についても記録した。

一日あたりのカルシウム平均摂取量によって被験者を5群に分けたところ、
最も摂取量の多い群(1400mg/日)は最も少ない群(400mg/日)
よりも、冠動脈石灰化の度合い(カルシウム沈着の目安となる。
CT検査で測定)が高くなる可能性が27%少なかった。

次に、カルシウムの供給源が食事のみの人と、
サプリメントも摂取している人とで、どのような差が生じるかを分析した。

被験者の46%はカルシウムサプリメントを利用していたが、解析の結果、
彼らは冠動脈石灰化の度合いが10年間で22%高まったことがわかった。
これは心臓病の発症につながることを示唆している。

このようなリスクの増加の原因として、研究者は
「サプリメントはカルシウム塩を含むこと、または
高用量のカルシウムを身体が処理しきれないこと」
ではないかとしている。

一方で、食事由来のカルシウム摂取量が最も多かった群の人たちは
一日平均1022mg以上だったというが、彼らに心臓病リスクの増加はみられなかったとのこと。

研究者は「この証拠によれば、カルシウムの豊富な食品を含む健康的な食事を摂ることは、
何の問題もないばかりか心臓に有益だともいえるでしょう。」としている。

出典は『米国心臓学会雑誌』。 (論文要旨)      
2016-10-25
産経新聞  2016.10.25
足のむくみ、降圧剤の副作用が原因のことも 


70代の女性が両足のむくみを訴えて受診されました。半年ほど前からといい、
「一向に良くならないのは、何か重大な病気が隠れているのでしょうか」
と心配していました。女性は高血圧の治療を受けていますが、
むくみ以外の症状はないようです。

むくみは、血液中の水分が血管やリンパ管の外にしみ出して、
手足や顔などの皮膚の下にたまった状態です。
本来は血管の中と組織の細胞の内外で取れていた
水分のバランスが崩れることで起こります。

その要因として、血液の流れが悪くなることや
血管の中に十分な水分を保てなくなることなどがあげられます。

むくみの原因はいろいろで、心不全や腎不全、静脈の閉塞(へいそく)、
甲状腺の病気など何らかの病気が関係する他、低栄養でなることもあります。

また、高齢になると、朝は大丈夫でも、
一日中座って過ごした夕方に足がむくむことがしばしば見られます。

冒頭の患者さんを検査したところ、
心不全などの病気の兆候はありませんでした。

高血圧治療について尋ねると、むくみが出る少し前に血圧の薬を
「カルシウム拮抗(きっこう)薬」と呼ばれるタイプに変更していました。

動脈を広げることで血圧を下げる薬で、降圧効果が高い一方、
副作用としてむくみが出ることが知られています。
薬の量にもよりますが、飲んだ人の1~2割にむくみが出るとされ、
中にはそのために薬が続けられない人もいます。

これまでのさまざまな研究から、
このタイプの薬を1種類だけたくさん使って治療するより、
他のタイプの薬と併用する方が、血圧が下がりやすく、
むくみなどの副作用も少なくなることが分かっています。

女性はこの薬で血圧のコントロールがよくできていたのですが、
むくみをとても不快に感じていたので、
他のタイプの薬と併用するようにし、薬の量を調整しました。

やはり薬が原因だったようで、薬の変更後にむくみがなくなりました。
血圧も良好に保たれています。薬の副作用としてのむくみは、
痛み止めの連用でも起こります。

一般的なむくみの対処法には、塩分や飲酒量を減らす
▽座りっぱなしの生活をせずこまめに動く
▽休息中は足を上げておく
-などがあります。

また、むくみの他に、息切れがする
▽急激に体重が増えた
▽体に痛みがある

-といった症状がある場合は、別の病気の可能性もあるので、
医療機関で相談することが勧められます。

(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)
2016-10-25
サプリメント由来のカルシウム、心臓にダメージか
Link de Diet 2016.10.17 , EurekAlert


サプリメントからカルシウムを摂取すると、動脈にプラークが蓄積し、
心臓にダメージを与えるリスクが高まる可能性があるという。

反対に、カルシウムが豊富な食品を多く摂る食生活には心臓の保護効果があるとのこと。
米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究。


研究者らによると、今回の調査結果はカルシウムサプリメントと
アテローム性動脈硬化症について観察したものであり、
因果関係の証明には至らないという。

とはいえ、サプリメントの潜在的有害性について増えつつある科学的懸念を
さらに増すものだとし、カルシウムサプリメントを利用する際には、
知識のある医師の診察を受けるよう訴えている。

米国では成人の43%がカルシウムを含むサプリメントを利用している。
「ビタミンやミネラルのサプリメント、特にカルシウムは骨の健康のために
摂取されており、多くの国民はたくさん摂るほど良いと思っています」と、
研究者のマイコス医師は話している。

「しかし、私たちの研究では、サプリメントの形態での過剰なカルシウムは、
心臓や循環器系の害となるという証拠の根幹になるものです」

先行研究から特に高齢者においては、カルシウムサプリメントを摂取しても、
そのカルシウムが骨格までたどりつかなかったり、尿に排出されなかったりした結果、
身体の軟部組織に蓄積されていると考えられている。

そのため今回の研究者らは心臓や循環器系において
カルシウムがどのような影響を持つのか興味を持っていたという。

なお、これまでに、加齢にともなってカルシウム系プラークが大動脈などの
動脈に蓄積し、血流を妨げて心臓発作のリスクを高めることもわかっている。

さて今回の研究では、2700人以上を対象に食事アンケートと、
CTスキャンを2回(各回の間隔は10年とした)受けてもらった。
被験者の年齢は45-84歳、男女比は約半々だった。

食事アンケートでは、どのような食品から
カルシウムを摂っているかを訊ねるため120の設問に答えてもらった。
他に、薬やサプリメントの摂取状況についても記録した。

一日あたりのカルシウム平均摂取量によって被験者を5群に分けたところ、
最も摂取量の多い群(1400mg/日)は最も少ない群(400mg/日)よりも、
冠動脈石灰化の度合い(カルシウム沈着の目安となる。CT検査で測定)
が高くなる可能性が27%少なかった。

次に、カルシウムの供給源が食事のみの人と、
サプリメントも摂取している人とで、
どのような差が生じるかを分析した。

被験者の46%はカルシウムサプリメントを利用していたが、解析の結果、
彼らは冠動脈石灰化の度合いが10年間で22%高まったことがわかった。
これは心臓病の発症につながることを示唆している。

このようなリスクの増加の原因として、研究者は
「サプリメントはカルシウム塩を含むこと、
または高用量のカルシウムを身体が処理しきれないこと」
ではないかとしている。

一方で、食事由来のカルシウム摂取量が最も多かった群の人たちは
一日平均1022mg以上だったというが、
彼らに心臓病リスクの増加はみられなかったとのこと。

研究者は「この証拠によれば、カルシウムの豊富な食品を含む健康的な食事を摂ることは、
何の問題もないばかりか心臓に有益だともいえるでしょう。」
としている。

出典は『米国心臓学会雑誌』。 (論文要旨)      
2016-10-19
読売新聞 2016年10月19日

[栄養で治す]予防する時代、治療の基盤


医療機関には多くの専門職種が勤務していますが、
栄養に関わる専門職種は管理栄養士のみです。

管理栄養士は、「栄養士法」の第1条で「都道府県知事の免許を受けて、
栄養士の名称を用いて栄養の指導に従事することを業とする者をいう」と定められています。
その業務は「傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導、個人の身体の状況、
栄養状態等に応じた高度の専門的知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導……」などと書かれています。

高い専門性がうたわれていますが、問題として指摘されているのは、
資格がない者は名乗れない「名称独占」ではあるものの、
医師のように資格がないと業務ができない「業務独占」ではないということです。

管理栄養士は、診療報酬単価が他職種に比べると低いため、圧倒的に人数が少なく、
業務量も多いため、なかなか個々の患者のケアが困難な状況にあります。

業務独占がないため、他職種が栄養の領域に入って来ており、
喜ばしいことではある反面、資格の存続すら危ぶまれています。

こうした状況を打破しようと2014年5月、
一般社団法人「日本栄養経営実践協会」を設立し、代表理事に就任しました。
効果的な栄養管理の実践だけでなく、
抗菌薬や輸液の節減を通じて経営上の利益にもつなげ、
管理栄養士の地位向上も目指しています。

医療費が40兆円を超え、今後、納税世代が減少する日本では、
治療や薬に過度に依存する体質を脱し、予防に大きく 舵かじ を切ることが迫られています。

「栄養は治療の基盤。全ての疾患に共通に必要なもの」という考え方が、
多くの国民や医療従事者に浸透することを念じてやみません。

 (宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)

 
2016-10-17
読売新聞 2016年10月17日

アルツハイマー予防薬、国際研究に東大参加…早期治療導入期待


国内の認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病を、
発症前に防げるかどうか調べる国際共同研究に東京大学が参加する。
米国立衛生研究所(NIH)などが進める研究で、
米国以外からの参加はカナダ、オーストラリアに次いで3か国目。

成果が出れば、国内でもいち早く予防治療が導入される可能性がある。

東大が参加するのは、米NIHや米製薬大手イーライリリーなどが
官民共同で2014年に開始した「A4」という研究。

アルツハイマー病は、発症の10~20年前から脳内に「アミロイドβ」と呼ばれる
異常なたんぱく質が蓄積することがわかっている。

そこで、認知機能はまだ正常だが、脳の画像検査で
アミロイドβの蓄積が判明した65~85歳の人を対象に、
このたんぱく質を除去する薬を点滴で投与する群と
成分の入っていない偽薬を投与する群に分け、
認知機能の低下を防げるかどうか調べる。

来春までに世界で1150人が参加。
3年間、薬の投与を継続し、早ければ20年に結果が出る見通しだ。

国内では今月下旬から約100人に脳の画像検査を行い、
最終的に10~20人が参加する計画だ。

国内の研究責任医師の岩坪 威たけし ・東大教授(神経病理学)は
「今後のアルツハイマー病治療の流れを変える可能性があり、世界が注目する研究。
多くの方の参加を得て、確実に進め、最新の成果を国内の患者に届けられるようにしたい」と話す。

「発症前」の予防効果に着目…アルツハイマー研究

アルツハイマー病では現在、症状の進行を抑える薬が使われているが、根本的に治す薬はない。
今世紀に入り、世界でアミロイドβを減らす薬が相次いで開発され、
根治薬への期待が高まったが、海外の大規模治験でいずれも挫折した。

認知症が進行した状態では、既に神経が死滅しており、
薬でアミロイドβは減らせても、認知機能の改善にはつながらなかった。

そこで、神経細胞の死滅が進んでいない「発症前」に世界の注目が集まり、
米国立衛生研究所(NIH)の呼びかけで今回の研究は始まった。
主任研究者で米ハーバード大学のリサ・スパーリング教授は
「文化や遺伝的背景の違いを超えて認知症予防に効果があるか
どうかをみるためにも日本の参加は重要」と話す。

効果が確認されれば、アルツハイマー病の治療は「発症前」が主流になり、
高齢者の2割が治療の対象になるという試算もある。
近年、効果は高いが値段も高い、高額新薬が医療費の高騰に拍車をかけているだけに、
医療費の観点からの議論も必要になるだろう。(編集委員 館林牧子)
2016-10-17
読売新聞 2016年10月17日

認知症の仕組み、京大チームが一端を解明…予防薬につながる可能性


様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)と、
遺伝子を自在に改変できる技術「ゲノム編集」を利用し、
認知症の一種が発症する仕組みの一端を解明したと、
京都大iPS細胞研究所の井上治久教授(幹細胞医学)らのチームが発表した。


予防薬の開発につながる可能性がある。
論文が、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

この認知症は、「前頭側頭葉変性症」と呼ばれ、
患者には「タウ」というたんぱく質の遺伝子に変異があると報告されているが、
詳しいメカニズムは不明だった。

チームは、患者2人から作製したiPS細胞を、
脳の神経細胞に変化させて病態を再現。
そのうち一つの細胞について、ゲノム編集でタウの遺伝子変異を修復し、
病気の細胞と比べたところ、修復した細胞では異常なタウの蓄積が減った。

異常なタウが蓄積すると、細胞内で神経活動に関わる
カルシウム量を調節する機能が低下し、発症につながるとみられる。
井上教授は「他の認知症でも共通の仕組みがあるかどうか調べたい」と話す。

          ◇

【前頭側頭葉変性症】  脳の前頭葉や側頭葉が萎縮し、同じ行動を繰り返すなどの症状が出る。
国内の推定患者数は約1万2000人。
65歳以下の認知症では、記憶障害が起こるアルツハイマー病の次に多いとされる。
2016-10-17
産経新聞 2016.10.17

今年のノーベル各賞 医学・生理学賞「オートファジー」 
細胞内のタンパク質再利用 栄養供給、病気防止などの役割


細胞の自食作用「オートファジー」を解明した
東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)が
医学・生理学賞に輝いた今年のノーベル賞。

                   


オートファジーの基本的な機能は細胞の「飢餓解消」だ。
生物の細胞は大量のタンパク質を蓄積しており、
飢餓状態になるとこれをオートファジーでアミノ酸に分解し、
必要なタンパク質を再合成して栄養を得ている。

人間の体内には7~10キロのタンパク質が蓄積されており、
毎日160~200グラムが新たに合成される。
一方、成人が食事から摂取するタンパク質は1日60~80グラムで、
アミノ酸に分解しても1日分のタンパク質を合成するには全く足りない。

オートファジーは毎日、1日の合成量とほぼ同じ量のタンパク質を分解しており、
実は食事より重要な栄養供給源だ。
出産でへその緒を切られ母親から離れた新生児や山岳遭難者が、
栄養が途絶えても生き延びられるのは、このおかげだ。

細胞内では体に悪影響を及ぼす異常なタンパク質や小器官ができることがあり、
オートファジーはこれを分解し「浄化」する機能も担っている。

細胞内でエネルギーを生み出すミトコンドリアという小器官は、
活性酸素で損傷することがある。
これが神経細胞にたまるとパーキンソン病につながるが、
オートファジーが機能すれば分解して発症を防げる。

細胞に入り込んだ有害物質や細菌を分解し、
体を「防御」する機能があることも明らかになっている。

がんとの関係も研究が進む。がん細胞はオートファジーによって栄養を得て、
抗がん剤の攻撃をしのいで生き延びることが知られる。
近年はオートファジーの促進と阻害を制御する物質の均衡が崩れると、
がん発症につながることも分かってきた。

オートファジーの仕組みはこうだ。
細胞内の異常なタンパク質や細菌などの近くに、平たい二重膜の構造が出現。
これが異常なタンパク質などを包み込み、直径約1マイクロメートル
(マイクロは100万分の1)のオートファゴソームという小胞ができる。

するとタンパク質の分解酵素が入ったリソソームという小器官が細胞内から集まり、
オートファゴソームと融合。一体化して袋状になり、内容物をアミノ酸に分解する。
アミノ酸は袋の外に放出され、新しいタンパク質の原料としてリサイクルされる。

オートファジーの仕組みはまだ分かっていないことが多いが、
大隅氏は今年7月、この現象が始まるメカニズムを明らかにした

飢餓状態に陥った細胞では、ひも状のタンパク質に別の4種類のタンパク質が結合。
それが複数集まって立体的な複合体を形成し、これがオートファジーの「始動装置」として働くことを突き止めた。

ひも状タンパク質の結合能力を奪うと始動装置が形成されなかったことから、
大隅氏は「オートファジーの促進、阻害の自在な制御につながる。
医療や創薬に貢献できる可能性が広がるだろう」と話す。

こうした基礎研究がさらに進展し、仕組みが詳しく分かれば、
さまざまな病気の治療法や医薬品の開発につながると期待されている。

                   


医学・生理学賞で受賞相次ぐ「浄化作用」

老廃物や異常なタンパク質が体にたまると病気の原因になるため、
これを分解する「浄化」は生物にとって非常に大切な機能だ。
オートファジーの他にも、いくつかの仕組みがある。

その一つは、あらかじめプログラムされた遺伝情報に基づき、
細胞が自ら死んでいく「細胞死」(アポトーシス)。こ
れが正常に機能しないと、がんや白内障の進行につながる。

「ユビキチン・プロテアソーム系」は、タンパク質の一種である
ユビキチンが細胞内の不要なタンパク質に付着。
これを目印にプロテアソームという酵素が分解する仕組みだ。
この機能の異常は、がんや筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病の発症に関係している。

これらの仕組みは、それぞれ欧米の研究者が発見し2002年と04年にノーベル賞を受賞した。
そしてオートファジーに続く「4番目の浄化作用」として受賞が期待されているのが、
京都大の森和俊教授(58)らが解明した「小胞体ストレス応答」だ。

小胞体は細胞内小器官の一種で、タンパク質の合成工場と呼ばれる。
ここで形が異常なタンパク質が増えるとストレスがかかり、
小胞体ストレス応答が働いて正常な形に修復したり、分解して処分したりする。
これが機能しないと糖尿病やがん、神経疾患を引き起こす。

体内の浄化作用は病気の治療法や医薬品の開発に直結するため、
4つの仕組みはいずれも世界的に研究の競争が激化している。

2016-10-15
読売新聞 2016.10.15

幼児向け薬、米で10人死亡、400人健康被害か 「ホメオパシー」でFDA調査


「ホメオパシー」と呼ばれる代替医療で販売されている幼児向けの薬で、
過去6年間に10人が死亡し、約400人が健康被害を受けた可能性があるとして、
米食品医薬品局(FDA)が14日までに調査に乗り出した。

調査対象となっているのは、ホメオパシー薬を手掛ける米ハイランド社が製造、販売する幼児用の製品。
歯の生え始めの痛みを和らげるとしているが、
FDAは死亡のほかに昏睡状態、嘔吐などの報告があると指摘している。

FDAは9月30日、消費者に利用の中止と廃棄を勧告する声明を発表。
ハイランド社は「現時点で商品と健康被害を関連付ける医学的、
統計的な証拠は示されていない」と反論する声明を出した。

日本では09年に生まれた女児に、山口市の助産師が
必要なビタミンKを与えずホメオパシーで使う錠剤を投与し、
ビタミン欠乏性出血症で死亡させたとして、
母親が助産師に損害賠償訴訟を起こした。(共同)
2016-10-15
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年10月12日

[プラセンタ]摂取する意味、冷静に判断を

いつまでも若く、美しくありたいと願う、女心を刺激する広告が目につくプラセンタ。
今回は、「美容や若返りに」と宣伝されているプラセンタについて解説します。


プラセンタって何?

プラセンタとは、哺乳類の胎盤のことです。
妊娠中の母体と胎児の臍帯さいたいをつなぐ器官で、
胎児へ酸素や栄養素を供給したり、母体へ老廃物を渡したりする機能や、
血液やたんぱく質をつくる、ホルモンを分泌する、などの働きがあります。

最近、「海洋性プラセンタ」「マリンプラセンタ」「植物性プラセンタ」など、
プラセンタと同じような名前の成分が宣伝されていますが、
海洋性プラセンタは魚の卵巣膜、
植物性プラセンタは植物の胎座から抽出した成分ですので、

今回取り上げる、哺乳類のプラセンタとは異なります。


食品はウマ、ブタ由来が多数

プラセンタの中でもヒト由来のものは、
「専ら医薬品として使用される成分本質 (原材料) 」とされており、
医薬品成分ですので、食品に使うことはできません。

健康食品やサプリメントに使用されているプラセンタは、
ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマのプラセンタで、
ブタあるいはウマ由来のプラセンタエキスが多く使用されているようです。

プラセンタ製品の販売サイト等では、「ウマの方がいい」、「ブタの方がいい」など、
それぞれ、自社製品中のプラセンタの優位性を宣伝していることが多いですが、
「どの動物のプラセンタが最も効果的か」を調べた文献は見当たりません。

そのような宣伝を目や耳にした際には、話半分に受け止めておくか、
その根拠を宣伝元に尋ねてみるとよいでしょう。


「生」は品質規格基準に合致せず

プラセンタは動物の臓器ですので、感染のない健康な家畜から採取して
衛生的に製造加工されていることなど、
原材料や製品としての衛生管理がとても重要になります。

そこで、日本健康・栄養食品協会(JHFA)は安全性を重視し、
「プラセンタエキス」および「プラセンタエキス純末」の品質規格基準を設定しています。

それによると、健康な家畜(ブタおよびウマ)の満期出産時に、
後産として得られる食用の胎盤を用い、
それを酵素あるいは塩酸などを使った方法により分解後、
抽出工程を経て得られた液状またはペースト状で加熱殺菌されたものを「プラセンタエキス」、
これを凍結乾燥、噴霧乾燥などの方法で水分を除去した粉末状のものを「プラセンタエキス純末」、
それらを原材料として用いた食品を「プラセンタエキス含有食品」としています。

細菌、加熱処理をしていないプラセンタが生プラセンタとして販売され、
加熱処理済みのものよりも効果があるかのようにうたわれていますが、
この生プラセンタは、JHFAの規格基準に合致していないことがわかります。
製品を選択する際には、安全性を重視して選択することをお勧めします。


食べて効果があるか、まだ不明

インターネット上では、プラセンタエキスは、「更年期障害によい」「冷え性によい」
「貧血によい」「美容によい」「強壮・強精によい」などといわれているようです。

ヒトを対象にプラセンタエキスを食べた時の効果を検討した研究報告は、
更年期症状に対するものがいくつかありますが、
その他の効果に対するものは見当たりません。

更年期症状に対する効果を検討した研究報告は、
全て同じグループの研究者による報告で、研究の対象人数が少ないことや、
試験デザインが十分ではないことが、報告者自身によって指摘されています。

プラセンタを食べて、更年期症状の軽減効果が得られるかどうかは、
今後、他の研究グループからの報告がたくさん出てきてから、
判断できるようになると思います。

プラセンタには、アミノ酸、ペプチド、たんぱく質、グリコサミノグリカン、
核酸など様々な有効成分が含まれているとされていますが、
それぞれの含有量は明確になっていません。

また、プラセンタの中のどの成分が効果を発揮するのかも、明らかになっていません。
プラセンタの成分の中には、健康食品やサプリメントとして口から摂取しても、
消化管で分解される成分もあります。食べて意味があるのか、冷静な判断が必要です。

さらに、プラセンタ中のアミノ酸、ペプチド、核酸などは、
普段食べている様々な食材からも摂取していますので、
食事からの摂取量がプラセンタから摂取する量に比べてはるかに多い場合は、
わざわざプラセンタから摂取する意味はなさそうです。


国内の被害報告あり

プラセンタ製品の経口摂取による健康被害が日本国内で3件報告されています。
症状としては、発疹、浮腫、せき、微熱などが生じていますが、
いずれも、アレルギー、薬剤性肝障害の報告ですので、
アレルギー体質の方は注意してください。

この他、軟便、便秘などの消化器症状が生じる可能性も指摘されています。
もし、使用中にそのような症状が出た場合は、すぐに使用を中止してください。

プラセンタの安全性・有効性に関する科学的根拠は以下のサイトを参照してみてください。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

(国立健康・栄養研究所 佐藤 陽子)


国立健康・栄養研究所

国立健康・栄養研究所(健栄研、東京都新宿区)は、国民の健康の保持・増進に関する調査研究、
栄養や食生活に関する調査研究等を行う機関。1920年に前身の機関が内務省に創設されて以来、
国民の健康・栄養に関する調査研究に従事し、
近年は「健康食品」の安全性・有効性に関する調査研究や情報提供も行っている。

2015年4月に「医薬基盤研究所」(基盤研、大阪府茨木市)と統合し、
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(略称:医薬健栄研)が設立され、
現在はその中の組織として位置づけられている。
2016-10-15
イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常
読売新聞 2016年10月14日

日本の医療制度が破綻危機、何とかしなければ…


先週にイギリスの短期出張から戻り、時差ぼけも少なく仕事に励んでいました。
いろいろな医療の記事を読んでいて、ほとんどは既に知っていることか、
自分の予想の範囲内のことなので、 滅多めった に記事を見て、びっくりすることはありません。

ところが、10月6日の日経産業新聞の記事
(http://www.nikkei.com/article/DGXMZO08036870V01C16A0X11000/)
には、久しぶりに度肝を抜かれました。


超高額抗がん剤として話題を集めている「オプジーボ」の値段が、
アメリカでは日本の4割、イギリスでは日本の2割で販売されているそうです。


医療費増は当然の成り行き

自分が出演するラジオや、自分が書き下ろす原稿で、
すでに「日本の薬の値段の算定システムはフェアである」
と表明してきた自分にとっては、本当にびっくりする記事でした。

日本では最初に悪性黒色腫という 希まれ な疾患に保険適用されたこと、
そして日本で最初に薬剤として承認されたことなどが影響しているのでしょう。

オプジーボの薬価の算定システムはフェアとしても、
実際にイギリスでは日本の5分の1の値段で売られているというのでは、
日本でのオプジーボの値段も当然に下げるべきです。

ところが、薬価は2年ごとに改定されます。
さすがに厚生労働省も超高額であることを認識して、
通常の2年を待たずに薬価を下げるようですが、
半額に下げても、アメリカよりも高いことになります。

半額に下げてもイギリスの2.5倍の値段です。
とんでもなく高いですね。

僕は、とんでもなく高くても、日本の経済が順風満帆ならばそれほど問題ではないと思っています。
ところが日本経済は残念ながら 喘あえ いでいます。

そして、 日本の医療費(概算)の総額が前年度から1.5兆円増加して、41.5兆円になりました 。
この原因は高齢化の進展と高額薬剤の使用頻度の増加にあると解説されています。
この医療費の増加を 補填ほてん するだけの経済成長はとても見込めません。

41.5兆円は、とんでもない高額です。
そして、ここにはトリックがあって、
この値は医療機関からの診療報酬請求に基づく集計の速報値で、
労災や全額自己負担分の医療費は含まれていません。
その上、実は200万人を超える生活保護の方々の医療費も含まれていないのです。

2025年には、団塊の世代がすべて後期高齢者となります。
75歳以上になるということです。団塊の世代とは1947年から1949年、
つまり昭和22年から昭和24年に生まれた人々で、
その3年間の年間出生数は毎年260万人を超えています。

2015年に生まれた赤ちゃんは約100万人ですから、
団塊の世代がどれほど多いかがわかります。
つまり日本の人口構成で高齢化は避けられません。

そして、サイエンスが進歩して、医療が高度化し、高額薬剤が登場し、
一人当たりの医療費が増加することは当然の成り行きです。


日本の保険制度の素晴らしさは?

つまり、医療費を今までのような国民皆保険制度でカバーするのはそろそろ限界なのです。
日本の保険制度の素晴らしさは、基本的に全員が加入していること、
そしてどこの保険医療機関にも自由にかかれること(フリーアクセス)です。

さて、イギリスの話をします。イギリスにも国民皆保険制度があります。
NHSと呼ばれるもので、イギリスに住んでいれば外国人でもその制度を利用できます。
僕もオックスフォードで勉強した5年間は、この制度にお世話になりました。
基本的に医療費は、ほぼ無料です。

日本のシステムとの最大の相違点は、フリーアクセスではないということです。
自分が住んでいる地域内で、かかりつけ医を見つけて登録しなければならないのです。
そして、どんな病気でも、このかかりつけ医がまず診察、治療し、
必要に応じて専門医に紹介するシステムになっています。
つまり皆保険制度を利用してのフリーアクセスは完全に否定されています。

また、日本では、病院やクリニックなどの診療機関は
患者さんに施した医療費の自己負担分を除いた金額を保険請求できます。

1年間にいくら使おうが、必要な医療費であればすべて償還されます。
償還とは、一時的に医療機関側が支払ったお金(債務)を返済してもらえるという意味です。

ところがイギリスでは、1年間に使用できる医療費が医療機関ごとに決まっています。
つまり総量規制が働いています。ですから、かかりつけ医でも簡単に薬はくれません。
風邪で受診しても、薬剤が処方されないこともあります。

日本のようにフリーアクセスで総量規制がない制度と、
イギリスのように初診では、かかりつけ医に行くことが
義務付けられて総量規制が働いている制度では、
当然にイギリスの方が窮屈です。

また、適切な医療がうけられないリスクはイギリスの方が高いとも思われます。

しかし、医療費が高騰する中、何か手を打たなければ
日本のすばらしい医療制度は早晩破綻します。
何か変化が起こるときに、窮屈になってリスクが増えることは、
誰もが反対です。でも、制度が潰れるよりはましですよね。

例えれば、日本では、どこのレストランで、どんなものを食べても、
それが必要とされる範囲内なら、7割から10割を補助されていました。

そして高額療養費制度があるので、ある程度を支払ったら、
それ以上は暦月内ではいくら注文しても自己負担は増加しないのです。

ところがイギリスの制度は、行きつけの食堂を決めて、
1年間にその食堂が全体として使えるお金が決められているのです。
その食堂でどうしても満足できないときに他を紹介されます。
でも、そんな食堂の制度でも、イギリス人は誇りに思っています。
そして日本の制度よりも長期的には存続可能だと思われます。

そろそろ真剣に医療サービスの担当者が、政府が、そして国民が、
将来の医療制度を考える時期に来ていると思っています。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。


新見正則(にいみ まさのり)
 帝京大医学部准教授

1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、
98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。
2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。

主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 
(朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、
「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。
2016-10-15
読売新聞 2016年10月15日
日本でも薬用せっけん規制へ


1年以内に代替製品への切り替え促す

最近、米国でトリクロサンなど19種類の殺菌作用を有する成分が含まれる
薬用せっけんの販売が禁止されることになったことを受け、
日本でも同成分を含む製品が規制されることになった。

厚生労働省は9月30日、米国で禁止されることになった19成分が含まれる薬用せっけんについて、
これらを製造・販売する企業に対して1年以内に代替製品への切り替えることを求めると発表した。
既に業界団体が会員の企業にこれらの成分を含有しない製品に切り替えるよう要請していたが、
国としてもこの取り組みを促すとしている。

約800品目が承認、健康被害の報告なし

19種類の成分(表)は殺菌作用があるとされ、
固形せっけんや液体ハンドソープ、歯磨き粉などに使用されている。

しかし、長期間の使用による抗菌薬耐性菌の発生や
甲状腺および生殖ホルモンへの悪影響が指摘されていたことを受け、
FDAが調査を実施。

収集したデータを検証した結果、通常のせっけんによる手洗いと比べて
感染症の予防に優れるとの科学的根拠はないことが分かったとして、
1年以内に米国内での同成分が含まれる製品の販売は中止するか、
同成分が含まれない製品に切り替えることを求める声明を9月2日に発表した。

これを受け、薬用せっけんなどを製造販売する企業の業界団体である
日本化粧工業連合会と日本石鹸洗剤工業界は、同成分を含有しない
製品への切り替えに取り組むよう会員企業に要請していた。

厚生労働省は、この取り組みを促すために、
製造販売企業に対して流通する製品の把握と、
製品を1年以内に代替製品に切り替えるための承認申請を求めるとしている。

なお、日本国内で承認された同成分を含有する薬用せっけんは、
現在流通していない製品も含めて約800品目に上るが、
これらの製品に関連した健康被害は報告されていないという。
2016-10-15
認知症の一端を解明…iPS細胞、ゲノム編集で
読売新聞 2016年10月15日
 
様々な細胞に変化できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)と、
遺伝子を自在に改変できる技術「ゲノム編集」を利用し、
認知症の一種が発症する仕組みの一端を解明したと、
京都大iPS細胞研究所の井上治久教授(幹細胞医学)らのチームが発表した。


予防薬の開発につながる可能性がある。
論文が、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

この認知症は、「前頭側頭葉変性症」と呼ばれ、
患者には「タウ」というたんぱく質の遺伝子に変異がある
と報告されているが、詳しいメカニズムは不明だった。

チームは、患者2人から作製したiPS細胞を、
脳の神経細胞に変化させて病態を再現。

そのうち一つの細胞について、
ゲノム編集でタウの遺伝子変異を修復し、
病気の細胞と比べたところ、
修復した細胞では異常なタウの蓄積が減った。
2016-10-14
心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
読売新聞  2016年10月13日

歪視・変視、自己視線恐怖症も…
「視覚の雑音」が引き起こす症状


去る8月26日から28日、新潟市の 朱鷺とき メッセで
第17回日本ロービジョン学会が開催されました。

私は最終日の教育講演に招かれ、「見えないものが見える」という表題で
話をさせていただいたこともあり、その前日より会に参加してきました。

800人を超える参加者の内訳は、医師は半数程度で、あとは視能訓練士、
看護師などコメディカルスタッフ、福祉や教育関係者で占められていて、
視覚障害の患者さん自身も参加できる仕組みの学会です。

したがって、医療機関だけでなく、いろいろな領域からの発表があるのが
特徴で、一般の医師による学術集会とは若干異なる雰囲気があります。

私はロービジョン(低視力)の方のおよそ10~20%の人が体験する、
そこに存在していない形や模様、人の姿や顔、動植物や風景などの幻視が
時折生ずる現象、「シャルル・ボネ症候群」を中心に話題を提供しました。

そんな中で、ロービジョンという言葉を改めて考えさせる話題が
いくつか発表されていました。

たとえば、網膜、とくに網膜の中心部の感度のよい場所である
「 黄斑部おうはんぶ 」に病変があると、視力検査ではよい数字が出ても、
まっすぐな線が 歪ゆが んで見えてしまう「 歪わい 視」もしくは「変視」
といわれる状態や、左右の目で大きさが違ってみえる「不等像視」などが
出現します。

両眼視機能、つまり両目で見て初めて認識できる
距離感や立体感も悪くなってしまいます。

ロービジョンを文字通り「低視力」、
つまり、視力検査で視力の数字が低いことに限定してしまうと、
こうした原因で実際の生活視力に影響を与えている状態を除外してしまうことになります。

眼科で測定された低視力の人と同じか、
それ以上の不都合を感じているかもしれないこうした症例に、
光が当たらないことになってしまうのです。

私が教育講演でとりあげたシャルル・ボネ症候群をはじめ、
快適な視覚にとって不都合な雑音と考えられるさまざまな現象もまた、
視力や視野検査には表現されないという点で共通しています。

このさまざまな現象には、次のようなものが含まれます。

視野の中に光や稲妻が出現する「中枢性光視症」、
いつも視野全体に小雪が降っていると訴える「小雪症候群」
(これは共通した症状を持つ4例を発見したことから、
私がこの学会で命名した症候群です)、
周囲のことがどうしても気になって自分の視線が横に動いてしまう
「自己視線恐怖症」などです。 

これらは眼球に異常が発見されないのが普通で、
それでも視覚に雑音を生じてしまう状態です。

本来、快適な視覚を得るために眼球と共同作業をしている
大脳というコンピュターから出る雑音だと考えるべきです。

(井上眼科病院名誉院長 若倉雅登)


若倉雅登(わかくら まさと)
井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、
井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。
北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、
15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。

「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、
「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、
「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。

専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、
週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。
2016-10-11
田村編集委員の「新・医療のことば」
読売新聞 2016年10月11日

「プレシジョン・メディシン」


■「精密医療」と「個別化医療」


医療の話題には様々なカタカナ語が登場します。
今回のテーマは、最近しばしば目にする「プレシジョン・メディシン」です。

プレシジョンは英語で「精密、正確(PRECISION)」という意味です。
そのまま訳すと「精密医療」とか「正確医療」ですが、
患者一人ひとりの特徴に応じた治療を行う「個別化医療」と同じような文脈で用いられています。

PRECISIONというキーワードで医学論文を検索すると、2010年頃から年々、急激に増えています。
「プレシジョン・オンコロジー(腫瘍学)」とか「キャンサー(がん)・プレシジョン」といった、
がん医療に関した言い回しも多く出てきます。

■がんの遺伝子診断

がんの遺伝子を調べ、タイプの違いによって効果が期待できる治療薬を選択するというやり方は、
すでに肺がんや乳がん、大腸がんなどの治療で導入されています。

たとえば肺がんでは、分子標的薬の「イレッサ」(ゲフィチニブ)は
ある遺伝子変異を持つタイプの約7割に効果があるとされます。

さらにイレッサが効かなくなった場合には、再び遺伝子検査を行って
別の遺伝子変異が見つかった患者に効果が期待できる分子標的薬
「タグリッソ」(オシメルチニブ)が今春登場しました。

遺伝子変異の有無によって用いられる肺がんの分子標的薬にはALK阻害剤もあり、
まずがんの遺伝子を調べることは治療の標準となりつつあります。

■オーダーメイド(テーラーメイド)医療

個別化医療はこれまでも、体に合わせた服を仕立てる意味になぞらえて
「オーダーメイド医療」とか「テーラーメイド医療」といった言葉で表されてきました。
一人ひとりに適した治療が選択されることは、治癒の確率が高まるだけでなく、
効果の期待できない薬による余計な副作用を避けられる利点があります。

近年、「プレシジョン・メディシン」という言葉が用いられるようになったのには、
より高精度の遺伝子解析が可能になったことや、治療薬の開発が進んだことなどを背景に、
患者を特徴ごとに分類して適切な治療を選択するシステムを目指そうという意味合いが感じられます。

■オバマ米大統領の一般教書演説

プレシジョン・メディシンをめぐるトピックとしてよく取り上げられるのが、
オバマ米大統領が2015年の一般教書演説で発表した「プレシジョン・メディシン・イニシアチブ」です。

2億ドル余りの国家予算をつぎ込み、効果的ながん治療の開発促進、
米国立衛生研究所(NIH)によるボランティアの遺伝子や生活環境などの大規模な疫学研究、
個人情報保護、遺伝子解析などの規制の整備などを進めるとしています。

がんはその具体的な分野の筆頭に掲げられ、遺伝子の臨床研究に基づく
国家的ながん知識のネットワークを確立することなどがうたわれています。

日本でも国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬基盤推進研究事業の研究課題のひとつに、
プレシジョンメディスン推進が盛り込まれていますが、取り組みの遅れは否めません。

■増える?治療選択の悩み

ただ、病気の原因となる様々な遺伝子情報の解析が進んだからと言って、
どんな治療を選ぶのか、ゼロか100かで決められるわけではありません。

現実には、遺伝情報のうえでは病気のリスクが高いとされても
実際の発病の可能性は低い場合や、その逆のケースもあると思われます。

病気になる可能性や治療が成功する確率が高い精度で分かったとして、
どういう治療を選ぶのか患者の悩みが尽きることはないでしょう。
情報が増えることで、かえって悩みは増えることになるかもしれません。


田村 良彦(たむら・よしひこ)
1986年、早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で
医療報道に従事し連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。2013年、西部本社社会部次長兼編集委員。
同年から2014年まで、ヨミドクターで「医療のことば」を連載。
共著に「数字でみるニッポンの医療」(読売新聞医療情報部編、講談社現代新書)など。
2016-10-07
在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
読売新聞 2016年10月7日

在宅医療の意味と意義は……


先日、仙台市内の国道を車で走っていたら、
街路樹の 楓かえで の葉が赤く色づき始めているのを見つけました。
患者さんのご自宅を訪問する仕事は、嵐や大雪の日は大変ですが、
こんな小さな季節の変化を見つけることができると、少し得をした気分になります。

私が訪問している患者さんは、在宅療養を受けている方ばかりです。
「在宅医療」という言葉は、最近はテレビや新聞等でも話題になっておりますが、
みなさんはどんなイメージをお持ちでしょうか。
いま国は、高齢社会に対応するべく、地域包括ケアの一環として在宅医療を推し進めています。

私は、5年前に介護支援専門員(ケアマネジャー)の仕事で初めて「在宅医療の現場」を知りました。
それまで、在宅医療に対して、「在宅=自宅」「在宅医療=病院医療に劣る」
という漠然としたイメージを持っていましたが、今では180度変わりました。

在宅医療は、自宅だけでなく、介護付き住宅や有料老人ホーム、グループホームなどでも受けることができます。
もし、一人暮らしの方で介護が必要になっても、安心して暮らすことのできる「住まい」を確保し、
地域のさまざまなサービスを受けながら、その人らしく生活を続けることが可能です。

病院に入院する目的は「治療」ですから、いやな検査やつらい治療を受け、
時にはあまりおいしくない食事に我慢をしても「治療」に専念します。

患者さんにとっては、病院は「非日常」であり、「暮らすところ」ではありません。
多くの制約があっても仕方がないと我慢します。
しかし、在宅では「治療」を受けながら「穏やかに暮らす」ことが目的です。
同じ治療を受けるにしても、目的が違えば、
そのケアのあり方も変わってくるのは当然だと思います。

食事にしても、病院における「栄養」は「治療」の一部を担っています。
多くの急性期病院では、「栄養サポートチーム」という、
院内の多職種で構成されるメンバーによって、
患者の栄養状態を改善するためにさまざまな取り組みが行われています。

例えば、「食欲がない原因」が薬の副作用かもしれない……となれば、
薬剤師が別の薬剤を医師に提案したり、リハビリで活動量が増えたら、
栄養士が病院給食のエネルギー量を増やしたり……と、
それぞれの専門職が連携して、患者の栄養状態を観察し、必要なケアを行います。

それでは、在宅ではどのような「栄養サポートチーム」が必要なのでしょうか。

私は「在宅療養生活を継続できる食の支援」が必要だと考えています。
高い目標を設定し、ご本人や介護者ができないようなことを提案しても、
かえって負担になるだけです。

また、ケアマネジャーが立てるケアプランに沿って、
患者さんがどんな生活を望んでいるのかを多職種で共有する必要があります。

医療者は、ともすれば「血液検査データを改善する」ことが目的となり、
患者さんが何のために栄養状態を改善したいのか、
わからないままケアを行ってしまうことがあります。

私は自分ではそうならないように、指針にしている岡田晋吾先生の言葉があります。
岡田先生は、函館市で外来診療と在宅医療を行っている医師で、
長年、在宅医療における栄養ケアの重要性を訴えています。

「栄養管理は栄養指標を達成するために行うのではなく、患者さんの目標を達成するために行うものです。
しっかりと地域の仲間が栄養管理を行い、在宅療養を支え、一つでも夢や目標を達成することができれば、
また次の目標に向かっての栄養管理法を考えます。
また安らかに最期を迎えるための栄養管理というものもあります」(※1)

「患者さんの夢や目標を 叶かな えるために」という視点をもつことで、
「この方は、自分の生活に何を望んでいるのだろう」と考える癖がつきました。

寝たきりで自分で食事ができなくても、「お出かけして外食をしたい」という望みがあれば、
そのためにはどうしたらいいかを皆で考えます。
時にはその「おでかけ」に、私も同行することもあります。

病院に勤務していた頃は、患者さんの外出に付き添うなんて考えられませんでしたが、
喫茶店で大好きなソフトクリームを味わい、
嬉うれ しすぎて涙ぐむ患者さんを見ていると、私までもらい泣きしてしまいます。

ささやかな願いを、日々の暮らしの中で叶えることができれば、
満足感を積み重ねることができます。たとえ障害があっても、
それが豊かな生活を送ることにつながるのではないでしょうか。

※1『在宅栄養管理のプロになる』(岡田晋吾編 医学と看護社)


塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)
「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、
2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。
2016-10-03
産経新聞  2016.10.3
【大隅良典さんノーベル医学・生理学賞受賞】
「オートファジー」 医療への応用研究進む 
神経疾患、がん治療に期待


ノーベル医学・生理学賞が決まった大隅良典氏(71)が
仕組みを解明した細胞の自食作用「オートファジー」。

細胞内での栄養供給や浄化、防御の機能を担う現象で、
神経疾患やがんなどの発症に関係していることがマウスなどの実験で分かってきた。

この働きを促進したり、阻害したりすることで
治療法の開発を目指す研究が進んでいる。

国内で研究成果が目覚ましいのは神経疾患の分野。
神経細胞内にたまった異常なタンパク質は通常、
オートファジーで分解され、蓄積を防いでいることが分かってきたからだ。

大隅氏に師事した東京大の水島昇教授らは平成25年、
脳内に鉄分が蓄積して障害を起こす神経変性疾患「SENDA」の原因は、
オートファジーの遺伝子異常であることを発見した。

また東京医科歯科大のチームは27年、過度の食事制限で
脳細胞が栄養不足になると、アルツハイマー病が悪化することを突き止めた。
栄養不足になると、細胞内に異常なタンパク質が過剰に増加。
オートファジーで分解しきれず蓄積され脳細胞が死んでしまう。

微生物化学研究会のチームは今年6月、細胞内の異常なタンパク質を
オートファジーが見つけて隔離する仕組みを解明。
パーキンソン病の予防や治療方法の確立に役立つ可能性がある。

生活習慣病との関係も次々と明らかになってきた。
順天堂大のチームは26年、2型糖尿病の発症抑制に
オートファジーが必要だとする論文を発表した。
原因となる細胞内の異常タンパク質は、通常は毒性を示さないが、
オートファジーの機能が低下すると毒性が表れ糖尿病を悪化させていた。

東京医科歯科大のチームは27年、高血圧の一因である血管収縮にも
オートファジーが関わっていることを明らかにした。
血管の収縮に関わる物質は、通常はオートファジーで分解されているが、
異常が生じて分解されなくなると収縮が始まるという。

一方、大阪大のチームはオートファジーが抑制されると脂肪肝が悪化することを見いだした。
高脂肪の食事をマウスに与えると、肝臓内でオートファジーを抑制するタンパク質「ルビコン」が増加。
細胞内の脂肪が分解されず蓄積が 進み症状が悪化する。
ルビコンの働きを阻害する薬を開発すれば、効果的な治療につながりそうだ。

関心が高まっているのががんとの関係だ。
オートファジーはがん細胞の増殖を助けてしまうことが以前から指摘されている。
抗がん剤を投与すると、がん細胞は急激な栄養不足に襲われるが、
内部でオートファジーが起こり、不要なタンパク質などを食べて生き延びてしまうのだ。

大隅氏に師事した大阪大の吉森保特別教授らは25年、
細胞内にオートファジーを促進する物質と抑制する物質があり、
これらのバランスが崩れると、がんなどの発症につながることを突き止めた。

こうした国内の研究成果は、いずれもマウスなどを使ったものだが、
米国ではオートファジー阻害剤でがんを治療する臨床試験が既に数十例行われており、
実用化の研究は米国が先行しているのが実態だ。
この
2016-10-03
Link de Diet 2016.9.27 , EurekAlert 


赤肉の摂取、特に加工肉の摂取が、糖尿病、心臓病、脳卒中、がんのリスクを、
軽度から中程度であるが、有意に増加させることが見出された、
というスウェーデン・カロリンスカ研究所からの研究報告。

本レビューでは、赤肉の摂取が健康にもたらす潜在的な悪影響について、
包括的に概要を述べている。

さらに、赤肉の生産が、温室効果ガスの排出、化石燃料の利用、
水資源の利用と水質への影響など、環境負荷を与えることも指摘している。

そのため、一部の欧州諸国では、新しい食事ガイドラインにおいて、
人の健康と“地球の健全さ”といった2つの問題が統合され、
赤肉の摂取制限を推奨しているという。

赤肉(牛肉、子牛肉、豚肉、羊肉)の摂取が、食事において、
たとえば、必須アミノ酸、ビタミン(B12など)、ミネラル(鉄、亜鉛など)
といったいくつかの重要な栄養素を与える。

加工した赤身の肉(ハム、ソーセージ、ベーコン、フランクフルトソーセージ、サラミなど)は、
食品の保存可能期間を延ばしたり、味を良くしたりするために、
加工(塩漬け、燻煙、化学保存料や添加物の使用)される。

ここ数十年のあいだ、赤肉の摂取量は、世界的に増加しており、
特に発展途上国での増加が著しい。
同時に、赤肉の摂取が多いこと、特に加工肉の摂取が、
いくつかの主要な慢性疾患のリスクの増加と関連するという証拠が増加しつつある。

本レビューでは、赤肉の摂取が健康にもたらす潜在的な悪影響に関する
前向きコホート研究に基づいて、蓄積された証拠について、
包括的な概要が提供されている。

調査では、糖尿病、冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中、
いくつかの部位のがんなどの主要な慢性疾患について調べられた。
プール分析とメタ分析からのリスク推定値が、
最近発表された調査結果とともに提示されている。

少なくとも6つのコホートに基づき、1日あたり加工していない赤肉100gの摂取の結果、
リスクは統計的に有意でないものから、統計的に有意なリスク増加
(脳卒中および乳がん11%、心血管死亡率15%、大腸がん17%、
進行性前立腺がん19%)を認めるものまで存在した。

1日あたり加工肉50gの摂取では、調査した疾患のほとんどにおいて、
統計的に有意なリスク増加が認められ、総前立腺がん4%、がん死亡8%、
乳がん9%、大腸がん18%、膵臓がん19%、脳卒中13%、総死亡率22%、
心血管死亡率24%、糖尿病32%といったリスク増加があった。

観測されたリスクと赤肉生産の環境への影響の根底にある
潜在的な生物学的メカニズムについても説明されている。

エビデンスに基づく統合メッセージでは、
赤肉、特に加工肉の摂取が多いことが、
いくつかの主要な慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連する、
と結論できるとしている。

出典は『内科学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-10-03
亜鉛の摂り過ぎ、感染症リスクに
2016.9.27 , Vanderbilt University Medical Center


亜鉛サプリメントの摂取などによって過剰に亜鉛を摂取すると、
腸内細菌叢を変化させてしまい、多剤耐性菌である
C-ディフィシル菌への感染リスクにつながるという。
米国ヴァンダービルト大学の動物実験から。

「体内に何を入れるかを自分で把握することは重要です。
総合ビタミン剤その他のサプリメントは、
特定の栄養素が本当に欠乏している人にだけ必要なのです」と、
研究者のスカー博士は話している。

博士の研究チームは、高レベルの亜鉛が腸内細菌叢を変化させることを発見した。
これは抗生物質による治療を行ったときのように、
C-ディフィシル菌感染の第一のリスクとなる。

C-ディフィシル菌は、院内感染症における主要な原因菌であるため、
入院患者や、抗生物質を服用しており亜鉛サプリメントを利用している患者は
感染リスクがより大きくなる可能性がある。

「患者さんたちが食事から摂取する亜鉛の量を考慮する必要があります。
そして、他の微量栄養素も腸内細菌叢に影響を与えている可能性があります。」とスカー博士は続ける。

今回の結果は、入院も抗生物質の服用もしていない人の間で、
C-ディフィシル菌感染症が増えている理由を明らかにするかもしれないという。

米国では、C-ディフィシル菌感染症の患者は毎年50万人にも上り、
下痢から致死的な大腸炎までを引き起こしている。

この研究では、マウスを用いて食事に含まれる金属と感染症の関係を調べた。
すると、高用量の亜鉛を含む食事を与えたマウスは、腸内細菌叢が変化し、
通常食のマウスに比べて低用量の抗生物質の服用でも
C-ディフィシル菌に感染しやすくなっていることがわかった。

また、高亜鉛食のマウスは、C-ディフィシル菌感染症が
重症化して死亡率も高くなったという。

「抗生物質は、腸内の多くの有用菌を死滅させ、
微生物の多様性を失わせることによって
C-ディフィシル菌に侵されやすい状態にしてしまいます。

高亜鉛食も、同じようにして微生物叢の構造を変えてしまい、
C-ディフィシル菌に感染しやすく成ってしまうのです。」
などとスカー博士は述べている。

なお、C-ディフィシル菌に感染してしまった場合、
亜鉛結合たんぱく質であるカルプロテクチンが、
亜鉛の働きを抑えることによってC-ディフィシル菌と戦ってくれることも示された。

出典は『ネイチャー医学』。 (論文要旨)      
2016-10-01
読売新聞  2016年10月1日

糖尿病、闘病期間長いと脳が萎縮―九州大


「海馬」で顕著

脳には、人が生きていく上で重要な、とても多くの機能が備わっている。
その脳の容積が減ってしまうのが脳萎縮。
加齢によって誰にでも起こり得る症状だが、
今回、糖尿病によって引き起こされる可能性が指摘された。

九州大学大学院の研究グループが行っている「久山町研究」によると、
糖尿病患者では脳全体が萎縮しており、
特に「海馬」という記憶や空間学習能力に関わる部分で顕著で、
糖尿病にかかっている期間が長いほどその傾向が強まっていたという。

詳細は、米医学誌「Diabetes Care」に掲載されている。

海馬でより強い影響が

久山町研究は、九州の福岡市に隣接した糟屋(かすや)郡久山町の住民を対象に行っている、
生活習慣病に関する疫学研究。九州大学と久山町の共同事業として、1961年に始まった。
久山町の人口は現在、約8,400人。住民の年齢や職業分布が全国平均とほぼ同じで、
平均的な日本人の集団とされ、研究精度の面でも評価が高い。

今回の研究では、65歳以上の地域住民1,238人を対象に、
磁気共鳴画像(MRI)検査を使って脳の容積を測定。
萎縮の度合いと糖尿病との関連を調べた。

その結果、糖尿病患者は糖尿病でない人に比べ、脳全体の萎縮が進んでおり、
その中でも特に海馬の萎縮が進んでいることが示された。
この傾向は、血糖値(経口糖負荷試験2時間値)が高い人ほど顕著だったという
(ただし、空腹時血糖値との関連はみられず)。

さらに、中年で糖尿病と診断された人は、
糖尿病でない人や高齢になって糖尿病と診断された人に比べて
海馬の萎縮の程度がより強いことが示唆されるなど、
糖尿病にかかっている期間が長い人ほど症状が進んでいることが分かった。

研究グループは「今回の研究で、長い糖尿病歴や食後の高血糖が脳萎縮のリスクとなり、
その影響はとりわけ海馬で強いことが示された」としている。
2016-09-28
産経新聞 2016.8.18

厚労省が次官級「医務総監」ポスト創設へ 
保健医療の司令塔として国際展開や危機管理で閣僚らをサポート


厚生労働省が保健医療政策の司令塔役を担う事務次官級の
医系技官ポストの創設を検討していることが17日、分かった。

医系技官は医師免許を持つ国家公務員で、米国の公衆衛生部門のトップである
「医務総監(サージョン・ジェネラル)」がモデル。

日本版「医務総監」には専門知識を生かし、
保健医療政策の国際展開や危機管理などの幅広い分野で
強いリーダーシップを期待する方針だ。

厚労省は平成29年度の機構・定員要求に日本版「医務総監」の創設を盛り込みたい考え。
次官級ポストを創設した場合、他の幹部ポストの廃止を含めた
組織改編も必要になることから省内外の調整が続いている。

日本版「医務総監」をめぐっては、塩崎恭久厚労相直属の有識者による
「保健医療2035策定懇談会」が昨年6月に取りまとめた中長期ビジョンの中で、
保健医療政策について首相や厚労相に総合的なアドバイスを行う任期5年の
「保健医療補佐官(チーフ・メディカル・オフィサー)」の創設を提言。

「技術的、公衆衛生的な専門性・中立性を担保しつつ、
大臣などの政治家をサポートする」としており、
日本版「医務総監」もこうした役割を担うことを想定している。

モデルとする米国の医務総監は、公衆衛生局士官部隊(PHSCC)のトップで、
1964年に喫煙の危険性に関する初めての報告書を発表するなど
米国の公衆衛生分野で中心的な役割を果たしている。

「医師として米医学界でも権威ある存在で、
その発言は強い影響力を持つ」(厚労省幹部)という。

日本にも戦前の陸海軍に軍医のトップとして「軍医総監」が存在。
明治の文豪、森鴎外(本名・森林太郎)は医学者として陸軍の軍医総監も務めた。

戦後は医系技官のトップが旧厚生省の医務局長などに就き、
日本の医療政策を取り仕切ってきたが、
「医系技官は現場の実態を知らずに政策立案する」といった批判も少なくなく、
舛添要一厚労相時代に医系技官の固定ポストだった
医政局長が事務官に差し替えられたこともあった。

2016-09-26
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年9月27日

[抗酸化食品]十分か不足かそれが問題だ


私たちが生きて行くために酸素は必要不可欠ですが、
呼吸により体内に取り込まれた酸素の一部は「活性酸素」注1)というものに変化します。
活性酸素は、細胞膜を形作る脂質や、遺伝子であるDNA等の生体分子を攻撃し、
その化学構造を変えてしまう力を持っています(このことを「酸化」と呼びます)。

酸化により構造が変わってしまった生体分子は
本来の機能を十分に発揮することが出来なくなります。
私たちの体は、活性酸素による酸化に対抗するための「抗酸化力」
(抗酸化酵素や抗酸化物質)を持っています。

ところが、不規則な生活やストレス等により抗酸化力が衰えてしまうと、  
生体分子が傷つくのを防ぐことが難しくなり、このことが、
がん、動脈硬化、アルツハイマー病等の様々な病気の原因の一つになると考えられています。

そこで酸化による生体分子の障害を防いで健康を維持するため、      
抗酸化物質を豊富に含む食品=抗酸化食品が注目されています。


食品中に含まれる抗酸化物質の働き

ビタミンとして知られるビタミンCやビタミンE、ポリフェノール注2)や
カロテノイド注3)等が食品に含まれる代表的な抗酸化物質です。

抗酸化物質は活性酸素と化学反応し、
活性酸素が生体分子を傷つけないようにする働きを持っています
(このことを活性酸素の「消去」と呼びます)。  

体の中で生じる活性酸素は幾つかの種類があり、             
それぞれに対し有効な抗酸化物質が違います。

例えば、「一重項酸素」という種類の活性酸素を消去する働きは、     
カロテノイドがとても強いことが知られています。            
また、複数の抗酸化物質が協力して活性酸素を消去することもあります。

例えば、水に溶ける抗酸化物質であるビタミンCは、油である細胞膜の中で 
生じた活性酸素をうまく消去することができません。
ところが、細胞膜の中に油に溶ける抗酸化物質であるビタミンEがあると、
ビタミンCはビタミンEの働きを助け、効果的に活性酸素を消去することが知られています。

このように、食品中に含まれる抗酸化物質は役割分担をしつつ、      
時にお互い協力して、体の中の活性酸素を消去すると考えられています。

【代表的な抗酸化物質とそれを多く含む食品】

ビタミンC: ビタミンE: ポリフェノール: カロテノイド:

パプリカ, アーモンド, 緑茶(カテキン), 緑黄色野菜(ベータカロテン)

ブロッコリー, 小麦胚芽, 大豆(イソフラボン), トマト(リコピン)

キウイフルーツ, 植物油, たまねぎ(ケルセチン), サケ(アスタキサンチン)

レモン, マーガリン, みかん(ヘスペレチン), ホウレンソウ(ルテイン)




サプリメントの効果は一定せず

偏った食生活は万病のもとです。1980~90年代には既に、
ビタミンC、ビタミンE、代表的なカロテノイドである
ベータカロテンなどの抗酸化物質が少ない食生活を送っている人は、
がんや動脈硬化の発症リスクが高まることが明らかになっていました。

健康になるには、生活習慣を改めるのが一番なのですが、
諸事情により難しい場合もあります。
そこで、抗酸化物質をサプリメントとして手軽に摂取することで
これらの病気を予防できないか、という数多くの研究が行われました。

しかし、これらの研究は、残念ながら一定の結論に至っていません。

つまり、サプリメントが有効であった研究もあるのですが、
有効でなかった 研究も同程度あります。
特に、喫煙者の肺がん予防のために高濃度のベータカロテンサプリメントを使ったある研究では、
サプリの使用により肺がんのリスクが高まるという本末転倒の結果となってしまいました注4)。

抗酸化サプリの効果が一定しない原因としては、日常的な食事から     
摂取している抗酸化物質の量や、受けている酸化によるストレスの強さ等に 
個人差が大きいことが考えられます。



現時点での必要十分量は不明

これまでの研究を総合すると、食事からの抗酸化物質の摂取が不足すると  
健康が損なわれるのは間違いありません。

ただ、おそらく、個人個人で必要十分な抗酸化物質の量や種類は違うはずなのですが、
この部分の解明が現時点では不十分です。そのため、日常の食事で抗酸化物質の摂取が
「十分なのか不足しているのか」分からないという状況です。

抗酸化サプリの研究から、抗酸化物質は取れば取るほど健康に良いとは言い切れず、
必要十分量があるはずです。全体として抗酸化物質を豊富に含む食生活が、
誰にとっても健康維持に役立つことは疑うべくもないでしょう。

しかし、抗酸化物質のサプリメントや単一あるいはいくつかの抗酸化物質を 
たくさん含む素材を用いた健康食品が健康維持にプラスに働くかどうかは、 
まだまだ研究不足だと感じます。

(国立健康・栄養研究所 竹林 純)

抗酸化物質の安全性・有効性に関する科学的根拠は

以下のサイトを参照してみてください。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所             
「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

⇒ ビタミンC

⇒ ビタミンE

⇒ ベータカロテン


注1)活性酸素:活性酸素種と呼ばれることもある。ヒドロキシルラジカル、
ペルオキシルラジカル、一重項酸素等の様々な化学構造を持ち、
それぞれ生体分子に対する反応性や、有効な抗酸化物質・抗酸化酵素が異なる。

注2)ポリフェノール:植物由来の食品に広く含まれる分子内に
複数のフェノール性水酸基を有する化合物の総称。
緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるイソフラボン、たまねぎに含まれるケルセチン、
みかんに含まれるヘスペレチン等の他、たくさんの種類がある。

注3)カロテノイド:黄~赤色の色素で、野菜・果物を中心に、一部の魚類や甲殻類等にも含まれる。
緑黄色野菜に含まれるベータカロテン、トマトに含まれるリコピン、
サケに含まれるアスタキサンチン等が知られている。

注4)サプリ使用によって肺がん発症率の増加が認められたため、
本来の期間を短縮して臨床試験が打ち切られた(CARET試験)。
サプリ使用者の血液中からは通常では考えられないほど高濃度のベータカロテンが検出されており、
食品由来の抗酸化物質であっても過剰摂取による弊害が起こり得ることが明らかとなった。
2016-09-26
読売新聞 2016年9月26日
元気なう
[高齢者の睡眠](3)状況に合わせ、上手に睡眠薬


高齢者の不眠では、加齢による変化を理解したり、
生活習慣を見直したりすることが重要だ。

背景に、うつ病や認知症、心臓病、リウマチなど、
心や体の様々な病気が隠れていることもある。
こうした病気をしっかりと治療する必要がある。

それでも、不眠症状が改善せず、
日常の生活に影響が出る場合、
上手に睡眠薬を活用しよう。

久留米大学教授(神経精神医学)の内村直尚さんは
「生活習慣の見直しで、本来、不眠症状の多くは改善する。
しかし、一人暮らしのお年寄りなどでは、実行が難しいケースも多い。
睡眠薬を活用しながら、生活習慣を見直していくのが理想」と指摘する。

治療が必要かどうかの判断は
「午前中に、がまんできない眠気があるか」が一つのポイントだ。

高齢者は、薬を代謝、排せつする機能が落ちているので、
薬の影響が残りやすい。睡眠薬では、転倒、骨折に注意が必要だ。

国内で最も使われるベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、
脳の興奮を抑えるGABA系に作用する。
効き目が鋭い反面、筋 弛緩しかん 作用や鎮静作用が強く、
転倒を招く危険性がある。

最近は、GABA系以外に、体内リズムを調整するメラトニン系や、
覚醒を調整するオレキシン系に作用する睡眠薬も使えるようになった。

内村さんは「高齢者の状況に合わせて、
上手に睡眠薬を選んで使うことが大切」と話す。(杉森純)
2016-09-26
予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
読売新聞  2016年9月26日

新聞を読むと認知症になりにくい


 こんにちは。

予防医学研究者の石川です。

つい先日、言わずと知れた脳科学者・茂木健一郎さんと対談させていただきました。

 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160914-OYTET50002/



茂木健一郎さんのサービス精神

茂木さんとお会いするのは初めてだったのですが、
大変失礼ながら第一印象は「落ち着きのない方だなー」というものでした(笑)。

とにかく頭も体も終始動かし続けていて、
当日のイベント写真をご覧いただくと分かるのですが、
もはや用意された椅子に座ることなく、
ずっと立ったまま熱弁をふるっていらっしゃいました。

また一方で、さすがメディアで大活躍されているだけに、
会場を盛り上げようとするサービス精神も大変勉強になりました。
昔から私は、すぐに「いいなー」と思った人をまねしたくなるので、
ついついサービス精神を発揮して次のようなことを口走ってしまいました。

「新聞を読むと、認知症になりにくいという研究が最近出たんですよ!」

イベントの主催者が新聞社ということもあったので、
「いやいや石川さん、それはリップサービスが過ぎませんか?」という批判も頂くかなと思ったのですが、
確かにそういう研究が出ているので、突拍子とっぴょうしもないことを言っているわけではありません。


新聞を読んでいない人は 1.51倍 認知症になりやすい

ちなみに研究を行ったのは、星城大学の竹田教授らです。
健康な約7000人の高齢者を5年にわたり追跡し、
どのような特徴を持った人が認知症を発症しやすいのかを調べたものです。

その結果、新聞を「読んでいない人」は、「読んでいる人」に比べて
1.51倍認知症になりやすかったと報告されています。

【参照】http://www.seijoh-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/04/20160427ninnchishorisuku.pdf

もちろん新聞が唯一の要因というわけではなく、
ほかにも認知症発症に関係する13の要因が竹田教授らの研究で報告されています
(例えば「仕事を持っていない人」は、「持っている人」に比べて認知症になりやすいなど)。

もちろんこれはいつも言っているように、あくまで一つの研究結果でしかないので、
今後さらなる研究を重ねていかないと本当にそうなのかどうかは分かりません。

ただそんなこと言っていると、このブログで書けることがなくなってしまうので(笑)、
一つ一つご紹介し、もし間違っていることがのちに分かれば丁寧に修正していきたいと思っています。

それにしても、やはりイベントというものはいいものですね。
読者のみなさまとの交流も楽しかったですし、
なにより、ぜひまた茂木さんと対談をしてみたいなと思っています。

 茂木さん、ありがとうございました!!(><)

 それではまた次回!


石川善樹(いしかわ よしき)
予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。1981年 広島県生まれ。
東京大学医学部卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、
常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。
専門分野は行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。

著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)。
2016-09-20
産経新聞  2016.9.20

認知症と紛らわしい譫妄 背景に身体症状も 気付いたら早めの受診


 認知症の高齢者が突然、普段と様子が変わり、会話のつじつまが合わなくなることがある。
認知症そのものと紛らわしいが、そうした患者の多くは認知症が悪化したのではなく「譫妄(せんもう)」と呼ばれる状態だ。
ほとんどは原因として身体症状が隠れているため、できるだけ早い受診と治療が必要。
譫妄を見逃さないために、家族や周囲の人々はどんな様子、言動に気を付けたらいいのか、専門家に聞いた。

心の問題でない

譫妄の「譫」には「うわごと」という意味がある。
国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)精神腫瘍科の小川朝生科長によると、
医学的には意識障害の一種で、脳の働きの乱れと位置付けられる。

小川科長は「頭部外傷や手術後などでは若い人、持病のない人でも起こる。
認知症の高齢者では特に判別が難しい」と解説する。

小川科長によると、重要なのは譫妄が心の問題ではなく、
脱水や感染症、薬物の影響などを背景に身体的な原因があること。
原因を突き止めて治療すれば改善が期待できる半面、
放置されれば、身体症状が悪化し、認知症も進む恐れがある。

譫妄には、興奮して言動が激しくなる「過活動型」と、
意識が低下したり、うつらうつらしたりする「低活動型」があり、
見逃しやすいのは後者。
入院中は医療者がそばにいるが、在宅の認知症患者では、
家族や周囲の人が変化に気付くことが大切だ。

急な発症と変動

東病院のパンフレットなどによると、譫妄の特徴は「意識が曇ってぼんやりする」
「話のつじつまが合わない」「見えないものが見える(幻視)、あり得ないことを言う(妄想)」など。

食事や会話に集中できず、食べ物をこぼしたり、会話の内容を覚えられなかったりする。
睡眠のリズムが乱れて昼夜が逆転し、夜間に症状が激しくなることが多い。
夕方から落ち着かず、家の中をうろうろすることもある。

市立札幌病院精神医療センター(札幌市)の上村恵一副医長は、
認知症との最も大きな違いは、症状が急に表れ、一日の中で出たり治まったり、変動することだという。
「徐々に進む認知症とは違い、『何日から』『今朝から』と発症時期がはっきりしている」

譫妄に気付いたらどうすればいいのか。
ぼうっとしている場合の方がむしろ急を要する場合があるため、
できるだけ早く医療機関に連れて行くべきだが、
興奮している場合は慌てず、落ち着くのを待ってから受診すればいいという。

上村副医長は「どんなに異常だったかよりも、『いつから症状が出たか』と
『きっかけ、原因に心当たりがあるか』をよく思いだして、医師に伝えてほしい」と話す。
風邪をひいた、新しい薬を飲んだ、外で転んで帰ってきた…。
その種の情報を手掛かりに、治療が早くできることがある。

医療側も取り組み

認知症と譫妄を判別するのは医療者でも難しく、病院では複数の診療科の医師、看護師らの連携が欠かせない。
東病院の小川科長は平成27年度、全国の病院を対象に、認知症患者の受け入れ態勢の実態を調査。
本年度からは、譫妄をはじめ精神症状に適切に対応できるよう看護の質を高めるプログラムを
約10カ所の医療機関で実際に応用し、その効果を確かめる予定だ。

小川科長は「認知症で見られるいつもの症状と違うと感じたら、
かかりつけ医や病院を受診してほしい。
医療現場では来院時の譫妄を見逃さず、
心身の症状を悪化させずに在宅に戻せるようにしたい」と話している。
2016-09-20
産経新聞  2016.9.20

腎臓病 定期的な尿検査でチェックを


高血圧で通院している60代の女性患者さんに年に数回、
尿検査と血液検査を受けてもらっています。あるとき、
尿検査で潜血とタンパクが出た上、血液検査で腎臓の機能を示す
血清クレアチニン値が上昇し、データから腎臓病が疑われました。

患者さんは「潜血というと尿に血が混じっているの? 
尿は赤くないし、体調も特に変わらないのですが…」と戸惑っていました。

専門の病院で、体外から針を刺して腎臓の組織を採取する腎生検を
行ったところ、「IgA腎症」という腎臓病であることが分かりました。

IgA腎症は、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAという
タンパクが沈着する病気で、適切な治療をしないと腎臓の機能が低下し、
5~20年で人工透析が必要となります。

初期には症状がないことがほとんどで、
健康診断などの尿検査でみつかることが多い病気です。
この患者さんは幸い、初期だったため、
治療を受けることで腎機能の悪化を食い止めることができました。
高血圧も十分に管理できており、以前と変わらず元気に過ごしています。

腎臓は、血液から老廃物など余分なものと水分を抜き取り、
尿として体外に捨てる役目を果たしています。腎臓の機能が低下すると、
尿が出なくなり、体中に老廃物などがたまってしまいます。
透析は、低下した腎機能の代わりの役割を果たすもので、
日本の透析患者は約30万人に上ります。

日常の診療でしばしば目にする腎臓病は、糖尿病か高血圧を原因とするものです。
糖尿病で高血糖が長期間続くと、タンパク尿が出るようになり、
次第に腎機能も低下していきます。

ある程度まで悪化すると進行を抑えることは難しく、
末期の腎不全まで進行することも珍しくありません。
日本の透析患者は、糖尿病が原因となることが一番多いとされています。

高血圧もコントロールが悪いと腎機能を低下させます。
末期の腎不全まで進行する割合は低いのですが、
高血圧患者自体が多いため、相当な人数になっています。

腎臓病で腎機能が低下すると、心筋梗塞や脳卒中など
心血管疾患を引き起こすリスクも高くなります。

腎機能の低下を防ぐには、糖尿病や高血圧などの人はしっかり治療し、
肥満や過剰な塩分摂取に気を付けることが大切です。

健康診断などの尿検査で「異常所見」が続くようなら、自覚症状がなくても
一度は腎臓内科など専門科で診てもらうことをお勧めします。

(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)
2016-09-19
読売新聞 2016年9月19日

[高齢者の睡眠](2)「不眠」感じ方の問題も


不眠症状は、本人が感じる主観的な評価と、
客観的な評価に大きな差があることが多い。

眠れないと訴える人も、脳波や睡眠日誌を調べると、
本人の申告よりも、長い時間寝ているケースがほとんどだ。

高齢者の場合、不眠症状を訴えていても、半数以上は日常の生活に支障が出ていない。
「本人の主観的な評価が変わることが大きなゴール。
治ることをあきらめることで、治ることもある」と、
早稲田大学助教(臨床心理学)の岡島 義いさ さんは説明する。

「昔のようにぐっすり眠りたい」と悩んでいた人も加齢による変化を理解して、
受け入れることで、症状は変わらなくても、主観的な評価が改善し、
不眠に悩まなくなることがある。

同時に、生活習慣を見直すことも大切だ。

高齢者は、やることがないから、まだ眠くないのに早めに寝床に入るというケースも多いが、
これは寝付きを悪くする大きな原因だ。布団の中にいる時間をあらかじめ決めて、
眠くなってから、床につくようにしよう。

朝の太陽の光は健康に良いと言われているが、
朝早く目覚めてしまう人には逆効果になる。
体内時計が、朝型にさらにシフトしてしまうからだ。
朝が早すぎる人は、午後、光を浴びるのがお勧めだ。

長い昼寝は、夜間の眠りを妨げる。
ウトウトするなら、影響が少ない午前中が良い。

運動は、ほどよい疲れで眠りを誘うとともに、
不眠の原因となるうつにも効果がある。
2016-09-19
使うかそれとも無くすか: 運動やめると脳血流量減少
Link de Diet 2016.9.5 , EurekAlert 

  
運動をやめると数週間のうちに心肺持久力が低下することは経験的に誰もがよく理解しているが、
脳はどのような影響を受けるのだろう? 

メリーランド大学医学部の研究者による研究で、健康で身体的フィットネスの状態の良い
50~80歳の比較的高齢の成人に対して、
10日間の運動休止前後での脳血流の変化を検討したという報告。

MRIを用いた検査から、運動休止によって脳の海馬を含む
いくつかの領域の脳血流が有意に低下していることが明らかになった。

海馬体は、記憶と学習において脳の中でも大事な働きをしている部位の一つであり、
アルツハイマー症患者ではこの領域が最初に萎縮することが知られている。

齧歯類を用いた研究では、運動によって齧歯類の海馬体は血管新生と神経新生が亢進し、
高齢者による研究では、海馬体の萎縮を抑制する事が知られている。
そのため、ほんの10日間だけでも運動をやめることで、
脳の健康を保つ領域の脳血流量の減少が見られたという知見は、
とても重要な含意を持つものであると研究者は指摘する。

被験者は全員マスターズ競技に参加するアスリートであった。
50~80歳で平均年齢は61歳、少なくとも15年間の持久性競技への参加歴があり、
直近でも持久性競技に参加した記録のある選手である。
この競技層の一般的なトレーニングルーティーンでは、
週当たり最低4時間程度の高強度持久力トレーニングを行っている。
平均すると、被験者らは週当たり59km程度のランニング距離があり、
1日あたりに換算すると約10kmを毎日走っていることになる。

そのため、年齢グループで見れば多くが
同年齢の最大酸素摂取量上位90%以上の能力を有していることは、驚くべきことではない。
最大酸素摂取量は個人個人の最大酸素消費量の指標であり、
有酸素性身体的フィットネスレベルを反映していると考えられる。

研究者らは脳血流をMRIスキャンを用いて検討した。
通常のトレーニングルーティーンを保っており、
フィットネスレベルが高い状態でまず測定し、
10日間の運動なし期間を経て、再び計測したのだ。

結果、休息時の脳血流量は脳の中の8つの領域で有意に低下した。
この血流量低下領域には左右の海馬や、脳のデフォルトネットワークシステムと知られ、
アルツハイマー症で急速に影響を受ける事が知られるいくつかの部位が含まれている。
この知見は、身体活動が認知機能に影響を与えるという近年蓄積されつつある科学的理解に、
さらに新しい情報を与えるものとなっている。

身体活動性が低いと、認知的障害を抱える割合が高く、認知症になる確率も加齢とともに増加する。
しかしながら、認知機能が運動を10日間休止することによって低下するという知見は本研究からは得られなかった。

運動を10日間休止すると、持久性フィットネス低下と同様に、
脳血流量も低下するという事が言えるだけである。

それでもなお、この知見は、高齢成人にとって重要な示唆を持つものである、と研究者は指摘する。
これらの急速な血流量の変化がどのような機序で起こるのか、
長期的な作用はどのようにもたらされるのか、
また運動最下位によってどの程度の期間でこの血流量は
以前と同じレベルまで改善するのかといった点を理解する為に、
今後の研究を行うことが望まれる。

出典は『加齢神経科学の最前線』。 (論文要旨)      
2016-09-19
食事と運動を組み合わせてアルツハイマー症
関連のたんぱく蓄積を抑制
Link de Diet 2016.9.8 , EurekAlert

UCLAセメル神経科学人間行動研究所の研究者らによる報告で、
健康的な食事と定期的な身体活動、BMIレベルが通常である事が、
アルツハイマー症の発症に関連したたんぱくの蓄積が起こることを
抑制する可能性があるようだという研究。

研究では、44人の40~85歳の成人を対象に(年齢中央値62.5歳)検討した。

この被験者は緩除な認知的減退を経験しているものの認知症とは未診断であり、
PETスキャンを用いて脳の中のプラークと神経のもつれを計測した。

さらに被験者のBMI値、身体活動レベル、
食生活その他の生活習慣についても情報が集められた。

プラークとは、βアミロイドたんぱくと呼ばれる、
脳神経細胞の間の空間に蓄積される有毒なたんぱくの沈積であり、
もつれとは脳細胞中に見られるタウたんぱくの絡まった状態で、
この二つの指標がともにアルツハイマー症のカギとなる因子であると考えられている。

研究では、一つ一つの生活習慣因子(健康的なBMI、身体活動、地中海式食事法)などが
プラークともつれのそれぞれのレベルが低いことに関連している事が明らかになった。

地中海式食事法とは、果物や野菜、豆類やシリアル、魚介類が豊富で 肉と乳製品の割合が少なく、
飽和脂肪酸に対して不飽和脂肪酸の割合が高く、適度なアルコール摂取を含む食事形態のことである。

深刻な記憶障害などの症状が出る前に
分子レベルでの生活習慣の影響を検出することが出来たこと自体が
驚くべき事実である、と研究者はいう。

以前の研究では、健康的な生活習慣がアルツハイマー症の
発症を遅らせることに関連すると報告されていたが、
今回の研究は、まだ認知症と診断されていない被験者において、
直接的に生活習慣が異常なたんぱく質の蓄積に関連している事を示す最初の報告となった。

変更不可能な因子として加齢はアルツハイマー症のもっとも高いリスクファクターである。
これは米国内で推定520万人に影響を与えており、
2,000億ドルを超える医療コストを毎年支出している計算になる。

本研究は、健康的な生活習慣を維持することがアルツハイマー症の
発症予防には重要であるという考えを補強するものとなった。
臨床的に認知症と診断される前であっても、
健康的な生活習慣を維持することが大事なのだ。

この知見は、アルツハイマー症を予防するために必要な
患者の能力についてのカギとなるような洞察をあたえるのみならず、
臨床家がこれらの変化についてイメージし発見する能力という
意味でも洞察を与えるものである、と研究者は指摘する。

研究の次の段階としては、画像イメージングと食事、運動、ストレスや認知的健全性など
その他の変更可能因子のの介入研究を組み合わせて検討する事にあるという。

出典は『米国老人精神医学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-09-17
読売新聞 2016年9月17日

抗菌ハンドソープ、販売禁止へ―米国


トリクロサンなど19種類の成分を含む製品が対象

風邪やインフルエンザといった感染症は、
手を介して口から感染する「接触感染」が、
主な感染経路の1つだ。

そのため、感染症の予防には手洗いが欠かせない。
ドラッグストアに並ぶ手洗い用せっけんは種類が豊富で、選ぶのに迷うほどだ。
そんな手洗い用せっけんに関して、米食品医薬品局(FDA)は9月2日、声明を発表した。

抗菌作用があるとして一般向けに販売されているせっけんやハンドソープなどのうち、
トリクロサンやトリクロカルバンなど19種類の殺菌剤が含まれる製品の販売を禁止するという。
詳細は、FDAのホームページに掲載されている。
なお、トリクロサンなどが配合された薬用せっけんや抗菌ハンドソープは、国内でも販売されている。

「通常のせっけんと流水で手洗い」がベスト

FDAは2013年12月、殺菌剤が含まれるせっけんの規制案を発表した。
これは、トリクロサンやトリクロカルバンなどの殺菌剤を含むせっけんを長期間使うと、
抗菌薬が効かない菌(耐性菌)が発生したり、
甲状腺ホルモンや生殖ホルモンに悪影響を及ぼしたりする可能性があるとの研究報告を受けたものだ。

殺菌剤が含まれている一般向けのせっけんやボディーソープなどの製品を販売する企業に対し、
FDAは安全性と有効性の追加データを提出するよう求めていた。
提出されたデータを検証したところ、これらの製品が通常のせっけんに比べ
感染症の予防効果を発揮することを証明できなかったという。

今回の声明では、販売企業に対して1年以内に指定の成分が含まれる製品の販売を中止するか、
同成分が含まれない製品に切り替えて販売することが求められている。

最終的に販売の中止が決定されたのは、トリクロサンやトリクロカルバンの他、クロフルカルバン(ハロカルバン), 
フルオロサラン、ヘキサクロロフェン、ヘキシルレゾルシノール、ヨウ素含有化合物など、
19種類の殺菌剤が含まれる一般向けのせっけんやハンドソープなどの製品。

挙げられた19種類の殺菌剤は、国内でも一部のハンドソープや
せっけん、マウスウォッシュなどに配合されている。

ただし、一般向けの手指の除菌用ローションやジェル、手ふき用ウェットティッシュ、
医療機関で使われているせっけんやハンドソープは規制の対象外となっているようだ。

なお、2013年に規制案が発表されたのを受け、
米国では既に一部の企業がこれらの殺菌剤の使用を中止している。

また、規制案で検証すべき成分として挙げられていた塩化ベンザルコニウム、
塩化ベンゼトニウム、クロロキシレノールの3種類については、
安全性と有効性のデータの提出期限を1年間延期。
データ収集期間中は、これらの成分が含まれる製品の販売は許可されるという。

今回の規制に関し、FDA医薬品評価研究センター(CDER)の
ディレクターを務めるジャネット・ウッドコック氏は、
「抗菌作用があるとされる石けんやハンドソープを使っている人は、
細菌などの感染を予防する効果を期待しているかもしれない。

しかし、通常のせっけんと流水で手を洗うよりも優れているとの科学的根拠は全くない。
それどころか、これらの成分は長期的には、有害な作用をもたらす可能性を示すデータがある」とコメント。

また、FDAは「通常のせっけんと流水で手を洗うことは、
自分自身の感染予防に加え、他者への拡散防止にもなる。
せっけんと流水が利用できず、除菌用ローションを代用する場合には、
アルコールの含有量が60%以上のものを使うことが、
米疾病管理センター(CDC)では推奨されている」としている。
2016-09-16
産経新聞 2016.9.16

骨粗鬆症 早期発見・治療を 自覚症状乏しく要介護の一因


介護が必要になった主な原因
 
高齢化に伴い増加する「骨粗鬆(こつそしょう)症」。
患者は全国で約1300万人と推定されるが、
実際に治療を受けているのは患者全体の20~25%といわれる。

「骨粗鬆症は骨の強度が低下し、骨折リスクが高くなる」と指摘するのは、鳥取大学医学部の萩野浩教授。
高齢者の場合、1回の骨折が引き金となって、運動機能が落ちたりバランスが悪くなったりして、
連鎖的に別の場所も骨折する“ドミノ骨折”の危険性に警鐘を鳴らす。

体を動かすために必要な骨や関節、神経など「運動器」の働きが損なわれると、
要介護の大きな原因にもなってしまう。

注意したいのは、骨粗鬆症の高齢者に多い足の付け根の骨折だ。
特に大腿(だいたい)骨の上端で股関節に接する「近位部」を骨折すると、
寝たきりになって衰弱し、命を落とす恐れもあるという。
このため「骨粗鬆症は最悪の場合、“死を招く疾患”と言ってもいい」(萩野教授)。

骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、治療が必要とされる人であっても、気付いていない場合が多い。
発症のサインとして表れやすいのは「重いものを持つと腰が痛む」
「身長が縮んできた」「背中が曲がってきた」など。
見かけも気持ちも若い今の高齢者の多くは「自分は違う」と思いがちだ。

萩野教授によると、骨折経験があり、なおかつ閉経後の女性であれば、早急に骨密度を調べたほうがいい。
また、糖尿病▽喫煙▽多量の飲酒▽痩せた体形▽両親が骨折の経験あり-のいずれかに該当すれば、
骨折のリスクはより高くなる。現状では骨密度の測定が骨折のリスクを示す一つの指標となる。

さらに「薬で骨粗鬆症の進行を抑えることができる」と萩野教授。
最近は骨粗鬆症の新薬も相次いで登場している。
年に1回のペースの点滴投与だけで効果が持続する治療薬なども国から承認を受け、
年内にも保険適用される見通しだ。

「通院が面倒」といった患者もこれまでよりは楽になり、
ライフスタイルに合った治療法を選択できる。
萩野教授は「薬物治療が必要とされる人を早期に発見し、
治療に結びつけることが重要だ」としている。
2016-09-15
心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
読売新聞 2016年9月15日

白内障手術で真逆の顛末…「もっと早くすればよかった」と「失明同然」


網膜色素変性は、速度に個人差はあっても生涯にわたって進行します。


この病気で視野が中心にしか残っていない、
60歳代後半の女性2人の白内障手術の 顛末てんまつ をご紹介しましょう。

第1例は、地方の、ある高名な眼科医の友人で、
その医師の紹介で25年以上にわたって私が経過を診てきました。

年に1、2回の通院です。確立した特効薬はないのですが、
理論的には網膜の神経保護作用がある薬物を使ったり、
遮光眼鏡を処方したりして対処していましたが、
やはり病気は徐々に進行しました。

徐々に白内障が加わってきましたが、
患者さんの不具合の大半は網膜の状態が原因と判断していました。

白内障を指摘すると、患者さんの多くは希望をもって手術をしたがりますが、
手術によって明るさは増しても、視力視野の改善はあまりなく、
満足してもらえないことが多いので、手術を勧めないまま、20年あまりが過ぎました

2年ぶりに来院されたある日、「ここ1年ですごく見え方が悪くなりました」と訴えます。
私は、「白内障も前より進んできたように思う」と口走ってしまいました。

すると、「ぜひ手術をしてもらいたい」と言います。

当院には日本でも屈指の白内障術者がいますので、
その先生に手術を頼むことにしました。
手術は短時間で完璧に行われました。

結果は本人も非常に満足し、先の高名な眼科医からも、
手術の結果を非常に喜んでいるというお礼のメールが届きました。

「もっと、早く手術すればよかった」と彼女は感想を述べ、
私ももっと早く勧めれば、早く喜んでいただけたのかな、と思いました。

第2例は、やはり高い進行度を持った網膜色素変性の女性で、
2年ほど前から私が経過を診ておりました。

「数か月後地方に転居するので、
その前に白内障手術をできるものならしてもらいたい」
とご主人と2人で申し出てきました。

いつもは即刻手術にはしないのですが、私にはつい数か月前の成功体験があります。
事情がそうならと手術を計画し、同じ医師の手で完璧な手術が行われました。

しかし、この方は喜ぶどころか、
「手術をしたらかえって見えなくなり、失明同然だ」と言います。
確かに視力視野のデータもよくありません。

眼内レンズを挿入すると、それまでの自分の水晶体とは違った視覚環境になります。
すると、新たな環境でものを見るために、
脳内にも適応変化が起こることが機能画像の研究でわかってきました。

通常、適応に1週間はかかるようですが、
それは白内障以外の眼の病がない場合です。

また、個人差、年齢、精神状態など、いくつもの影響要因があるはずです。
中にはいつまでも適応できない人もあるかもしれません。

白内障の手術をする、しないの判断ひとつでも、
一筋縄にはいかない悩ましいものです。

(井上眼科病院名誉院長 若倉雅登)

若倉雅登(わかくら まさと)
井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、
井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、
日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。

「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、
「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、
「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。

専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、
週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。
2016-09-13
読売新聞  2016年9月14日

[栄養で治す]「自力で食事」きっかけに回復


東京都内の特別養護老人ホームに入所している95歳の女性Aさん。
つい数年前までは、自宅で家族と元気に暮らしていました。


ある日、肺炎で入院したのをきっかけに日常生活動作(ADL)が
著しく低下し、日中もベッドで過ごすようになりました。
退院後に老人福祉施設に移ると更にADLが低下。
食事は「ミキサー食」になり、生活は食事も含め、
すべて介助が必要になりました。

家族も回復を半ば諦め、Aさんは特別養護老人ホームに入りました。
もともと言葉は多い方ではなかったようですが、
入所当時は全く口をきかないため、スタッフの間には
「Aさんはしゃべらない方」というイメージがあったそうです。

そうした中、その施設唯一の管理栄養士だった私の知人が
「このままではAさんは弱っていくだけだ」と思い、
いつもミキサー食を介助を受けて食べていたAさんに、
試しにネギトロ状にした具材を載せたすしを用意し、
箸を持たせてみたのです。すると思いがけないことに、
Aさんは自ら箸ですしを口に運んだのです。

実はAさんには特別なことではなかったかもしれませんが、
全介助のAさんが、ミキサー食以外の食事を
自分で食べられるとは誰も想像できませんでした。

管理栄養士は「最後まで食事をすることを諦めない」という信念を持ち、
情熱を持って全国の施設入所者の栄養ケアに取り組んでいます。

現在Aさんは総義歯ですが、自力で食べ、時には急須でお茶をいれたり、
洗濯物をたたんだりと、簡単な作業もこなします。
笑顔も見せ、スタッフの声かけに少しですが返事もします。

一時の状態からは信じられない変わりようです。
栄養は奇跡を起こすことがあるのです。

(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)
2016-09-13
産経新聞 2016.9.13

1日30品目? こだわらず、野菜多めに

 
数カ月前、60代後半の糖尿病の女性患者さんから「食べる物がいっぱいあって困るの」と言われました。
聞くと、テレビや雑誌で「健康に良い」と評判になった物をできるだけ食べるようにしているそうです。

女性は「1日30品目食べた方がいいんでしょ? 
どうせ食べるなら健康に良いものを食べた方がいいかと思って」と、
紹介される食品を次々と献立に取り入れるため、毎日の食事作りが大変だというのです。

「1日30品目」は、昭和60年に厚生省(現・厚生労働省)が策定した
「健康づくりのための食生活指針」で目標として示されたものです。
今もこの数字を目標にしている人がいるのですが、
平成12年に改訂された指針では削除されています。

その理由の一つに、30品目以上食べている人の多くがエネルギーや脂質、
タンパク質などを過剰摂取していることがあるようです。

30品目の摂取を目指していろいろなものを食べようとするあまり食べ過ぎてしまうのでは、
健康のためにはむしろマイナスといえます。
たとえ健康に良い食品でも食べ過ぎればカロリーオーバーで肥満となり、
糖尿病や脂質異常症など生活習慣病となる可能性があります。

また、何か一つの食品を食べればそれだけで健康になるということはありません。

ただ、食品の中でも野菜が体に良いことは間違いなさそうです。
欧州の研究で、1日に約200グラムの野菜を食べる人は、
ほぼ半分の約90グラムの人に比べ、糖尿病の発症率が24%低いという報告があります。

また、オランダで2万人を10年間追跡調査した研究では、
1日に262グラム以上の生の野菜や果物を食べる人は、
92グラム以下の人に比べ、脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患が30%減少していました。

加熱や加工した場合は生ほどの差はありませんが、
それでも野菜を多く食べる人は少ない人に比べ心臓の病気が21%減少していました。

食生活指針でも、たっぷりの野菜と毎日の果物で、
ビタミン、ミネラル、食物繊維を取ることが勧められています。

患者さんには、「いろいろ食べようとした結果、食べ過ぎになっていますよ」と指摘し、
30品目にこだわらず、主食・主菜・副菜を基本に、野菜多めの献立にするように伝えました。
今は体重が少し減り、血糖値も比較的良好に経過しています。

テレビ番組では毎日のように「◯◯が健康に良い」という情報が流れていますが、
情報に惑わされず、毎日の食事を楽しんでもらえればと思います。

(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)

2016-09-13
産経新聞 2016.9.13

健診成績から今後10年の心筋梗塞など発症率予測

血圧やコレステロール値などの健診データと、喫煙の有無などの生活習慣を基に、
現在40~69歳の男女が今後10年間に心筋梗塞と脳梗塞を発症する確率を予測するプログラムを、
国立がん研究センターと藤田保健衛生大の八谷寛教授(公衆衛生学)らのチームが開発した。

選択肢を選んだり数値を入れたりすると、発症確率を表示するサイト
(http://www.fujita-hu.ac.jp/~deppub/risk.html)
も公開した。

チームは、平成5年時点で全国9カ所の保健所管内に住んでいた
約1万6千人の中高年男女を平均16年間追跡し、
観察開始から10年の間に心筋梗塞を発症する確率を予測するのに必要なデータは
8種類であることを突き止めた。

具体的には(1)性別(2)年齢(3)現在の喫煙の有無(4)降圧薬服用の有無
(5)最大血圧(6)糖尿病の有無(7)HDL(善玉)コレステロール
(8)HDL以外のコレステロール(LDLコレステロールと中性脂肪)。

チームはまた、脳梗塞については(8)を除く7種類のデータで予測可能なことも確かめた。
予測結果の正しさは、別の約1万1600人の集団でも確認できたという。

八谷教授は「発症確率が10%を超える場合はかなり高いと考え、
禁煙し、食事に気を配るなど生活習慣を見直すきっかけにしてほしい」と話す。

サイトでは、血圧が高めで降圧薬を飲んでいない人の方が、
降圧薬服用中の人より発症確率が低く出る場合もあるが、
八谷教授は「降圧薬のメリットは過去の研究から明らか。
治療中の人は医師の指示に従い服用の継続を」と呼び掛けている。
2016-09-13
[栄養] グリセミックインデックスは血糖反応の指標には不適当
Link de Diet 2016.9.8 , EurekAlert


グリセミックインデックス(GI)の値は個体内で20%、個体間で25%のバラつきがみられた、
という米国タフツ大学USDA人間栄養学加齢研究センターからのランダム化対照試験の報告。

研究チームは、63名の健康な成人を対象に、ランダム化対照試験によって
繰り返し白パン摂取後の血糖値の変化を計測した。
そして、3種類(低、中、高)の範囲にわたるGI値を観察したという。

この変動の原因の一部は、インスリンインデックスと初期ヘモグロビンA1cに起因するもののようであり、
それはGIが個人の代謝反応性に大きく依存することを意味するという。

「GIは、高度に標準化された条件で行った場合でも明らかに信頼できない指標であり、
食品選択のガイドとして有用にはみえない」と筆頭研究者のニルパ・マッサン博士は語っている。

「もしだれかが同じ食品の同じ量を3回食べたとしたら、
それは同じような反応を示さないといけないが、
我々の研究ではそのようには観察されなかった。

1回目には低GIだった食品が2回目には高GIになり、
私の血糖値には何の影響もないかもしれない。」

今回の試験の結果得られた白パンの平均GI値は62であり、
これは中GIに分類される値である。

けれども、個人間の変動がかなり高く、
22名の参加者ではGI値は35-55の低GI値、
23名の参加者では、57-67の中GI値、
18名の参加者では70-103の高GI値を示したという。

しかも個体内のバラつきも大きく、
2回の測定で60以上値が変わった参加者もいた。

「低GI食、低グリセミックロード(GL)食は有効であると繰り返し報告されてきたが、
我々の結果が示唆しているのは、これらの値は毎日の食事のたびに
変わるもので、そういう意味では全く信頼できないものだ。

より良い食事選択のアプローチとしては、野菜、果物、全粒穀物、ノンファットか低脂肪の乳製品、
魚、豆類、脂肪の少ない肉を、できれば植物油で調理したものを食べることだ。

もちろんあなたが本当に楽しめる健康的な食品、飲料を選ぶことも同じように重要である」
と主任研究者のアリス・リヒテンシュタイン博士は語っている。

出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-09-12
読売新聞 2016年9月12日

「早寝早起き」は本当に体にいいのか?…睡眠の新常識


「早寝早起き」は健康的で規律正しい生活の典型としばしば言われる。
しかし、本当にそうなのか? 国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長はこのほど、
BS日テレの「深層ニュース」に出演し、質の良い睡眠をとるのにどんな工夫をすればよいのかを解説した。
(構成・読売新聞専門委員 東一眞)

■就寝時間と睡眠時間のギャップに悩む高齢者

自然体で早寝早起きできる人はそれでいいと思いますが、
例えば高齢者などで早起きしたくないのに早起きしてしまって、
それが引き金になって生活のリズムが崩れてしまったり、
不眠になったりするケースもあります。

また、学生のように若い世代や、働く世代の人たちは年代的に早起きができない、
もしくは個人的に苦手なのに、学校や社会などで強制されて、
本人にとっては苦痛の早起きをして、
そのために体調を崩してしまっている人が少なからずいるのです。

ですから、一部の人にとっては良い早起きであっても、
万人にとっていいことではない、ということが大事なポイントだと思います。

高齢者について言えば、必要とする睡眠時間が年齢とともにだんだん短くなっていきますので、
どうしても、早寝をしてしまうと早起きになってしまうのです。

例えば、リタイヤ世代の60代、70代では健康な人でも
眠れる時間は6時間程度と短くなってしまいます。
でも夜は長いので、この6時間をどこに落とし込むかということを考えると、
70代の方でも、午後11時くらいから午前6時くらいの間までコンパクトに寝ないと、
何回も目が覚めたりとか、早起きしすぎたりして、ベッドの上で苦しんでしまう。

 
グラフで青い線が床に就いている時間、赤い線が実際に睡眠を取っている時間で、
このギャップが、眠れずに苦しんでいる時間ということになります。
午後9時くらいから、午前6時までの間ベッドにいて、
そのうち3時間くらい苦しんでいる人がいる。

不眠の苦しみを味わいはじめると、それがものすごく苦痛なのですね
。寝ようと思わないソファの上とか、電車の中では簡単に寝ちゃうのだけど、
さあ、いざ寝ようと思うと、今晩も眠れないのではないかと怖くて、
ベッドの上が苦痛で、目がさえてしまう悪循環に入ってしまうのです。

■朝の光を浴びると朝型、夜光を浴びると夜型に

眠れない人は早く眼が覚めると、どうしても朝早く光を浴びてしまう。
早朝から午前中に太陽光を浴びると、
人間の体の特徴として体内時計が朝型になってしまいます。
そうすると、夕方7時、8時になると、まぶたが重くなり、
横になりたくなって、ついウトウトしてしまう。

とんでもない早い時間帯から眠気が出てきて、
早寝をして、また早く起きるということになります。

いろんな本には、朝の光で体内時計をリセットする、
というふうに書いてありますけれども、あれは若い人向けなのですね。
中高年になって、夜中に何度も目が覚める人や、朝早く目が覚めてしまう人は、
朝の光を浴びないことが大切なポイントです。

一方で午後3時くらいから深夜の時間帯は、
光を浴びれば浴びるほど、夜型になっていくのですね。

若い人は夜、明るいモニターの前に長時間いるので、
ますます早起きが苦手になり、夜型になる。

高齢者の方、早いうちから目がトロンとなってしまう方は、
夜はしっかりとライトを浴びたほうが睡眠にはいいことが実証されています。

今はLEDなんかが出てきているし、液晶画面なんかも
大きくて明るくて、結構効果があるのです。
というのも、体内時計には青色光(ブルーライト)が強く働きかけるのですが、
LEDには青色光が多く含まれているものがあるからです。
節電ということもありますが、

早寝で困っている方は、むしろ家の中はしっかり明るくしたほうがいいです。
無理のない範囲内でできるだけ夜更かしをしてくださいということです。
睡眠時間は精々6時間なのです。

細切れに寝るよりは、コンパクトにぎゅっと詰め込んで、
切れ目なく寝たほうが体調も、日中の気分も良くなるのです。

長く横になっていると、その分だけ睡眠が伸びるという発想は勘違いです。
むしろ寝床で目が覚めている時間が長くなると、
かえって緊張が高まって眠れなくなります。

不眠で困っている方、寝床で悶々(もんもん)とする時間が長い方は、
寝床にしがみつかないでいただきたい。
ただ、寝床にいるのがリラックスタイムで、
テレビを見ながら「寝落ち」するのが気持ちよくて、
それが至福の時間であれば、それはそれでかまわないです。

不眠症状と病気の不眠症は違う

60代以上の方の半数以上は、途中で何度か目が覚める、
暗いうちから眼が覚めるなどの不眠症状が増えてきます。
ただ、不眠症状だけだったら別に慌てなくていい。

でも日中に眠気が強いとか、倦怠(けんたい)感がある、
イライラして集中できないとかの問題が出てきたら、
これはなかなか自然には良くならないということが分かっていますので、
かかりつけの医師に相談したほうがいい。

つまり、昼間が問題です。昼間の体調がいいかどうかが、最大のポイントです。
実際に不眠症状があったとしても、日中に問題がなくて元気に過ごしている方は、
不眠症状をもっている人の3人に2人くらいはいらっしゃいます。

昼間の症状が出てくると苦しくなって、
その段階で「不眠症」という病名が付くことになります。
これは治療が必要だということです。

■ 人口の3割は夜型

現役世代では、早起きをすると、睡眠時間が短くなります。
早起きした分だけ、早寝をすれば同じ睡眠時間が得られるのですが、
できる人とできない人がいる。

できる人は、朝活推進派だと思いますけれど、
体質的に早起きすることが難しい人もかなりいらっしゃるんですね。
そういう人は早起きした分だけ寝不足になってしまって、
その分、体に負担がかかっていく。

朝早い出勤を求められた時、誰でも2週間くらいは苦労するんですね。
欧米のサマータイムもそうですけれど、最初はなかなか苦しい。
切り替え直後の時期に交通事故や心筋梗塞が増加することも知られています。

さらに、何週間たっても早起きが楽にならない、
睡眠時間が短いままという人も結構いて、
この場合、生活習慣病やうつ病などのリスクが高まることが知られています。

朝型と夜型、睡眠時間の長短は個性で、
以前はフレックスタイム制とか
少し自由度を高くしていく流れだったと思います。

しかし、最近はそれが変わってきていて、
朝型勤務と朝活とか導入されています。

それは、一部の人にとっては、体質に合わない生活を強いることなのです。
なぜ社会の風潮がそういう一方向に走っていくのかなと、疑問に思います。

例えば、高校時代から大学時代にかけては、ホルモンの影響などによって、
同じ人でも早起きが苦手になる時期なのです。
でも朝、登校時間が早いから、子供たちがみんな寝不足になっているのです。
今、早寝早起き運動とかやっていますけれども、アメリカとかイギリスは逆です。

例えば、イギリスでは6万人の高校生を朝10時登校にしたのです。
そうすると、たっぷり眠れて、成績も上がりました。
大きな社会実験ですけれど、成功しているんです。
個人に強制するのではなく、個人や世代に合わせて、
社会時刻を変えてやるという考え方もあっていいのではないでしょうか。

夜間の人工照明ができてから、光の影響もあって、
人の体質はどうしても夜型に傾いています。
それにもかかわらず、登校時間や出社時刻はずっと変わらないで来ていますので、
どうしても歪みに陥って苦しい思いをしている人たちがいます。

「夜型」、「超夜型」が全体の3割は存在します。
この中には、朝型生活に変えたときに、
体がなじむ人もいますが、なかなか移行できない人もいる。

「中間型」の人にも、それ以上早起きできない人もいます。
体質的に厳しい人がかなりいます。

現役世代は睡眠不足が問題

現役世代は睡眠不足が問題です。
睡眠不足で、インシュリンの分泌量が低下し結果的に血糖値が上がったり、
夜間の高血圧が生じたり、あるいは発がんのリスクを高めたりと、
体へのいろんな負担が生じます。

睡眠時間の短い人を長期的に追いかけていくと、
死亡率が高くなるというデータが、アメリカでも、日本でもあります。

また、平日は睡眠不足の一方で休日は寝ダメをすれば、
一週間のなかで睡眠が変動します。
この変動自体が、体への負担となって、
例えば動物の研究ですけれど、妊娠する確率を落としたりします。

下のグラフを見ていただくと、平均的な睡眠時間が
6時間とか7時間の人たちは、死亡率が低い。

ここには自然に眠れている人が多く集まっているのです。
この人たちの死亡率を1とすると、
5時間とか4時間しか眠らない方の死亡率が
だんだん上がっていくことが分かります。
短時間睡眠の方は、数年とか十数年のスパンでみると、
疾病に罹患(りかん)して、死亡率が高くなることが分かっています。

短時間睡眠の人については、いろんな科学的な研究がされています。
しかし、グラフの右のほうは、長時間睡眠の人ですが、
こちらはなぜ死亡率が高くなるのかよく分かっていないのです。
何かの原因によって長時間眠りがちだという人が、
結果的に寿命が短いということかもしれません。

一方で、6~7時間の睡眠が誰にでも最適かというと、そうではありません。
最適な睡眠時間には、大きな個人差があって、
同じような年代でも4時間くらいの幅があるのです。

だから、何時間寝たらいいですよ、ということは言えません。
あくまで全体を平均すれば7時間くらいが最適なのだけれども、
5時間で十分な人や、8時間寝ないと体調不良を起こす人もいます。

自分にとって何時間の睡眠が適正かを知るには、1週間くらい自由な時間があったら、
目覚まし時計を一切止めて、十分寝てみてください。
最初の数日は非常に長く眠りますが、その後は、睡眠時間が短くなります。
5日目、6日目くらいの、自然に眼が覚めるまでの時間というのが、
自分の適正睡眠時間に近づいているといえます。

■サラリーマンが無理なく体調を保つ方法

働く現役世代の方々は6時間睡眠では足りませんが、
このくらいの生活を強いられているサラリーマンの人が多いと思います。
この人たちが、無理なく体調を保つにはどうしたらいいかということを説明したいと思います。

まず、早起きをしても、夕方以降に目がさえて、
早寝ができないという方が多いので、体調を壊してしまいます。
早寝をする体質づくりのために、午前中、起きてから6時間くらいの間に、
できるだけ強い光を浴びていただきたいというのが一つです。

現役世代は、週末など寝ダメして昼近くまで寝てしまうことが多いのですけれど、
朝一度起きて、光を浴びて、体を朝型に巻き戻して、
眠ければ昼過ぎに昼寝をしていただきたい。

不眠症や高齢者の方は昼寝すると、夜眠れなくなりますが、
現役世代は昼寝で寝不足を解消しましょう。

また、高齢者の人は夕方過ぎにできるだけ光を浴びてくださいと言いましたけれども、
現役世代は早寝をしなければならないので、夕方くらいから、
できるだけ光をシャットダウンすることが重要です。

午後3時以降は、部屋を暗くしたり、
青い光は体内時計を直すのでなるだけ暖色系のライトを中心に使ったり、
なるべくテレビから離れたりしてください
。働く世代で早寝早起きができない方は、例え怪しまれても(笑)、
夕方からは濃いサングラスをかけていただくと、
夜型に引き込む光をシャットアウトできます。

昼寝の効果とコツ

本当は、なるべく昼寝をしないで、夜にまとめて寝ていただきたい。
けれども、どうしても仕事が長くて夜十分眠れない場合には、
眠気を取って、気分の悪さを取って、パフォーマンスをあげるためには昼寝もよいでしょう。

昼寝をすれば夜の睡眠に影響するので、午後2時か3時までに、
時間でいえば30分から40分までの短時間がいいでしょう。
眠気を取るという意味からいえば、30分くらいの昼寝で十分です。
30分以上寝ると眠りが深くなりますので、
どうしても起きた時のボンヤリ感が長く続きます。
タイマーをかけて30分で、スパッと起きた方がいいですね。

昼寝をすると、パフォーマンスは上がります。
生活習慣病がある方は、昼寝をしただけで、血圧が少し落ちたり、
血糖のコントロールがうまくいったり、そのような効用が知られています。
うまく使えば、とても体には良いものなのです。

ただ昼寝をすると、夜中に短時間睡眠で済む、というのは間違った考え方だと思います。
免疫にしても代謝にしても、睡眠が持つ体への良い効果は、
夜中にまとめて一定時間寝ることで、初めて発揮されるのです。

眠気は昼寝である程度取れますが、体全体への影響を考えますと、
夜中にきちんと寝るというのが、最終ゴールなのです。
昼寝は、働く世代などで、どうしても夜にまとまって
眠れないという人の次善の策なのですね。

■脳を冷やせば快眠

自分が朝型なのか夜型なのかは、自己診断できます。
ざっくりと言って、起きてから寝るまでの間、十数時間ありますが、
そのなかで起きてから4、5時間の間にパフォーマンスが上がる人、
つまり、書き物とか仕事だとか人に会うとか、
早い時間にやったほうが調子が良い、能率が良いという人は朝型です。
夕方過ぎに調子が良くなる人は夜型ですね。

脳がうまく冷えてこないと、質のいい睡眠ができないのです。
でも、私たちは、手足から熱を逃がして脳を冷やしています。
暑い夜に睡眠をとるには、例えば冷却材にタオル巻いて、
すこしヒンヤリするものを足にあてて眠ったりすると、
皮膚の表面から熱が逃げて脳の温度も下がる。

部屋の温度を下げるよりも、手足の表面を冷やすほうがやりやすいし効率的です。
太い血管が通っている首筋を冷やすのも一定の効果があります。
冬は布団から手足が出ると熱が逃げて寝やすいということがあります。

         
2016-09-07
心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
読売新聞 2016年9月8日

白内障…気軽に手術してよい場合、悪い場合


私は40年前、医師国家試験に合格後、内科系の医師になろうか、
外科系の医師になろうかなかなか決断ができず、結局、
どちらの要素もたっぷりあるという理由で、眼科にしたのでした。

告白しますが、眼球や視覚に特別強い関心があったわけでなく、
欲張りなのか、優柔不断なのか、そんな稚拙な選び方でした。

選んだきっかけは幼稚でも、まじめに学べば必ず関心が湧いてくるものです。
現在は手術からはすっかり手をひいて、眼科の中ではやや特殊ながら必須な領域と考えられる、
神経眼科、心療眼科という、眼科の内科的部分を専門にしています。

手術からは手を引きましたが、手術の適応を判断したり、
手術後の不適応状態をどう扱ってゆけばよいかなど、
手術について考える機会は多いものです。

 昨年5月14日のコラム で、年間百万眼以上の手術が行われているとされる
白内障手術の手術手技や手術機器は非常に進歩しており、
手術時間の短縮、安全性、手術費用などあらゆる面で
30年前とは格段の差違があることを述べました。

しかし、それは白内障を見つけたら、誰でもまるで毎日の食事を 摂と るかように、
ごく気楽に受けるべき手術というわけではないことを、
次の5月21日のコラム で、強度近視の例を挙げて説明しました。

ほかに何も眼疾患や全身疾患の健康人に対する白内障手術では、
適応についてあれこれ苦慮することはほとんどありません。

問題は、強度近視のように眼球が特殊な状態にある場合です。

近頃、同じ白内障手術をしてよかった症例と、
よくなかった症例を立て続けに経験しました。

しかも、その二人とも、同じ目の病を長年抱えていました。

それは、「網膜色素変性」という目の難病です。
両目の網膜の視細胞が次第にダメージを受ける病です。
比較的若い時に病気ははじまりますが、
不自由に気付くのは、中年以降の場合が多いようです。

典型的なものは、まずうす暗いところが苦手な状態になり、
次第に周辺の視野が欠けてゆきます。
そして、次第に中心の視野だけが残るトンネルビジョンになり、
それもついには失ってしまう、進行性の病気です。

バリエーションや類縁疾患もいろいろあり、
初期から視力低下が出現する例もあります。

今の医学では進行を止めるよい治療法は確立しておりません。
進行の速度は、症例によって大きく異なりますが、
加齢とともに白内障も進行してくることも少なくなく、
これをどう扱うか、頭を悩ませることになります。

私が経験した2つの真逆の 顛末てんまつ は、
次回ご紹介しようと思います。

(井上眼科病院名誉院長 若倉雅登)


若倉雅登(わかくら まさと)
井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、
井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。北里大学医学部客員教授、
日本神経眼科学会理事長などを兼務し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。

「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、
「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、
「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。

専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、
週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。
2016-09-06
10人に1人が100歳以上、イタリア「長寿村」の秘密 研究
AFP=時事 9月6日(火)15時43分配信


【AFP=時事】イタリア南部に100歳を超える住民の数がひときわ多い小さな村が存在する──。
5日に発表の研究結果によると、これらの高齢者には、
循環系に影響を与える特定のホルモンの値が一般よりも低いことが分かったという。

人口700人のアッチャロリ(Acciaroli)の村では、10人中1人以上の割合で100歳を超えている。
村長による前回の集計時にはその数は81人に上った。この驚異的な寿命について、
イタリアと米国の研究チームは、6か月にわたり調査を行った。

アッチャロリ村は、息をのむほど美しい自然が広がるチレント(Cilento)沿岸部に位置する。
米栄養学者の故アンセル・キーズ(Ancel Keys)氏が、
オリーブオイルとともに新鮮な野菜や果物、魚をたっぷりと食べる
地中海式ダイエットの健康効果について最初の洞察を行ったのもこの場所だったという。

アッチャロリと周辺の小さな村々の住民らをめぐっては、
非常に長生きであるだけでなく、欧米諸国でよくみられる
認知症や心臓疾患、老化に伴う慢性疾患の患者の数も少ないようだ。

伊ローマ(Rome)のラ・サピエンツァ大学(La Sapienza University)と
米カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部(University of California, San Diego School of Medicine)
の共同研究チームは、この長寿の秘密について、血管拡張作用のあるホルモン
「アドレノメデュリン」の値が低いことが関係している可能性があると指摘した。

研究チームは声明で、調査の対象者はアドレノメデュリンの分泌量が非常に少なく、
このことが微小循環(毛細血管網)の最適な発達を助け、
強力な保護因子として作用しているようだと説明している。
高齢になるにつれ毛細血管は衰えがちだが、
チレントに住む高齢者の毛細血管年齢は非常に若く、中には20代と同等の人もいた。

研究ではまた、調査対象者の体内に長寿や健康にプラスの影響を与えていると思われる
代謝産物が存在することも明らかにされた。これについての詳細は明らかにされなかったという。

研究チームは現在、村の人々を長寿としている要因として、
遺伝的特徴が食生活や運動などの生活スタイルと結びついているのかについても調べている。

チレントの住民らは、脳機能を改善するとされるローズマリーをほぼ毎日採っているほか、
魚釣りやウオーキング、ガーデニングなど何らかのフィジカルなアクティビティーも日常的に行っている。
こうしたエレメントも、研究の対象となっている。【翻訳編集】 AFPBB News
2016-09-05
Link de Diet 2016.9.5 , EurekAlert   

トウモロコシの水溶性食物繊維を摂取すると、
腸内細菌によって分解されて生じる成分が骨をつくり、
カルシウムの保持に有効であるようだ。

米国パデュー大学が若い女性、
更年期後の女性を対象に行なった研究。

「若い女性では健康な骨を形成し、
年配の女性では骨折の影響を受けやすい時期に、強い骨を保持できるように、
私たちは腸内を詳しく調べている」とコニー・ウィーバー教授は述べている。

「青年期や更年期後いずれの時期においても、
プレバイオティクスであるトウモロコシの水溶性食物繊維の作用で、
身体はより適切にカルシウムを利用できる。
腸内細菌叢は、健康の新たな新分野である。」

プレバイオティクスの食物繊維が腸を通過すると、
下部消化管にすむ微生物により消化される。
ここで、トウモロコシの水溶性食物繊維が、
短鎖脂肪酸に分解され、骨の健康を助けることを、
ウィーバー教授は見出したのである。

更年期後の調査において、14人の女性で、
同位体を用いて、カルシウムの保持を測定した。
41Caの排泄を測定して、骨損失を測定した。

女性たちは、50日間、この難消化性炭水化物を、
毎日0g、10g、または20g摂取した。
骨のカルシウム保持量は、10g摂取で4.8%、20g摂取で7%向上した。
この程度の量のトウモロコシの水溶性食物繊維は、サプリメントに含まれる。

この値は、1年間摂取すると、更年期後の女性における
骨損失の平均変化量に相当し、損失に抗するものであるという。

次に31人の女子が、通常の食生活を続けながら、3週間、トウモロコシの水溶性食物繊維を、
毎日0g、10g、または20g摂取した。10g、20gの摂取いずれにおいても、
青年期女性で、カルシウムの吸収が12%改善した。
この値は、1年に1.8%以上の骨格をつくれることに相当する。

両方の研究において、消化器症状は、最小であり、対照群に対しても同じであって、
トウモロコシの水溶性食物繊維を摂取した人とも同じであった。

カルシウムは不足しがちな栄養素とされており、
健康な骨量のために米国で推奨されるカルシウム摂取量1,300mgを満たしている人は少数であるという。
(日本人の食事摂取基準2015年版でのカルシウム推奨量は成人女性で650mg)

「この発見は、牛乳を飲むようにと勧めることを少なくするとか、
バランスのとれた食事に従うべきであるということではなく、
ミネラルをより適切に利用する戦略である。」とウィーバーは述べている。

「カルシウム単独では骨量減少を抑制するが、骨形成は増強しない。
これらの繊維は、骨形成を促すので、カルシウムの吸収を促す以上のことをしているのである。」

研究チームは、トウモロコシの水溶性食物繊維がどのように
カルシウムの吸収や保持を向上させるのか、
プレバイオティック繊維が他の方法で
身体に有効性をもたらすかどうか、メカニズムを調べている。

出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-09-04
AFP=時事 9月4日(日)

「効果の科学的証拠なし」、抗菌せっけんの販売禁止 米国

【AFP=時事】米食品医薬品局(FDA)は2日、
19種類の殺菌剤を含有する抗菌せっけんなどの販売を禁止すると発表した。

通常のせっけんと比べて優れた殺菌効果があるとは言えず、
健康に悪影響を及ぼすリスクがあると警告している。

19種類の殺菌剤のうちトリクロサンとトリクロカルバンは
抗菌効果をうたう固形せっけんや液体せっけんに広く使用されているが、
免疫系に打撃を与える恐れがあるという。

FDA医薬品部のジャネット・ウッドコック(Janet Woodcock)氏は、
「抗菌せっけんには細菌増殖を防ぐ効果があると消費者は考えているかも知れないが、
通常のせっけんと水で洗うよりも有効であることを裏付ける科学的根拠はない」と明言した。
その上で「殺菌剤が長期的には益より害になる可能性を示したデータもある」と説明した。

今回の販売禁止対象には、
病院などの医療機関で使用されている手の消毒薬などは含まれていない。
抗菌せっけんのメーカーには1年以内の対応が義務付けられるが、
問題となった殺菌剤の使用をやめる動きも既に始まっている。

FDAは「通常の石鹸と流水で洗うことは疾病を予防し、
感染拡大を防ぐ上で最も効果的な方法の一つだ」と述べた。

また、石鹸と水がない場合には、アルコール濃度が60%以上の
消毒薬を使ってもよいと付け加えた。

【翻訳編集】 AFPBB News

2016-09-03
知らないうちに進行する「あの病気のリスク」
ZUU Online

■健康診断「問題なし」でも要注意!

40代になると、身体に無理がきかなくなり、さまざまな不調を感じる人が多いだろう。
若さでカバーできた20代や30代と同じ生活をしていると、病気にかかるリスクも高くなる。
不摂生を続けると、どんな病気の危険性があるのか。

そして、病気にならないために普段の生活をどのように見直すべきか、アドバイスをいただいた。

■脳梗塞 ~その前兆を見逃すな!~

脳梗塞とは、脳の血管を血の塊である血栓が塞ぎ、脳細胞の一部が死んでしまう病気です。
血液が脳に届かなくなり、ある日突然バッタリ倒れることも。

脳梗塞の患者数は、この30年で3倍以上に増えています。
その背景にあるのは、食生活が豊かになったことによる糖尿病や高脂血症、肥満の増加。
その結果、血管にコレステロールや脂肪が溜まり、動脈硬化を起こす人が増えているのです。

突然襲ってくるイメージの強い脳梗塞ですが、
実は本人が気づかないだけで、前兆がある場合も多いのです。
それを見逃さないよう気をつけることが、
脳梗塞のリスクを回避する何よりの方法と言えるでしょう。

チェックリストのうち、とくにリスクが高いのは
「左右どちらかの身体や手足がしびれて動かせない」
「足がふらつく」「ろれつが回らない」です。

これに当てはまる人は、要注意。
すでに脳に血栓ができているのに、
まだ症状が出ていない「隠れ脳梗塞」の可能性があります。

隠れ脳梗塞は自覚症状がなく、症状が現われてもごく短時間で回復するため、
本人も「気のせいだったのか」と放置しがちです。
しかし、隠れ脳梗塞ができて数年以内に、
約3割の人が脳梗塞を起こしているというデータがあります。

本格的な脳梗塞を発症したら、4時間半以内に
専門的な治療を受ければ予後が良好になる可能性が高まります。
ただ、そうなる前に先ほどの3つの項目に当てはまる人は、
一度脳ドック(MRI検査)を受診することを勧めます。

脳梗塞の前兆は、顔にも現われます。鏡の前でにっこり笑ってみてください。
片方の唇が下がり、顔がゆがんでいたら、軽い麻痺が起こっている証拠です。
顔の表情に左右差があるときは、危険信号と考えてください。

他にも、「ラリルレロ」「パピプペポ」が発音しづらくないか、
などが脳梗塞の前兆に気づくきっかけになります。
定期的にチェックをして、顔や手、言葉に異変があれば
脳梗塞を疑い、病院で診察を受けましょう。

なお、朝と入浴時は脳梗塞を起こしやすいので注意しましょう。
就寝中の発汗や長湯による脱水状態によって、
血液がドロドロになって血栓ができやすくなるのです。
予防のために、就寝時と起床時、入浴の前後に、
必ず水分補給する習慣をつけてください。

脳梗塞チェックリスト

1.文字が上手く書けなくなるなど、手先が不器用になったと感じる。

2.手先に力が入りにくいことがある。

3.左右どちらかの身体がしびれて動かせない。震えが止まらない。

4.立ち上がろうとして足がもつれたり、階段を登るときつまずいたりする。

5.突然ろれつが回らなくなる。

6.笑顔になったとき、片方の唇が下がっている。

7.顔の表情に左右差がある。

8.最近、もの忘れがひどくなった。

9.時々、めまいや耳鳴りがする。

10.早口で話をされると理解しにくい。難解な本を読んでも頭に入ってこない。

11.食べ物を飲み込みにくく感じる。むせやすい。

12.視野の半分が欠けてみえることがある。

13.突然冷や汗が出たり、動悸が出たりすることがある。


■糖尿病 ~健診OKでも安心はできない~

40代になると、男女ともに糖尿病になる人が増えます。
厚生労働省の2012年の「国民健康・栄養調査」によると、
糖尿病が強く疑われる人の数は約950万人、
可能性を否定できない人は1100人に上ります。

40歳以上に限れば、3人に1人は糖尿病もしくはその予備軍だというデータもあります。

糖尿病予備軍とは、「血糖値が正常よりは高いが、糖尿病と診断される値よりは低い状態」の人たちです。
正常値は空腹時の血糖値が110㎎/dl未満で、食後の血糖値が140㎎/dl未満。
糖尿病と診断されるのは、空腹時の血糖値が126㎎/dl以上、
または食後の血糖値が200/dl以上です。

この間にいるのが予備軍になるわけですが、
会社の健康診断で「問題なし」と言われた人も安心はできません。
一般的な健診では空腹時の血糖値しか測定しないので、
食後の血糖値が上がりやすい隠れ糖尿病の人は見逃されているかもしれないからです。

しかも糖尿病は、ある程度進行するまで自覚症状がありません。
典型的な症状とされる「のどが渇く」「体重が減って疲れやすくなる」などは、
かなり進行した段階で現われるもの。知らないうちに病状を悪化させないよう、
チェックリストで隠れ糖尿病のリスクを確認しましょう。

もし4項目以上当てはまったら、病院の内科で「ブドウ糖負荷試験」という検査を受けることをお勧めします。
これは食後の血糖値の変化を正確に測るもので、ブドウ糖を摂取し、
30分後、1時間後、2時間後などと時間を置いて、数回にわたり血糖値を測定します。

検査によって、自分が隠れ糖尿病だと判明したら、
病気を進行させないよう、食生活を見直すことが大切です。
まずは、食物繊維の多い野菜を多くとること。
そして、血糖値の急激な上昇を抑える効果のある
酢を使ったメニューを積極的に取り入れることなどです。

食べる順番にも気をつけましょう。
最初に、血糖値が上がりにくい肉や野菜類をゆっくり食べ、
最後に、血糖値が上がりやすいごはんやパンを食べるようにしましょう。

食品のカロリーやおおよその摂取量を把握しながら、食べすぎを防ぐことも必要。
栄養の知識を身につければ、食事を楽しみながら血糖値をコントロールすることも可能になります。

糖尿病チェックリスト

1.肉親に糖尿病患者がいる。

2.肥満である。

3.40歳以上である。

4.運動不足である。

5.食べたいものを好きなだけ食べている。

6.お酒をよく飲む。飲むときは、よく食べる。

7.食事が不規則。

8.朝食を抜くことが多い。

9.甘いものが好き。

10.ストレスを溜めている。

※0~3は経過観察。4~6個なら医師に相談を。
7個以上は、精密検査を受けてください。


■五十肩 ~女性はとくに注意~

重い荷物を持ったり、ゴルフの素振りをした瞬間、肩に激痛が走ったことはないでしょうか。
俗に言う「五十肩」の症状ですが、実際には40代にも多く見られます。
デスクワーク中心で運動量が少ない人も、五十肩になりやすいのです。

五十肩(正式名称は「肩関節周囲炎」)になるのは、長年腕や肩を動かすうちに、
肩関節にある回かい旋せん腱けん板ばんが疲労してもろくなり、
周辺組織が炎症を起こすから。つまり、関節の老化です。

チェックリストの2番目から6番目の動作で痛みを感じたら五十肩の疑いがあります。

とはいえ、痛みが出ても適切な治療をすれば症状は和らぎます。
日頃からストレッチや肩の運動をするのも効果的です。

たとえば、肩のリハビリに有効なのが、お風呂で行なう「指階段療法」。
湯船に肩まで浸かって身体を温めたら、痛むほうの腕の人差し指と中指を壁に当て、
2本の指で歩くようにして、少しずつ腕を上げていきます。

これ以上は上がらない地点まできたら、
腕に身体を預けるように寄りかかり、10秒キープ。
毎日続ければ肩や腕の筋肉が伸びて、肩の稼働域が広がります。

五十肩チェックリスト

1.40歳以上である。

2.両腕を真上に上げると痛い、またはスムーズにできない。

3.両腕を肩の高さで上下させると痛い、

4.またはスムーズにできない。

5.両腕を曲げて、外に開くと痛い、またはスムーズにできない。

6.両腕を腰の後ろで組むと痛い、またはスムーズにできない。

7.両腕を首の後ろで組むと痛い、またはスムーズにできない。

8.日頃、運動をほとんどしていない。

9.デスクワークが多く、身体を動かすことが少ない。

10.ひどい肩こりである。

11.左右の肩の形が違う。

※1に該当し、2~6のうちの1つでもあてはまれば、「五十肩」の疑いがあります。


■がん ~「前立腺がん」が増えている!?~

がんは日本人の死因の第1位を占める病気です。
1950年には全死亡者数の7%に過ぎませんでしたが、
81年以降は死因トップを走り続け、
2013年の死亡者数は全体の3割を超える36万人強まで増加しました。
つまり、日本人の3人に1人はがんで亡くなっているのです。

身体が正常な状態であれば、約60兆個の細胞の数はほぼ一定に保たれます。
しかし、食生活や生活環境などさまざまな理由で遺伝子が突然変異すると、
細胞の数が無制限に増えてしまう。
これが「がん」であり、ほぼすべての臓器にできる可能性があります。

最新の統計によれば、がんの中で最も死亡者が多いのは「肺がん」。
2位が「大腸がん」、3番目が「胃がん」です。

※国立研究開発法人国立がん研究センター 2015年のがん罹患数、死亡数予測より

ただし、1位~3位には入っておりませんが、
中でも注意したいのは近年患者数が伸びている「前立腺がん」。
死亡者数は2015年で12200人に上ると予測され、
2000年の2倍以上、1995年の約3倍に上ると推定されています。

前立腺がんが急増した理由は、いくつかあります。
まず、日本人の寿命が延びたこと。
前立腺がんは比較的進行が遅く、年齢が上がるごとに発症率が高まります。

さらに、日本人の食生活が欧米化し、
動物性脂肪を多く摂るようになったことも原因の一つでしょう。

一方で、近年は血液検査だけで前立腺がんを早期発見できる
「PSA検査」が普及し、患者が顕在化しやすくなったという背景もあります。

いずれにしても、がんで命を落とさないためには、何よりも早期発見・早期治療が肝心。
あなたの前立腺がんのリスクはどの程度か、チェックリストで確かめてください。

どのがんの予防にも効果的なのは、食生活の改善です。
肉類の食べすぎを避け、緑黄色野菜を多く摂るよう心がけてください。
洋風の食事よりは、和食のほうがバランスよく野菜を摂れるのでお勧めです。

また、大豆や緑茶などは、前立腺がんの予防に効果的と言われていますので、
普段の食事に積極的に取り入れましょう。

適度な運動を習慣づけ、肥満にならないよう心がけることも、がんのリスク低下につながります。


前立腺がんチェックリスト

1.50歳以上である。

2.父親や兄弟など、血縁者に前立腺がんの患者がいる。

3.チーズ、牛乳などの乳製品が好きだ。

4.肉類など、動物性脂肪が多い食べ物が好きでよく食べる。

5.緑黄色野菜が嫌いであまり食べない。

6.日頃、運動をほとんどしていない。

7.肥満である。

8.性活動が活発である。

9.生活パターンが一定しておらず、不規則な生活をしている。

10.ストレスが多い。

※3個以上当てはまれば経過観察。
4個以上もしくは2に該当する人はなるべく早くがん検診を受けましょう。


■骨粗しょう症 ~老後の寝たきりにつながる~

骨粗しょう症は、骨量の低下によって骨が弱くなる病気です。
主な原因は加齢で、40歳以上の骨粗しょう症患者数は1280万人。
そのうち女性は980万人、男性は300万人と推定されます。

骨粗しょう症は女性がなりやすいイメージがありますが、
男性の患者数も決して少なくないことがわかります。

高齢化社会において、骨粗しょう症は大きな問題。
高齢者が寝たきりになる原因の約20%が「骨折」であり、
それをきっかけに認知症が進行するケースも多いのです。
「まだ若いから大丈夫」と思うかもしれませんが、骨量の低下は40代から始まります。

予防のためにとくに大事なのが、食事。カルシウムは1日に800㎎の摂取を目標とし、
乳製品や大豆製品、海草類を積極的に食べましょう。
また、ビタミンBやマグネシウムも欠かせません。
前者は鮭やサンマなどの魚に、後者は玄米や豆類に多く含まれます。

なお、リンを含むスナック菓子やインスタント食品を摂りすぎると、
カルシウムが尿から排泄されやすくなるので注意してください。

骨粗しょう症チェックリスト

1.55歳以上である。

2.女性の場合、閉経している。

3.細身の体型である。

4.ちょっとしたことで骨折したことがある。

5.最近、背が縮んだ。

6.あるいは背中や腰が曲がってきたと感じる。

7.乳製品や大豆製品をあまり食べない。

8.運動不足である。

※3つ以上あてはまる人は、骨量の低下に警戒が必要です。


森田 豊(もりた・ゆたか)医療ジャーナリスト

1963年、東京都生まれ。秋田大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。
東京大学医学部附属病院助手、米国ハーバード大学医学部専任講師、埼玉県立がんセンター医長、
板橋中央総合病院部長を経て、現職。医師として現場に立ちながら、テレビや雑誌で医療情報を発信。
近著に『今すぐ「それ」をやめなさい!』(すばる舎)など。
(取材・構成:塚田有香)(『The21online』2016年7月号より)
2016-09-01
心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
読売新聞 2016年9月1日

精神科医も眼科医も見逃しやすい…うつ病で視力低下


正確にうつ病かどうかを診断するのは、
専門家でも実はかなり難しいといわれます。


近頃、うつ病が増えているなどの報道を時々見かけますが、
うつ病の考え方にも歴史的変化があり、
また、診断は血液検査など数値を根拠にしたり、
脳の画像で決まったりするものではありませんので、
専門家でも診断が必ず一致するとは限りません。

医師個人のとらえ方や、主観に左右されやすいのです。

米国精神医学会や世界保健機関(WHO)では、
そういうことがなるべく起きないような診断方法として、
統計的に決められた診断尺度を利用した診断方法を示して、改定を重ねています。

日本でも1980年代後半頃から、その考え方が徐々に導入されました。

ただ、明確に「うつ病」「 躁そう うつ病
(双極性障害=うつ病とは診断、治療とも異なる別の病)」と診断できる基準に入らないと、
「うつ状態」などといった、基準にはない、あいまいな病名が、今でもつけられています。

うつ病にはさまざまな身体症状、たとえば意欲低下、
睡眠障害や消化器症状が出現しやすいことが知られています。
ところが、どの専門書を見ても視力低下という眼症状は書かれていません。

私はこれまで少なくともうつ病で3例、
双極性障害で1例の視力低下例を経験しています。
この中から、視力低下がうつ病の治療で改善した2例を例示してみましょう。

一人は30歳代の男性。両眼の視力低下と目の疲労感で来院、
矯正視力(最善の眼鏡で矯正した視力)は右0.3、左0.4と下がっていましたが、
それを説明できる病変はありませんでした。

再診予定日の朝、さらに見えなくなっている上に、
会社にも病院にも行こうとせず、死にたいといっているが
どうしたらよいかと父親からの悲痛な電話を受けました。

眼科よりもまず精神科に行くべきだと判断した私は、友人の精神科医への紹介状を書きました。
案の定、うつ病で入院治療して8か月後、開口一番「目もだいぶいいです」と
笑顔で外来に来られた彼は、やがて職場に復帰しました。

いま一人は20歳代の男性、1か月前から左目の痛みがあり、次第にぼやけてきた。
近医から視神経炎を疑われ紹介されたのでした。左の矯正視力は0.03と低下。
しかし、視神経炎の症状はありません。

やがて不眠、寝起きに動けないなどの症状を訴えますので、
抑うつの程度を調べる質問表に回答してもらうと、
高度の気分障害(うつ状態)が示唆されました。

精神科による治療の5か月後には、
うつ症状も視力低下も改善したのでした。

うつ病で、視力低下という身体症状が生じる可能性があることを認識している
精神科医も、眼科医も大変少なく、この状態は見逃されやすいのではないかと思っています。


若倉雅登(わかくら まさと)
井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、
井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。
北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、
15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。

「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、「健康は眼に聞け」(同)、
「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、
「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。

専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、
週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。
2016-08-31
読売新聞 2016年8月31日


 嚥下えんげ 障害はのみ込みの障害です。
のどの前方には気管という空気の通り道があり、
その背中側に食事や飲み物が通る食道があります。

のみ込む時には通常、食べ物が誤って気管に入らないようにふたが閉じられ、
窒息や 誤嚥性ごえんせい 肺炎が起きない仕組みになっています。

しかし、嚥下障害になると気管のふたが閉じられなかったり、
閉じるタイミングがずれたりして、肺炎や窒息が起きてしまいます。

とくに誤嚥性肺炎は高齢者に多く、肺炎を起こした細菌が薬に耐性を持ち、
治療が難しくなることがあります。ですから肺炎予防に努めるとともに、
もしかかってしまった場合は完全に治すことが大切です。

嚥下障害のある方への食事は極めて危険性を伴うため、
慎重さが求められます。

基本的には、口の中で食事がばらけないように、
とろみをつけて提供するわけですが、
その程度も患者さんによって様々ですし、
嚥下障害自体が複雑な疾患ですので、
全ての患者さんで同じように対応するわけにはいかず、
時間も労力も知恵も必要となります。

入院中の食事代は、「入院時食事療養費」として1食640円と国が定めています。
医師の指示で、治療のために糖尿病食や腎臓病食などが提供された場合は、
1食76円が特別食加算されます。

しかし、嚥下障害の患者さんにとろみをつけた食事を出しても
特別食加算はなく、施設の取り組みには温度差があります。

私たちの病院では昨年9月から嚥下障害プロジェクトを開始し、
おいしく衛生的で安全な食事を提供する取り組みを行っています。
今のところ、食事による誤嚥性肺炎が発症した例はありません。

高齢化社会を迎えて、このような取り組みが多くの医療機関で行われることを期待しています。

(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)
2016-08-31
読売新聞 2016年8月31日

22の病気、たばこ原因が「確実」…がん・脳卒中・糖尿病など


厚生労働省の有識者検討会(座長=祖父江友孝・大阪大学教授)は、
がんなど22種類の病気の発症や病気による死亡の要因として
喫煙が「確実」との判定結果をまとめた。

他人のたばこの煙を吸う受動喫煙でも7種類の病気で因果関係があるのは確実とした。
国の検討会が日本人への影響を総合的に判定したのは初。
31日に最新情報と対策を盛り込んだ報告書(たばこ白書)案を公表する。

厚労省は報告書案を踏まえ、2020年の東京五輪・
パラリンピックに向けたたばこ対策を推進したい考え。

報告書案では、国内外の喫煙と健康に関する論文約1600件を分析。
喫煙との関係の度合いを病気ごとに4段階で判定した。

肺や 膵臓すいぞう など10種のがんのほか、脳卒中、
心筋梗塞、糖尿病などと喫煙の関係について、
最高の「推定する証拠が十分(確実)」と評価した。
認知症や関節リウマチとの関係は「確実」に次ぐ「可能性がある」とした。

受動喫煙について、子供のぜんそくや乳幼児突然死症候群との関係は確実と評価した。
肺がんへの影響は、国立がん研究センターが行った研究結果を採用。
家庭での受動喫煙がある人は、ない人に比べ肺がんになるリスクが
1・3倍高まり、因果関係は確実とした。

今後の喫煙対策について報告書案は、受動喫煙を防ぐため
「喫煙室を設置せず屋内の100%禁煙化」を目指すように訴えた。
このほか、たばこ税の引き上げ、たばこの広告の禁止など総合的な対策を求めた。
2016-08-30
Link de Diet 2016.8.29 , EurekAlert 


単純に調理の方法を変化させることで糖尿病が予防できるかもしれない、
という米国マウントサイナイ医科大学からの研究報告。

新しいランダム化対照臨床試験において、
インスリン抵抗性の兆候のある肥満者が、
AGEs(終末糖化産物)の摂取を単純に避けることで
改善を示したことが明らかになった。

AGEsとは、乾燥加熱調理(ドライヒートクッキング、グリル、
フライ、ベーキング)で一般的に生成する副産物である。

本研究は、2014年に発表された研究のフォローアップ研究である。
以前の研究では、体内の高濃度のAGEsと前糖尿病状態であるインスリン抵抗性の上昇や
アルツハイマー病のリスク因子の上昇などとの関連が示唆されていた。

今回研究チームは対象者をランダムに2群に分け1年かけて実験を実施した。
この間一方(61名)にはAGEsを大量に含む典型的な高AGEs食、
もう一方(70名)には低AGEs食を食べてもらった。

低AGEs食群は、食品をグリル(焼く)、フライ(揚げる)、ベーキング(焼く)ことを避け、
ポーチング(茹でる)、シチューイング(煮る)、スチーミング(蒸す)
するように指導された。

試験開始時と終了時に血液と尿が採取されインスリン抵抗性が測定された。

両群とも開始時のインスリン抵抗性はほぼ同じ状態だったが、終了時には、
低AGEs食群はインスリン抵抗性が有意に改善されていたという。
わずかに体重も下がり、体内のAGEs濃度も低下していた。

「西洋型食生活では食品中のAGEsは全般的に高めであるが、
AGEsの高い商品を避けることで、
実際それに起因するダメージを抑えることが可能であった」
と研究者はコメントしている。

出典は『糖尿病学』。 (論文要旨)  
2016-08-30
Link de Diet 2016.8.25 , EurekAlert 


近隣に生鮮食品を販売する店がないと、
住民に若年性心疾患の兆候が高まるようだ、
という米国グランドバレー州立大学からの研究報告。

「地域に健康的な食品を販売する店がないことは、
心臓病の人々が比較的多い理由を説明するのに有効であるかもしれない」
と筆頭著者のジェフリー・ウィング助教授は述べている。

「つまり、より健康的な食品が入手しやすいほど、食生活が健康的になり、
冠動脈プラークの形成の減少をもたらすかもしれない。」

以前の研究では、比較的貧しい地域において、生鮮食品の選択に制約があるか、
ファストフード店が多いか、これらの少なくともどちらかがあることが、
健康的でない食生活に関連していることが報告されていた。

このような地域の住民は、早期アテローム性動脈硬化症
(動脈硬化や様々な心臓病の基礎となる疾患)の可能性が高まるのであるが、
その原因はわかっていなかった。

研究チームは、アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)に登録した
5,950人の成人を対象とした12年以上におよぶ追跡調査期間において、
レクリエーション施設や健康的な食品を販売する店の利用、
近隣の歩きやすさ、社会環境などの利用が限られていることが、
アテローム性動脈硬化症の初期段階にどのように寄与するかを調査した。

冠動脈カルシウムは、CTスキャンによる測定で、
動脈のアテローム性動脈硬化量を検出できる。
参加者は全員、調査の開始時にCTスキャンを受けた。
MESAへの参加者の86%は、平均3.5年の間隔を空けて
3回にわたり、冠動脈カルシウムを測定した。

レクリエーションセンターなどの影響を除いていった結果、
冠動脈アテローム性動脈硬化症の進行がより速い中高年では、
心臓の健康に良い食品を販売する店へのアクセスの減少が共通にみられることが示唆された。

「今後の調査では、健康的な食品を販売する店を増やすといった具体的な介入の影響や、
近隣の特徴が個人のリスク要因や遺伝的素因にどのように関わるかなどを検討すべきだ」
と研究者らは述べている。

MESAは、国立衛生研究所の国立心臓肺研究所が後援する継続的な調査であり、
心臓病や健康問題に関連する1,000以上の論文にデータを提供してきた。

米国心臓協会では、果物、野菜、全粒穀物、豆類、豆、ナッツ、低脂肪の乳製品、
皮なし鶏肉や魚が豊富で心臓の健康に良い食事を勧めている。

さらに、飽和脂肪とトランス脂肪、ナトリウムの少ない食品を摂って、
添加糖類と赤身肉を制限するように勧めている。

出典は『循環器』。 (論文要旨)      
2016-08-29
Link de Diet 2016.8.4 , EurekAlert


血中ビタミンD濃度の低さは、数年後に認知機能の低下や
機能障害が起こるリスクとの関連性があることがわかったという。
シンガポール国立大学と米国デューク大学が中国の高齢者を対象に行った研究から。

ビタミンDは主に日光にあたることで皮膚内で合成されたり、
食事からも摂取できる栄養素で、人間にとっては健全な骨や筋肉の維持に必要だ。

そして現在、脳機能を健康に保つ上で重要な役割を果たすとも考えられている。

先行研究では、血中ビタミンD濃度が低い人は心血管疾患や神経組織の
疾患リスク増大がみられている。またヨーロッパや北米で行われた研究で、
血中ビタミンD濃度の低さと後年の認知機能低下の関連が認められている。

今回の研究は、中国の60歳以上の高齢者1200人ほどを対象とし、
ビタミンD濃度と認知機能について同様の問いを投げかけたものだ。
この内容について調査した大規模な前向き研究は、アジアでは初めてのものである。

研究では最初に対象者の血中ビタミンD濃度を測定し、
その後2年間に渡り認知機能の評価を行った。

すると、性別・年齢に関係なく、研究開始時点でビタミンD濃度が低かった人は
認知機能が低下していくリスクが2倍高かったほか、
認知機能の低下が認知障害レベルにまで達してしまう
リスクも2~3倍に高まることがわかったという。

「今回の対象者は中国人だが、この結果は
アジア圏の人々全般にあてはめられると思います。」
と筆頭著者のマッチャー氏は話している。

今回の所見は、ビタミンDが神経細胞の損傷・損失を防ぐ作用を持つという
概念を強化するものであり、また認知機能低下に対する
ビタミンDサプリメントの効果についてはより集中的な調査が必要である。

ビタミンDが神経細胞を保護するメカニズムについての理解がより進めば、
高齢化社会で急速に増加する認知機能低下の有病率を下げるための
有効な対策を見つけるための一助になるかもしれない。

出典は『老年学雑誌: 医学』。 (論文要旨)      
2016-08-22
がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点
読売新聞  2016年8月22日

トンデモ医療に引っかからないために(下)


前回は、インターネットのがん情報は信頼できないこと、
また、一般書店に置いてある書籍なども、信頼できるものが少ないこと、
についてお話しいたしました。

正しい情報が不足している状況で、
医師が行うトンデモ医療が横行している現在です。

では、患者さんは、トンデモ医療に引っかからないようにするために、
どうすればよいでしょうか?

患者さんがまずすべきこと

最もお勧めするのは、現在かかっている病院で、医療者に相談することです。
主治医がゆっくりと相談にのってくれれば、それに越したことはないのですが、
一般的に、がん治療に関わっている医師は、相当多忙なのが現状です。

その場合、看護師や、薬剤師、ソーシャルワーカーなどに
相談してみることをお勧めします。

また、がんの専門的な診療ができる病院として国が指定している
「がん診療連携拠点病院」(1)には、
「がん相談支援センター」の設置が義務付けられています。

現在かかっている病院が、がん診療連携拠点病院でない患者さんも相談できますので、
お近くの拠点病院を探してみてもよいでしょう。

正しい情報はどこに?

一般の人が得られる情報で、正しい情報はどこにあるでしょうか?

図1は、医学情報の信頼度(エビデンスレベル)をランク付けしたものです。

これによりますと、最も高いランクに位置づけられる情報源は、
優れた医学論文となります。実際、医学論文にも、ピンからキリまであり、
ランダム(無作為)化比較臨床試験の結果が掲載されているものは
最も信頼度が高いです。

ランダム化比較臨床試験とは、新しい治療を受ける人と
受けない人を無作為に分けて、治療結果を比較する試験のこと。
たとえば、ビタミンCを飲む人と飲まない人を、
年齢や性別、合併症の有無などを問わずに無作為に分けて、
効果を調べる方法などがこれに当たります。

このランダム化比較臨床試験にも実はランクがあり、
対象者が少人数の研究だと信頼性は低下します。
がんの臨床試験であれば、数百人規模の患者数を対象としたものであれば、
信頼度はまずまずと言えます。

ただこうした優れた医学研究の結果を
一般の方が目にすることは非常に難しいのが現状です。

メディアが、優れた医学研究の結果を正しく報道してくれればよいのですが、
残念ながら、日本のメディアでは、正しい医学情報が適切に報道されているとは言えない状況と思います。

「ランダム化比較臨床試験の結果……」などという
メディア報道はほとんど聞いたことがありません。

メディアのがん報道というと、信頼度が低い少人数での臨床研究の結果や、
基礎実験(動物実験を含む)レベルの結果が多いのが特徴です。

メディアでは、どちらかというと、
正しく情報を伝えるということよりも、
センセーショナリズムが優先されてしまうので、
しょうがないのかもしれません。

権威者の意見も要注意!

気を付けなければならないのは、
権威者やその道の専門家の意見です。

メディア報道では必ずと言ってよいほど、
「○○大学教授の○○医師によると・・・」、
などとのコメントが寄せられます。

情報の信頼度から言いますと、「人が言ったこと」というのは、
最もエビデンスレベルが低い情報となります。

権威者の意見は、わかりやすさといった点では、聞こえがよいのですが、
個人の意見というのは、さまざまなバイアス(偏り)がかかります。

個人的な思いこみや、経験に基づいたバイアスなどにより
個人の意見は変わってきます。

たとえ、その道の専門家であったとしても、
そのバイアスはぬぐいきれません。

その道の専門家であればあるほど、
結果を誇張してしまったりするかもしれません。
また、自分の研究のライバルの結果であったとすれば、
結果について、過小評価したりするかもしれません。

かくいう私の意見も、このコラムの主張も、
個人の意見、人間の意見ということになりますので、
さまざまなバイアスがあり、信用できないということになります(笑)。

このコラムを読んでくださっているかたは、大丈夫と思いますが、
人の言ったことには、バイアスがかかるので、
決して私の意見も絶対視しないでいただきたい、ということなのです。

「診療ガイドライン」の勧め

では、一般の方、患者さんが手に取ることができて信頼できる情報は
何を見ればよいかというと、「診療ガイドライン」を紹介したいと思います。

診療ガイドラインとは、ランダム化比較臨床試験など、
エビデンスレベルの高い医学情報に基づいて
病気の予防・診断・治療などの根拠や手順について
最新の情報を分かりやすくまとめた指針です。

標準的な治療法、すなわち、
最善の治療を紹介しているガイドラインと言えます。

厚生労働省の委託事業として、日本医療機能評価機構が運営する
「Minds(マインズ)ガイドラインセンター」のWebサイト(2)では、
一般の人向けの解説も掲載しているので参照してほしいです。


診療ガイドラインに基づいた
標準治療を記載しているサイトとしては、

国立がん研究センターがん対策情報センター(3)
米国の国立がん研究所(NCI)が作成しているPDQ?日本語版 がん情報要約(4)
などがありますので、それぞれ参照してください。

手っ取り早くトンデモ医療を見抜きたい人のために

正しい情報を得るためには、
どうすればよいかということを解説してきました。

もっと手っ取り早くインチキなトンデモ医療を見抜きたい人のために、
以下の表をつくりました。


トンデモ医療を見分けるための5つのポイント

保険が利かない高額医療
体験談が載せられている
○○免疫クリニック、最新○○免疫療法
先進医療に指定されていない
奇跡の○○治療、末期がんからの生還
 
このうち、2つ以上当てはまるとトンデモ医療であることは確実!!

1つだけ当てはまっても要注意ですが、
2つ以上当てはまればインチキは確実。

惑わされやすいのが、がん患者による体験談です。

図にも示しましたが、個人の意見や、体験談は、
医学情報としては、最も信頼度が低いものとなります。

個人のデータというのはわかりやすいので、
つい信じてしまいがちになりますが、
信頼性といった点では、乏しい情報です。

個人の体験談、経験談だけでは、
本当にその治療法が良かったかどうなのかはわかりません。

別の患者でも同じ治療法で同じ効果が得られる「再現性」はあるのか?
その治療をしなかった場合はどうなのか?
ほかの治療と比べるとどうなのか?
ほかの治療と併用していたのではないか?
○○という治療が効いたという客観的な証拠はあるのか? 
きちんと学会や医学論文として報告されているのか?

などなど、突っ込みどころは満載です。

自由診療で保険外治療をしているクリニックでは、必ずと言ってよいほど、
「〇〇治療でがんが消えた」など、個人の治療効果を紹介しています。

このようなクリニックのサイトの体験談などは、
真実かどうか疑わしいものも少なくありません。

学会などに発表されたデータでもなく、よくよく読むと、
ほかの治療と併用していたりして、
その保険外の治療の効果とはとても言えないような結果であったり、
嘘うそ や誇張が含まれていると考えた方がよいものがほとんどです。

この表のなかに、「先進医療に指定されていない」とあります。

「先進医療(5)」とは、将来に期待がされている治療で、
まだ保険適用されていませんが、厚生労働省が指定して、
混合診療(患者さんの自己負担となる保険外診療と
保険医療の併用をすること)を例外的に認めている医療です。

先進医療も、研究段階の医療であり、
有効性は確立されていない治療なのですが、
先進医療にも指定されていないのに、怪しいクリニックでは、
「先進医療」「最先端医療」などと宣伝しているところもあるので、
なお注意が必要と思います。

トンデモ医療をなくすために

情報化が進んだ現代で、トンデモ医療が横行してしまっている
現状はとても嘆かわしい状況と思います。

こうしたトンデモ医療は、一部では、
がん患者さんを利用したビジネスと化しているものもあります。

がん患者さんは、「 藁わら にもすがる気持ちで」、医師が言ったこと、
医師がやっていることだから、とつい信じてしまいがちです。

患者さんの弱みにつけこんで、ビジネスにしようとする
トンデモ医療は許されるべきではないと思っています。

こうしたトンデモ医療に惑わされない、
だまされないようにするために、
皆で声をあげていく必要もあると思っています。

また、トンデモ医療に騙されない患者の知恵を
ぜひつけていってほしいと思います。

参考

国立がん研究センターがん情報サービス がん診療連携拠点病院などを探す
http://hospdb.ganjoho.jp/kyotendb.nsf/xpKyotenSearchTop.xsp

Minds(マインズ)ガイドラインセンター
https://minds.jcqhc.or.jp/n/medical_user_main.php

国立がん研究センターがん対策情報センター 
がん情報サービスレファレンスリスト
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/index.html

NCI PDQ?日本語版 がん情報要約
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/index.html

厚生労働省 先進医療の概要について
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/


勝俣範之(かつまた・のりゆき)
日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。
92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。
その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、
2003年同薬物療法部薬物療法室医長。
04年ハーバード大学公衆衛生院留学。
10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。
2011年より現職。

近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。
専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、
がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。
2016-08-20
読売新聞 2016年8月17日


「医食同源」という言葉を聞いたことがあると思います。
日頃からバランスのとれたおいしい食事をとることで病気を予防し、
治そうという考え方のことです。

中国の「薬食同源」の思想に着想を得て、日本で造られた言葉です。

今では中国に逆輸入されている言葉ですが、現代の高度に発達した医学の中では、
いつの間にか置き去りにされてしまった考え方のように思います。

日本社会は急激に高齢化が進み、2025年には
人口の2割が75歳以上になると予測されています。
「少子高齢化」で患者数が爆発的に増える一方、
医療従事者は不足が懸念されます。

日々の診療の中で私たちは患者から多くのことを学びますが、
高齢の患者から学ぶことの一つが「動いて食べる患者はよくなる」ということです。

高齢者は筋肉が衰えて減るため、若者のように
素早く動くことや長時間の行動が難しくなってきます。
日々の運動が大切ですが、傷病者は体を動かすことができません。

そこで入院時、かつてのように安静を保つより、
むしろ積極的にリハビリテーションを行い、
筋肉の衰えを防いだり、増やしたりする方が良い
という考え方が主流になってきました。

筋肉という組織は単に体を支えたり、
動いたりするためだけのものではありません。
筋肉の中では様々な栄養素が代謝され、貯蔵されています。ですから
筋肉の維持や増加は、健康を保つためにとても大切な要素の一つなのです。

しかし、薬だけで筋肉を維持するのは極めて難しいため、
その原料になる栄養を 摂と ることが必要です。

医食同源は、このような大事な内容を含んでいるにもかかわらず、
置き去りにされた考え方でしたが、
高齢の患者の増加とともに見直されるようになりました。

(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)
2016-08-19
Link de Diet 2016.8.17 , EurekAlert 


1週間に5サービング以上ナッツを摂るか、
動物性たんぱく質をナッツに置き換えると、
炎症性バイオマーカーの健康プロフィールに影響するようだ、
という米国ブリガム・アンド・ウィメンズ病院からの研究報告。

研究者らは、5,000人以上の調査において、ナッツの摂取が多い人は、
炎症のバイオマーカーの濃度が低いという関連があることを発見した。

「集団調査の結果は、ナッツには、心血管疾患や2型糖尿病などの
心血管代謝障害に対する保護効果があることを一貫して支持している。

さらに、これらの疾患の発症には炎症が重要であることも私たちは知っている」
と主任研究者のイン・バオ博士は述べている。

「この研究では、ナッツが全身性炎症を減少させることによって、
有効性をある程度発揮する可能性を示唆している。」

以前に、バオらは、ナッツの摂取が増加すると、
主要な慢性疾患のリスクや死亡リスクが低下することを観察した。
そして、いくつかの前向きコホート研究で、
ナッツの摂取量と炎症との関連も検討されてきた。

現在の研究では、研究チームは、
12万人以上の女性看護師を対象とした『看護師健康調査』、
50,000人以上の男性の医療専門家を対象とした『男性医療従事者の疫学研究』
からのデータに対して横断分析を行った。

研究チームは、調査票により食事を評価し、
参加者から採取した血液サンプル中のバイオマーカーであるたんぱく質の濃度を調べた。
実際には、炎症のバイオマーカーとして確立している3種類のバイオマーカー、
C反応性たんぱく質(CRP)、インターロイキン6(IL6)、
および腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)を測定した。

その結果、年齢、病歴、生活スタイル、他の変数を調整した後、
週に5サービング以上のナッツを摂取していた参加者は、
ナッツを食べないかほとんど食べない人に比べて、
CRPおよびIL6の濃度が有意に低かった。

また、赤身肉、加工肉、卵、精製穀物の代わりに、
週に3サービングのナッツに置き換えると、
CRPおよびIL6濃度が有意に低くなることも判明した。

ピーナッツやナッツ類には、マグネシウム、食物繊維、L-アルギニン、抗酸化物質、
αリノレン酸などの不飽和脂肪酸といった健康的な成分が多数含まれている。

これらの成分のいずれかに、あるいはこれらの成分の組み合わせに、
炎症の保護作用があるのか、まだ明らかにはなっていない。
バオらは、食事の調整や管理による臨床試験を通じてさらに調べたいという。

「私たちの研究は、食事中のナッツが全体的にみて健康に良いことを支持し、
心血管代謝疾患へのナッツの効果を説明するかもしれない潜在的なメカニズムとして
炎症を低下させることも示唆している。」とバオは語っている。

出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-08-16
読売新聞 2016年8月16日

変形性膝関節症の痛み、太極拳が効果


標準的治療法と遜色なし…米タフツ大など調査

中国で古くから伝わる武術で、健康にも良いとして老若男女にポピュラーな太極拳。
中国の公園では朝早くから市民が集まり練習する姿が見られる。
その太極拳に、膝の痛みなどで数多くの中高年の男女を悩ませている
「変形性膝関節症」の症状を軽減する効果があることが、
米タフツ大学医学部などの研究グループによる調査から明らかになった。

しかも、その効果は同症の治療指針で推奨されている
標準的な治療法である理学療法の効果と遜色なかったという。
調査結果は米医学誌「Annals of Internal Medicine」
( 電子版 )に発表された。

効果的な治療選択肢に

変形性膝関節症は高齢になるほど増加し、
レントゲン検査で診断される患者数は国内だけで
約2,500万人に上るという。

変形性膝関節症の代表的な症状は、膝の痛みや腫れ、
曲げ伸ばしが難しくなる「可動域制限」など。

特に立ち上がる時や階段の昇り降りの際に
痛みを強く感じるなどの症状に悩まされ、
外出がおっくうになってしまうケースは少なくない。

治療法には膝の曲げ伸ばしの訓練や膝を支える筋力を鍛える訓練などの
理学療法(リハビリテーション)や、膝関節にかかる負担を軽くし、
関節を安定化させるための装具の着用、
関節の動きをなめらかにするためのヒアルロン酸注射、
痛みや炎症を抑える薬による薬物療法などの「保存療法」の他、
障害の程度によっては手術が考慮される場合もある。

研究グループは今回、米国に住む変形性膝関節症がある男女204人
(平均60歳、7割が女性)を対象に、米国の治療指針などで推奨されている
標準的な治療(理学療法)を週2回のペースで6週間受け、
その後自宅で指示された運動をするグループと、
太極拳を週2回のペースで12週間続けるグループに分け、
12週間目の痛みの程度を比べた。

その結果、12週目の痛みの程度は両グループで改善し、
太極拳にも標準的な治療法と遜色ない効果が期待できることが分かった。

さらに、標準的な治療を受けたグループよりも
太極拳を続けたグループの方がうつ病や
生活の質(QOL)がより大きく改善していたという。

この結果について、研究グループは「心と体のエクササイズである
太極拳は理学療法とは大きく異なるが、それぞれの変形性膝関節症に対する
治療効果はほぼ同等だった」と説明。

その上で、「太極拳も変形性膝関節症の
効果的な治療選択肢として考慮すべき」との見方を示している。
2016-08-16
産経新聞 2016.8.16
【技あり!ほねつぎの健康術(9)】
骨の健康に気をつけよう


赤ちゃんには300個以上の骨がありますが、
成長とともに大人の骨の形に変化し、成人になると二百数個になります。

骨は成長した後も、破骨細胞が骨を壊し、
骨芽細胞が骨を作るという改修工事を絶えず行い、新陳代謝を図っています。

骨の成長過程は、木の成長に似ています。
若い木は、細く、弱々しく感じますが、折ろうとしてもみずみずしい表皮があり、
完全には折れにくいものです。この表皮が人間でいえば骨膜です。

成長期の子供の骨は、骨端線(成長線)という部位が成長し、
全体が骨膜で覆われていて、柔軟性があります。

成長した木は太く丈夫になり、
人間の大人の骨も太くたくましくなります。

しかし、年数を経た木は、中が空洞になることもあり、
崩れたり折れたりしやすくなります。

骨に例えると「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」という現象です。
高齢者にとって骨粗鬆症は骨折の大きな原因となります。
回復には時間がかかり、寝たきりにつながることもあります。

骨はある程度の負荷をかけると強くなると報告されています。
骨の健康を保つため、軽い運動を習慣付けましょう。
適度な日光浴も骨を強くします。また、

栄養バランスのよい食事やほがらかな会話も健康の秘訣(ひけつ)です。
新しいことに対する興味を失わず、
転倒などに注意しながら毎日を過ごせるよう心掛けましょう。

(斉藤勝典)

                   


問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475
2016-08-15
Link de Diet 2016.8.11 , EurekAlert 


フラミンガム心臓研究をもとにした新しい研究で、
単純な身体機能性テストを行うことによって臨床医が
アルツハイマー症や脳卒中リスクの高い患者を同定するのに
有益である可能性があるという研究。
ボストン大学医学部の研究者らによって報告されている。

簡便かつ容易に行える検査によって一般的な加齢性の神経変性疾患リスクを
スクリーニングできる方法として、身体機能性テストを用いる事は、
臨床家に希望をもたらす可能性がある。

ヒトは加齢とともに、身体機能が低下し、筋力や神経系の様々な
機能が衰え、運動能力やバランス機能が弱ってくるようになる。

近年の研究では、ゆっくりしたウォーキングや握力の低下などが
健康状態の悪化を示唆したり、将来的な身体障碍のリスクが高い
ことを示すサインであることを表しているものもある。

この情報に基づいて、研究者らは歩行速度の低下と握力低下が
加齢性の神経変性疾患の予測因子としても機能しうるかどうか
について検討を行った。

フラミンガム心臓研究に参加した被験者で35~84歳のものを対象に、
ある距離をできる明け速く歩いたとき(ランニングにはならない程度で)に
どの程度の速さになるかを計測した。さらに研究者らは、
被験者の最大筋力を握力計を用いて推定する方法を使って計測した。
被験者は、最大11年間追跡された。

結果を解析すると、歩行速度がゆっくりでありかつ握力が低かったものでは
アルツハイマー症のリスクが上昇していた。
加えて、65歳以上の被験者では握力の低下と脳卒中リスクが高い関連性を見せていたのだ。

これらの知見は、握力や歩行速度を測定するという単純で低コストな検査方法で
アルツハイマー症や脳卒中リスクを同定するのに役立てられる可能性を示唆するものである。
この知見に根拠が得られれば、脳卒中や認知症患者のスクリーニング手段として
有益なものとなり得る、と研究者は指摘する。

フラミンガム心臓研究のデータセットはこれまでも広く用いられてきており、
信頼性の高いデータである事が示唆されている。しかしながら、
被験者として対象となっているのが欧州に祖先を持つ白人種であるケースが
多く、その他の人種及び人口集団での妥当性について、
今後の検討が待たれるところである。

いずれにしても、本研究で用いられた簡便な身体機能性指標で見られた高い有意性は、
コスト面から言っても日常的な臨床応用がすぐにでも可能である点など、
注目に値するものであるということができる。

出典は『アルツハイマー病学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-08-15
産経新聞 2016.8.15 10:42
運動する人は13種のがんリスクが小さい 米国立がん研究所などが疫学調査


よく運動する人はそうでない人に比べ、13種類のがんにかかるリスクが小さい
との研究を米国立がん研究所などのチームがまとめ、発表した。

体をよく動かす人ががんにかかりにくいことは、
大腸や乳房のがんのほか、子宮体がんでも既に示されていた。

チームは今回、計144万人分のデータを含む欧米の複数の疫学研究を集めて解析し、
肝臓、胃、腎臓、骨髄など他の10種類のがんでも同様の結論を得た。
2016-08-14
産経新聞 2015.12.7

長寿社会、生き抜くヒント 「100歳本」に学ぶ



長寿社会の中、100歳まで現役で活躍する女性のエッセーが好評だ
 
100歳前後まで現役で活躍する女性のエッセーや自伝が人気を集め、
出版ラッシュというべき状況が続いている。

平均寿命が男女ともに80歳を超え、長寿を願いながらもどう過ごすか迷う人は少なくない。
1世紀を生き抜く言葉の重みに、多くの読者が魅了されている。

「考え一つで物事は明るくも暗くもなる。できないことは増えたけど、
下り坂からゆっくり眺める風景は忙しい上り坂とは違ってみえる」
と話すのは、家事評論家の吉沢久子さん(97)。

10月発売の『100歳になっても!これからもっと幸せなひとり暮らし』
(KADOKAWA)など、今年はすでに8冊の新刊を出した。
66歳で夫と死別。菜園で野菜を作り、自宅で勉強会を開くなど、
社会と適度な距離を保ちつつ、1人暮らしを楽しむ人生の達人だ。
〈ものがあろうがなかろうが幸せならいい〉

吉沢さんの著書には、日々の暮らしをより良く生きるヒントがあふれている。

現役最高齢の美術家、篠田桃紅さん(102)の著書も人気だ。
昨年刊行した自伝的エッセー『百歳の力』(集英社)は13万部超、
今年4月刊行の『一〇三歳になってわかったこと 人生は一人でも面白い』
(幻冬舎)は50万部のベストセラーに。

篠田さんは43歳で単身渡米。墨を使った抽象画に挑み、独特の作風で世界的な評価を得た。
生涯独身を貫き、どこの美術団体にも所属することなく自らの表現を追い求めてきた。

〈自由を求める私の心が、私の道をつくりました〉〈百歳はこの世の治外法権〉

年齢を重ねることを悲観せず、前向きに生きる人生哲学が読者の共感を呼ぶ。
雑誌「家庭画報」で50年近く篠田さんの作品や着物を紹介し、
エッセー『桃紅百年』を出版した世界文化社の編集者、富岡啓子さんは
「米国に行くことが難しかった時代に、
自分で道を切り開いた凛(りん)とした生き方に惹(ひ)きつけられるのだろう。
詩のように美しい文章も魅力」と話す。

日本初の女性報道写真家、笹本恒子さん(101)の
『100歳の幸福論。ひとりで楽しく暮らす、5つの秘訣』(講談社)には、
70代で一念発起し、作家の宇野千代さんら明治生まれの女性の肖像を
撮り始めたエピソードなどが明かされる。

 〈私は人生というものを、トシで決めたことはない〉

「女だから、高齢だからと信用してもらえないこともある」と、
96歳まで実年齢を公表せず第一線で活躍した笹本さん。
高齢の読者から「元気をもらった」「勇気が出た」という感想が届く。
「100歳の言葉には重みがあり、説得力がある」と担当の原田美和子さん。

文芸評論家の重里徹也・聖徳大教授は「90代まで生きることが珍しくなくなり、
定年後の長い人生を生きる指針が求められている。
(著書にある)短い言葉の中に、人生の知恵が凝縮されているため、
理想の生き方のヒントを求める人々の心に響くのだろう」と話している。(村島有紀)


2016-08-13
産経新聞 2016.8.13

化粧療法(上)いくつになってもキレイは元気のもと


「化粧療法」が認知症予防などの面から注目されてきた。
オシャレや身だしなみだけではない。化粧をすることで脳が活性化され、
抑鬱、健康寿命の延伸、介護費用の削減まで期待できるという。

クレオパトラのアイラインにみられるように、
古代から厄を除け身を守るためにも施されてきた化粧。
その不思議なパワーを今こそ。さぁ、おばあちゃんたちをメークアップ!

        ◇

「昔、ここに眉毛描いてたでしょ」。まばらな白い毛にグレーの眉墨が書き足される。
「もう、いーわよぉ」「すぐに終わりますからね…」。
昼下がりの介護老人保健施設「つくしの里」(川崎市)。
メークを施されている入所者の田川好子さん(100)は、
照れと不機嫌さの入り交じる態度を示していた。

「はい、できました!」。車椅子が大鏡の前に運ばれると、
重たそうなまぶたがパッと開いた。「わ! きれいになっちゃった」。
はっきりと喜びを口にする。

鏡の中に、凛と風格の漂う、激動の1世紀を生き抜いた女の顔があった。
昔の記憶もよみがえる。「子供を抱いて、防空壕(ごう)を探して逃げ回ったわ。
戦争はダメよ」。川崎大空襲の話も飛び出した。

「その子が私。明治の男に嫁ぎ、自分の装いなんて後回しだった母が、
お化粧でこんなにいきいきするなんて」。長女の櫻田泰子さん(72)が目を見張った。

メークアップ担当の岩田ちえ子さん(59)は、「化粧には女性としての意識を呼び起こし、
エロス=生命力を湧かせる力があると実感している。変身や若返りではなく、
この顔で生きてきたというお年寄りの誇りを引き出したい」。

平成23年にスタートし、2百人以上の高齢者に向き合ってきた
「プラチナポートレート」プロジェクト。
メーク後、介護士経験のあるパタンナーの久村美幸さん(54)が制作した
着脱容易な服や小物でドレスアップ。
その晴れ姿を写真家の野村佐紀子さん(49)がカメラに収める。

野村さんは、世界的な写真家・荒木経惟さん(76)の唯一の弟子。
岩田さんは、荒木さんの撮影時のメークや着付けを長年担ってきたスタイリストだ。

無償の手弁当だが3人は、「ボランティアじゃなくて押しかけ。
それぐらいお年寄りが魅力的」。つくしの里の作業療法士、遠藤さやかさん(33)は
「入所者にとって特別な時間です。認知症の方がノリノリになったり、
元気におしゃべりする姿を見るのはうれしい。何よりご家族に喜ばれている」。

日下ミエ子さん(100)のメークに立ち会った長男夫婦と娘は
「お母さん、これも着けて」。自分たちが贈ったアクセサリーを持参していた。
メークをして鏡を見せるとこれまた、乙女が恥じらうようなかわいらしい表情を見せた。

野村さんの師匠の荒木さんは4年前、本紙「朝の詩」が生んだ
“100歳の詩人”、柴田トヨさんの自宅を訪ねて撮影している。 
「きちんと化粧をして、待っていてくれた」と荒木さん。
みずみずしい詩作のベースには、口紅を引く美意識の高さがあった。

「化粧療法とか言っちゃうと、何か違う気がする」と
荒木さんは前置きしつつ、こうアドバイスする。

「化粧するとどんどん女のエネルギーが出てくるんだよ。
薬飲むよりいいだろうね。年とったら余計にやった方がいい。
化粧って化けるって書くけど実は逆なのさ。
心を開いて、その人の素を引き出す力があるんだよ」

資生堂で「化粧療法」研究に携わる医学博士で介護福祉士、池山和幸さん(40)

「化粧療法の特徴は、一瞬で明らかな効果が目視で確認できること。
化粧をした顔を鏡に写したとき、眠たそうだったまぶたがパッと開く。
それは自分に対する興味がわいている状態。口角も上がっていますね。

人間は年をとると自分や他人への関心を失い、閉じ籠もりがちになるが、
化粧によって人間らしさを取り戻すことができる。
環境を整えてあげれば、人はいくつになってもメークできます。
視力の衰えは拡大鏡でカバーして。口紅を付けるだけでも違います。

資生堂では平成25年、高齢者施設向けに化粧療法を事業化し、
26年度には経済産業省の「健康寿命延伸産業創出推進事業」として効果を検証。
お年寄りが自分で化粧することで脳が活性化し、抑鬱、筋力アップ、自立度向上が確認された。
1人当たり年間1万4220円の介護費用が削減できるとの試算も出ています」

2016-08-13
読売新聞 2016年8月13日

意外と怖い!部屋の埃に生息するカビ…呼吸不全で死に至ることも


梅雨時から夏にかけて発生するカビ。私たちの身の回りには、
台所などの水回りのほか、網戸やエアコンなど意外なところにも潜むという。

カビを長年研究している千葉大学真菌医学研究センターの矢口貴志准教授はこのほど、
BS日テレ「深層NEWS」に出演し、実は怖いカビの実態について解説した。

(構成 読売新聞専門委員・東一眞)

◆吸い込んだカビ

私たちは、呼吸量から考えて1日に1万個のカビを吸っているといわれています。
健康な方でしたら特に問題はありません。
ただ、免疫が落ちている人などは健康に影響がある場合があるかもしれません。

例えば、がんの末期の人、治療のために薬を飲んで免疫を抑えている方、
あと高齢の方、幼い赤ちゃんなどは危険度が高いといえます。

カビの種類は大変多く、8万種~10万種類くらいありますが、
我々の周りにあって本当に危険なものは10種類くらいだといわれています。

カビを吸い込んで、健康被害がある場合の初期症状は、
(1)微熱(2)咳(せき)(3)痰(たん)――などです。

肺炎の一種と思っていただければいいのですが、肺の中にカビが感染してしまうのです。
普通の抗生物質を飲んでもよくならないときには、専門の医師の診断を受ける必要があると思います。

こういう症状の一番大きな原因はアスペルギルスというカビです。
私たちの身の回りですと埃(ほこり)の中とか、空気のよどんだところに多く生息しています。
埃がたまりやすい場所ですね、エアコンでもフィルターの埃のところにつく場合があります。

実際に肺に入ったケースもあります。結核などで肺に傷があって、
そこにカビが定着してしまって増えることもあります。
カビがある程度増えてしまって、肺の機能が低下して、
呼吸不全を起こし、死に至るケースもある。

血流にのってほかの臓器まで転移してしまうとさらに重篤になります。
カビが原因で死亡する人は年間1000人くらいですが、
そのうちアスペルギルスが原因でお亡くなりになるのが、その約半分です。

普通健康な方は問題ないですけれども、昔結核などで肺に傷がある方とか、
免疫が落ちている方は注意が必要です。

◆皮膚の傷口から入るカビ

一方、傷口から入ってきて炎症を起こすカビもあります。
皮膚でも普通のところは大丈夫ですが傷がある場合は炎症を起こすことがあります。
エクソフィアラというカビが原因ですが、最初はかゆくなる。
このカビは、木の枝などにもいますので、枝を突き刺してしまって傷がついたときに、
一緒にカビが体内にはいってしまうと、炎症を起こします。

また、お風呂の排水溝や洗濯機の裏側などにもいますので、
そういうところを掃除されるときはゴム手袋をつけてください。
皮膚の深いところまで入って血流に乗って脳などに達した場合、重篤になる。

一方、皮膚に生えるカビは、われわれが経験する白癬(はくせん)、
つまりインキンタムシやミズムシといわれる病気の原因になるカビですね。
皮膚の一番外側は免疫のない状態ですので、誰でもかかる恐れがあります。

白癬菌は一つのカビではなく、いろいろなカビをまとめて白癬菌と呼んでいます。
皮膚の外側に入って、皮膚の一番外側のケラチン層を分解する能力をもっているカビです。
免疫のある奥まで入りませんが、外側の層で炎症を起こすからかゆくなるわけですね。

耳の中に生えるカビもあります。これは白癬菌とは違うカビです。
耳の中に、例えば耳掃除しすぎて少し傷があると、そこにカビが生えてしまう場合がある。
最近はイヤホンやヘッドホンをつけている人が多いですが、
長時間つけていると蒸れてしまって、カビが生える危険性が高まります。

湿気がこもっている状態ではカビが生えやすいです。
これはカビが原因の中耳炎の一つなので、
耳鼻科に行かれて、治療されたほうがいいでしょう。

◆カビが家のどこに発生しているのか

カビがどこに発生しやすいのか、実例を示すために私の研究室から、
電灯の傘の部分、パソコンのキーボード、電話の受話器、ブラインド、
エアコンなどからカビを採取し、培養してみました。

まず、電灯の傘の部分ですが、ここからは、先ほど述べたアスペルギルスがでてきました。
肺に入って感染する可能性のあるものです。ほかからは、アスペルギルスは出ませんでした。

ブラインドやエアコンで見られたのは、黒カビといわれているものです。
壁が黒くなる原因となるカビです。
このカビも吸い過ぎるとアレルギーの原因になります。

カビは、家の中のいたるところにいます。
一つは水回り、水分の多いところです。
洗面所、お風呂、台所。

もう一つは、空気がよどんで、埃がたまりやすいところです。
部屋の隅とか、エアコンの中、寝室のクローゼットとか、枕とか。
寝ている間に人は汗をかくので枕は湿気てしまいやすい。

また、植木鉢は土があります。土にはカビの胞子が含まれています。
ソファの割れ目、隙間は埃がたまるので、その中にカビが入っている。
カビは埃を餌にしているのです。

また、ダニはカビを餌にします。
カビが増えてしまうと、同時にダニが増えてしまう可能性があります。

◆カビの生えた食べ物は食べない

食べ物にカビが生えた場合、その部分を取り除いて、
カビの生えていない部分を食べたりすることもあるかもしれませんが、
それはやめていただきたい。
一見カビが生えていないような部分を切り取って、
色素で染めるとよく分かります。

カビが一見生えていないところでも、カビの菌糸が伸びているのが分かります。
菌糸は植物で言えば根にあたります。菌糸は透明なものが多いので、
それが食べ物の上に広がっていても、生えているかどうかは一見、分からないのです。

私たちはカビの胞子があることによって、それが青いとか黒いとか認識できる。
カビの胞子だけでは、どこまでカビが広がっているかが分からないのです。
この一部に胞子がつくのです。

あるいは、カビのついたパンなどは焼いたら安全だと思うかもしれませんが、
焼いたらカビは死ぬけれど、カビが作る毒物は熱をかけても壊れない場合が多い。
カビが毒物を作っていたら、その毒物は焼いたり煮たりしてもダメです。

食べたら、おなかを壊すなどの症状が出ると思います。
カビが生えた食べ物は、できれば屋外で、
マスクをしてカビを吸わないようにして、
ビニール袋にそーっと入れて、捨てるのがいい。

カビの中でも良いカビと悪いカビがある。
アオカビは、誰が考えても食べ物を腐らせてしまう悪いカビですが、
ブルーチーズにも使われる。
これは発酵に使われるものですが、毒がなく香りがいいと経験的に分かっているし、
最近では検査で安全性が証明されたものを使っています。

同じように日本でよく使われるコウジカビは、安全性が確認されたものを使っています。
鰹節(かつおぶし)を作る場合は最後の段階で、「カビ付け」という操作をするんですね。
それによって、水分を飛ばして、鰹節をカラカラに乾燥させ、風味をつける。

二つの作用があるのです。
コウジカビは、実はアスペルギルスの仲間の一つなのです。
一部は人に害があるけれど、一部は人の役に立つのです。

◆カビ対策

カビが生えるのは温度が20度から30度の間、
湿度が60%を超えて、栄養源がある場所です。

スーツを乾かさず、そのままクローゼットに入れた場合、
風通しが悪いので、そのままにしているとカビが生えやすくなります。

カビは何でも栄養にします。例えば、皮脂とか汗、手垢(てあか)なども栄養源にします。
よくCDの上にカビが生えるというのは、そこに付いた手の脂にカビが生えているのです。
あまり聞かないCDなんか、たまに開けてみるとカビが生えていたりします。

60度以上のお湯をある程度の時間かけるとカビは死にます。
ですけれども、カビが生えてしまったら、カビ取り洗剤を使って、
カビを殺菌して漂白してあげるのが効果的です。
熱湯だけだとカビは死にますが、黒いカビがそこに残ってしまいます。

布団に生えてしまったら、量が少ない場合は、乾燥させる。
外でよく日光にあてて、乾燥させてカビを落としていただくことが大切です。
ひどくなったら、布団の洗濯を業者に頼んでやってもらうのがいいと思います。

カビ予防は湿度と、栄養源である汚れを取る。
布団の場合ですと、乾燥させてやる。天日干しをする、乾燥機を使う。
シーツはまめに取り替えて、汚れを残さないようにすることが大切です。

シンクの周りにはカビがつきますので、お皿を洗ったついでに、
シンクの周りを掃除するとか、なるべく食べかすなどを残さないようにするのが重要です。

また、冷蔵庫の中で4度くらいの温度でもカビは死にません。
ゆっくりですけれど、4度でも生えるカビがある。

製氷機の給水タンクは水だけ足すのではなく、
洗ってあげて、水を加えるのがいいと思います。

空気中にあるカビが冷蔵庫を開けたときに入りますし、
水を入れるときにも入ります。

年末によく大掃除をしますが、梅雨時からカビが増えるので、
梅雨時に入る前に掃除をするのがいいと思います。
ゴールデンウィークは、出かけずに掃除をするのがよいと思います(笑)。

また、動き回るとカビが空中に舞う。
朝起きてすぐに掃除すると、夜のうちに沈んだカビの胞子を取ることがきる。
掃除機を使ったら舞い上がってしまうので、最初に拭き掃除をすると効果的だと思います。

2016-08-12
産経新聞 2016.8.12

化粧療法(下)外見だけでなく「心の化粧」


化粧療法は精神科の患者や介護現場でも効果を上げている。

メンタルヘルスや依存症の治療を行う医療法人耕仁会札幌太田病院(札幌市西区)では、
治療の一つとして平成15年から化粧療法を取り入れた。

午前9時45分、音楽が流れる院内の一室に次々と患者が顔を出した。

「今日はどこまでしていいかしら。(椅子の)後ろに寄りかかってください」

インストラクターの小野和代さんが優しく声をかける。

「華やかな気持ちになります」

化粧を施してもらった女性患者は笑顔を見せた。

入室時にはいらついて周囲をにらみつけていた男性も首や肩のマッサージを受け、
眉を整えてもらううちに表情が柔らかくなり、笑い声を立てていた。

化粧療法は精神を落ち着かせることに役立つ。
この日は退院を間近に控え、日常生活を送る
“心の準備運動”として参加している女性患者もいた。

太田健介院長は「化粧療法は認知行動療法の一つ。
患者は身だしなみに無関心になりがちだが、
化粧で現実と対面し、鏡を見ることで自分に関心を持ったり、
自信を持ち自己を肯定することにもつながる」とその効果を説く。

療法は外見だけではなく「心の化粧」にもなっているという。

同法人が経営する介護老人保健施設セージュ山の手の高齢者デイケアも
1月に2回、化粧療法を行っている。

約2年にわたって療法を受けている西川澄子さん(90)は
「アイシャドーをつけるなんて昔は考えられなかったけれど、
気分が上がります」と鏡をのぞきこんだ。

優しい色のルージュをつけてもらった星野ウメさん(94)は
「娘のお婿さんが療法を受けるときれいですね、と言ってくれる。
それがうれしい」と語る。

「人がきれいになるのを見るだけでも楽しくなる」
というのは大黒百合子さん(77)。化粧談義に花が咲いた。

日本化粧療法協会の原崎美也子会長は
「鬱や認知症が進んでいる方も化粧療法で次第に心を開き、
最初は嫌がっていても肌を触らせてくれるようになったり、
表情が豊かになったりする。

社会復帰のスムーズな導入にも役立つ。
一回のイベントに終わらずに継続していくことが大切だ」と話している。

          ◇

 編集後記

日本化粧療法協会会長の原崎美也子氏が化粧療法に取り組むようになったのは、
「敬老の日」にボランティアとして高齢者を施術したのがきっかけです。
札幌太田病院の当時の院長がその効果を認め、
療法として継続的に取り入れ、すでに10年以上がたちます。
化粧療法が一助となり患者から店で働く“看板娘”になった人も。

取材で訪れたとき、怒っていた精神科の入院患者が療法後、
鏡を見て花のような笑顔を浮かべたのは感動的でした。
精神的にいっぱいになると、身だしなみもおろそかになります。

化粧と言うとフルメークや外見のためだけのように思っていましたが
心の余裕を意味します。男女を問わず、年を重ねても
自分を肯定するきっかけになることに気付かされました。(杉)

          ◇

 化粧療法

フェイシャルケアやメーキャップなどを通して自信や満足感、
自己肯定感などを感じてもらう取り組み。
医療施設や老人保健施設などで精神疾患や認知症の患者の
心理・行動療法の一つとして取り入れられている。

化粧行為や色彩が回想のきっかけとなったり、
自身の姿を鏡で見つめることにより自尊心や自己愛が回復したり、
感情や表情が蘇ることが認められている。
2016-08-11

読売新聞  2016年8月11日
「ハムやソーセージの代わりに豆」で長生き

植物性タンパク質で死亡リスク減、ハーバード大調査


米国の医療従事者約13万人を対象に最長で32年間追跡した
調査データをハーバード大学の研究グループが分析した結果、
日常的に肉などの動物性タンパク質をたくさん取っている人は
わずかに死亡リスクが高い一方で、ナッツや豆などの植物性タンパク質を
取っている量が多い人は死亡リスクが低いことが分かった。

特に、動物性タンパク質のうちハムやソーセージなどの加工肉は
死亡リスクに強く関係しており、加工肉の代わりに
植物性タンパク質を取ればリスクが大幅に下がる可能性も示された。

ただ、植物性タンパク質を取る量と死亡リスクとの関係は、
喫煙者や飲酒量が多い人、運動不足の人など
生活習慣に問題がある人にのみ認められたという。

この分析結果は8月1日発行の米医学誌
「JAMA Internal Medicine」
( 電子版 )に発表された。


加工肉の代わりに植物性タンパク質取れば3割のリスク減に

炭水化物を少なめに抑え、その代わりにタンパク質を多めに取る、
いわゆる糖質制限ダイエットは血糖値や血中コレステロール値を下げ、
ダイエット効果だけでなく糖尿病や心臓病の予防効果が期待できる
健康的な食事法として知られている。

ただ、タンパク質にも肉や卵などの動物性と、大豆などの植物性がある。
日常的に取っているタンパク質が動物性か植物性かによって、
健康への影響に違いはあるのだろうか―。

それを調べるため、研究グループは今回、米国の医療従事者約13万人
(平均49歳)を対象に、最長で32年にわたって
食事内容を含む生活習慣などについて調査したデータを分析。

1日当たりの総エネルギー量に動物性タンパク質あるいは
植物性タンパク質が占める割合を割り出し、
病気や死亡のリスクとの関係について調べた。

なお、動物性タンパク質を含む代表的な食品として挙げられているのは
牛肉や豚肉、鶏肉などの他、ハムやソーセージなどの加工肉、魚、卵など。

一方、植物性タンパク質を含む食品には、
パン、シリアル、パスタ、ナッツ、豆などが挙げられている
(編集部注:パンやシリアル、パスタなどの穀類の主な栄養素は炭水化物だが、
種類によってはタンパク質も豊富に含まれている)。

病気や死亡のリスクは日常的な飲酒量や運動の習慣、喫煙の有無、
病歴などさまざまな要因によって左右されるため、
これらによる影響を取り除いて分析したところ、
総エネルギー量に動物性タンパク質が占める割合が増加すると
死亡リスクが高まり、植物性タンパク質が占める割合が増加すると
同リスクが低くなることが分かったという。

つまり、日常的に動物性タンパク質を取る量が多い人は寿命が短く、
植物性タンパク質を取る量が多い人は寿命が長い可能性が示されたわけだ。

ただ、タンパク質が動物性か植物性かの違いによってもたらされる
死亡リスクの差は、健康的な人ではなく
喫煙者や肥満の人、運動不足の人、飲酒量の多い人など、
元々病気になるリスクが高い人でのみ認められたという。

さらに、動物性タンパク質の代わりに植物性タンパク質を取ると
死亡リスクが低下し、特に加工肉の代わりに植物性タンパク質を取ることは
34%のリスク低下に関係していることも分かったとしている。

ただ、研究チームは「一部の魚には血中コレステロール値や
血糖値などを改善する効果があることも報告されている」と紹介。

今回の調査は全ての動物性タンパク質を否定するものではない
と捉えた方が良さそうだ。

今回、死亡リスクの観点からは特にハムやソーセージなどの
加工肉が良くない可能性が示されたことを踏まえると、
肉や魚を食べること自体を控えるのではなく、
ハムやソーセージなどの加工肉の代わりに
植物性タンパク質を取るのが良いのかもしれない。
2016-08-10
Link de Diet 2016.8.10 , EurekAlert 
  
身体活動能力が低いことは喫煙に次ぐ死亡リスクであるかもしれない、
というスウェーデン・ヨーテボリ大学の45年にわたる追跡調査の結果が報告された。

「生涯にわたって身体的な活発さのメリットは明らかである」と
筆頭研究者のぺル・ラーデンヴァル博士は語っている。
「低い運動能力は高血圧や高コレステロール異常に死亡リスクを高める。」

研究チームは、「1913年生まれの男性研究」という
ヨーテボリで1963年に50歳の男性を集めたコホート研究から
792名のデータを用いて、心血管疾患系疾患リスクと死亡リスクについて検討した。

1967年54歳のとき、792名の参加者は運動試験を受けた。
うち、656名は最大運動能力(最大酸素摂取量、VO2max)の試験も受けた。
限界まで能力を出し切る試験である。
残りの男性は健康的に安全でないと判断されてこの試験を受けなかった。

対象者はその後2012年100歳まで追跡調査された。
およそ10年ごとに何回かの運動能力試験が実際された。
死亡データは、国民死亡原因登録から得た。

推定VO2maxと死亡率の関係を解析するために、
参加者を3群に分けて検討したところ、VO2maxが高まるごとに
45年間の死亡リスクが21%低下することを発見したという。

「我々は低い有酸素能力が死亡リスクの上昇に関連することを発見した。
運動能力と総死亡の関係は層別されており、
最も低い最大酸素摂取量に最大のリスクがみられた。

有酸素能力の死亡リスクに対する影響力は、
喫煙に次ぐものだった」とラーデンヴァル博士は語っている。

出典は『欧州予防的心臓病学雑誌』。 (論文要旨)    
2016-08-10
Link de Diet 2016.8.1 , EurekAlert 


中年期以降の一般的なヒザの半月板損傷に対して、
運動療法は手術と同様に有益であるようだという研究。

中年期以降のヒザ半月板損傷においては、
手術よりも運動療法を第1選択として
治療することを検討して行く必要があるかも知れない。

現行広く行われている慣習的治療について、
根拠を持っていないとして疑問を投げかける研究である。

毎年、世界中で2百万人の人が膝蓋関節鏡下キーホール手術を
受けており、その医療費は数十億ドルに達すると推計される。

一方で、現行のエビデンスでは関節鏡下手術は多くの患者に対して
ほとんど有益でないと言う見解があるのだ。

デンマークとノルウェーの研究者らがこの問題を検討するため、
半月板損傷の中年患者に対して運動療法と関節鏡下手術を用いた場合
とでランダム化対照試験を行った。

140人の成人(平均50歳)でMRIスキャンを用いて
半月板損傷が診断された患者に対して検討を行った。
ほとんどの被験者はレントゲンによる
骨関節炎の確定診断を受けていなかった。

被験者の半数は管理された運動プログラムを週当たり2~3回、12週間にわたって継続し、
もう半数は関節鏡下手術を受けた後単純な運動を家庭ベースで行ってもらった。
3ヶ月後の時点で下肢筋力を測定、2年後の時点で自覚的膝機能についてもアンケートした。

2群の間で疼痛、スポーツや余暇活動時の機能性、
ヒザに関連したQOLの点では臨床的な有意差は見られなかった。
3ヶ月後の時点で測定した脚筋力では運動プログラム群が有意に上回っていた。

両群ともに2年間の追跡期間中に深刻な副作用は見られず、
運動群の19%はさらに手術を行ったが、手術による有益な作用はもたらされなかった。

管理された運動療法は手術に対して下肢筋力を増強するという点では
少なくとも短期的には優位性があるようだ。

中年期の半月板損傷患者でレントゲン的所見を有しないものに対しては、
運動療法が有益である
可能性を示唆するものであると研究者は指摘する。

ではなぜ、根拠なしに関節鏡下手術が広く行われているのか? 

本質的には良質の根拠が無視されている状況が存在しているようだ、
と同誌上の関連エディトリアルで別の2人の専門家は言う。
今後、こういった慣行もよく検討した上で
見直して行く必要性がある事が指摘されている。

出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)      
2016-08-08
Link de Diet 2016.8.2 , EurekAlert 
  
動物性たんぱく質の量が多いと、死亡率が上昇し、
植物性たんぱく質がの割合が高いと死亡率が低下したという。
これは、マサチューセッツ総合病院とハーバード大学からの研究報告である。
『JAMA内科学』に掲載された。

「私たちの発見は、長期の健康指標として、食事に含まれるたんぱく源となる食品の重要性を示した。
たんぱく質の全体の摂取量に焦点を当てた研究が多くあるが、
幅広い食事の観点から、たんぱく源として摂取する特定の食品について検討も重要である。

そこで、たんぱく質量だけでなく、そのたんぱく源となる食品に注目し、長期的健康との関連を研究した」
と、マサチューセッツ総合病院の研究員であるミンヤン・ソン医師は述べている。

食品中の炭水化物をたんぱく質に置換すると、
体重管理や血圧や心血管疾患のリスクが低下したという報告がある。
一方で、たんぱく源となる特定の食品に注目した研究は限られていたという。

研究は、米国の大規模な疫学研究(ナース・ヘルス・スタディ、専門職フォローアップ・スタディ)に参加している、
17万人ものデータを用いて解析を行った。対象者らは、2年毎に健康に関する調査票に回答し、
4年毎に、食事調査を受け、特定のたんぱく質の多い食品をどれくらい摂取しているかについて、情報を得た。

追跡期間は、それぞれ、女性を対象としたナース・ヘルス・スタディでは30年と
男性を対象とした専門職フォローアップ・スタディでは26年であった。
全体で3.5億人年であった。

追跡期間中に、3万6千名の死亡が確認された。
そのうち、9千人が心血管疾患、1万3千人ががんによる死亡、その他の死亡は1万4千人であった。

生活習慣や他の食事のリスク要因を調整した後、
動物性たんぱく源(肉、卵、乳製品)が多い場合、
総死亡率のリスクが8%とわずかであるが増加した。
一方で、植物性たんぱく質の摂取量が増加すると総死亡率は10%低下した。

さらに詳細を分析したところ、動物性たんぱく質の摂取は、
不健康な要素(低体重、肥満、大量のアルコール摂取、喫煙、活動性が低い)
が1つある場合にのみ死亡リスクを高めたことが分かった。

健康な生活習慣の参加者では、リスクは高まらなかった。
リスクを高める動物性たんぱく質は、主に豚や牛の肉やその加工品であり、
魚介類や鶏肉は含まれなかった。

著者らは「対象者が健康的な生活習慣だった場合、
動物性たんぱく質と死亡率との関連は消えてしまった。
これは、動物性たんぱく質の摂取量が同等でもその内容が違うことが考えられる。

実際に不健康な生活習慣の場合、より赤身肉や卵、高脂肪の乳製品を摂取していた。
一方で、健康な生活習慣を送っていたものは、魚介類や鶏肉を摂取していた。

だから、動物性たんぱく質の量で比較した場合、不健康な生活習慣を送っていた場合に、
死亡率とのより強い関連がみられたのかもしれない」と説明している。

そして、「動物性たんぱく質より、植物性たんぱく質を多く食べる方が良く、
動物性を摂取する場合も、魚介や鶏肉を選択することがよいだろう」と述べている。

植物性と動物性のたんぱく質の違いや動物性たんぱく質の中での異なった影響について、
メカニズムを理解するために更なる研究が必要であるとまとめている。

出典は『JAMA内科学』。 (論文要旨)      
2016-08-08
読売新聞 2016年8月8日


東京都葛飾区の主婦A子さん(81)は、2013年の春、
引っ越しで荷物を持ち上げた時、背中に激痛が走った。
近くの整形外科で痛み止めを注射してもらっても良くならず、
都保健医療公社・東部地域病院(葛飾区)を紹介された。

A子さんの背骨は、エックス線撮影で2か所潰れているのがわかった。
背骨に力がかかったことによる圧迫骨折で、
加齢に伴い骨がもろくなる骨粗しょう症が原因だった。
若い頃はバレーボールに打ち込んだり、ウォーキングに取り組んだりと、
体を動かすことが好きなだけにショックだった。

整形外科部長の嶋村佳雄さんは、潰れた背骨を復元する手術を行った。

背中側から針を刺して潰れた骨に穴を開け、中で風船を徐々に膨らませる。
次に、風船を抜いてできた空洞にゆっくりと骨セメントと呼ばれる樹脂を注入する。
「バルーン椎体形成術(BKP)」と呼ばれる治療法だ。

手術は1か所につき1時間程度で、約1週間入院。
2回の手術に数週間の間隔をおいた。

手術後は、治療で硬くなった骨が、
隣接する骨を圧迫して折ってしまわないための対策が必要になる。
嶋村さんはA子さんに骨の形成を促す薬を処方し、
1年間、コルセットを着けて背中を固定してもらい、背骨にかかる負担を軽くした。

A子さんは、今は背中の痛みもなく、伸ばすのも苦にならない。
「魚を食べて、毎朝、歩くようにしています」と話す。

荒川区に住む主婦B子さん(81)も13年夏、
起床時に腰が痛むようになり、嶋村さんの診察を受けた。
以前、胆管がんの手術を受けており、骨への転移を心配した。

BKPは、骨に穴を開ける時に組織を採取して検査できる。
がんの転移ではなく、腰の圧迫骨折が原因とわかり、
そのまま骨セメントの注入が行われた。

手術後、麻酔が切れた2~3時間後には痛みもなく歩くことができた。
「まるでウソのよう」と振り返る。

嶋村さんは「背骨が折れ、痛みで歩きづらくなって
体の機能が低下すると数年先の死亡率が上がる」と指摘する。
背骨は他の骨折より死亡率が高いとの海外の報告もある。

BKPは保険が利く。
圧迫骨折が起きて約2か月たっても
骨折部分が固まらず痛みが引かない場合が治療対象だ。

また背骨の潰れ具合が進み、中の太い神経を圧迫している場合は受けられない。
嶋村さんは「腰痛が長引く場合は早めに受診してほしい」と話している。
2016-08-06
産経新聞 2016.8.7
【脳を知る】
熱中症 体を冷やす食べ物も上手にとって暑気払いを


すっかり真夏の日差しです。熱中症で救急搬送されてくる患者さんが増えてきています。
もはや夏の風物詩にすら思えてしまうほどです。
熱中症になると非常に強い脱水症状を起こし、血液が濃縮します。
そうなると血栓ができやすくなり脳梗塞を起こしやすくなります。

水分補給が重要なことは言うまでもないことですが、
体温があまり上がらないように涼しい環境を作ることも非常に大切です。

30度を超えるような猛暑の場合にはやはりエアコンにも頼る必要があると思いますが、
エアコンが嫌いという声もよく耳にします。
その場合には窓をあけ扇風機などを利用し熱がこもらないようするなど環境作りが大切です。

ご高齢になると温度感覚が鈍くなり暑さを感じにくくなるようですので、
意識して行うことが大切です。それに加えて、食べ物も重要だと思われます。
体を温める食べ物、体を冷やす食べ物、といった表現を聞いたことはないでしょうか。

ショウガなどは体を温める食材として有名ですが、一般に体を温める食べ物が体に良くて、
冷やす食べ物は体に悪いというイメージがどうも強いようです。
しかし夏の暑い日には体を冷やす食べ物を意識して摂取すれば暑気払いに役立ちます。

具体的には野菜ではキュウリ、トマト、ゴボウ、ナス、レタスなどは
火照った体を冷やしてくれる効果があるとされています。

果物ではスイカ、パイナップル、メロン、キウイなどが該当します。
その他には豆腐やそばも冷やす効果があるといわれています。
野菜サラダとざるそばを昼食に食べ、
デザートにスイカやパイナップルを食べると夏向きの食事になりそうですね。

こまめな水分補給には水、お茶が望ましいと思います。
汗をたくさんかくときにはスポーツドリンクや経口補水液が適していると思います。
しかし、糖分や塩分も多く含んでおり、飲みすぎると良くありませんので、
たくさん汗をかいたり運動したりしているとき以外はほどほどの摂取にしてください。

緑茶は体を冷やす効果があるので、夏向きのお茶のように思われますが
カフェインを含んでいるため利尿作用が強く、たくさん飲むには適しません。
こまめな水分補給には麦茶やほうじ茶などのノンカフェインのお茶がいいと思います。

処方されているお薬をきちんと飲み、
定期的な通院を継続することはもちろん大切ですが、
ご自身でできる熱中症対策を行い脳梗塞を予防しましょう。

(済生会和歌山病院 脳神経外科 医長 三木潤一郎)

2016-08-06
AFP=時事 8月5日(金)

過体重、脳の老化を加速か 研究

【AFP=時事】過体重や肥満の中年の人々の脳では、
老化が加速している兆候が示されているとの研究結果が4日、発表された。

医学的に過体重とされる人の脳では、大脳白質
(脳の異なる部位間の情報伝達を可能にする結合組織)の各測定値が、
やせた人に比べて著しく低いことを研究チームは発見した。

米専門誌「加齢神経生物学(Neurobiology of Aging)」に掲載された論文によれば、
研究結果から判断すると、40歳の過体重の人の脳は、
老化が10年進んでいると考えられるという。

また、この10年の格差は、過体重や肥満の人々が年を取り、
長い時間を経ても残り続ける。

論文の筆頭執筆者で、英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)
精神医学部の科学者のリサ・ローナン(Lisa Ronan)氏はAFPの取材に
「脳の大きさは、老化が進むにつれて自然に小さくなる」と説明。

その上で、標準体重の人々に比べて
「過体重や肥満(の人々)は、白質の減少量が大きい」と説明した。

だが現段階では、過体重が原因でこのような脳の変化が起きているのか、
それとも白質量の低下が体重増加を引き起こしているのかについては、
科学的にはまだ推測の域を出ていないことをローナン氏は指摘している。

論文の共同執筆者で同じくケンブリッジ大のポール・フレッチャー(Paul Fletcher)氏は、
声明で「これら2つの因子の相互作用については、
健康に重大な結果がもたらされる可能性があるため、
その仕組みを解明することは重要となる」と述べている。

ローナン氏と研究チームは、20歳から87歳までのボランティア500人近くから収集したデータを調べた。
その結果、過体重のグループでは、年齢が中年を超えないと白質密度の格差が現れなかったことから、
脳の脆弱(ぜいじゃく)性が中年期以降に高まることが示唆された。

研究チームによれば、過体重の人とやせた人との認知能力や
IQ(知能指数)の測定可能な差については、
大脳白質の縮小との対応関係は存在しなかったという。

論文の別の共同執筆者で、ケンブリッジ大ウエルカムトラスト(Wellcome Trust)
医学研究評議会(MRC)代謝科学研究所(Institute of Metabolic Science)の
サダフ・ファローキ(Sadaf Farooqi)氏は
「脳構造におけるこれら変化の影響に関しては、現時点ではまだ不明」と話し、

「明らかなのは、今回の研究を出発点として、体重、食事、運動などが
脳や記憶に及ぼす影響をさらに詳細に調査する必要があることだ」と付け加えた。
【翻訳編集】 AFPBB News
2016-08-04
産経新聞 2016.8.5

人工知能、がん治療で助言 国内初か 白血病のタイプ10分で見抜く

膨大な医学論文を学習した人工知能(AI)が、
60代の女性患者の白血病が治療などが難しい特殊なタイプだと10分で見抜き、
適切な治療法の助言で回復に貢献していたことが4日、分かった。
治療した東京大医科学研究所は「医療へのAI応用に大きな手応えを感じた」としている。

同研究所が使ったのは、米国のクイズ番組で
人間のチャンピオンを破った米IBMのAI「ワトソン」。
同研究所はAIが患者の救命に役立ったケースは日本初ではないかとしている。

治療に関わった東條有伸教授は「AIが医療分野への応用に
非常に大きな可能性を持っていることが実感できた。
将来は診断や治療の方針づくりに役立つだろう」と話す。

膨大なデータの学習で的確な判断を行うAIは、
多様な分野で応用が模索されているが、
今後は医療への応用が本格化しそうだ。

女性患者は昨年、血液がんの一種である「急性骨髄性白血病」と診断され同研究所に入院。
当初の半年間は2種類の抗がん剤で治療したが回復が遅く、敗血症などの恐れも出てきた。

東大は昨年からIBMと共同で、がんに関連する約2千万件の論文をワトソンに学習させ、
診療に役立てる臨床研究を行っていた。
そこで、女性患者のがんに関係する遺伝子情報をワトソンに入力したところ、
急性骨髄性白血病のうち、診断や治療が難しい「二次性白血病」という
特殊なタイプだとの分析結果がわずか10分で出た。

ワトソンは治療法の変更を提案し、臨床チームが別の抗がん剤を採用。
その結果、女性は数カ月で回復して退院し、現在は通院治療を続けているという。
2016-08-03
読売新聞 2016年8月3日

太っていなくても生活習慣病
…「やせメタボ」の人、筋肉に特徴

太っていなくても生活習慣病になりやすい「やせメタボ」の人は、
筋肉でインスリンがうまく作用せず、糖を取り込みにくい体質であるとの研究結果を、
順天堂大学の田村好史准教授(代謝内分泌内科学)らが米医学誌に発表した。


田村准教授らは肥満でなくても糖尿病といった生活習慣病がアジアで多いことに着目。
体の糖分の貯蔵庫である筋肉(骨格筋)と肝臓で、
どれくらいインスリンが働いて糖を細胞に取り込むかなどを、
日本人108人について精密に測って比較した。

正常な人と比べて、肝臓では差がなかったが、
肥満でメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人は筋肉での糖の取り込みが低く、
肥満ではない人(体格指数BMIが23以上25未満)でも、
血圧、血糖、脂質に一つでも異常があると、筋肉への糖の取り込みが低いことが分かった。

筋肉への糖の取り込みが低かった人では、正常な人に比べて、
内臓脂肪が2割多く、体力は2割低下していた。

田村准教授は「歩く量を増やすとともに、軽いジョギングなどで
筋肉をほどよく鍛えることが、生活習慣病の予防に重要」と話す。
2016-08-03
読売新聞 2016年8月3日

[栄養で治す]「やる気」を買った指導教官


臨床現場での栄養サポートを学ぶために渡米した私は、指導教官を大いに悩ませました。
英語力なし、医学知識なし、栄養学の知識も乏しく、わずか4か月で帰国予定。
あるのは「やる気と笑顔」だけでした。


そんな私に対し、指導教官は「毎日、英文論文を1本夕方に渡すので、
大切な箇所に線を引いて、その論文に対する自分のコメントを書いて
翌朝に提出しなさい」と命じました。

論文の内容は、栄養学というよりも、
その基礎になる病気や体の仕組みに関するものが中心でした。

毎週5本の論文とコメントが蓄積され、
土曜日に指導教官の自宅で昼食をごちそうになった後、
添削してもらいました。
毎回ノートが真っ赤になり、心が折れた状態で帰宅しました。

当初1本の論文を読むのに深夜2時から3時ごろまでかかり、
朝6時から病棟で研修という毎日でした。
土曜日の午後10時に寝て、目覚めたら日曜日の夕方だったこともありました。
まだ20歳代後半だったので何とかこなし、
3か月ほどたったころ、指導教官に思いを打ち明けてみました。

「留学は4か月の滞在許可を得ているが、
本当は1年間勉強したい。滞在を延期できないでしょうか」。
才能のない者に厳しい国だと思っていたので、無理は承知でしたが、
笑顔で「いいよ。よく頑張っているからね」との返事でした。

アメリカンドリームと呼ぶにはスケールが小さ過ぎますが、
僕にとっては、大きな夢への第一歩を踏み出した感じがしました。

今考えると「英語力なし」は全てがマイナスではなかったと思えます。
英語が話せないことで病棟スタッフがとても親切に教えてくれたり、
寂しいだろうからとパーティーに誘ってくれたり、
意外にエンジョイできた部分もありました。

(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)
2016-08-02
産経新聞 2016.8.2
【技あり!ほねつぎの健康術(8)】
体操でバランス強化


前回に続き、健康で豊かな日常生活を過ごすため、
転倒やふらつきを予防する体操を紹介します。

 【開脚交差体操】

(1)いすに座り、床から足を浮かせ膝を伸ばし脚を開き静止させます
(2)右足、左足を交互に交差させます
(3)静止・交差を8回繰り返します。
(1回の動作は8秒間)

手でいすの座面をしっかりつかみ、背筋を伸ばすのがポイントです。
お尻の筋肉(殿筋)と太もも前部の筋肉(大腿四頭筋)、
おなかの筋肉(腹筋)が鍛えられます。


 【スクワット体操】

(1)いすの後ろに立ち、背もたれを握ります
(2)足は肩幅より少し広めに立ち、背筋を伸ばし、ゆっくり膝を曲げて8秒間静止します
(3)これを6回繰り返します。

背中の筋肉(脊柱起立筋)、殿筋、大腿四頭筋などが鍛えられます。

食事は運動の1時間くらい前に、
麺類やごはんなどの炭水化物で軽めに済ませるのが理想です。
空腹での運動は低血糖症を引き起こすこともあり、
満腹状態は消化不良による腹痛を起こす原因にもなるといわれています。

運動前の水分補給は、水よりも吸収率の高いスポーツドリンクがお薦めです。
運動中ものどが渇く前に少しずつ水分を補給しましょう。(蓮本宏一)

                   


問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475

2016-08-02
産経新聞 2016.7.5 10:02
【技あり!ほねつぎの健康術】
体操で筋力アップ


日本は高齢社会を迎え、平均寿命は男女ともに80歳を超えました。
しかし、50歳を過ぎると骨や関節、筋肉など運動器の障害が多発し、
健康で楽しい生活が送れなくなる方も少なくありません。

そこで、今回と次回は、日常生活を豊かに過ごすために必要な生活体力を向上させ、
転倒やふらつきを予防する体操を紹介します。

 【つま先立ち体操】

(1)いすの後ろに立ち、背もたれをにぎります
(2)かかとを上げ、つま先だけで立ち8秒間静止します
(3)これを6回繰り返します

しっかりといすにつかまり、足を肩幅に開き、つま先を前に向けるのがポイントです。
ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)と前太ももの筋肉(大腿四頭筋)が鍛えられます。

 【踏み込み体操】

(1)いすの後ろに立ち、背もたれをにぎります
(2)片足を斜め前に踏み出し体重をかけ8秒間静止します
(3)これを6回繰り返します

背筋を伸ばしたまま膝を曲げ、しっかり踏み込むのがポイントです。
お尻の筋肉(殿筋)と大腿四頭筋が鍛えられます。

最初は軽い動きから始めてください。
継続が筋力の維持・向上につながります。
体に不安のある方はかかりつけの医療機関に相談してください。(蓮本宏一)

                   ◇

 問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475
2016-08-02
Link de Diet 2016.8.2 , EurekAlert 
  
認知的トレーニングは実行機能を、有酸素的トレーニングは
記憶力をそれぞれ改善するようだというテキサス大学の研究者による報告。

認知的トレーニング、いわゆる『脳トレ』を行った成人は脳の実行機能が向上し、
有酸素性トレーニングを行った被験者に比べて7.9%脳内血流が増加したという。

有酸素性トレーニング群は逆に短期及び長期の記憶力パーフォーマンスが増大し、
この様な作用は認知的トレーニング群では見られなかった。
本研究は脳内血流動態と脳血管の反応性を
MRIを用いて比較検討した初めての研究であるという。

大多数の成人は認知症が発症していなくとも、
加齢とともに脳内の血流に変化が生じる。
とりわけその変化が記憶力と実行機能の領域に起こることが多く、
計画性や問題解決能力が影響をうけるのだ。

ヒトの脳は、20代を起点として、10年経つと1~2%の血流量低下が起こってくる。
そのため、認知トレーニング群で8%の血流量増加が見られたという事は、
血流量が脳神経の健全性に影響を与えているという点から見ても、
数十年の回復に相当するといって良い、と研究者は指摘する。

研究では、56~75歳の36人の座りがちな成人がランダムに
認知機能トレーニング群と有酸素性トレーニング群に割り当てられた。
それぞれのグループは週当たり3時間、12週間にわたってトレーニングを継続した。

神経認知的及び生理学的、さらにはMRIを用いたデータが
試験開始前、試験中、試験後の段階で測定された。
認知トレーニンググループは脳トレの専門機関である
脳健康センターによって開発された標準化SMARTテスト
(戦略的記憶力高度理由付けトレーニング)を用いてトレーニングが行われた。

この戦略ベースのトレーニングは、3つの実行機能である、
戦略的注意力、統合的理由付け、革新性機能
(問題解決などに関連する)に焦点を置いて行われた。

身体的トレーニング群は週当たり3回、1回60分の有酸素性トレーニングを、
トレッドミルもしくはエアロバイクを用いて最大心拍数の50~75%をターゲットとして行った。

多くの人は、記憶力がもっとあると良いと言い、
また年齢とともに記憶力が変わって来ることを自覚している。

記憶力が重要であることには違いないが、
意思決定や情報統合などの実行機能は同じように重要であるにもかかわらず、
あまり顧慮されてきていない傾向にある。

脳を活性化する上で、有酸素性トレーニングと
脳トレをともに行う事は重要なのだ。

有酸素性トレーニング群では脳全体の血流増加は見られなかったものの、
両側性の海馬体での血流増加が見られた。海馬体は記憶力に関連し、
加齢や認知症によって影響を受けやすい部位である。

身体活動のトレーニングを行う事によって
健康寿命が延びる事はこれまでの研究でも示唆されてきた。
全ての原因による認知症の発症率は、フィットネスレベルが高ければ
低いということも以前の研究から明らかになっている。

認知的トレーニングと身体的トレーニングを組み合わせることによって、
より良いQOLを実現できることが期待できる研究成果であると言え、
今後の進展が期待される。

出典は『人類神経科学の最前線』。 (論文要旨)      
2016-08-02
読売新聞 2016年8月2日

[認知症のはてな](4)不安や妄想、受け止める


介護される側、納得させる工夫

認知症の女性が便器に手を入れないようにと、夫が作った貼り紙。
青い水が流れるトイレ洗浄剤を一緒に使ったところ、妻が納得したという

認知症は、物忘れなどの基本的な症状に伴って、不安や妄想、 徘徊はいかい 、
介護への抵抗といった気持ちや行動の変化(行動心理症状)がみられることがある。
表れ方は様々で、介護する人を悩ませることも少なくないが、
かかわり方によっては、落ち着いたり、改善したりする。

東京都中野区の女性(80)は、夫(80)と2人暮らし。
女性は65歳の時にアルツハイマー型認知症と診断された。

最初は軽いもの忘れ程度だったが、異変はあった。
趣味の社交ダンス教室や定食屋のパートで、
「辞めてくれと言われた」と事実とは違うことを思い込むようになり、
人づきあいを嫌がるようになった。

しばらくして時間や場所が分からなくなると、毎日自宅から出て行こうとした。
夕方になると茶わんや化粧品をタオルに包み、玄関へ向かう。
夫が「家はここだよ」と言っても、興奮して「開けて」と繰り返した。

排せつ後に、便器に手を入れて便をいじることもあった。
夫が「不潔だよ」と注意してもやめない。
イライラして強く叱ると、女性の顔は険しくなったという。



東京都健康長寿医療センターの臨床心理士・扇沢史子さんは、
「認知症で記憶を失っても、感情は保たれる」と話す。
例えば、当たり前にこなしていた家事や仕事が急にできなくなったり、
親しい人とのコミュニケーションがうまくいかなくなったりして、パニックに陥る。

行動心理症状は、認知症の人が不安や焦り、
不自由を感じているサインだ。

「特に初めの頃は、介護する家族も認知症を受け入れがたく、元に戻そうとする。
しかし、叱られる、否定されることで本人はさらに不安になり、
行動心理症状につながることがある」と扇沢さんは指摘する。

症状の予防や改善には、安心して過ごせる環境が大切だ。

では、どうすればいいのか。
認知症相談センターゆりの木(東京都)の 右馬埜うまの 節子代表はまず、
「認知症の人と、私たちの住む世界は異なる」と説明する。

 新しい記憶や知識が失われていく認知症の人に、
私たちの常識や理屈を押しつけてもストレスに感じるだけ」。
正しいことを説得するより、その世界に合わせ、
“納得”を引き出すと本人は落ち着くという。

例えば、深夜にコートと帽子を身に着けて「会社に行く」と言う男性。
妻が「もう辞めたでしょ」と止めても聞かず、興奮して暴れだす。
そこで、まだ会社員のつもりでいる男性に合わせて、「今日は日曜日よ。
ゆっくり休んで」とねぎらうと、「そうか」と布団に戻ったという。

生い立ちや職業を考え、思いを尊重することも大切だ。
「うそをつくのを後ろめたく感じるかもしれないが、
忘れるという特性を利用するのも、
優しい関係を築くためのひとつの方法」と右馬埜さんは言う。


 
冒頭の女性の場合では、夫が、便器の横に「危険 消毒中」と貼り紙をし、
青い水が流れる洗浄剤を使うと、女性は便器に手を入れなくなった。
自宅から出て行こうとする時はなるべく夫が付き添ったが、
「警察が外は危険と注意していたよ」と話すと、素直に部屋へ戻ったという。

夫は「妻の表情は、私の顔を映す鏡なのだと思う。
叱ったり、否定したりせず、どうしたら妻が納得できるかを考え、
工夫している」と穏やかに語る。

ただ、介護する家族が悩み、一人でつらい思いを抱え込むと、共倒れにつながる。
右馬埜さんは「家族会で悩みを打ち明けたり、介護のプロに頼ったりして、
心や体を休ませることも大事」とアドバイスする。

 (手嶋由梨)
2016-08-01
Link de Diet 2016.7.27 , EurekAlert


より少なく食べることは、より長く健康的な人生へと我々を導く助けになるだろう、
という米国タフツ大学の大規模多施設共同研究の結果が報告された。

健康で肥満ではない人々が2年以上にわたって
25%のカロリー制限を続けることで、ただし充分なたんぱく質、ビタミン、
ミネラルは摂りつつ、することで、炎症系の他のパーツには
ネガティブな影響を与えずに慢性炎症のマーカーを有意に低下させた。

「85年以上におよぶ動物などのモデル系を用いた先行研究は、
カロリー制限が炎症やその他の慢性疾患のリスク因子を減少させる
ことによって寿命を延ばす可能性をサポートしている。

しかし、細胞媒介性免疫反応に対する効果については否定的かあるいは
効果なしか結果に一致した見解が得られていない」
と筆頭研究者のサイミン・ニクビン・メイダーニ博士は語っている。

「本研究はこれらの効果について、健康で普通体重か僅かに太り気味の対象者に対して
2年以上にわたって検証したもので、カロリー制限が炎症を減らすが、
他の免疫系の鍵となる機能、例えばワクチンに対する抗体産生など、
は維持できることを確認した。」

6週間に及ぶベースライン試験の後、
220名の適格者はランダムに2群に分けられた。

対照群は研究期間中通常の食事を維持した。介入群は満腹感を維持しながら
カロリーを25%少なくした食事をカスタム化された行動ガイダンス付きで与えられた。

介入群はまた栄養不良を防ぐために総合ビタミン・ミネラル剤を与えられた。
介入群の処方箋数は2年間の研究期間中に3分の1に減少した。
また体脂肪、除脂肪体重も低下した。

炎症及び免疫バイオマーカーはベースライン、12及び24か月に測定された。
研究終了時にワクチンへの反応性が測定された。

感染症への易感染性の指標として、細胞媒介性免疫が
3種のワクチンへの抗体産生とパッチテスト、
白血球数、自己申告による疾患数によって測定された。
加えて炎症が血清の一般的炎症マーカー
(C反応性たんぱく質、TNFα、レプチン)レベルによってモニターされた。

研究チームは、介入群で炎症マーカーが有意に低下したことを発見したが、
免疫応答については認識できる差異を認めなかったという。

12カ月時点での体重、体脂肪、レプチンレベルの低下は有意であったが、
C反応性たんぱく質とTNFαは24か月まで有意な低下を認めなかった。
この遅延は、長期(最低24カ月)にわたるカロリー制限が炎症反応を低下させる
別のメカニズムを誘導する可能性を示唆しているという。

出典は『加齢』。       
2016-07-30
ジョギングは危険? 休日に体を鍛えるなら、何をするべきか
プレジデントオンライン


「ジョギングは危険? 体をどう鍛えるか」

▼動くならどっち?

[A]皇居の周りを走る

[B]新宿御苑を歩く

●予防医学研究者 医学博士 石川善樹先生の場合
怒涛の1週間が終わり、やっと休息。
目いっぱいリフレッシュするために、何をするべきだろうか。

「脳の緊張を解いて疲れをオフにする工夫をしてください。
好きな音楽を聴いたり、お風呂に入ったり、質の高い睡眠をとったり。

マインドフルネス(瞑想)も有効です」
マインドフルネスの手順の最初に、姿勢をよくして、
呼吸を深くする項目がある。ゆっくり吐いて、ゆっくり吸う。

「息をゆっくり吐くと脳内に二酸化炭素が増えます。
脳内に二酸化炭素が増えると、幸せな気分をもたらす
神経伝達物質であるセロトニンの分泌が増えてきます」

セロトニンは気分や感情の高ぶりを抑えたり、
衝動的な行動を抑制したりする効果がある。
脳内にこの物質が分泌されることで、ストレスやイライラが低減されるのだ。

また、時には有休をしっかり使って「攻めの休暇」をとるのも大事だ。

「ビル・ゲイツをはじめ、アメリカの有名経営者には、
働き方をコーチングするエグゼクティブコーチがついています。
彼らがまずやることは、経営者のスケジュールが仕事で埋まってしまう前に、
まとまった休暇の日程を組むことです」

仕事から離れさせて情報をシャットアウトすることで、
経営者の脳を休めさせるのだという。

「普段忙しい人ほど、脳の休息期間は必須です。
休息をとることで、脳の中で情報が整理され、新たなアイデアが生まれるのです」


●帝京大学医学部 外科准教授 新見正則先生の場合
仕事がデキる人は、体調を整えるために運動を日課にしている。
近年のジョギングやマラソンブームにのって、そろそろ自分も!

と思い立つ人がいるが、それは危ない、と新見氏。
「張り切って、ジョギングしなくてもいい。
昔運動をやっていた人ほど、加減をせずに激しくやりすぎて、
膝や腰などを痛めてしまう。

特に、日頃走り慣れていない人や太り気味な人がジョギングを始めるなら、
ジムのトレーナーに指導してもらって、
最初は走行面がゴム製のランニングマシンを使うこと」。

新見氏がすすめるのは、通勤時と同じくウオーキングだ。

「できればジムなどのプールに行けると最高ですね。
プールでのウオーキングは、水圧があるうえ、
冷たいので代謝が増します。転んだり、膝を痛めるといった心配もない」

ウオーキングをバカにしてはいけない。
ウオーキングは、インナーマッスルを活性化して筋肉量を増やす効果がある。
有酸素運動なので、体脂肪も燃やしてくれる。
しかも、皮下脂肪よりメタボのもとであるお腹まわりの内臓脂肪を落としてくれる。

極めつきの効果は、これだ。

「歩くと脳の血流も改善します。
下半身の筋肉は運動神経を介しているので、
ウオーキングの刺激で脳の認知機能の向上・改善を期待することができます。
もちろん、将来的な認知症の予防にもなります」

ウオーキングをオフの時間の習慣にすることは
脳力アップ、ひいては仕事力アップにもなりそうなのだ。

「外で歩く場合は、できたら、不整地がいいです。
多少のデコボコがある、公園などの砂地や芝生を歩きましょう。
路面が不安定なので、自然と倒れないよう重心を維持してバランスを取るため、
インナーマッスルが鍛えられやすいのです」


予防医学研究者 医学博士 石川善樹
ジョギングは危険? 休日に体を鍛えるなら、何をするべきか
1981年生まれ。東京大学医学部を経て、ハーバード大学大学院修了。
企業・組織の健康づくり調査・研究などを行うCampus for Hおよび、
がん検診の受診率をあげる、キャンサースキャンの共同創業者。
近著に『疲れない脳をつくる生活習慣―働く人のためのマインドフルネス講座。


帝京大学医学部 外科准教授 新見正則
1959年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、オックスフォード大学大学院に留学、
98年博士課程修了。2002年より現職。医学博士。
漢方も使える臨床医、移植免疫の研究者でもあり、13年イグ ノーベル賞受賞。
著書に『3秒でわかる漢方ルール』『長生きしたけりゃデブがいい』ほか多数。
2016-07-26
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年7月26日

[レスベラトロール]寿命延ばす効果…まだ不明


「アンチエイジングには○○がいい」と聞くと、
ついそれを試してみたくなる人も多いのではないでしょうか。

今回は、「アンチエイジング(抗加齢)効果がある」
「健康寿命を延長する」と言われている、レスベラトロールについてご紹介します。


イタドリ根茎由来は薬事法違反

レスベラトロールは、ブドウの皮、赤ワイン、ピーナツ、ココア、リンゴンベリー(コケモモ)、
イタドリ根茎、メリンジョ種子などに多く含まれるポリフェノール(植物の成分)のひとつです。

注意しなければいけないのは、イタドリ根茎は虎杖根こじょうこんと呼ばれる生薬であり、
薬事法では薬に分類されていることから、食品に用いることができません。

つまり、イタドリ根茎由来のレスベラトロールを原料とした健康食品は
「無承認無許可医薬品」にあたります。

海外で製造されたレスベラトロール含有健康食品には、
イタドリ根茎由来の製品もありますので、注意が必要です。

一方、イタドリ若芽は非医薬品、すなわち食品に分類されていますので、
食用に使うことができます。

健康食品の規格基準の設定とその基準に係る認定制度として、
「認定健康食品(JHFA)」があります。
JHFAにおけるレスベラトロール食品の品質規格基準では、
「ブドウ由来、リンゴンベリー由来、又はメリンジョ由来のレスベラトロール」
と示しており、イタドリはそもそも含んでいません。


マウス実験でも「効果」一致せず

赤ワインを日頃から飲んでいるフランス人は、チーズやバターなどの乳製品から
飽和脂肪酸を多く摂取しているにもかかわらず
冠動脈疾患で死亡する人の割合が少ないとした報告がきっかけとなり、
赤ワインに含まれるレスベラトロールが注目されるようになりました。

その後、高脂肪食により短命となる条件下で実験動物(マウス)にレスベラトロールを与えた実験で、
寿命延長効果がもたらされた可能性があると報告されことから、
レスベラトロールは長寿物質として話題になりました。

しかし、レスベラトロールが寿命延長効果をもたらしたとされる報告は、
カロリーの60%が脂肪由来の食事を与えた結果です。

ちなみに、日本人では、カロリーのおよそ27%を脂肪から摂取しています。
また、普通食を食べた実験動物(マウス)では、
レスベラトロール摂取は寿命に影響がなかったとの報告もあり、
それ以外の報告においても、レスベラトロールの実験動物の寿命への効果は一致していません。

現在のところ、レスベラトロールの摂取が人の寿命を延長するという
臨床試験結果はなく、さらなる研究が必要です。


炎症や動脈硬化を予防する可能性も

レスベラトロールは抗炎症作用や抗動脈硬化作用などが期待されています。
試験管内やモデル動物(人間の病気と同じような症状が起こるよう作り出された実験動物)
を用いた研究では、レスベラトロールがこれらの作用をもつ可能性が報告されています。

しかし、メタ分析(過去におこなわれた複数の臨床研究のデータを集めた、
より信頼度の高い研究手法)の結果では、レスベラトロールの摂取は、
血圧、血中脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、および中性脂肪濃度)、
および炎症マーカー(生体内で起こっている炎症の有無や程度を反映する指標)
に影響を与えなかったことが報告されています。

実際にレスベラトロールが炎症や動脈硬化の予防や治療に役立つか
どうかを明らかにするためには、さらなる研究が必要です。


医薬品との併用摂取に注意

レスベラトロールと薬との併用摂取は注意が必要です。
薬は摂取した後、肝臓の薬物代謝酵素によって薬の作用が弱められ、体外に排出されます。

レスベラトロールは、肝臓の一部の薬物代謝酵素の働きを抑制、
または亢進こうしんすることが報告されています。
つまり、飲んでいる薬によっては、レスベラトロールが一緒に飲んだ薬の作用を増強させる、
または薬の効き目を弱めてしまう可能性が考えられます。

すべての薬の作用を増強・減弱させるわけではありませんが、
どの薬とレスベラトロールとを一緒に摂取すると相互作用を起こすのか分かっていませんので、
基本的には併用しないことをお勧めします。
もし、併用する場合には医師、薬剤師に相談した上で利用するようにしましょう。


レスベラトロールの安全性・有効性に関する科学的根拠の詳細をお知りになりたい方は、
国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトをご参照ください。


(国立健康・栄養研究所 東泉 裕子)
2016-07-25
Link de diet 2016.7.19 , EurekAlert 
  
脂肪摂取量に制限のない地中海式食事は、他の食事と比較して、
乳がん、糖尿病、心血管イベントを減らす可能性がある、
というミネソタ大学からの報告。

研究者らによると、健康的な食事は、「多くの脂肪」を含む可能性がある。

診断と治療の進歩にもかかわらず、心血管疾患、糖尿病、がんは、
先進国において、罹患率と死亡率の主要な原因の一つである。

飽和脂肪、砂糖、精製穀類が高い典型的な西洋型の食事は、
これらの慢性疾患の発症との関連が示されている。
限られたエビデンスからは、基本的に植物ベースである地中海料理が、
より健康的な選択肢である可能性を示唆している。

研究者は、健康的アウトカムにおける地中海式食事の影響を要約し、
北米住民が地中海式食事を遵守する傾向があるかどうか評価するために、
入手可能なエビデンスをレビューした。

研究者により地中海式食事の定義が異なることから、
研究者らは、地中海式食事を、総脂質摂取量に制限がなく、
下記の7つの構成要素を2つ以上含む食事と定義した。

①一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸 比が高い
(例えば、主な料理用材料としてオリーブ油を使用する)、
②果物と野菜の高摂取、
③豆類の高摂取、
④穀類とシリアルの高摂取、
⑤適度な赤ワイン摂取、
⑥乳製品の適度な摂取、魚類摂取が高く、肉類、肉製品の摂取が低い。

他の食事タイプと比較したランダム化比較試験はほとんどなかったが、
そのわずかな研究では、脂肪摂取量の制限のない地中海式食事は、
心血管疾患イベント、乳がん、2型糖尿病の発症の減少と関連する
可能性が認められたことが示唆されていた。
一方で全死因死亡率には影響がみられなかった。

地中海式食事の遵守に対する結果を評価する包含基準を満たした研究は見つからなかったという。
しかしながら、観察的研究は、地中海式食事の遵守度が最も低い者と比較して、
遵守度が最も高い者で、総がん発症率、死亡率、大腸がん・肺がんの発症率が
最も低かったことを示していた。

しかし、地中海式食事の遵守度と乳がんリスクとの関連性はみられなかったという。

出典は『内科学年報』。 (論文要旨)      
2016-07-21
読売新聞 2016年7月21日
ウイルス、食道がんを撃退…患者に治療効果


がん細胞だけを破壊する特殊なウイルスを使った治療で、
食道がん患者7人のうち5人で腫瘍が消えるなどの効果があった
とする成果を、岡山大学のチームがまとめた。

28日から東京都内で開かれる日本遺伝子細胞治療学会で発表する。

ウイルスは正常な細胞では増殖しないため副作用も起こりにくいとし、
2020年頃の薬事承認を目指す。

このウイルスは、岡山大の藤原 俊義としよし 教授(消化器外科)らのチームが
02年、風邪の原因となるアデノウイルスの遺伝子を操作して開発した。

がん細胞に感染して増殖し、細胞を破壊するが、
正常な細胞に感染した場合は自然に消える。

また、ウイルスには、がん細胞が放射線などで傷ついた自らのDNAを修復する機能を阻害し、
細胞を死滅させる働きもある。放射線治療の効果を高めることも期待できるという。

チームは13~15年、抗がん剤治療や手術が行えない
50~90歳代の食道がん患者7人に、ウイルスを使った臨床研究を実施。
内視鏡で腫瘍に直接3回注入し、並行して6週間、放射線治療を行った。

その結果、4人の腫瘍が消え、1人は腫瘍が縮小した。
残り2人のうち1人は腫瘍の大きさが変わらず、1人は病状が進んだ。
副作用は、発熱や食道炎など軽い症状にとどまった。

チームは、年内にも、薬事承認のために行う臨床試験(治験)の計画を、
医薬品医療機器総合機構に提出したい考えだ。

ウイルスを使ったがん治療は近年注目が高まっている。
米国では昨年、唇に 水疱すいほう ができる原因となる
ヘルペスウイルスを使った製剤が、皮膚がんで承認された。

国内で承認された例はないが、東京大学医科学研究所病院は
14年から悪性脳腫瘍を対象に、ヘルペスウイルスの治験を進めている。
2016-07-20
読売新聞 2016年7月20日
図書館で認知症支援…記憶を刺激し生き生きと
蔵書工夫、楽しさ提供する場に

誰もが気軽に利用できる図書館で、認知症の人への支援が始まっている。
心地よい居場所作りや、所蔵資料を生かした様々なサービスが行われている。


川崎市の主婦(69)は毎週、認知症の夫(77)と、市立宮前図書館に通う。

夫は症状の進行につれ、道に迷い、不要な買い物を重ねるようになった。
主治医と相談し、やむなく、自転車も財布もしまいこんだ。
「好きな本を選んで読む時間が、一番穏やかでうれしそう。
この楽しみは奪いたくない」と強く願う。

今春、ちょっとした事件が起きた。
夫が、手続きをせずに図書館の本を持ち帰ってしまった。
代わりに事情を話して謝ると、対応した職員の言葉に救われた。

「これまでも、認知症の方にありました。
これからもどうぞ利用してください」

同じ質問を繰り返す人、毎回、貸し出しカードを作らせる人。
同館では、認知症とみられる利用者が少なからずいるため、
安心して過ごしてもらおうと取り組みを進めている。

昨年、認知症の本をそろえた書棚を作り、地域の病院や患者会の資料も並べた。
今年1月、職員約30人が認知症の講座に参加した。
出口がわからず歩き回る人には、しばらく付き添い、
落ち着かせた上で見送るなどの対応も学んだ。

作業療法士として認知症の生活支援に携わる
九州保健福祉大学(宮崎県延岡市)教授の小川敬之さんは
「認知症でも、周りが関わり方を工夫すれば、
これまでと同じお気に入りの場所で、混乱せずに自分らしく過ごせる。
身近な図書館での支援は大切だ」と話す。

小川さんも、同大図書館や、地元の図書室で、
認知症の書籍を集めたコーナーの設置に関わっている。
利用者がふと足を止め、本を手に取ることを期待する。
「正しい理解を広めるのも、認知症の人の生きやすさにつながる」と説明する。

所蔵する資料を、回想法に活用する図書館もある。
愛知県の田原市中央図書館は、高齢者関連施設に、
懐かしい風景の写真集や紙芝居、童謡や歌謡曲のCDなどを貸し出す。

司書らが本などの資料や洗濯板やそろばんといった
昔の生活用品を持って訪問するサービスもある。

6月中旬、市内の施設で行われた訪問サービスでは、
目の不自由な60歳代から80歳代の7人が参加した。
傾けるとザーッと雨や波に似た音がする筒状の民族楽器や、
司書が収穫した梅の実を使い、梅雨や海の思い出を語り合った。
この施設での訪問サービスは約3か月に1回。
閉じこもりがちな人や、反応が鈍い人も、生き生きとする貴重な時間だ。

筑波大学教授の 呑海どんかい 沙織さん(図書館情報学)によると2007年、
世界各国の図書館などで組織する国際図書館連盟が、
認知症の人へのサービス指針をまとめた。

図書館の役割を、「認知症の人に喜びや楽しみを提供し、
記憶を刺激する手助けができる」と明記する。

日本の公共図書館は約3200か所。呑海さんは
「認知症にやさしい図書館作りが根付けば、地域社会への影響も大きい。
図書館員や認知症の専門家と連携し、日本での実践への指針を作りたい」と話している。

回想法  懐かしい記憶や楽しい思い出を語り、脳に刺激を与えて、
認知症の予防や進行抑制につなげる心理療法。
認知症の人が抱く不安の軽減やコミュニケーションの改善の効果もある。
写真や道具を活用することが多い。

(中島久美子)
2016-07-20
読売新聞 2016年7月20日

がん発症率に地域差…食習慣や喫煙率など影響

肝臓がんは西日本、胃がんは東北・日本海側



乳がんは東京、肝臓がんは西日本――。国立がん研究センターが6月末に発表した、
がん患者の2012年の全国推計で、都道府県ごとに発症する割合が異なることがわかった。
こうした地域差は、なぜ生まれるのだろうか。

推計によると、12年に新たにがんと診断されたのは、86万5000人。
今回、47都道府県のがん登録データが初めてそろい、
がんの発症率を都道府県で比較することが可能になった。

全国平均を100として年齢などを調整して算出した発症率をみると、
がん全体では、男性が秋田、和歌山、石川、鳥取、福岡、島根各県と東京都で、
女性は東京都、福岡、石川各県で発症率がそれぞれ110以上と高かった。

乳がんは東京都が133と突出していた。
乳がんは女性ホルモンのエストロゲンに長くさらされているほど発症しやすく、
出産直後はエストロゲンの分泌が抑えられ、危険性が下がるとされる。

「東京で乳がんが多いのは、結婚年齢が高く
出産を経験していない女性が多いことが影響している可能性がある」と、
同センター全国がん登録室長の松田智大さんは指摘する。
ほかに都会生活によるストレスの影響を指摘する声もある。

肝臓がんは福岡、佐賀、和歌山、大分各県で男女共に130を超え、
全体的に西日本に偏っていた。
これらはC型肝炎ウイルスの感染者が多い地域と重なる。

このほか、胃がんは食塩の摂取量が多い東北地方や日本海側で増える傾向にあった。
肺がんは北海道や北東北、近畿、北九州地方で多く、
喫煙率の高い地域とおおむね一致した。

一方、大腸がんは北海道や、東北、中部地方で発症率が高かったが、
明確な理由はわからないという。

松田さんは「がんは単一の要因で発症するわけではないので、
原因を明らかにするのは難しい。
居住地の発症率で一喜一憂するのではなく、喫煙や飲酒を控えるなど、
科学的根拠に基づいた予防法を続けることが大切だ」と話している。


資料は、国立がん研究センターのホームページ
(http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20160629.html)
で見ることができる。


全国のデータ登録、論理的な分析、対策へ

がんの地域差の情報は、都道府県のがん対策に役立つのだろうか。

がん対策に詳しい国際医療福祉大学教授の 埴岡はにおか 健一さんによると、
がんの死亡率が高い地域は、〈1〉発症率も高い〈2〉発症率は低い
――の2通りに分けて考えると問題が見えてくるという。

〈1〉の場合は高い発症率が死亡率の高さにつながっているとみられ、
食生活や生活習慣の改善による予防に力を入れる必要がある。

〈2〉は、検診が普及しておらず、がんが早期に見つけられていない可能性がある。
あるいは地域の医療機関のがん治療成績が悪いことも考えられる。

埴岡さんは「これまでは感覚的に分析せざるを得なかったが、
根拠をもって論理的に対策が取れるようになった」と話す。

死亡率が全国最悪の青森県は、発症率は全国平均と大きく変わらないことがわかっている。
弘前大学准教授の松坂方士さんらは、がん検診の受診率は高いのに、
早期発見につながっていない点を問題視。検診の精度や、
各市町村が再検査の受診勧告を行っているかなどを調べ始めた。

松坂さんは「がん登録の結果から課題を洗い出し、
有効な対策につなげたい」と話している。

今年1月には、患者情報を一元管理する「全国がん登録」が始まった。
都道府県で精度にばらつきがあった点が改善され、
質の高い情報が集まり、丁寧ながん対策につながることが期待されている。

 (森井雄一)
2016-07-20
読売新聞 2016年7月20日


[栄養で治す]治療の土台チームで築く

高知市にある病院の臨床栄養部長です。
管理栄養士として「栄養で病気を治す」ことを目指し、各地で講演活動も行っています。
栄養療法が普及し、管理栄養士の増員や地位向上にもつながればと思っています。

自分の大きな転機は、1993年に米国の大学病院に留学したことです。

当時の日本では、管理栄養士は 厨房ちゅうぼう で献立作成や調理などをするのが当然で、
病棟で働くという発想はありませんでした。勤務していた病院の上司には
「病棟で患者の食事への希望を聞いて、厨房内の業務を増やすようなことをするな」
とよく叱責されました。

理科教師の息子のせいか、幼い頃から好奇心旺盛でした。
管理栄養士になっても変わらず、
患者さんの体に挿入されている管や検査数値が気になり、
上司の目を盗んで病棟で医師や看護師と話していました。

そんなある日、米国留学帰りの脳外科医と親しくなり、
現地の医療事情を教えてもらうようになりました。
その中で、「管理栄養士としてもっと違った形で治療に貢献したい」
と模索していた自分に、運命的な情報がもたらされました。

米国には「栄養サポートチーム」というものがあり、
栄養失調の患者さんに栄養で治療の土台をしっかりと作ってあげ、
治療や回復を助け、結果として早期退院などで医療費の抑制にもなっているというのです。

栄養を専門とする医師や看護師、薬剤師、そして管理栄養士でチームを編成し、
様々な角度から専門家が栄養をサポートする、
自分が夢に描いていた理想の医療がそこにありました。

ぜひ学びたいと思い、国内の病院を調べてみましたが適当な施設がなく、
渡米する決心をしました。

(宮沢靖・近森病院臨床栄養部長、管理栄養士)
2016-07-16
堀江重郎教授のはつらつ男性専科
読売新聞 2016年7月15日

前立腺がんが日本で増えた理由


前立腺は骨盤のもっとも下、尿が 貯た まる 膀胱ぼうこう を支える位置にあります。
また直腸のおなか側にあります。

この前立腺にできるがん、前立腺がんは最近増加が著しいがんですが、
昨年初めて、日本人男性が 罹患りかん するがんで最も多くなったことが、
国立がん研究センターの調査で分かりました。

既に欧米諸国では前立腺がんは男性に最も多いがんで、
死亡者も肺がんに次いで2位となっています。
また、日本と同じ増加傾向がアジアの国々でも見られています。

アジアではこれまで前立腺がんは少なかったので、
人種による発がんの違いがあると考えられてきました。
しかし、日本での前立腺がんの増加は人種、
すなわち遺伝的な背景もさることながら
食事の変化が大きいことを示しています。

前立腺と乳腺はそれぞれ男性ホルモン、女性ホルモンにより成長する面で似ている臓器です。
実はどちらも動物性脂肪の摂取がリスクを高めることがわかっています。

例えば牛乳には動物性脂肪が多く含まれていますが、
国別の牛乳消費量は乳がん、前立腺がんの頻度とよい相関関係があることが
Jane Plantというイギリスの科学者が見出しています。

前立腺は、実はコレステロールを体の中でもっとも必要としている臓器です。
大量のコレステロールを取り込んでいるうちに
発がんの引き金が引かれると考えられています。


より悪性度が高くなる「老化」したがん

前立腺がんは、肺がんやすい臓がんなどのがんに比べると進行が比較的遅いがんです。
しかし、世の中には誤った理解、すなわち「高齢になるとがんの進みが遅くなる」
と信じられている方も少なくありません。

前立腺がんは実は30~40歳あたりでできて、
長い年月をかけて大きくなっていくことがわかっています。
加齢とともに前立腺がんも老化していきますが、
「老化」したがんは、より悪性度が高くなっていくのです。
従って、70歳、80歳の方のほうが前立腺がんで亡くなることが多いのです。

前立腺がんの早期発見は採血でPSAという項目を調べることで可能です。
多くの自治体で前立腺がんの検診事業が行われていますので活用するとよいでしょう。

では、アジアではどうしてこれまで前立腺がんは少なかったのでしょうか?

日本の過去50年の食事内容の変化を見ても、アジアの国々は炭水化物摂取が多く、
たんぱく質や脂質の摂取が少ない傾向がありました。しかしこの30年、
日々の食事での脂肪摂取が激増するに伴い前立腺がんも多くなってきたと言えます。


予防に有効な豆腐やウコン

前立腺がんの予防になると考えられている食材、あるいは食品に含まれる成分としては、
トマト、ブロッコリー、大豆、わさび、そしてウコンの成分であるクルクミンがあります。

たとえば、イタリアとフランス、隣り合った国ですが
前立腺がんの人口当たりの患者数はフランスのほうが多いのです。
これはイタリアの人々のトマト摂取が多いことも関連していると思われます。
また、豆腐も前立腺がんの予防に有効です。夏のこの時期、冷ややっこは、前立腺によいですね。

豆腐やウコンの成分は、ダイオキシンという発がん物質を
体で受け止めるレセプターの働きを妨げることがわれわれの研究でわかりました。
こういった野菜に含まれる体によい有効成分を機能性食品と呼びます。

多くの種類の野菜をとることでさまざまな機能性食品を摂取できますが、
都会ではどうしても野菜の種類もレタス、キュウリ、キャベツ、
せいぜいトマトくらいに限られてしまうことも多いと思います。

昨年、日本でも消費者庁の働き掛けで、
機能性食品が含まれたサプリメントの表示が始まりました。

健康に良いという証拠がある機能性食品は、
ラベルでわかるようになっています。ドラッグストアでご検討ください。

堀江重郎(ほりえ しげお)
順天堂大学大学院教授。泌尿器科医。1985年、東京大学医学部卒業。
日米で医師免許を取得し、国立がんセンター中央病院などを経て、2012年より現職。
男性更年期障害などを対象とするメンズヘルス外来にいち早く取り組み、
男性をはつらつとさせる医学を研究する。
ロボット支援手術ダ・ヴィンチのトップランナーとしても知られる。
2016-07-16
産経新聞 2016.7.17
【脳を知る】
脳卒中の人に多い「誤えん性肺炎」 予防には食事や姿勢の工夫を


先月ムハマド・アリさんが亡くなりました。ボクサー時代は
「蝶のように舞い、蜂のように刺す」という華麗な姿でしたが、
引退後は身体が動かなくなるパーキンソン病との闘いでした。

こわばった身体、震える手で1996年のアトランタ五輪開会式で
聖火を灯した姿は印象的でした。

アリさんは亡くなる直前、重大な肺炎を患っていたと報道されています。
肺炎は、がん、心疾患に次ぐ日本人の死亡原因の第3位で、
その大多数は65歳以上の高齢の方です。

特にパーキンソン病などの神経変性疾患、また脳梗塞、脳出血などの
脳卒中を患った患者さんの多くは、「誤嚥(ごえん)性肺炎」という肺炎にかかります。

高齢の方や脳の病気を患った患者さんは、物を飲みこむ嚥下(えんげ)の働きが衰えます。
通常食物がのどに入ると反射的に気管がふさがりますが、
この反射が鈍ると唾液や食物、また口の中の細菌までもが気管を通過し、肺に入ります。
これを誤嚥といい、誤嚥した際に肺に入った細菌で誤嚥性肺炎が生じます。

誤嚥性肺炎の患者さんは治療しても、食事の度に誤嚥し肺炎を繰り返してしまうことが多く、
その予防が大切です。かといって高齢の方や
脳疾患の患者さん全てが食事してはいけないことはありません。
ご家族による食事や調理の工夫などで予防できます。

食事の際の姿勢ですが、30度以上身体を起こして食事すれば、
重力で食物がのどから食道に移動しやすくなります。
さらに顎を少し引けば食物が気管へ流れ込みにくくなります。

食事形態も重要です。お茶などの水分は気管に流れ込みやすく、
餅などのかみ切りにくいものはのどに引っ掛かり窒息の原因になります。
ビスケットなどのパサパサして口の中で粉々になるものや、
麺類などの細長い食べ物も飲み込みにくい食品です。

形態の工夫として、ご飯はおかゆ、肉はひき肉、魚はすり身にし、麺類は短くきざむ。
野菜は煮込んだりミキサーにかけると食べやすくなります。
プリン、ヨーグルト、茶碗(ちゃわん)蒸しなどはとろみがあり食べやすいです。
お茶などの水分は市販のとろみ剤を使うと飲み込みやすくなります。

歯みがきは口の中を清潔に保つことで誤嚥性肺炎の予防になり、
口の中の刺激が、嚥下反射を改善させ誤嚥性肺炎を予防するともいわれています。

食事中にむせたり、せき込んだりすることは誤嚥の重要なサインですが、
せきの反射が衰えすぎて、むせない患者さんもいます。
そのような患者さんは、口の中で食物が長い間残ることが誤嚥のサインといえます。

このように高齢の方や脳疾患の患者さんがいつまでも食事を味わえる喜びを保ちながら、
誤嚥性肺炎を予防できるような介護の工夫が大切です。

(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学・脳神経外科 講師 藤田浩二)

2016-07-16
木之下徹の認知症とともにより良く生きる
読売新聞 2016年7月15日

認知症、地域の取り組みの秘訣


須藤一郎さん(仮名 75歳)が一人で我々のクリニックに来られました。

採血の検査、脳のMRI画像、神経心理検査と呼ばれる質問形式の記憶、
注意などの検査を2回の受診で実施。
それから1週間後の3度目の受診日のことです。

須藤さん 「検査の結果、いかがでしたか。心配なんです」

 私 「まず、先週の検査の結果をお伝えします。ぼくは早口なので、
ざっとご理解いただければ結構です。それらを紙に書いておきました」

 さっとその書類を須藤さんに渡します。

  須藤さん 「あっ、ありがとう」

 私 「その紙に書いてある順に説明します。まずは採血の検査の結果です。
栄養状態は……(ずっと検査の説明)。ということです」

  須藤さん 「はあ」

 私 「先ほど申し上げました検査の結果から、
アルツハイマー型認知症という診断になります。」

  須藤さん 「はあ」

アルツハイマー型認知症と言われた時は、たいてい平然と、しかし表情が固まります。

 しばらくして、

  須藤さん 「そっかあ。んー」

いまや認知症とMCIと呼ばれる軽度認知障害の人々の数は、
日本で1000万人を超えています(「自分ごととしての認知症へ」 )。
そして、我々医師にかかった人数はそのおそらく5分の1以下の
200万人もいないであろうと思うのです。

私も介護保険制度が施行されたのと同時くらいに、品川で在宅診療
(いまはおもに三鷹で外来診療をしているのですが)をしていました。
一軒一軒家を訪問します。

認知症になり、次第に認知機能低下やさまざまな精神症状が出現し、
それから何年間も自力で我慢していた人々だと思います。

訪問診療の最初のきっかけは、本人からではありません。
追いつめられた家族が地域の介護の専門職に相談して、
間接的に紹介される。それがほとんどです。

ところで、認知症の外来診療の場合でも、
おそらくは家族や介護専門職の人が本人を連れてくる場合が多いと思います。

専門の医師も、紹介していただいた医師や包括支援センター、
介護事業の皆さん、あるいはご家族に何かできないのか。
すこしでも日常の暮らしを送れるよう模索しているはずです。
これが、いまの認知症医療のメインストリームの姿でしょう。

さて、残りの800万人以上の認知症の人々はどこにいったのでしょうか。
我々にとってはまだ見ぬ人々です。しかし最近テレビでも、新聞や雑誌でも、
認知症とともに生きる本人の姿が描かれています。

認知症の本人が講演会をしたり、
認知症の人々の相談の窓口になったりする姿も見られるようになりました。
須藤さんもその一人だと思うのです。

ところで専門医のある識者会議。

「最近、自分が認知症だ、といって講演会するけれど、
本物の認知症なら、講演などできない。やっているのは偽の認知症ですよね。」

 といった発言がありました。

 あるいは国のある事業報告書に

 「発言できる人は、認知症全体の中でわずか少数しかいない」

 といった趣旨の内容が書かれていました。

先日、ある会議でも催し物を企画。いかに当事者に参加を促すか。
時代も移り変わり、ずいぶんと視点が変化してきました。

そういう会の中、ある人が

「日々、きつい介護をしている人にとって、目を見張る、意義あるものがない」

などという旨の発言をしました。

ごく最近の話です。「誰が発言したのか」
「正しいのか間違っているのか」というのが問題ではありません。
そのため具体的な場所や固有名詞は書きません。
この発言は極端かもしれないけれど、重要なことを教えてくれます。

インターネットでご覧になれば、おそらく、上述したイメージを確認するが如くの、
「中核症状とは」「周辺症状とは」「BPSDとは」などと解説めいたものが氾濫しています。

私も、その責を免れられるわけではありません。
現にかつて、「中核症状とは」「周辺症状とは」「BPSDとは」と知ったかぶりをして、
偉そうに全国のあちこちで講演会を私はしていましたので。
なので、こういう話を書くと、心に痛みを感じます。

ただ、これを読んでおられる認知症の人、
これから認知症になる皆さんと私のために、続けます。

ここで二つの「認知症、困った! どうしたらいいですか?」をご紹介します。
当然、架空の事例ですが、私のところに来られた方の実際の相談内容をもとにしています。

  Aさん、78歳男

 軽度のアルツハイマー型認知症、糖尿病、高血圧症があります。
 医師から、定期的な散歩などの運動療法が必要だと言われています。
 しかし、自発性が乏しく一日中屋内にいます。
 不眠の訴えがあり、最近は「頭が重い」
 「手足がしびれる」「胸が苦しい」など
 という不定愁訴を四六時中訴えます。
 それにつきあう家族も閉口しています。
 デイサービスも勧めましたが、
 しかし、もともと人づきあいが悪く、
 「そういうところには行きたくない」と
 本人も言いだす始末です。
 介護サービスをお勧めしよう、と先週はご自宅を訪問しました。
 本人は非協力的で拒否的です。
 途中から烈火のごとく 怒鳴どな り散らし、手をあげる始末でした。
 どうしたらよいでしょうか。薬などの調整が必要でしょうか。

  Bさん、80歳

 めっきり落ち込みながら、先日も財布がない、
 時計がないと一日中探しまわっておりました。
 とても気力の続くものではありません。
 時計は見つかりません。
 認知症で自殺する人も多いでしょうね。
 先日先生から、アルツハイマー型認知症と言われました。
 治す方法はないそうです。
 これからが不安です。
 長らく続けた仕事はやめました。
 このままでは、何もできなくなるのではないかと怖いです。
 私は、これからどうしたらよいでしょうか。

Aさんを取り巻く家族を含めた周囲の人々の苦悩は、大変大きなものであろうと思います。
ここでは、深刻なふたつの「どうしたらよいでしょうか」を示しました。

 さて、
 最初の須藤さんは、どちらの「どうしたらよいでしょうか」に近いでしょうか?
 どう考えてもBさんに近い、ですよね。

 それでは、AさんタイプとBさんタイプ、我が国全体でどちらが多いでしょうか?

私の勝手な想像ですが、
 「まだ見ぬ800万人の認知症」においては、はるかに、
  Bさんタイプの人数>>Aさんタイプの人数
 ではないかと。

Aさんタイプの人々、いわゆる処遇困難例ですね。
そういう人々を囲んで、ずいぶんと多職種連携も進み、
行政、看護師、薬剤師、歯科医、医師、社会福祉士、介護福祉士、介護専門職員のつながりは、
各地で推進され活発化しました。アウトリーチという言葉も生まれました。
つまり、医療福祉専門職の訪問活動です。

しかし、Bさんタイプの人々については、全国各地での、
当事者の寄り合いは最近生まれつつありますが、まだまだ少ない。
Bさんタイプの人々にとっての医療とはなにか、
多職種連携ってなんだろうか、と最近私は悩み始めています。


認知症、地域の取り組みの秘訣

ところで、地域の飲食店を中心としたお祭り。「街バル」というらしいのですが。
我々のクリニックの水谷佳子看護師が、神奈川県藤沢市発祥の
「ちょい呑み フェスティバル」というものに出会う機会がありました。

三鷹の我々のクリニックで地域の様々な職種の方々が定期的に寄り合いをしています。
そこで「ちょい呑み フェスティバル」は面白いぞ、となりました。
綿密な準備をして、今年6月の最終週3日間、
「三鷹駅南口 ちょい呑み フェスティバル」開催までこぎつけました。

商工会、飲食業連合組合、観光協会の皆さんのご尽力には頭が下がる思いです。
また同時に、仕掛け側に立って、親身にご指導いただきました。
なによりも彼らと医療福祉職の人々が友達になれたことが大きな収穫でした。
多職種連携ってなんだろうか、のひとつの答えを垣間見た気がしました。

フェスティバル前日、クリニック受診者の一人、佐藤さん(仮名70歳、男性)から電話がありました。
「俺さあ、先生が行くんだったら、行くよ」と、ありがたいお誘い。
待ち合わせして彼と一緒に街に繰り出し、出会う人と知り合いになり、店にゴー。
あまり酒は、私は強くないのですが。それでも深夜まで4、5軒のはしご酒。
私のところに来る受診者の方々にも結構チケットを買っていただいたので、彼らも街に繰り出しているはず。

この催し物の準備をしていたときの、ひとつの教訓。

認知症専門の我々のクリニックがイベント準備のための寄り合いの場所を時々提供していたこともあって、
参加し、イベントを準備しているメンバーたちは、「認知症の人々」というのが頭から離れないようでした。
でも、認知症だからといって、行動を制限される理由なんてありません。参加する資格は当然あるわけです。

一軒一軒飲食店の参画のお願いを準備のメンバーがしていた際、何軒からは
「ちょっと。うちは、ねぇ。そういう人くるの、勘弁してください」などと言われたようです。
逆に、「それなら」と積極的に引き受けてくれるお店もあったかもしれません。

短絡的にお店側が悪いとは思いません。お店の人の持つ認知症のイメージがそうさせたのでしょう。
また、お願いをする側も専門職ですから、「認知症の人がみんなで・・・」という言い方をしたのでしょう。
誠心誠意よかれと思い、認知症になってよい街、という思いから。世間とのギャップが埋まっていない。
そういうことなのではないでしょうか。

だからまだ「認知症」と前面に掲げるやり方は、市民にとって刺激的すぎるのかもしれません。
あるいは実感がわかない。自分とは縁遠いこと。かなり悩ましい課題が明らかになったように思うのです。
結局今回、そういうことを、「ことさら、あえて言わない」という路線で切り抜けました。
結果、多くのお店に賛同され、参画しました。

 さて、佐藤さんとお互いに酔っぱらっている中。

  私 「何か、一緒にできること、ってありませんか」

  佐藤さん 「あっ、いいね。いまさあ、前の仕事手伝ってんだけれど。
      認知症ねぇ。地域になにか投じたいね」

  私 「そうですか。」

  佐藤さん 「よし、今度しらふで、ゆっくりと考えようよ」

  私 「ありがとうございます」

Bさんタイプの人に、そして、まだ見ぬ800万人の人に向けて、
これから認知症になる人に、なにかできそうな予感。

近い将来、認知症でない皆さんも認知症になります。
「認知症になっていい暮らし」を、「いまの」と「これからなる」認知症の人々で、実現する必要があります。
そういう取り組みは、いま認知症の人にとってだけでなく、
いまは認知症ではない人にとっても、望まれるものでなくてはいけません。

ことさら「認知症」と言う必要のない社会が求められます。
認知症の不自由さには配慮は必要です。
そのうえで、みんなが参画できる、「認知症とともに生きる社会」の実現に向けて、
みなさんと力を合わせ 邁進まいしん したいと思います。

木之下徹(きのした・とおる) のぞみメモリークリニック院長
東大医学部保健学科卒業。同大学院博士課程中退。山梨医科大卒業。
2001年、医療法人社団こだま会「こだまクリニック」(東京都品川区)を開院し認知症の人の在宅医療に15年間携わる。
2014年、認知症の人たちがしたいことを手助けし実現させたいと、認知症外来「のぞみメモリ―クリニック」を開院。
日本老年精神医学会、日本老年医学会、日本認知症ケア学会、日本糖尿病学会に所属。首都大学大学院客員教授も務める。
ブログ「認知症、っていうけど」連載中 http://nozomi-mem.jp/
2016-07-12
読売新聞 2016年7月12日


東北大とクラブツーリズムが共同研究へ

旅行で認知症予防できる可能性

東北大学加齢医学研究所と旅行会社のクラブツーリズムは7月6日、
産学連携の共同研究として「旅行が認知症予防にもたらす効果の研究」を開始すると発表した。

今年5月に60歳以上の男女を対象に実施したプレ調査では、
旅行が人生に対する満足度などに関係しており、
脳の機能の維持に影響している可能性が示されたという。

新たに始める研究では、脳画像や認知機能の評価などを含む詳しい検査を行い、
旅行が脳の老化を防いだり、認知機能を維持するのに効果があるかどうかを調べるという。

歩くことによる「運動」と「知的好奇心」が脳に良い

クラブツーリズムのツアーに参加したことがある60歳以上の男女45人を対象に、
同社と東北大学加齢医学研究所が実施したプレ調査からは、以下のことが分かったという。

1.過去5年間の旅行回数が多いほど、自分の人生は「退屈」
 「面白くない」「意味がない」と感じる程度(失望感)が低い

2.「現地で人々と交流したい」という動機を持って旅行する人ほど、
  「人生が面白い」「今の生活は過去よりも幸せ」といった、
  人生に対するポジティブな気持ちや満足感が高い

3.「旅行先の文化や歴史を知りたい」と考えている人では、
  「人生で困難な状況に直面しても自分で対処できる」という自信を強く持っている


この調査結果について、東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野の靖之教授は
「頻繁に旅行に行くこと、また旅行の際に明確な動機を持っていることが脳機能に影響し、
認知症にかかりにくくさせる可能性が示された」と説明。

これまで国内外の研究で脳の老化(脳萎縮)を抑えるには
「運動(軽い運動も含む)」と「知的好奇心の高さ」が重要であることが分かっており、
その両方を経験できる旅行には認知症を予防する効果が期待できるとの見方を示した。

同研究所とクラブツーリズムが新たに始める研究では、
60歳以上の男女60人を旅行に頻繁に出かけるグループと、
あまり出かけないグループに分け、
脳画像検査や認知機能検査、主観的な幸福感などを調べる心理検査を行うという。
期間は3年間の予定。

クラブツーリズムは利用客の65%を60歳以上が占めており、
今後、研究結果を旅行との脳の健康に関係するツアーや
講座、イベントの企画に生かしたいとしている。

近場でも効果

瀧教授によると、旅行によって期待できる効果には、新しい場所や経験で得られる
「知的好奇心の刺激」「リラックス効果」「ストレス軽減」などが挙げられる。
また、旅行中は歩く機会が増えるが、このことも脳への刺激になる。

さらに、旅行に出かける前の計画段階でも、旅行のテーマや場所を考えることで、
実行機能やプランニングなどに必要とされる「高次認知機能」が
活性化するなどの良い作用が期待できる。
旅行から戻った後、その体験を思い出すことも高次認知機能への刺激となるという。

でも、「旅行はしたいけど、お金も時間もない!」という人はどうすればよいのだろうか。
実は、飛行機や鉄道、バスなどで遠出しなくても、
近場で行ったことのない場所を訪れるだけで脳への刺激が期待できるという。
旅行には行けなくても、この程度なら気軽に試すことができそうだ。
2016-07-12
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年7月12日

[ビタミンD]「高齢者の8割が不足」の報告も


骨の形成を助ける栄養素

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあります。
水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質を持つもので、
ビタミンB群及びビタミンC等がこれに当たります。

一方、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油に溶けやすいもので、
ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKがこれに当たります。

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、小腸におけるカルシウムの吸収を促進し、
骨の形成を助ける栄養素です。ビタミンDはくる病を予防する栄養素として発見されました。

すなわち、ビタミンDが不足すると小児ではくる病を
成人では骨軟化症を発症します。

骨はコラーゲンを土台としてリン酸カルシウムの結晶が沈着
(石灰化)して硬い組織が構築されていますが、
くる病では、カルシウムとリンが不足するため石灰化が起こらず、
軟らかい骨になってしまうのが特徴です。

これまでにD2~D7の6種類のビタミンDが発見されていますが、
哺乳動物で活性を示すのはビタミンD2とD3です。

ビタミンD2は、干ししいたけやきくらげ等の植物性食品に多く含まれており、
ビタミンD3はサケやサンマ等の動物性食品に多く含まれています。

また、ビタミンD3は、皮膚に存在するプロビタミンD3
(7-デヒドロコレステロール)に紫外線があたることで合成されます。

活性型ビタミンDとは

ビタミンDは肝臓と腎臓で水酸化されて、活性型ビタミンDになります。
これはビタミンDが肝臓と腎臓で化学変化して、
より活性の強いかたちになったものといえます。
活性型ビタミンDの合成は、生体の必要性に応じて調節されています。

すなわち、血中のカルシウム濃度が下がったときは、
直ちに副甲状腺ホルモンが分泌されて腎臓での活性型ビタミンDの合成が高まります。

その結果、活性型ビタミンDは、小腸からのカルシウムの吸収を促すとともに、
副甲状腺ホルモンと共同で腎臓からのカルシウムの再吸収を高め、
さらに骨からカルシウムを溶かして血中のカルシウム濃度が一定になるように働きます。

なお、ビタミンDの栄養状態を示す指標としては、
血中の25ヒドロキシビタミンD濃度が適用されています。

カルシウムの代謝を正常に保つ役割

ビタミンDの主な役割は、生体のカルシウムの代謝を正常に保つことです。
すなわち、活性型ビタミンDは、通常は小腸におけるカルシウムやリンの吸収を助け、
腎臓におけるこれらのミネラルの再吸収を促進して
血中のカルシウムやリンの濃度を一定に保っています。

結果的に、骨へのカルシウムとリンの沈着を促し、
骨の形成と成長が亢進こうしんします。

一方、血中のカルシウム濃度が低下したときには、
副甲状腺ホルモンと共同して骨からカルシウムを溶かし、
血中のカルシウム濃度を高めます。

血中のカルシウム濃度がもとに戻ると、骨を壊す細胞の働きを抑える
カルシトニンというホルモンが甲状腺から分泌されて、
骨からカルシウムが溶けるのを抑えるように調節されています。

すなわち、骨においては、ビタミンDの直接作用は骨を溶かすことであり、
間接作用としてカルシウムを介して骨の形成を助けます。
この仕組みに関わっているのが、副甲状腺ホルモンとカルシトニンです。

活性型ビタミンDは、血液を介して小腸や腎臓及び
骨といった標的器官でその作用を発揮することから、
ビタミンというよりはむしろホルモンの定義にあてはまるものです。

大腸がん、インフルエンザ予防効果の報告も

ビタミンDはカルシウム代謝調節作用の他に、様々な作用を持っています。
活性型ビタミンDは標的となる細胞に存在するビタミンD受容体を介してその作用を発揮しますが、
受容体は皮膚、免疫細胞、白血病細胞等にも存在しています。

特に注目されるのは、活性型ビタミンDがある特定の細胞の増殖を抑え、分化を促進する作用です。
試験管内の試験では、活性型ビタミンDは白血病細胞の増殖を抑え、
正常な白血球への分化を促すことが報告されています。

その他、実際の治療に使われているのが乾癬かんせんという皮膚の病気で、
活性型ビタミンDを皮膚に塗布することで、皮膚の細胞の異常な増殖が抑えられ、
さらに免疫作用が調節されて治癒に至ります。

また、最近の報告では、ビタミンDの大腸がんに対する予防効果や
インフルエンザへの感染に対する予防効果等が報告されています。
しかし、これらの作用については、さらなる科学的根拠の蓄積が必要です。

高齢者は不足しがち、適度な日光浴が大切

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、1日当たりのビタミンDの摂取目安量として、
成人では5.5μg、成長期では4.5~6μg、 0~12か月の乳幼児では5μgが推奨されています。

2013年の国民健康・栄養調査におけるビタミンDの摂取量は、
男性で平均8.1μg/日、女性で平均6.9μg/日摂取ですが、
高齢者では日光に当たる時間が短かったり、
活性型ビタミンDの合成が十分でなかったりして、ビタミンDが不足しがちです。

高齢者施設の入居者を対象とした調査では、
ビタミンDが不足している割合は80%以上であったということです。

ビタミンDが欠乏すると小児ではくる病、
成人では骨軟化症になることが知られていますが、
一方、欠乏まで至らなくとも、不足気味の状態では血中カルシウム濃度が下がり、
その刺激で副甲状腺ホルモンが分泌され、この状態が長く続くと
骨の破壊が起こり骨粗しょう症になります。

したがって、特に高齢者では、食事からの摂取と
1日に15分程度の適度な日光浴で
ビタミンDが不足しがちにならないようにすることが大切です。

日焼けを気にするあまり、
服装や化粧で皮膚の全てを覆うのは得策ではありません。

体内に蓄積しやすく、過剰摂取に注意

ビタミンDが不足しがちな場合は、ビタミンDが強化された栄養機能食品や
サプリメントからの摂取も可能です。ただし、ビタミンDは脂溶性なので、
尿中に排泄はいせつされにくく、生体内の脂肪組織や肝臓に蓄積しやすいことから、
過剰摂取には注意が必要です。

ビタミンDの過剰摂取により、骨からカルシウムとリンが大量に溶出するため、
血中のカルシウム濃度が高まり、腎臓や筋肉へ沈着して石灰化を引き起こします。

腎臓にカルシウムが沈着すると腎結石に、
また全身的症状としてミルクアルカリ症候群を発症します。
ミルクアルカリ症候群は、吐き気や食欲不振、
体重が減少して体調不良に陥るものです。

ビタミンDをサプリメントから摂取する場合は、
摂取目安量を守ることが大切です。



ビタミンDについて、もっと詳しく知りたい方は、
国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報サイトを参照してみてください。


(国立健康・栄養研究所 石見 佳子)
2016-07-12
産経新聞  2016.7.12


いよいよ夏本番。熱中症対策は万全でしょうか? 

実は熱中症が最も多いのは7月下旬で、
最も暑さが厳しい8月上旬からは減っていきます。
これは、体が暑さに慣れることと関係しています。

高血圧と不整脈の治療で通院している80代の男性患者さんは先日、
熱中症で救急搬送されました。急に暑くなったころで、
食欲がない日が続いた後、だるさと気持ち悪さで動けなくなってしまった
そうです。幸い数日の入院で回復し、今は元気に過ごしています。

熱中症は、若年者では炎天下でのスポーツや作業中に起こることが多いですが、
高齢者の場合、自宅など室内にいながら何日かかかって発症することが多いです。

高齢者は、体力が落ちていたり持病があったりするうえ、熱中症の症状が出にくく、
気付いたときには症状が進んでいることが影響しています。
とくに男性や1人暮らしの高齢者は、熱中症となるリスクが高いと考えられています。

高温多湿の場所に長時間いることは避けなければいけません。
たとえ自分がそれほど暑いと感じていなくても、
天気予報や温度計を参考にエアコンを使い快適な環境を作りましょう。

救急搬送された80代の患者さんも、まだ梅雨が明けていないということで、
熱中症になることなど頭の片隅にもなく、エアコンも使わずに過ごしていたそうです。

食事量が低下することは熱中症のリスクとなります。
ごはんやパスタなどあまり水分が多くないようにみえる食事からも
私たちは多くの水分を得ているからです。

食欲がない時にはジュースやゼリーなど簡単に取れるもので済ませがちですが、
スープなど塩分が入ったものも摂取するようにしましょう。

市販の「経口補水液」も有効です。
これは、水分と塩分が吸収されやすい濃度に調整された飲料で、
調剤薬局などで販売されています。スポーツドリンクでも良いですが、
経口補水液に比べると、やや塩分が少なく糖分が多い傾向にあります。

「おかゆに梅干し」も経口補水液と同様の効果があるので、
梅干しを用意しておくのもいいですね。

食欲がなく、何日も食事がとれない場合は、
迷わずにかかりつけ医などに相談してください。

1人暮らしの方や認知症のある方などにとっては、
周りの人の声かけや見守りもとても大切です。
みんなでお互いに気を配り、熱中症のない夏にしたいものですね。

(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)
2016-07-11
英会話で人気だったウイッキーさん サプリで認知症を克服
News ポストセブン 2011.10.21 07:00


白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。
アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によると、
認知症の症状を緩和するサプリメントがあるという。

* * *
日本茶に含まれる茶カテキンやウコンに含まれるクルクミンはアルツハイマー病を予防できる効果が既に実証されているが、
佐賀女子短大の長谷川亨名誉教授は、緑茶を飲んでいる人にアルツハイマー病が少ないことに注目。
緑茶を飲んでいる人の血液はホモシステイン酸という神経毒性物質の血中濃度が低いことを発見した。

また、米ぬか(玄米)から抽出された天然のポリフェノールのフェルラ酸に、
アルツハイマー病患者の認知機能の低下を抑える効果があることが臨床研究の結果、明らかとなった。

国立病院機構菊池病院の木村武実臨床研究部長は、フェルラ酸と食用ハーブであるガーデンアンゼリカ抽出物を成分とした
サプリメント「フェルガード」に妄想、幻覚、易刺激性、行動異常などの興奮性症状を抑える働きがあることを報告。

認知症患者を抱える家族にとって、本人の物忘れより、
妄想、幻覚、行動異常や夜の徘徊などが「厄介」な症状になっているが、
米ぬかサプリはこの「厄介」な症状を緩和する効果が認められた。
これは認知症患者を抱える家族にとって大きな福音となっている。

『ズームイン!!朝!』(日本テレビ系)の英会話で人気を博したウイッキーさんも一時認知症になりかけたが、
「フェルガード」の摂取を開始してから、認知機能が改善し今では完全に仕事に復帰した。

※週刊ポスト2011年10月28日号
2016-07-11
Link de Diet 2016.7.5 , EurekAlert 

  
近年、パスタは太るとされ、摂取を制限されるようになった。
伊IRCCSニューロメッド地中海神経学研究所の疫学部門は、
地中海式食の基本的な食べ物であるパスタと肥満の傾向を検討した。

その結果、パスタの摂取は、肥満と腹部肥満の両方を低下することと関連があったという。

研究では、2つの大規模コホートから2万3千人を対象とした。
コホート研究は、同部門が行ったモリ・サニ研究と伊国の栄養と健康調査(INHES)である。

身体計測データと食習慣を解析することによって、パスタの摂取と体重増加とは関連がないこと、
むしろその逆であったことを明らかにしたと、主執筆者であるジョージ・ポーリス氏は説明している。

パスタを摂取していた者は、ウエストヒップ比が改善し、BMIの低下と関連があったという。
多くの研究から、地中海式食が健康栄養政策の1つであることは実証されてきた。
しかし、基本的要素であるパスタの役割については、あまり研究が行われておらず、
今回の研究により、パスタと肥満とのギャップが埋まったと、述べている。

研究所の分子・栄養研究室の室長であるリシア・イアコヴェッロ氏は、
「体重を減らしたいときにパスタは良くないと考えられ、時には食事から完全にパスタを抜く人もいる。
しかし、今回の研究結果から、このような食行動が良くないことが明らかとなった。

地中海式食の根本には、最初に提供される適量のパスタを含む多様な食事が特徴であり、
これが健康に良いことである」とまとめている。

出典は『栄養と糖尿病』。 (論文要旨)      
2016-07-11
Link de Diet 2016.7.6 , EurekAlert 


不飽和脂肪酸の摂取量が高いことが、より低い死亡率と関連するようだ、
という米国ハーバード大学からの研究報告。

30年以上に及ぶ大規模疫学研究において、研究チームは飽和脂肪酸と トランス脂肪酸の摂取量が高いことが、
同じカロリーの炭水化物を摂取した場合と比べて、より高い死亡率に関連付けられることを発見した。

最も重要なことは、飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることが
実質的に健康度を高めたことだという。

この研究は、脂肪の総量ではなく種類に注意するよう勧告している
2015-2020年版米国人の食事ガイドラインをサポートするものである。

本研究は、脂質が健康に与える影響に関する、現在までで最も詳細で 最もパワフルな研究である。
バター、ラード、赤肉中の脂肪のような 飽和脂肪酸を、植物由来のオリーブ油、キャノーラ油、大豆油のような
不飽和脂肪酸に置換することで健康効果を得ることができるのであり、
これは今後も食事勧告の鍵となるメッセージであり続けるだろう, と研究チームは主張している。

研究チームは、看護師健康研究と医療従事者追跡研究という
米国の二大長期大規模疫学研究から126,233名のデータを解析した。

調査では食事、生活習慣、健康状態について32年にわたって
2-4年おきに調べられていた。期間中に33,304名の死亡が記録された。
研究チームはこのデータから摂取した脂肪の種類と総死亡率、および
心血管系疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡率との 関係を解析した。

異なる種類の脂肪は、異なる種類の死亡率と関連付けられた。
トランス脂肪酸の健康に対する影響が最も大きく、
摂取量が2%高まるごとに早死のリスクは16%ずつ高まったという。

飽和脂肪酸の健康影響も同様に高く、死亡リスクに影響を与えた。
同じカロリーの炭水化物を摂取した場合に比べて、
飽和脂肪酸の摂取量が5%高まるごとに総死亡リスクは8%高まった。

逆に、不飽和脂肪酸の場合は、多価不飽和脂肪酸も一価不飽和脂肪酸も、
同じ量の炭水化物と比較して、総死亡リスクを11%から19%低下させた。
多価不飽和脂肪酸の中では、植物に多いオメガ-6系脂肪酸も魚油や大豆、
キャノーラ油などに多いオメガ-3系脂肪酸も早死リスクの低下と関連していた。

脂質の種類による影響は、人々がそれを別の種類に置き換えた場合にも表れた。
例えば、人々が飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸に置き換えると、
有意に総死亡リスクが低下した。

また心血管疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも低下した。

飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えた人々では、死亡リスクの低下はわずかであった。
総脂肪を炭水化物に置き換えると死亡リスクはわずかに上昇した。

著者らによれば、これは驚くべきことではなく、米国人の食事においては
炭水化物が主として精製されたでんぷんや砂糖の形で使われているからだという。
これらは飽和脂肪酸と同程度の影響力を死亡リスクに対してもっているのである。

「我々の研究が示しているのは、トランス脂肪酸を避けることと、
飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることの重要性である。

実践的には、これは動物性脂肪を液体の植物油に代えることで達成できるだろう」
と主任研究者のフランク・フウ教授はコメントしている。

出典は『JAMA内科学』。 (論文要旨)      
2016-07-05
Link de Diet 2016.6.29 , EurekAlert 


健康的な食事で、女性の身体機能の低下が抑えられるかもしれない。
これは、米国のハーバード大学からの研究報告。

研究チームは、米国大規模疫学研究である『看護師健康研究』に参加した54,762名の女性を対象として、
代替健康食事指数(食事の質の測定)と、身体機能の低下との関連を検討した。

身体機能は、1992年から2008年まで毎4年ごとに一般的な標準器具を用いて測定した。
食事は、1980年から毎4年ごとに食物頻度質問票を用いて調査した。

その結果、より健康的な食事だった女性は、
身体活動の低下の度合いが少なめであったという。

その中でも、野菜や果物の摂取量が多い、
加糖飲料・飽和脂肪酸・食塩の摂取量が少ない、
適度な飲酒は、有意に身体機能の低下の予防することが明らかになった。

さらに、オレンジ、オレンジジュース、リンゴと梨、
ロメインレタスか葉レタス、くるみにおいて、強い関連が見られた。

今回の結果について研究者らは、特定の食品よりも
全体的な食事の質の効果が強かった事に注目している。

「食事が老後の身体機能に与える影響を検討した研究は少なく、
身体の活動機能と食事との関連は知られておらず、食習慣で検討したいと考えた」と、
BWHの研究者であるフランシーヌ・Grodstein氏は述べている。

主執筆者であるBWHのポスドクであるカイトリン・ハーガン氏は、
「私たちは、慢性疾患やがんや、心臓病について身体機能も含めて考えることが重要である。

身体機能は、年齢も重要であり、服を着る、公園を歩くなどの、
人の生活自立度に影響を与えるだろう」とまとめている。

出典は『栄養学雑誌』。 (論文要旨)      
2016-07-04
読売新聞 2016年7月4日

「学校教育9年以下」、「握力弱い」で認知リスク2倍に…国立長寿研



糖尿病や心臓病の持病があったり、握力が弱かったりする人は、
認知症を発症するリスクが高い、との調査結果を
国立長寿医療研究センターなどのチームがまとめた。

八つの危険要因をリスト化。「該当する人に、
重点的に生活習慣改善などの支援をすべきだ」との提言を行った。

チームは、愛知、秋田、石川の3県で、計約3300人を
3~16年追跡した四つの研究をもとに、認知症のリスク要因を分析した。

その結果、脳卒中の経験がある人は、ない人に比べ、認知症のリスクが2・6倍高かった。
糖尿病、心臓病の持病がある人は、それぞれリスクが1・7倍、1・5倍だった。
体力や筋力の目安の握力が26キロ未満の男性、18キロ未満の女性も2・1倍だった。
学校教育の年数が9年以下の人のリスクは、9年を超える人の2倍だった。
また、うつ傾向がある人のリスクは、ない人の1・6倍。
難聴の人は1・4倍だった。

そのほか、介護危険度の簡易チェックで「認知機能低下の恐れあり」と判定された人は、
認知症に2・5倍なりやすかった。

アポE4多型という認知症のリスクを高める遺伝子を持つ人も、
認知機能が低下する傾向があった。

調査をまとめた名古屋学芸大学の下方浩史教授は
「予防には、普段から頭を使い、生活習慣病やうつを予防し、
体力維持に努めることが重要だ」と話す。
2016-07-01
読売新聞 2016年7月2日

毎日緑茶飲む人は認知症になりにくい?


飲まない人に比べリスク7割減

この数年、緑茶にさまざまな健康効果があることが
次々と明らかになってきている。

例えば、インフルエンザにかかりにくくなったり(関連記事=
1日1~5杯の緑茶で小学生のインフルエンザが40~50%減 )、

要介護になる割合が低くなったり(関連記事=
緑茶をたくさん飲むほど高齢者の要介護リスクが低下 )、

抑うつ症状のリスクが減ったり(関連記事=
うつ病予防の鍵は「食」にあり、「健康日本食」の効果とは )

といった効果が報告されている。

これらに加え、緑茶が認知症予防にも良い可能性が、
金沢大学大学院脳老化・神経病態学神経内科学の
山田正仁教授らが実施した調査で示された。

石川県七尾市の60歳以上の男女を対象としたこの調査では、
緑茶を全く飲まない人に比べ、毎日の飲む習慣のある人では認知症あるいは
軽度の認知障害にかかるリスクが約7割も低いことが分かったという。

同教授が6月8~10日に金沢市で開催された日本老年医学会の会合で報告した。


レモンバームにも期待の成分、効果を検証中

今回、山田教授が報告したのは、石川県七尾市中島町で実施されている
「なかじまプロジェクト」と呼ばれる調査の参加者のうち、
60歳以上で認知機能が正常な男女723人のデータを調べた結果だ。

同プロジェクトでは、認知症の早期発見や治療を目的とした脳健診を行っている。
現在、認知症の原因となるアルツハイマー病が発症する前に薬を飲んで、
発症を予防できるかどうかを確かめる臨床試験なども進められているが、

薬以外の予防策を見つけたいと考えた山田教授らは、
同プロジェクトで食品による影響について調べたという。

その結果、緑茶を毎日飲む習慣がある人は、5年間の追跡調査期間に認知症
あるいは軽度の認知障害にかかるリスクが68%低下していたという。

これまで、カフェインを豊富に含むお茶やコーヒーには
脳や神経を保護する効果がある可能性が指摘されていたが、
認知症やアルツハイマー病への影響についてはよく分かっていなかった。

さらに、山田教授らは緑茶による認知機能への影響だけでなく、
アルツハイマー病の予防作用があることが示されている
天然フェノール化合物の「ロスマリン酸」にも着目。

このロスマリン酸をハーブティーなどでもおなじみのレモンバームから抽出し、
健康な人に飲んでもらって安全性などを確かめたと報告した。

現在、同教授らはロスマリン酸を軽度のアルツハイマー病患者に飲んでもらい、
効果を確かめるべく臨床試験を進めているところだという。

同教授は「ロスマリン酸はレモンバームから安定的に抽出できるため、
今後、アルツハイマー病の治療や予防にこのような
天然フェノール化合物が有効かどうか、確かめたい」と抱負を語った。
2016-06-30
読売新聞  2016年06月30日 16時59分


老化による体の衰えは認知症のリスクを高めるとされるが、
認知症の予防には、筋肉の量よりも、
体をよく動かせるかどうかが重要だとする研究結果を、
東京都健康長寿医療センター研究所の谷口優研究員らのグループがまとめた。


 研究グループは2008年から12年まで、
群馬県の65歳以上の649人を追跡調査。
身体機能(歩行速度と握力で評価)と骨格筋量が、
将来の認知機能の低下とどう関連するか調べた。

 その結果、身体機能も骨格筋量も正常な人に比べて、
両方が低下している人は、認知機能の低下リスクが約1・6倍高く、
身体機能だけが低下している人も2・1倍高かった。

一方、骨格筋量が少なくても身体機能が正常な人は、
低下リスクにほとんど差がなかった。
2016-06-27
Link de Diet 2016.6.22 , EurekAlert 


虚血性心疾患、心血管疾患のリスク、また脳卒中やがん、糖尿病、感染症、呼吸器疾患による死亡、
全ての病因による死亡のリスク・・・これほど多くのリスクを低下させてくれる食べ物が全粒穀物(※)だという。

英国インペリアル・コレッジ・ロンドンの研究。

オーヌ博士率いる国際的研究チームによると、「研究結果は全粒穀物の摂取量を増やすことで、
一般集団の慢性疾患と早期死亡のリスクを減らせるという食事勧告を強く後押しするものです。」とのこと。

ふだん全粒穀物をまったく食べない人が、
1日2サービング食べるようになると、利益の伸びは最大になったという。
2サービングとは全粒小麦32gまたは全粒小麦製品(全粒小麦パンなど)60gに相当する。

かなりリスクが減少するのは、
1日あたり全粒穀物7.5サービング(=全粒小麦製品225g)以上とみられ、
さらに沢山食べると新たな利益がありそうだという。
この証拠の主要部分は、この10-15年の全粒穀物の健康上の利点から明らかになった。

穀物は、世界的に主要な主食のひとつで、エネルギーの56%、たんぱく質の50%を供給する。
しかし、慢性疾患と死亡リスクを減らすための全粒穀物の一日あたりの量と種類については、
はっきりしなかったり、一貫性がなかった。

そのため、研究チームはシステマティックレビューとメタアナリシスをおこない、
45の研究について、全粒穀物の摂取といくつもの健康上のアウトカム、
全死因による死亡率について分析した。

すると、1日あたり90gの全粒穀物製品(全粒穀物製品1サービングは30gに相当)を摂取すると、
病気にかかるリスクの低下率は虚血性心疾患で19%、心血管疾患22%となった。

また、全死因による死亡率は17%低下し、各病気による死亡率の低下は脳卒中14%、
がん15%、呼吸器疾患22%、感染症26%、糖尿病51%という結果になった。

心血管疾患と全死因による死亡リスクの低下については、全粒粉パンと全粒穀物のシリアル類、
添加したふすま、ならびにパンとシリアル類の総摂取量との関連性がみられた一方、
精白した穀物、精白米、米とその他の穀物の総摂取量についての関連性はほとんどみられなかった。

毎日3サービングまたはそれ以上の全粒穀物を摂っている人はあまりいないと思われるため、
研究者らは「全粒穀物の摂取量を増やし、できるだけ精白された穀物よりも全粒穀物を選ぶように」とすすめている。

なお、観察的な研究を含むシステマティックレビューやメタアナリシスは、
エビデンスを引きだすには役立つが、原因と結果について結論付けるほどのことはできない。

また、今回の研究にはいくつもの限界があること、
そして今回のエビデンスは米国の研究がほとんどで
ヨーロッパやアジアその他の地域のものが少ないため、
より様々な地域・種類の全粒穀物についての健康上の利点についての判断が必要だ、などと話している。

一方で、全粒穀物といっても糖分や塩分を多く含むような食品を摂らないようにとの警告もしている。

※全粒穀物とは
穀物から、精白などによって果皮や、種皮、胚、胚乳表層部といった部位を除去していないもののこと。
例えば小麦では小麦全粒粉やそのパン、米でいえば玄米など。

出典は『英国医学雑誌(BMJ)』。 (論文要旨)      
2016-06-26
読売新聞 2013年8月8日


腰痛に苦しむ人は多い。
病院で検査を受けて脊椎の異常が見つかった場合、
手術を受けて治ればいいが、
手術は成功したのに痛みが消えない人は少なくない。

横浜市の市立脳血管医療センターでは、脊椎ではなく、
腰の表面を通る神経が痛みを引き起こしている場合があるとして、
麻酔薬の注射や簡単な手術で効果を上げている。



麻酔注射や筋膜を切開


静岡市の看護師、戸塚美樹子さん(48)は、10年ほど前から腰痛になり、
3年前に悪化、脚のしびれやふくらはぎの痛みも表れた。
整形外科で検査を受けると、背骨の椎骨が神経を圧迫していると診断され、
手術を受けた。

しかし、手術後も痛みは消えない。複数の病院を受診しても治らず、
鎮痛薬の量は増えるばかり。そこで今年4月、主治医の紹介で
横浜市立脳血管医療センターの脊椎脊髄疾患センター長、
青田洋一さん(整形外科医)の診察を受けた。

青田さんは、戸塚さんの腰の、あるポイントを指で押すと、
最も強い痛みが走り、いつも感じている痛みやしびれも表れることを
確認した。さらに、上体を前や後ろに倒すと痛みが生じることなどから、
「上殿皮じょうでんひ神経」の締め付けによる神経障害と診断した。

上殿皮神経は、背骨とお尻の上部の表面を結ぶ神経で、
左右に5、6本ずつある。

青田さんによると、この神経が骨盤の「腸骨」を乗り越える際、
腸骨とその表面に付着する筋肉を包む「筋膜」との間に挟まれ、
神経が締め付けられる場合があり、
腰痛や脚の痛み、しびれの原因になるという。

戸塚さんの場合、押すと痛む点(圧痛点)が左右両側にあり、
そこに麻酔薬を入れる「神経ブロック注射」を受けた。
しかし、重症のため数時間で効果が切れ、5月に手術を受けた。

手術は、上殿皮神経を圧迫している筋膜を切開するだけ。
筋肉そのものは切らないため、患者の身体的なダメージは少ない。
戸塚さんは痛みが軽くなり、「とても楽になって、歩きやすくなった」
と喜ぶ。

青田さんがこの神経の研究を始めたのは、
横浜市大病院に勤務していた2005年。
フランスの整形外科医の報告を知り、08年から11年に
腰や脚の痛み・しびれのために受診した患者775人を調べたところ、
約12%に当たる96人が上殿皮神経の障害とみられた。

患者62人に、この神経へのブロック注射を行ったところ、
53%は1回の注射で効果があり、
複数回の注射を含めると81%に効果があった。

青田さんは、注射を複数回行っても効果が持続しない場合に限り、
手術を行うことにしている。

手術自体は、「末梢まっしょう神経剥離手術」として保険がきく。
この手術は、釧路労災病院(北海道釧路市)、
日本医大千葉北総病院(千葉県印西市)の各脳神経外科と、
横浜新緑総合病院(横浜市)の脳神経センターでも行われている。

青田さんは現在も上殿皮神経障害の研究を続けており、
「腰の動きに制限が出たり、脚のしびれが表れたりすることもあり、
腰椎の神経障害と紛らわしい。腰椎の手術を受けても痛みが消えず、
何年も苦しんでいる腰痛患者には、特にこの病気は多い」と話している。

(山口博弥)

2016-06-24
読売新聞 2016年6月24日



医学会会長の健康維持「三か条」

 私の健康維持の基本、それはズバリ次の3つ。            
といいますか、その3つしかありません。

1、1日1万歩くらい歩く。

2、腹八分目。

3、野菜、魚を中心に食べる。
 
一言でいってしまえば「よく運動し、ほどよく食べる」ということに尽きるでしょう。

「日本医学会会長が実践している」という、かなり迫力ある健康法のわりに、
当たり前過ぎてがっかりされたかもしれません。
「そんなこととっくに知ってるよ」と思われた方もいることでしょう。

しかし、頭で理解していることときちんと実践して継続することは違います。
そして何より、実はこれらすべて、学術的に認められた、数少ない「正しい健康法」なのです。
 
たとえば「1日1万歩くらい歩く」ということ。
「歩くことがカラダにいい」と分かっていても、
暑い日も寒い日も、雨の日も仕事で疲れている日も、
それでも「1万歩歩く」と聞けば、その手強さがお分かりになるかもしれません。
 
この基本3箇条のポイントとは、「続ける」ことにこそあります。

そして85歳でも医学会会長を続ける私はといえば、
このような生活を、実にもう「半世紀近く続けている」と聞けば、
さすがに納得される方もいるのではないでしょうか。

これだけ長く続けていますと「習慣」になってしまうので、
自分では健康のためにしていること、という意識すらなくなってきますが。


歩けば「寝たきり」リスクは減る

特に歩くことは医学的に見ても理にかなった健康法で、
カラダにさまざまな良い効果をもたらします。
 
ざっとだけお話しますと、歩けば、そのぶん血液の循環は良くなります。

血液は心臓から出て全身に酸素や栄養を届け、
かわりに老廃物を受け取って静脈を通って戻ってくる。

手や頭など心臓に近いところは問題ないのですが、
足先は心臓から遠いうえ、重力に逆らって静脈の血液を心臓に戻さなくてはならないので、大変。 

でも、歩くとふくらはぎなど足の筋肉がポンプのように収縮するので、
心臓にもちゃんと血液を送り戻すことができるようになる。まさに第二の心臓。

全身の血液循環が活発になると、動脈硬化や肥満など、
歳をとってからかかりがちな生活習慣病の予防になるのです。

歩くことによって脚の筋力が鍛えられることも、           
私たちシニア世代は注目したい点。

「寝たきり」の原因の1位は「脳卒中」ですが、実は2位が「骨折」です。

年齢とともに筋力も骨も弱くなりますので、
ちょっとした段差で転倒して脚(足)を骨折するようになり、そのまま起き上がれなくなる。
一度入院してしまえば、その間に筋肉はさらに衰え、骨が治っても歩けなくなり、
そのまま寝たきりになってしまう高齢者が多くみられます。
 
寝たきりにならないようにするには、足腰の筋肉を鍛えて、転倒を防ぐことが大事。
そして普段からなるべく歩くことこそ、その筋肉を鍛えるとてもいいトレーニングとなるのです。


常に「何分で歩けるか」を意識して

それと、歩数だけでなくスピードも意識されることをおススメします。
といっても「速く歩くように心がけて」という意味ではありません。
「家からあそこのスーパーまで、自分は○分で歩く」といったペースについて、
日ごろから把握しておいていただきたいのです。
 
いつもは10分で歩けていた距離なのに、あるときから余分に時間がかかるようになった、
などという場合、体力などではない別の問題、たとえばパーキンソン病の疑いなどがあります。
 
運動でも家事でも、何らかの習慣において、あるときからちょっとしたズレが生じれば、
これこそ病気の目印になります。ですので、歩数はもちろんのこと、
歩くスピードは常に意識するようにしてください。
 
なお、厚生労働省の調べによれば、日本人の歩行の現状は1日平均で
成人男性は8202歩、成人女性は7282歩。
あと2000歩から3000歩くらい足りないということになります。

この1日の平均の歩行数の数字は成人の平均ですから
シニア世代となるともっと少ないでしょう。
 
もちろん関節などに痛みを抱えている場合は別ですが、
歳をとったらとるほど、意識的にたくさん歩くことを心がけてほしい。

「歩くこと」こそ、学術的にも認められた、数少ない健康法なのですから。


髙久史麿(たかく・ふみまろ)氏のプロフィール
1931年生まれ。日本医学会第6 代会長(2004年から6 期目)。東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学博士。
群馬大学医学部助手、東京大学医学部助手、シカゴ大学留学などを経て、1972年から自治医科大学内科教授。
1982年より東京大学医学部第三内科教授。1988年から1990年まで医学部長。同年国立病院医療センター病院長に転任。
1993年から国立国際医療センター初代総長。1996年に定年退官後、同年から自治医科大学学長。
2012年、自治医科大学名誉学長。著書に『日本医学会会長が教える 医者の健康法』(中央公論新社)など。
2016-06-23
心療眼科医・若倉雅登のひとりごと
読売新聞 2016年6月23日

眼瞼けいれん(4)「異常なし」か「ドライアイ」と診断される理由


この病気の方は、目に不調があるので一度は必ず眼科を受診するものです。
ですが、その大半は異常なしか、ドライアイと診断されてしまいます。


今でこそ、眼科医から「 眼瞼がんけん けいれんが疑われる」として
情報提供書(紹介状)をいただくことは多くなってきましたが、
10年前にはほとんどゼロでした。

患者さんは、私や他の神経眼科医が紹介した新聞記事、
テレビの医学番組、インターネットなどで知って来院したのです。

 なぜ、この病気に眼科医は気付かないのでしょう。

一つには、彼らにこの病気を学ぶ機会がなかったことが挙げられます。

10年以上前の眼科の教科書には、この疾患の項目はないか、
あっても3、4行、中には病名のよく似た「片側顔面けいれん」
(顔面神経が刺激で片側の眼周囲や、頬、口唇周囲の筋肉がぴくぴくと動く病気)
と混同した誤った記載もありました。

眼科の医師は眼球の診察に関しては、
例外なく十分なトレーニングを受けていますから、
眼球自体の病変を間違うことはほとんどありません。

しかし、眼瞼けいれんは、原則として眼球には病変がなく、
あっても訴えの内容を説明できるような変化は存在しないのです。

この病気は、大脳の基底核という場所を含む神経回路の不調が原因で生じている
運動障害(目を開けにくい、瞬目がおかしいなど)、
感覚過敏( 眩まぶ しい、眼が痛い、眼や周囲の異物感や不快感など)
が混在する病です。

 ここでもう一つの理由がわかります。

珍しいと思っている病気や、眼球外に原因のある病気の診断には、
眼科医は抵抗感があるのです。

私は、自著の小説「 茅花つばな 流しの診療所」の中で
「知識があっても、実践の場で病名や診断が頭に浮かんでくるかどうかは、
医師としての想像力の多寡による」という意味の話を挿入していますが、
それはこの眼瞼けいれんの診断においても同じです。

ドライアイは日本では800万人から2200万人の有病者があるとされるありふれたものです。
こうしたよくある病気を診断することに、医師は 躊躇ちゅうちょ がありません。
患者さんも「そうか」と納得してくれやすいものです。 

逆に、眼瞼けいれんのような、患者さんも聞いたことがない病名を、
自信なげに告げられると、受け入れるのに抵抗感があるでしょう。

 「けいれんなんてしない」と…。

かつて、ドライアイの約8%が、実は眼瞼けいれんの重症型であった
という統計も発表されたことがあります。私たちの調べでは、
軽症例はもっともっとずっと多いことがわかってきました。

眼瞼けいれんは、ありふれた病気だと再認識すれば、眼科医の診断能力も上がり、
誤った診断のもとで誤った対応がなされる患者さんは、きっと少なくなるに違いありません。


若倉雅登(わかくら まさと)
井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、
井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。
北里大学医学部客員教授、日本神経眼科学会理事長などを兼務し、
15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、副理事長に就任。

「医者で苦労する人、しない人---心療眼科医が本音で伝える患者学」(春秋社)、
「健康は眼に聞け」(同)、「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、
医療小説「高津川 日本初の女性眼科医 右田アサ」(青志社)、「茅花流しの診療所」(同)など著書多数。
専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、
週後半には講演・執筆活動のほか、NPO法人などのボランティア活動に取り組む。
2016-06-23
温泉が動脈硬化を予防?…市民千人の健診を分析
読売新聞 2016年06月23日 09時30分


日常的に温泉に入浴する人は、動脈硬化につながる脂質異常症
(高脂血症)になりにくい可能性があるという調査結果が、
早坂信哉・東京都市大学人間科学部教授の研究で得られた。

早坂教授が5月に開催された
日本温泉気候物理医学会の学術集会で発表した。

早坂教授は、温泉入浴の健康維持効果を検証するため、
静岡県熱海市の熱海温泉誌作成実行委員会(内田実代表)の提案と同市の協力を受け、
2014年度の同市の特定健診を受けた市民のうち、1092人に調査を行った。

調査は、
〈1〉週に1回以上温泉に入浴する習慣の有無
〈2〉性別
〈3〉65歳以上と同未満などに分け、
健診結果のデータを統計学的に分析した。

その結果、温泉入浴の習慣のある人はない人に比べ、
65歳未満の男性でLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の平均値が低く、
65歳以上の女性でHDLコレステロール(善玉コレステロール)の平均値が高かった。

脂質異常症は、血液中のコレステロールなどの脂質が正常値の範囲内にない状態。
放置すると動脈硬化、さらには心筋梗塞や脳梗塞などの恐れもある。

LDLはコレステロールを全身の組織に運び、
それが血管内に放置されると動脈硬化につながるため「悪玉」と呼ばれる。

これに対し、HDLは余分なコレステロールを血液中から回収し、
動脈硬化を進みにくくする働きがある。

医学博士で温泉療法専門医の内田代表によると、
市民の温泉入浴の健康への影響を健診データを基に調査しているのは、
熱海市独自の取り組みだという。

内田代表は「日常的に温泉に入っていると、
コレステロールがたまりにくいかもしれないことがわかった。
温泉が健康に好影響を与える可能性を示している」と語る。

早坂教授は昨年、温泉入浴の習慣があると
高血圧になりにくい可能性があるとの調査結果を、
同市の12年度の特定健診のデータに基づいて発表していた。

「熱海温泉誌」は同市の市制80周年を記念し、来年4月の発行予定。
熱海温泉の歴史などに加え、今回の研究成果も掲載するという。

2016年06月23日 09時30分 Copyright © The Yomiuri Shim bun
2016-06-23
読売新聞 2016年6月23日
認知症解明へ数万人追跡、記憶力の変化をデータに…健康な40歳以上対象


数万人規模の健康な日本人を対象に、認知症予防研究に協力してもらう
国内初の登録システム「アイループ」を開発したと22日、
国立精神・神経医療研究センターや国立長寿医療研究センターなどのグループが発表した。

7月5日から参加を受け付ける。半年ごとにインターネットで
生活習慣などのチェックや認知機能検査を行い、
集めたデータを発症予防や治療の臨床研究につなげる。

対象者は、認知症ではない40歳以上の健康な日本人。
初回、ホームページで氏名や生年月日などを入力後、
生活習慣、自分や家族の病歴など約160項目のアンケートへの回答を登録。

記憶力を調べる簡単な認知機能検査「あたまの健康チェック」を電話で受ける。

その後は半年ごとに、同様なデータの更新を行い、同じ検査で記憶力の変化も追う。
参加者が望めば、新薬の臨床研究への参加募集情報なども提供される。

国立精神・神経医療研究センターの松田博史・脳病態統合イメージングセンター長は
「健康な人の中から認知症発症前の『超早期』の人を見つけ、

予防に有効な治療薬の開発に役立てたい」と話している。
システムの詳細や登録については、「アイループ」の ホームページ で。
2016-06-21
産経新聞 2016.6.21 09:16
【健康カフェ】
(39)サプリメント 栄養の過剰摂取に注意


糖尿病と脂質異常症で通院している70代前半の女性は、
テレビや雑誌で体に良いと言われた食材は毎日欠かさず食べ、
さらに3種類のサプリメントを摂取しているそうです。

女性は「孫が成人するまでは元気でいたいの。
食事だけだと栄養が足りないから」と理由を教えてくれました。

この女性のように、「もっと健康になりたい」と考え、
さまざまな健康食品をとっている患者さんはたくさんいます。
でも、健康食品はあくまで「食品」で、医薬品のような効果は期待できません。

抗酸化作用による老化や、心血管疾患の予防効果を期待して
ビタミン類などをサプリメントで摂取する人が多いようです。

しかし、動物実験のレベルで効果があると報告されたものはあっても、
長期間にわたって人間が摂取して、老化や病気に対しての
予防効果が得られたというものはほとんどありません。

また、多量に摂取するなどした場合の安全性についても
証明されているとは言い難い状況です。
最近ではサプリメントの過剰摂取によるリスクを指摘する研究結果も出てきています。

冒頭の女性のように、「食事だけだと栄養素が足りていないのではないか」
と心配する人は多いですが、普通の食事をしている日本人の場合、
ビタミンやミネラルの不足はまずないと言っていいでしょう。

過度なダイエットなどで食事の量が極端に少ない人が栄養不足に陥る可能性はありますが、
私の患者さんをみる限り、サプリメントを取っている人の多くは日頃の食生活に気を使っています。
つまり、食生活で栄養素が足りている人ほど、サプリメントを取る傾向があるように思います。

サプリメントなどの健康食品は、栄養素の過剰摂取につながる可能性もあります。
ある栄養素を過剰に長期間にわたり摂取した場合の健康に与える影響などはまだよく分かっていないのが現状です。

内閣府食品安全委員会は「いわゆる『健康食品』に関するメッセージ」
として健康食品への注意喚起をしています。

メッセージでは、健康食品が医薬品並みの品質管理の規制対象になっていないことや、
医薬品との併用で効果が強くなり過ぎたり弱まったりする可能性があることなどを指摘しています。

利用する場合は、製品名と摂取日、摂取量、体調などをメモして、
万が一体調が悪くなったらやめるように勧めています。
メッセージは同委員会のホームページにありますので、
一読することをお勧めします。

(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)

2016-06-21
2016.6.21 09:35
【技あり!ほねつぎの健康術】
(6)水中ウオーキングを



世界に冠たる長寿大国日本はいま、平均寿命だけでなく、
健康寿命を延ばすことを重要視しはじめています。

人は誰でも「老化」します。
特に脚力は加齢とともに筋肉量が少なくなり、
日常生活に問題を引き起こすこともあります。

体を動かすための骨格筋(筋肉)は体重の約半分を占め、
その7割が下半身に集中しています。

それは、人間が直立二足歩行するがゆえであり、
この下半身の骨格筋が老化をすれば、
歩行が困難になる可能性もあります。

健康維持のため、スポーツジムに通っているという人は多いと思います。
私もその一人です。先日、プールを利用する人たちを見ていて、あることに気がつきました。

午前中に利用する会員約40人のうち、8割は60代以上の高齢者で、
そのうち80歳以上が5人います。プールなので、当然泳いでいますが、
歩くことに時間を割いている人がとても多かったのです。

高齢になると、膝に何らかの疾病を抱えているという人が多いのですが、
水中では浮力で体重が軽くなり、膝の負担が軽減されます。
半面、水の抵抗で前に進むのは大変です。

加齢による筋肉の衰えを予防するため、水中ウオーキングは望ましいことです。
歩幅を広く、正しい姿勢で水の中を歩くのは、膝や腰を痛めることも少なく、
ダイエット効果も得られます。

下半身の筋肉強化にもってこいの水中歩行を始めてみてはいかがでしょう。(原正和)

                   ◇

 問い合わせ先=公益社団法人 日本柔道整復師会
(電)03・3821・3511(平日午前10時~午後5時)
FAX03・3822・2475

2016-06-21
2016年06月06日(月) 週刊現代

ダマされるな! 医者に出されても飲み続けてはいけない薬〜
一般的な頭痛薬、降圧剤、抗うつ薬…がはらむ危険
「メジャーな薬=安心」ではない賢者の知恵週刊現代コラム一覧


ふだん何気なく飲み続けている薬。メジャーなものだから安全だと思っていても、
長年飲んでいると思わぬ副作用が起こることもある。
医者に言われるままの安易な服用はやめて、薬の飲み方を見直そう。


新しければいい薬とは限らない

「'13年に代表的な降圧剤であるディオバンに、論文の不正問題が発覚して、大騒ぎになりました。
ノバルティスファーマ社の社員が統計データの解析に不正に関わっていた問題も明るみに出た。
その影響で一時期、処方されることが少なくなりましたが、
最近になってまたよく使われるようになっています」

こう語るのは新潟大学名誉教授の岡田正彦氏。

中高年になると、血圧の薬を毎日飲んでいる人も多いだろう。
だが、その薬が本当に効いているのか、逆に副作用がないのかを
よく見極めて処方されているケースは意外に少ない。岡田氏が続ける。

「ディオバンに限らず、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)と呼ばれる
血圧を下げる薬は薬価も高く、処方されている量も多い。

'14年度の医療用医薬品国内売上高ランキングを見ると、
売上高トップ10のうち3つもARBが入っています。
しかし、これらの薬が本当に必要かどうか、大いに疑問です」

ちなみに売上高の多い降圧剤とは、ブロプレス(武田薬品、946億円、'14年度=以下同)、
オルメテック(第一三共、763億円)、ミカルディス(アステラス製薬、612億円)の3種。
このうち、いくつかを服用したことのある人も多いだろう。

「高血圧の薬は歴史も古く、たびたび大規模な調査が行われ、論文も多い。
しかしわかっていることは、わずかに寿命を延ばすほど効果があると認められるのは、
サイアザイド系利尿剤という古いタイプの降圧剤だけだということです。

つまりARBなど最新の降圧剤は薬価が高いだけで、
古くからある薬より寿命を延ばす効果も少ないのです。

私自身、医師としてはサイアザイド系を主に処方しています。
しかし、このような古くて安い薬ばかり処方されては、製薬会社は赤字になってしまう。
ですから、そういう古い薬は一切、宣伝されませんし、
オーバーに言えば『この薬は使うな』という無言の圧力がある。


日本一売れる薬の効果は?

ARBをサイアザイドに切り替えるだけで寿命は延びるし、
薬代も下がるので、いいことずくめなのですが……」(岡田氏)

ARBに限らず、そもそも少し血圧が高いからといって、
降圧剤を飲む必要はない。

「血圧が上がりすぎると脳出血の恐れがありますが、
逆に下がりすぎると今度は血管が詰まって、脳梗塞になる。
また、めまいが起こって失神する危険性もあります」(岡田氏)

長尾クリニック院長の長尾和宏氏も、安易な降圧剤の使用に反対だ。

「降圧剤は副作用がないと言われていますが、血圧を下げるということは生命力を下げるということ。
仕事や生活の意欲が低下したり、性欲が減退したりするなど、生活の質に関わることもあります。

薬を飲み続けていると、血圧は下がったけれど、
うつ病のようになってしまったという人もいる。
これでは逆に寿命を縮めてしまいます」


日本一売れる薬の効果は?

寿命が延びる証拠があるわけでもないのに、新しくて高い薬が次々と出て、
医者も当たり前のようにその薬を処方する。
このような患者無視の投薬があたりまえになってしまうのには、構造的な問題がある。

現在、売れているARBが発売される前、高血圧の治療で主に使われていたのは
ACE阻害薬というタイプの薬だった。しかし、ACE阻害薬の特許切れが近づき、
大きな利益が得られなくなった製薬会社は、次のドル箱としてARBを開発し、
それが「新しく、安全で、効果が高い薬である」という大キャンペーンを行った。

その結果、医療界では、ARBが降圧剤治療のスタンダードとなったのだ。

生活習慣に関わる病気の薬は、製薬業界にとって大きなビジネスになるので、
多かれ少なかれ似たような構造的問題が生じてくる。

現在、日本で一番売れている薬。それがプラビックスだ。
抗血栓薬で、血液をサラサラにする効果があり、
心筋梗塞や脳梗塞の再発予防に使われている。前出の岡田氏が解説する。

「心筋梗塞のステント治療(血管に金属を入れて広げる治療)の後に、
この薬を飲むと再発が大きく防げるということがわかっています。
しかし、脳梗塞の予防効果は、実はきちんと確認されていません。


使いづらく危険な糖尿病の薬

血液サラサラというのが患者さんに受けているのでしょう。
脳出血など副作用の心配があり、薬価が高いのも問題です。
私はどうしても必要な患者さんにだけ、
アスピリンかジェネリックのシロスタゾールを処方しています」

糖尿病の薬も長期間、服用することが多いので要注意だ。
薬剤師の深井良祐氏が語る。

「糖尿病については、血糖値を下げたほうがいいというのはゆるぎない事実。
しかし、薬を使って無理矢理下げようとすると、低血糖の症状が出てかえって危険な場合もあります。
厳格に血糖値をコントロールしすぎて、逆に死亡率が高くなったという研究報告もあります。

ジャヌビア、エクア、アマリールなどがメジャーな薬ですが、
処方されたからといって、同時に何種類も飲むのはやめたほうがいい」

若い患者の場合は、低血糖になると手が震えたり、動悸がしたりするが、
高齢者の低血糖は症状が出にくい。低血糖は心筋梗塞を起こす危険もあるので、注意したい。

ナビタスクリニックの佐藤智彦氏は、
糖尿病薬としてはアクトスが「とくに使いづらい危険な薬」だという。

「心臓に問題のある患者に使用すると、心不全を起こすことがあるので気を使います」

高脂血症の原因になるコレステロールはどうだろう?

現在、「スタチン系」と呼ばれる薬が処方されることが多いが、
この薬の効果のほどは「かなり怪しい」と、
小野沢滋・前北里大学病院トータルサポートセンター長は語る。

「『このままでは将来心筋梗塞になるかもしれない』と患者の不安を煽り、
定期的な外来受診と食事制限を行い、スタチン系の薬を処方する。

しかし、これらの薬は飲む必要がなく、費用対効果も悪い。
合併症がなければ、薬を飲もうが飲むまいが、
高脂血症のリスクはまったく変わりません」


認知症薬で暴力的な人格に

前出の佐藤氏もスタチン系のクレストールは
「横紋筋融解症を起こすことがある」と警鐘を鳴らす。

「薬を飲み始めてから、だるい、筋肉痛があるという場合は要注意です。
横紋筋が融解し、筋細胞中の成分が血中に流出すると、
腎不全を発症し、死に至る場合もあります」

認知症薬の副作用

高齢化が進むにつれて、爆発的に使用量が増えているのが認知症薬だ。
現在、最も多く使用されている認知症薬はアリセプトだが、
この薬は処方を間違えると症状を悪化させることも多い。

認知症治療に詳しい名古屋フォレストクリニックの河野和彦院長が解説する。

「認知症にはアルツハイマー型、レビー小体型、脳血管性など色々な種類があり、
症状によって薬の種類や処方量を細かく調整する必要があります。
にもかかわらず、日本ではアリセプトを機械的に処方する医師が多い。

アリセプトは適切に使えば効果的だが、一部の型の認知症にしか効かない上に、
その他の認知症に使うと、逆に症状を悪化させる危険性もあります」

アリセプトの副作用としてよく指摘されるのは、患者が興奮状態になって、
暴言を吐いたり、暴力的になったりするということだ。
とりわけすでに怒りっぽい症状が出ている認知症患者に、
過剰投与すると手が付けられないほど暴れることがある。

ならば投与量を調整すればよさそうなものだが、そうもいかない。
アリセプトは用量の規定があり、最初は3mg、1~2週間後に5mg、
さらに病状の進行に合わせて10mgにすると決められている。

医師の判断で用量を変化させると、薬のレセプト(診療報酬明細書)審査が通らず、
病院は健保組合から医療費の支払いを受けられない仕組みになっているのだ。

「こういう増量規定のある薬は珍しい。
しかし、患者の様子を見て投与量を調整することで、
暴力的になることを抑えることができるのは事実です。
厚労省はただちにこの規定を改善すべきでしょう」(河野氏)

このように、医師が適切な処方をしようとしても、
厚労省や製薬会社側の都合で、患者の状態が悪化するという事態も生じているのだ。


抗うつ薬のリスク

新しい薬が新しい病気を作る

うつ病は「心の風邪」といわれるほど一般的な病気になったが、
患者の増加はSSRIという新しい抗うつ剤が生まれた'90年代に重なる。
医療ジャーナリストの田辺功氏が語る。

「海外でも日本でも、SSRIが出てからうつ病患者が2倍、3倍と増えていった。
現代社会はなにかとストレスが多く、気が滅入ることもある。
そこで精神科に出向くと、『心の風邪ですね』と言われてSSRIを処方される。

パキシル、デプロメール、ルボックスなどが代表的な薬ですが、
これらはセロトニンという脳内物質に関わる薬で、脳内の環境を変えてしまいます。

うつ状態は改善されても、どんな副作用があるかわからないので恐ろしい。
また、わかりやすい副作用として消化管の出血なども報告されています」

他にも注意が必要な精神薬はある。
例えば、統合失調症などに処方されるジプレキサや向精神薬のセロクエルは、
糖尿病患者が服用すると血糖値が跳ね上がる危険性がある。
しんクリニック院長の辛浩基氏が語る。

「血糖値が500以上になって、糖尿病性ケトアシドーシスという非常に危険な状態になることがあります。
精神科の医者が、単純に『ポピュラーな薬だから』という理由だけでこれらの薬を処方すると、
患者が糖尿病持ちだった場合、命を落とす危険性もあるのです」

医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏は睡眠薬の投与に懐疑的だ。

「エチゾラムのような睡眠薬は朝まで薬が残り、ボーッとしてしまったり、
転倒してそのまま寝たきりになったりする人もいます」

他にもマイスリー、ハルシオンといった短期間作用型の睡眠剤もよく使われる。
医薬ビジランスセンター理事長(内科医)の浜六郎氏が、その副作用を語る。

「前向健忘といって、酒に酔って前の日のことをまったく覚えていないのと同じような状態になります。
その人の普段の状態からは想像がつかないほど性格が変わったり、事故を起こしたり、
人を傷つけたり、場合によっては人を殺しても自分のやったことを全く覚えていないということが起きる。

また、これらの薬は続けて服用していると、
1日飲まなかっただけで、翌日痙攣を起こすこともある」


身近な鎮痛剤の落とし穴

身近な鎮痛剤にも落とし穴はある。

「つい先日も『お腹がひどく痛くなり、吐血した』という患者さんが来ました。
よく話を聞いてみると、その方はひどい頭痛持ちで、
痛み止めにロキソニンを常用していることがわかりました。
胃カメラで見てみると、胃の粘膜が真っ赤にただれて出血していた」

こう語るのは前出の佐藤氏。ロキソニンは頭痛や生理痛など、
幅広い痛みを抑えてくれる鎮痛剤としてポピュラーな薬だ。
しかし、この薬にも重大な副作用があるという。

「頭痛持ちの人が痛み止めとして日常的に使用している場合が多いのですが、
効き目がシャープな分、胃の粘膜も荒らしやすい。
空きっ腹に飲んだりすると、胃潰瘍になったり、腎臓を傷めたりします。

吐血したり、血の混じった黒い便が出たりして病院に駆け込んで、
初めて薬の飲みすぎだとわかったというケースはよくあります」(佐藤氏)

そのロキソニン、今年3月には、厚生労働省が「重大な副作用」の項目に
「小腸・大腸の狭窄・閉塞」を追加するように改訂指示を出した。
軽い気持ちで痛み止めを飲み続けていたら腸閉塞になる

——病院で処方されたからといって、
安易に薬を飲んでいては思わぬ副作用を招くことになる可能性があるのだ。
前出の田辺氏が語る。

「誰も注意してこなかっただけで、
これまでに頭痛持ちの人が腸閉塞で死亡した例もあったかもしれません。
因果関係がわからなかったから問題にならなかっただけで、
そのような可能性は無きにしもあらずなのです」

ポピュラーな薬であればあるほど、医師や病院は安易に処方しやすい。
「一般的な薬だから、これさえ出しておけば安心だろう」
と飲み方の注意や副作用について十分な説明をしないまま出してしまうケースが多いのだ。

だが、そのような薬を何も考えずに飲み続けていると寿命を縮めることになる。

「はげ薬」でがんになる?

アレルギー性鼻炎やアトピーでしばしば処方されるセレスタミンも注意が必要だ。
これは抗ヒスタミン剤とステロイドの合剤だが、
「医師が単なる抗ヒスタミン剤だと勘違いして処方することがある」(浜氏)という。


薬の仕分けが健康への第一歩

「実は長時間作用型ステロイドのリンデロンが入っており、副腎の働きを抑えてしまう。
半年、1年と長期間使って薬をやめると、自前のステロイドホルモンが出なくなっているために、
禁断症状として血圧が下がってショック状態になることがあります」(浜氏)

また、糖尿病の患者がセレスタミンを使用すると
「ステロイドの影響で血糖値が300、400と急上昇することがある」(辛氏)ので要注意だ。

胃の調子が悪いからといって、恒常的にPPIと呼ばれる胃酸を抑える薬を飲んではいけない。

「ネキシウムやタケプロンが代表的な薬ですが、
確かにこれは胃が痛いとか胸のあたりがチリチリするという患者さんにはよく効くので、
出してくれと言われることが多く、医師も再発防止にもなると思って処方する。

しかし、長期間飲むと骨粗鬆症が進行して骨折しやすくなるという
海外の調査研究があります。予想外の副作用があるので、
服用は短期間(2~3ヵ月)にしておいたほうがいい」(岡田氏)

前立腺肥大の症状改善に用いられるアボルブは、男性ホルモンの作用を弱める薬剤。
しかし「インターネット上では前立腺がんを少なくするなどという情報が飛び交っているが、
実は悪性度の高いがんが逆に増える」と前出の浜氏は忠告する。

「これは特に男性にとって発癌作用のある女性ホルモンが増えることと関係があります」

アボルブと同じ成分がザガーロという名で、また似た成分がプロペシアという名で、
男性型脱毛症に使用が許可されているが、
「その効果はザガーロで10%ほど頭髪が増えるという程度」(浜氏)。
はげを気にして、がんになっては元も子もない。

このように何千種類もの薬が氾濫している現在、
医者や病院がすべての薬の副作用や危険性を把握しているとは限らない。
病院が医療費の点数がつくからといって
何も考えずに処方した薬を飲み続けることで、寿命を縮めることだってある。

まずは自分のお薬手帳を見て、なんとなく安易に飲み続けている薬がないか確かめよう。
そのうえで、信頼できる医者と相談しながら、
飲み続けるべき薬、やめてもいい薬を仕分けする——それが健康への第一歩だ。


飲み続けてはいけない薬のリスト

(*Yahoo!など配信先でご覧の方は、こちらで一覧リストを見られます。

gendai.ismedia.jp/articles/-/48812)


「週刊現代」2016年6月11日号より




2016-06-21
再生医療 九州・山口の現場から
読売新聞 2016年6月21日

[再生医療](4)抜けた乳歯から肝細胞


肝臓は、体に必要なたんぱく質を作ったり、
有害な物質を分解して無害にしたりする重要な臓器だ。
複雑な機能を持つ肝臓をいかにして再生するか。

肝不全や先天性の肝臓病の治療を目指し、
乳歯などを使った様々な研究が進められている。

 ■ 高い増殖能力

生え替わって抜けた乳歯を使って再生に取り組むのは
九州大の田口智章教授(小児外科)らの研究グループだ。
歯の中心部にある 歯髄しずい には、骨髄などと同じタイプの幹細胞が存在する。

乳歯から採れる幹細胞は、骨や軟骨のほか、肝臓の細胞にも分化しやすい特徴を持ち、
骨髄や永久歯から採れる幹細胞よりも増殖する能力が高いという。

研究グループの柳佑典医師は「1本の乳歯から、
肝機能の回復に十分な数の肝細胞を作ることができる」と話す。
抜けた乳歯を使うので、骨髄採取のような体への負担はないことも利点の一つだ。

研究グループは、人間の乳歯歯髄から採った幹細胞を使って、
マウスやラットなどで動物実験を進めている。

幹細胞そのものを移植した実験では、
肝臓の中で細胞が増殖し肝機能が改善することが確認された。

幹細胞を体外で肝臓の細胞に分化させてから移植したり、
バイオ3D(立体)プリンターで一定の大きさの組織を作って移植したりする実験にも成功。

柳医師は「本物の肝臓をつくるまでの道のりは遠いが、
産業化を目指した研究を進めたい」と話す。

 ■ 肝細胞シート

長崎大(長崎市)の堺裕輔助教(移植・消化器外科)は、
人の肝臓細胞などで作った細胞シートを使う。
ただ、「肝臓をつくるには肝臓の細胞を用いるのが理にかなっているが、
肝臓細胞を体外で増殖させ立体的に培養するのは難しい」(堺助教)という。

研究では、人の皮膚由来の細胞を土台にして、人の肝臓細胞を組み合わせる。
皮膚由来の細胞は、コラーゲンやヒアルロン酸を作る 線維芽せんいが 細胞。
一緒に数日間培養し、直径1.5センチ程度の円形の薄いシート状にする。

これをマウスの皮下に移植。生体が持つ自然の力を利用することで、
シートと血管がつながり、肝臓特有のたんぱく質の生成も確認され、
組織として機能することが認められたという。

 ■ 膵臓細胞でも

堺助教は「もともとの肝臓の細胞を使えば、別の臓器の幹細胞から分化させた細胞と比べ、
機能や安全性の面で優れている」と話す。今後の課題は、生体内でさらに大きな組織を作ること。
同じ手法を用い、 膵臓すいぞう 細胞のシートを作る研究にも着手している。

 (編集委員 田村良彦)
2016-06-20
Link de Diet 2016.6.7 , EurekAlert
  
銅は、脂肪代謝の鍵となる役割を果たすことがわかったという。
ただし、サプリメントからの胴の摂取は、
必須ミネラルの不均衡を招く場合もあるとの警告をしている。
米国エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所などの動物実験から。

調理器具や電子機器、ジュエリーや配管に用いられるイメージの強い銅だが、
実は人体にとっての必須ミネラルのひとつでもある。
その生理学的機能に対しては、ここ10年間で注目が高まっている。

銅は、体内で赤血球を作るときに必要で、鉄を必要な場所へ運んだり、
結合組織を発達させ、免疫系をサポートすることも知られている。
今回の研究では、脂質代謝における銅の役割が初めてわかったという。

「エネルギーを生み出すために脂肪細胞が分解される際には、
銅が不可欠であることを発見しました。銅は調節器の役割を持っています。
銅が多いほど、より多くの脂肪が分解されるのです。

私たちは、銅の欠乏が肥満や肥満に関連した病気との関連があるかどうかにかかわらず、
研究に価値があるものと考えています。」と研究者のチャン氏は話している。

【食事と銅】

チャン氏によると「銅は、脂肪燃焼の自然な道すじを回復させるための潜在的な役割があるのでは。」とのことだ。

銅を豊富に含む食品には、牡蠣や甲殻類、緑黄色野菜、
キノコ、種実類や大豆などの豆類や動物の内臓がある。

米国では銅の推奨摂取量が成人で1日あたり700μg(0.7mg)とされている。
(日本では年齢・性別により0.7~1.0mg)
しかし、米国人のうち銅を十分に摂取できている人はわずか25%だという。
(日本人の平均摂取量は男性1.22 mg、女性1.03 mg)

「銅は、体内で作り出すことができないので、
私たちは食事から摂取するしかありません。

しかし、典型的な米国式の食事には、緑黄色野菜が豊富に含まれてはいません。
たとえばアジアの食事には、銅が豊富な食品がたくさん使われています。」

しかしチャン氏は、脂肪燃焼に役立つからと言って、
銅のサプリメントを摂取することには警告をしている。
銅の摂りすぎは、亜鉛など他の必須ミネラルとの不均衡を招くおそれがあるからだ。

【「ブレーキに対するブレーキ」としての銅】

研究チームは、銅と脂肪の関係を調べるため、肝臓に銅が蓄積されるよう
遺伝子操作をされたマウスを使用して実験を行った。
これらのマウスは、正常なマウスに比べて脂肪の蓄積がより多い。
この状態は人間でいえばウィルソン病であり、治療しなければ致死的になりうる。

銅が肝臓に異常に蓄積しているウィルソン病のマウスは、
正常なマウスに比べて肝臓の脂質レベルが低いことがわかったという。

また、ウィルソン病マウスの白色脂肪細胞に含まれる銅は正常なマウスに比べて少なく、
それに対応するように脂肪の蓄積量は多いことも明らかになった。

さらに、ウィルソン病マウスに脂肪分解作用のある薬を用いたところ、
正常なマウスに比べて脂肪分解の度合いが少ない傾向がみられた。
そこで、研究チームは、細胞培養を行って分析をすることにした。

その結果、銅には「脂肪分解を促進してくれる物質を分解してしまう酵素」を、
分解する働きがあることがわかったという。
いわば、脂肪分解のブレーキに対するブレーキだ。

【牛がくれたヒント】

銅と脂質代謝との関連は、必ずしも驚くべきことではないのだという。
畜産分野において、牛の飼料に含まれる銅の量は、
牛肉の脂肪含量に影響があることがわかっていたそうだ。

なお、人間の身体のなかでも特に脳には銅が高濃度に存在するそうだが、
チャン氏が手掛ける最新の研究では、
銅が脳内の神経信号の制御の手助けをしていることがわかったとのこと。

出典は『ネイチャー化学生物学』。 (論文要旨)      
2016-06-20
[運動] 中年期のフィットネスレベルは後の脳卒中低下に関連
Link de Diet 2016.6.10 , EurekAlert 
  
中年期のフィットネスレベルが高ければ高いほど、
65歳以上になってからの脳卒中リスクが低下するようだ、という研究が、
テキサス大学南西医学センターの研究者によって報告されている。

全ての運動が健康レベルを向上させるのに有益である事は論を待たないが、
実際のところ、身体活動を行っている人は未だそれほど多くはない。

本研究では、ごく客観的に、致命的な疾患である脳卒中などの
予防手段としての有益性がより多くの人々が運動をする上で
きっかけになるようになることを企図したものである、
と研究者は指摘する。

45~50歳の19,815人の成人(うち79%が男性、
90%が白人)を対象に検討を行ったこの前向き観察研究では、
被験者の心肺機能性フィットネスを上位者、中位者、下位者に分類して追跡した。

結果、フィットネスレベルが高かった最上位者群では37%、
65歳以降での脳卒中罹患率がフィットネスレベルが低かった
最下位者群に比べて低下している事がわかったのだ。

この、脳卒中とフィットネスレベルのトレードオフ関係は、
その他の交絡因子である高血圧や2型糖尿病、心房細動の既往歴などを考慮に入れても、
やはりそのような関係性が存在していたのである。

本研究の知見は、運動によって期待できる特異的な
脳卒中予防効果の存在を支持するものである、と研究者は指摘する。

脳卒中は現状、全米の死亡原因の第5位に位置しており、
長期的に身体障碍を招く原因疾患としてはもっとも一般的なものとなっている。
フィットネスレベルと脳卒中の関連性についてのこのデータは、
その他の因子と独立しているものの、限定されたものではあるとも指摘されている。

本研究のデータから、生涯を通じてフィットネスレベルを高める事の有益性はさらに支持できるものとなった。
フィットネスレベルが低いことが、臨床的に実質上のリスクファクターとなっているにもかかわらず、
一般的には無視される傾向が頑として存在しているのだ。

そのため、中年期の低フィットネスレベルを脳卒中の余分なリスク因子として定義し、
後の脳卒中を予防するためのターゲットとして設定することが必要なのである。

本研究はダラスにある、エアロビクスの聖地とも呼ばれるクーパー研究所との共同研究で行われた。
研究者らは1999年から2009年までに行われたクーパー研究所長期研究のデータを利用し、
このデータには45~50歳の標準化された運動負荷試験の内容が含まれていた。

本研究から、その他の慢性疾患を有していたとしても、
フィットネスレベルと健康に深刻な影響を与えうる脳卒中などの
疾患イヴェントのリスク低下の関連性が示唆された、と研究者は指摘する。

米国心臓協会によれば、週当たり150分の中強度運動もしくは
75分程度の高強度運動を行う事が推奨されている。

かなり大雑把な言い方をすれば、1日あたり30分、
週当たり5日間の運動を行う事が、
より良い全般的な心血管性健康状態を導くということができる。

出典は『脳卒中』。 (論文要旨)      
2016-06-18
うつ病
やっぱり!? 腸内「善玉菌」が少ない人ほど…

毎日新聞2016年6月18日 10時04分


研究結果、ヤクルトなど共同チームまとめる

うつ病の人は健康な人と比べて、
ビフィズス菌など「善玉菌」の数が腸内に少なく、
菌数が一定以下だとうつ病患者の割合が高くなるとの研究結果を、
国立精神・神経医療研究センターとヤクルトの共同チームがまとめ、
オランダの科学誌に発表した。

腸内細菌は近年、脳の機能に影響を与えるとの研究発表が相次いでおり、
チームは善玉菌の減少が
うつ病発症のリスクを高める可能性があるとみている。

うつ病患者は医療機関の受診者だけで推計約73万人おり、
実際はその数倍いるとされる。
チームはうつ病患者43人と健康な57人を対象に、
体にいいとされる腸内の善玉菌数を調べた。

その結果、ビフィズス菌の便1グラム当たりの量(中央値)は、
うつ病患者で約32億個、健康な人では約100億個。

ラクトバチルス菌(同)は、うつ病患者が79万個、
健康な人が398万個だった。

また、ビフィズス菌が約34億個以下、
ラクトバチルス菌が約309万個以下の人は
うつ病の割合が高くなり、発症リスクは
それぞれ3倍、2.5倍になると分析した。

腸内細菌の関与が指摘され、ストレスなどで悪化する
「過敏性腸症候群」を患っている割合も、うつ病の人は高かった。

チームは今後、乳酸菌飲料などの摂取でうつ病が改善するかどうかや、
菌の種類による効果の違いを研究する予定で、
同センターの功刀(くぬぎ)浩・疾病研究第3部長は
「医薬品開発にもつなげたい」と話す。【堀井恵里子】
2016-06-14
予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
読売新聞  2016年6月13日

人生100年時代(下)長寿の9つのルール


 こんにちは。


 予防医学研究者の石川です。

さてさて、今回のブログは「ブルーゾーン」についてお話をした
前回の続きです。改めて復習をしておくと、
ブルーゾーンとは「長寿者が多い地域」を指す学術用語です。

ところで、なぜ「ブルー」なのでしょうか? 
実は単純な理由があります。

ベルギーの人口統計学者プーラン教授が、長寿者が多い地域を、
地図上に青いインクで円を描いたことがきっかけです。
そのため、もし赤いインクで描いていたら
「レッドゾーン」になっていたかもしれませんね(笑)

あまり日本では広まっていませんが、
海外では「ブルーゾーン」という考えはかなり知られていると思います。

特に、ブルーゾーンに選ばれている5地域の1つが沖縄ということもあり、
「沖縄=長寿地域」ということは世界的に広く知られるようになりました。

もちろん、現在の沖縄は全体としてみると必ずしも健康とは言えませんが、
一方で長寿者が多いというのは確かな事実でもあります。


長寿の9つのルール

「そろそろ、長寿地域に住む人はどのような生活を送っているかを教えてほしい!」
と思われている方も多いと思うので、先に結論だけ述べておきます。

【長寿の9つのルール】

ルール1 適度な運動を続ける

ルール2 腹八分で摂取カロリーを押さえる

ルール3 植物性食品を食べる

ルール4 適度の赤ワインを飲む

ルール5 はっきりとした目的意識を持つ

ルール6 人生をスローダウンする

ルール7 信仰心を持つ

ルール8 家族を最優先する

ルール9 人とつながる

出典:「ブルーゾーン 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿のルール」、   
(ダン・ビュイトナー著、ディスカヴァー・トゥエンティワン )

 
おそらく、この9つの長寿ルールをみても
「どこかで聞いた話だな」と思われたのではないでしょうか。

それもそのはずで、そもそも人が長生きするには何が大事かというのは、
別に長寿地域を調べるまでもなく、
すでにこれまで星の数ほどの研究が行われてきています。

そのため「ブルーゾーン」を調べたからと言って、
そんなに新しい「発見」があったわけではありません。


一般的な街を「ブルーゾーン」にできるのか

しかし、ここからが面白いのですが、
「ブルーゾーン」について調べたジャーナリストのダン氏は、
「あまり歩かず、ジャンクフードやドーナツを好むなど

不健康な習慣を持つ人が多い地域、
すなわち米国の典型的な都市をブルーゾーンにできるだろうか?」
と考えを進めたのです。

そして2009年5月、人口1万8000人の小さなアルバート・リー市(ミネソタ州)で
「ブルーゾーン・バイタリティー・プロジェクト」という試みを始めました。

たとえば次のようなことをやったそうです。

1)車をなるべく使わないようにするため、湖の周りの歩道を整備した

2)レストランでは小さい皿を使うことで食べる量を減らしてもらった

3)学校での食事メニューを健康的なものに変更した

4)食料品店の食べ物に「長生きするラベル」を貼った

5)やる気が続くように「人生の目的」を整理するセミナーを開催した

出典(英文):http://www.aarp.org/health/longevity/info-01-2010/minnesota_miracle.html



実施後、推定余命が2.9年も延びていた

プロジェクトは同年10月に終了し、
最終的に3464人の市民が参加しました。

気になる成果ですが、

1)ウォーキングに参加した人たちは体を動かすことが習慣になり、    
テレビやコンピューターから離れ、
サイクリングやガーデニングをする人たちが増えた。

2)プロジェクト参加者786人の健康状態から推定余命を測定すると   
プロジェクト実施前よりも2.9年延びていた、などがあったそうです。


このパイロットプロジェクトに刺激を受けて、
さらにカリフォルニア州やアイオワ州でも取り組みが始まっています。

個人的にこの「ブルーゾーン・プロジェクト」がすごいなと思うのは、
1)効果があると分かっていることを、
2)市民を巻き込んで適切に実施し、
3)効果の検証をできる限りしていることです。


地域全体を動かす大切さ

私たちは一人で生きているわけではなく、
一人ひとりが地域の中でつながって生きています。

そのため、地域全体を動かさないことには、
私たち一人ひとりの行動や意識も変わりにくいものです。

ぜひこのような取り組みが日本でも広まっていくとうれしいなと思いますし、
そのためのサポートを、今後もやらせていただきたいと思います。

それではまた次回!


石川善樹(いしかわ よしき)
予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。   
1981年 広島県生まれ。東京大学医学部卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、
常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。
専門分野は行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。

著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)。
2016-06-14
Link de Diet 2016.6.13 , EurekAlert 

亜鉛不足の症状が無くても要注意?!

軽度・短期の亜鉛不足であっても、消化機能を損なったり、
免疫能が低下するおそれがあるという。
独・ミュンヘン科学技術大学の動物実験から。

必須ミネラルの亜鉛は、ほとんどの生物にとって
重要な代謝機能に影響を及ぼす。

皮膚トラブルや疲労感といった、明かな亜鉛欠乏の症状がなかったとしても、
軽度の亜鉛不足は消化機能を損なうことがわかった。

そのため、短期的な亜鉛欠乏も避けなければならないという。

今回の動物実験において、亜鉛欠乏の初期段階においても膵臓の消化活動が妨げられ、
有意な消化機能障害に結びつくことが明らかになった。

「動物でも人間でも、亜鉛欠乏の症状が出ていないことに注目することが重要です。」
と研究者のブルガー氏は説明する。
そのため、氏は短期的、または無症状の亜鉛欠乏状態の動物実験を行ったのだ。

体内に存在する亜鉛は微量だが、
食物から摂取する必要がある。

子豚を用いた実験で、亜鉛が極端に欠乏した食事では
10日間しか持たないことがわかっている。
そのため、ブルガー氏らは早めに8日間の実験を行うことにした。

亜鉛欠乏状態の始まりは見た目では分からないが、
肝臓や血液を調べるとわかる。

今回の研究では、離乳したばかりの子豚に
亜鉛の含有量がさまざまな食事を与え、
初期の亜鉛欠乏状態にした。

これは、体内の亜鉛の貯蔵が減少すると
どのような影響が生じるかを調べるための唯一の方法であったという。

すると、身体はより亜鉛の吸収率を高める一方、
膵臓による亜鉛分泌を減らすことがわかった。

明らかな亜鉛欠乏症に陥ると、動物は食欲が減退する。
そのため、亜鉛欠乏は迷走神経に直接的な影響を及ぼすのではないかなどといわれてきた。
しかし、本当の理由はもっと単純なものかもしれない。

「亜鉛欠乏で空腹を感じないのは、消化管の中に
消化不良の食べ物が溜まっているからです。」とブルガー氏。

膵臓は、消化のコントロール・センターなどの役割を持ち、
そのために亜鉛を必要とする。一定の亜鉛レベルを維持するために、
亜鉛を消化管に供給するが、亜鉛が不足すると分泌量を減らす。

このメカニズムが消化に関連しているのでは
というのが今回の研究の出発点だったという。

ブルガー氏は「私たちは、膵臓の消化酵素の量と
体内の亜鉛レベルに直接的な関係があることを証明しました。

ですから、短期的な亜鉛欠乏も避けなければなりません。
今回の豚の実験の結果を人間にあてはめるとするなら、1日に卵を1個、
時々は2個食べていれば、問題ないでしょう。」としている。

さらに、ヴィーガン(絶対菜食主義者)やベジタリアン、
高齢者は亜鉛の摂取量をよく調べた方がよいと勧めている。

人間においては、まだ無症状の亜鉛欠乏でも炎症マーカーが上昇し、
免疫能が低下するという。

出典は『英国栄養学雑誌』。 (論文要旨)     
2016-06-14
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年6月14日

第14回 ウコン


ウコンは肝臓の働きを良くしてくれると言われており、
特にお酒を飲む前に飲んでおくと
二日酔い対策によいと言われて人気となっています。

その一方で、ウコンを含んだ健康食品・サプリメントの利用による
肝機能障害も数多く報告されていますので、
利用するには注意が必要な健康食品の一つです。

国により異なる呼び名

ウコンとはショウガ科の植物で、インド、中国、インドネシア
および他の熱帯の国々で広く栽培されています。

一般に「ウコン」という名称がつく植物には数種類あり、
国によってその名称が異なります(表)。

例えば、中国と日本でそれぞれキョウオウと呼んでいる
ウコンは、別の植物なのです。

ウコンの有効成分であるクルクミンを最も多く含むのは
アキウコン(Curcuma longa)ですが、
種類によって含まれるクルクミンの量や
その他の成分量も異なりますので、気を付けてください。

【ウコンの呼称の比較】

俗名 和名 中国名など 学名
アキウコン ウコン キョウオウ Curcuma longa
ハルウコン キョウオウ ウコン Curcuma aromatica
ムラサキウコン ガジュツ ガジュツ Curcuma zedoaria
ジャワウコン クスリウコン タムラワ Curcuma xanthorrhiza


「二日酔いになりにくい」根拠なし

ウコン

これまでにウコンやその主成分であるクルクミンを用いた
ヒト試験が数多くおこなわれています。

クルクミンの主な生理活性作用としては、
炎症を抑える作用や抗血小板凝集抑制作用、
抗腫瘍作用などが報告されていますが、
これはあくまでクルクミンの作用であり、

ウコン製品を摂取した時に、
同様の効果が得られるかはわかりません。

気になる肝臓への作用ですが、
ドイツの薬用植物の評価委員会の評価では、
肝機能の改善に効果があるとされています。

つまり、品質の確かな製品を適切に利用すれば、
効果が得られるかもしれません。

ただし、肝臓の状態というのはよほど悪くならない限り、自覚症状はなく、
効果があるのかどうかは医療機関へ行かなければわかりません。

また、お酒を飲む前に飲んでおくと、二日酔いになりにくいとか、
肝臓へのダメージが少なくなるなどという根拠は現時点ではありません。

ウコン製品を摂取するよりも、
お酒自体を控えた方が間違いなく健康には良いでしょう。


有効成分クルクミンは吸収されにくい

また、有効成分であるクルクミンはそのまま摂取しても、
ほとんど吸収されないということが知られています。

そのため、ヒトでの研究ではクルクミンとして4~12gといった、
かなりの量で検討されています。

一方、健康食品では0.03~0.05g
(=30~50mg)で含まれている製品が多いようです。

この量で摂取しても、吸収されるのはごくわずかで、
効果が得られるとは考えられません。

そこで、最近の健康食品では、クルクミンの吸収率を上げたものや、
クルクミンの吸収を助ける成分を一緒に添加したものが販売されています。
これまで、吸収されにくいために効果が得られなかった反面、
身体に影響がなく安全であったとも言えます。

しかし、吸収率が上がったことで、効果が得られるかもしれませんが、
その分、安全性にも気を付けなければなりません。


過剰摂取で肝障害の恐れ

ウコンはスパイスや着色料として一般的に利用されており、通常の食品
(カレーなど)中に含まれている量で摂取する場合は安全と思われます。

しかしながら、健康食品として、ウコンの抽出物を大量に摂取すると、
消化器障害を起こす可能性があります。

前述したように、最近の健康食品ではクルクミンの吸収効率を上げたものや、
ウコンの抽出物にはクルクミン以外にも様々な成分が含まれていますので、
過剰摂取しないように気を付けましょう。

また、ウコンの中には鉄分を多く含むものもあり、
その鉄分がそのまま製品に入っているものを利用した場合、
C型慢性肝炎の患者の症状を悪化させてしまう可能性があります。

さらに最近では、主成分であるクルクミンそのものが、
肝障害を引き起こす可能性があることが報告されています。

肝臓に良いと思われるウコン(クルクミン)製品を摂取して、
かえって肝障害を起こしては本末転倒です。

健康診断で肝機能マーカーが高値を示している人や、
医者から肝臓の疾患を指摘されている人は利用しない方がいいでしょう。

また、通常、お薬を摂取した後、いつまでも体の中に残ることはなく、
肝臓で薬物代謝酵素と言われる酵素により分解されることによって、
お薬が代謝されお薬の作用が弱まります。

クルクミンは一部の薬物代謝酵素活性を抑制することが報告されています。

つまり、飲んでいるお薬によっては、そのお薬の分解を抑制し、
お薬の作用を増強してしまう可能性があります。

すべてのお薬の作用を増強するわけではありませんので、
一緒に飲んでも問題の無いお薬もありますが、
一般の方にはその判断は難しいため、お薬を飲んでいる方は、
ウコン(クルクミン)を含む健康食品の利用を避けるか、
医師・薬剤師に相談した上で利用するようにしましょう。

ウコンの安全性・有効性に関する科学的根拠は
以下のサイトを参照してみてください。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 
「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

ウコン

クルクミン

(国立健康・栄養研究所 千葉 剛)
2016-06-13
Link de Diet 2016.6.13 , EurekAlert 


赤ワインに含まれるレスベラトロールは高脂肪/高糖分食が
もたらす負の影響を打ち消すのに役立つようだ、
という米国ジョージタウン大学からの研究報告。

研究チームは、ブルーベリー、ラズベリー、桑の実、ブドウの皮、
それゆえ赤ワインの中にも含まれる天然のレスベラトロールに新たな健康効果を発見した。

ジョン・フィリップ・ハイアット准教授らは、
アカゲザルの食事においてレスベラトロールの効果を研究しながら、
レスベラトロールのサプリメントは、高脂肪/高糖分食が
後脚の筋肉に対してもたらす負の影響を打ち消すという仮説を立てた。

以前の動物実験で、レスベラトロールが、マウスの寿命を延ばし、
糖尿病の発症を遅らせることが既に示されている。

ある研究では、高脂肪/高糖分食を与えたマウスで、
レスベラトールの効果が、有酸素運動の正の効果によく似ていることが示されている。

研究チームは、アカゲザルの対照群には健康的な食事を与え、
別のグループには高脂肪/高糖分食を与えた。
後者のグループにおいて半数にはレスベラトロールのサプリメントを与え、半数には与えなかった。

本研究では、身体の様々な部分、特に、下腿後部の筋肉が、
レスベラトロールの効果にどのように応答するか、調べたかったという。

三種類の筋肉、“遅筋”・“速筋”・“混合筋”について調べたところ、
食事およびレスベラトロールの追加に対して、
それぞれの筋肉の応答は異なることが判明した。

膝から踵までのふくらはぎの大きな筋肉であるヒラメ筋は、
立ったり歩いたりするときに広く使われる遅筋である。
この研究で分析した下腿後部の3つの筋肉のうち、
ヒラメ筋は、高脂肪/高糖分食やレスベラトロールのサプリメントの影響を最も受ける。

これは、日常的に、他の2種類の筋肉よりも
はるかに多く使うということが原因の一部になっているようだ。

ヒラメ筋において、筋肉の収縮を助け、遅筋型または速筋型といった
筋肉の特性を決めるたんぱく質であるミオシンは、
高脂肪/高糖分食によって、遅筋型から速筋型に変化する。
食事にレスベラトロールを加えると、この変化が打ち消される。

ふくらはぎの背面に沿う5~10cmの長い筋肉である足底筋は、
高脂肪/高糖分食に対して負の応答をしなかったが、
レスベラトロールを加えると、速筋型から遅筋型へのミオシンの変化に伴い、
肯定的な反応をするようになった。

3つめの混合筋は、食事やレスベラトロールの追加によって影響されなかった。

「ヒラメ筋や足底筋に、遅筋がもつ特性が各々備わったり追加されたりすることは、
これらの筋肉が、レスベラトロールによって疲労しにくくなることを意味している。

表現型が遅筋型である骨格筋は、より長めの活動時間を維持でき、
身体活動、移動性、安定性の改善につながる。
このことは、特に高齢者にいえることである。」とハイアットは述べている。

今回得られた結果は有望であるが、この結果から赤ワインや果物を追加すれば
高脂肪/高糖分食を食べ続けてもよいという風に考えるべきではないという。

研究者は健康的な食事の重要性は
いくら強調してもしすぎることはないとしている。

出典は『生理学の最前線』。 (論文要旨)      
2016-06-12
産経新聞  2016.6.12 07:00
【脳を知る】
「脳卒中かも…」気づいたらすぐに119番 
早い治療が後遺症を軽くする


脳卒中の疑いがあれば速やかに119番を

随分暑くなってきて、梅雨の季節に入りました。
この時期ですが、日本脳卒中協会では
毎年5月25日から31日の1週間を
「脳卒中週間」と定め、市民の脳卒中に関する理解を高める
啓発活動を行っています。皆さんご存じでしたでしょうか。

脳卒中とは脳の血管が破れるか詰まってしまい、
脳に血液が届かなくなり脳の神経細胞が障害される病気です。

原因によって主に3つ、
脳梗塞(脳の血管が詰まる)
▽脳出血(血管が破れる)
▽くも膜下出血(動脈瘤(どうみゃくりゅう)が破れる)
-に分類されます。


脳卒中は、早く診断し治療を開始すれば、
後遺症が軽くなる可能性が十分あります。

特に脳梗塞では、発症してから4時間半以内の患者さんのみに行える
特殊な治療(「t-PA静注療法」といい、
この治療を受けた患者さんの約30%は歩いて退院が可能)があります。

とはいっても、治療を開始するには病院での検査や診断が必要で、
それに1時間程度かかってしまいます。
よって症状が出現してから遅くても3時間半以内に、
速やかに病院を受診すべきです。

ではどのような症状があれば、脳卒中が疑われるのでしょうか。
「この人、脳卒中かもしれない」と思ったら
次の3つのテストをしてください。

まず顔面の観察です。「イーッと歯を見せて」と言ってみてください。
口元や顔の片方がゆがんでいたら脳卒中を生じた可能性があります。

次に両腕を前方に上げてもらいます。
片方の腕が上がりにくい場合は脳卒中の可能性があります。

さらに会話をしてみて、言葉が出ない、
ろれつが回らない時は脳卒中かもしれません。

この3つのテストで1つでも異常があれば
脳卒中の可能性が60%あるといわれています。

もし1つでも異常があれば、症状が出た時刻を確認し、
直ちに救急車を呼んでください。
発症した時刻は医師が治療法を選択する際に重要な情報です。

救急車を待っている間は、患者さんを横向きに寝かせます。
呼吸を楽にし、嘔吐(おうと)した際に
吐物で窒息しないようにするためです。
救急車が到着すれば、救急隊が適切な病院へ搬送してくれます。

このテストの覚え方は英語になりますが、「顔(Face)」、
「腕(Arm)」、「会話(Speech)」、
症状が出た「時刻(Time)」の頭文字をとって「FAST」です。

これらを調べたら文字通り「速やかに(FAST)」、
119番に連絡してください。

脳卒中の判断は、医師でなくても可能です。
皆さんの「脳卒中かもしれない」という判断と救急車を要請する行動が、
すでに脳卒中の治療として始まっています。
皆さんの助けで、身近な人たちを守ってください。

(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学・脳神経外科 講師 藤田浩二)
2016-06-09
読売新聞  2016年6月9日


介護が必要になる一歩手前の虚弱(フレイル)状態でも、
高齢者の3割は4年後に改善していた、
との追跡調査を筑波大学などのチームがまとめた。


運動や乳製品摂取をしている人に多く、
生活習慣の改善で要介護者を減らせる可能性があるという。
9日、金沢市で開かれている日本老年医学会で発表する。

調査は、2011年に滋賀県内で介護が必要なかった高齢者
(平均75歳)を4年間追跡調査。約3500人のデータを分析した。

〈1〉半年で体重が2~3キロ減少
〈2〉歩く速度が遅くなった
〈3〉運動の習慣がない
〈4〉5分前のことが思い出せない
〈5〉疲れを感じる

――のうち、三つ以上該当した人をフレイルに分類した。

開始時にフレイルだったのは470人で、
4年間に21%が死亡、30%が要介護となった。
一方、32%がフレイルを脱し、状態が改善していた。

生活習慣の影響を分析すると、
軽く息が上がる運動を週1回以上する人は、
しない人に比べ、フレイルから改善する確率が3倍。

乳製品を週5回食べる人も2倍に高まっていた。

逆に、地域の行事やサークルなどへの社会参加がない人は、
要介護、死亡に悪化するリスクが2倍だった。

調査をまとめた山田実・同大准教授は
「高齢になると、体力低下は仕方ないと考えがちだが、
要介護手前なら回復する可能性がある。
あきらめず生活習慣に気をつけてほしい」と話す。

虚弱(フレイル) 要介護になる手前で、
栄養不足や体力、認知機能の低下などが見られる。
75歳以上では要介護になる要因の約半数に関連するとの報告もある。

この段階で対策を取れば健康寿命を延ばし、
医療、介護費の抑制につながる可能性があるとして、
近年注目を集めている。
2016-06-09
産経新聞  2016.6.9 13:40


高齢者の病気は「治療より予防」という意識の高まりを受け、
日本栄養士会(東京)は、食と栄養についての相談拠点
「栄養ケア・ステーション」を全国に拡大している。

高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けるのを支える
「地域包括ケア」の一翼として、行政のほか医療関係者とも連携し、
気軽に相談できる窓口づくりを目指す。

サロンのよう

埼玉県和光市の西大和団地は高齢化率38%と、
市内有数の高齢者が多い地区。その商店街の一角へ、
午前10時にシャッターが開くのを待ちかねた高齢者が集まってくる。

「まちかど健康相談室」は、
年間約4千人が利用する栄養ケア・ステーションだ。

高齢者らは、スタッフやほかの利用者とお茶を挟んで談笑を始める。
一見、サロンのようだが、スタッフは管理栄養士、保健師、看護師ら。
会話の中から利用者の体調の変化を察知し、
血圧測定も勧めて、結果を記録していく。
食生活や体調に気掛かりなことがないか、耳を傾ける。

「気が晴れる」

相談室は、和光市が独自に進める「長寿あんしんプラン」に基づく事業で、
市内のNPO法人「ぽけっとステーション」に委託して運営している。

壁には料理教室などイベントの案内、
囲碁や散歩など趣味の集まりの掲示がある。

法人代表の管理栄養士でケアマネジャーでもある山口はるみさんは
「閉じこもりがちで、相談室でしか他人と話さないという方もいる。
とにかく来てもらうことが大切」と話す。
高齢者宅を訪問する地域包括支援センターのスタッフとも連絡を取り合う。

談笑の輪の中にいた三輪明徳さん(81)は、
料理教室がきっかけで通うようになった。
食べ物の塩分量を実際の食塩で見せられたのが印象に残ったという。
「朝食で野菜やチーズを補い、塩分にとても気を使うようになった」と話す。

中島とみさんもこの団地住まい。「ここで教わった、
キャベツに缶詰の魚を載せて電子レンジにかける料理を作ってみた。
食材を無駄にすることが減った」と喜ぶ。
「料理以外の悩みにも答えてもらえて、来ると気が晴れるの」と話した。

この日は「ご飯を炊いてみたい」という男性も土鍋持参で訪れた。
相談室に来るようになってから料理に興味津々で、
アジフライやごま豆腐にも挑戦したという。

すべての市町村に

日本栄養士会の下浦佳之常務理事によると、こうした栄養ケア拠点は、
各地の栄養士会が現場のステーション設置の申請を受けて、
業務内容を確認の上、認定する。

現場のステーションから栄養指導や料理教室、介護予防教室、
市民講座などの要請があれば、適した栄養士を紹介、派遣する。

地域での栄養指導の場は以前からあったが、
病院や学校内での対応や1回だけのイベントがほとんどだった。
平成20年のスタート当初は、ステーションは各都道府県に1カ所だった。

だが、現在は、街の診療所や薬局、コンビニなどからの申請を受け、
全国で300カ所以上に増えた。
今後、全市町村に1カ所以上の設置を目標にしているという。

■科学的根拠に基づき指導

日本栄養士会栄養ケア・ステーション事業部長を務める
田中弥生駒沢女子大教授(臨床栄養学)の話
「高齢者に限らず、母親のおなかの中にいるときから、
口から食べられる最後の瞬間まで、
科学的根拠に基づいて指導するのが管理栄養士。
年齢や筋肉量、体の状態、味付けも考えて指導します。
できるだけ多くの人に利用してほしい」

                   

 

栄養ケア・ステーションの場所や事業内容についての問い合わせは、
都道府県の栄養士会か日本栄養士会
((電)03・5425・6555)。

 ■医療保険・介護保険の訪問も

管理栄養士の栄養指導には、
医療保険や介護保険で提供される訪問指導もある。
こちらは、低栄養状態などで医師が必要と認めた人が対象になる。

医療保険ではこれまで、訪問栄養指導の対象になるのは、
腎臓病や肝臓病、糖尿病などで特別食を必要とする患者に限られていた。

だが、診療報酬の改定があり、4月からは対象が、
がんや飲み込みの機能低下、低栄養状態などの患者にも広がった。

例えばがん患者が、治療の副作用で食欲がなくなったり、
味覚の変化で食べられなくなったりしたときにも、
低栄養にならないようにするのが狙い。
訪問時間も15分程度だったのが、20~30分にまで広げられた。

介護保険でも、低栄養や飲み込みの機能が低下している高齢者は、
医師の指示書を得て、管理栄養士の訪問指導を受けることができる。

高齢者の多くが低栄養状態だといわれるが、放置すると、
筋力低下を招いたり、要介護の状態が悪化したりしかねない。

管理栄養士が訪問指導で行うアドバイスは、
どんな栄養素が、どのくらい不足しているかだけではない。

患者や高齢者がどんな家庭環境にあるか、実際にどんな食材を入手でき、
家で何が作れるかを考慮しつつ、現実的で具体的な献立を提案する。
普及が期待されている。
2016-06-09
現代ビジネス 5月29日(日)9時1分配信


長生きしたい。それも健康なままで。そう願い、
さまざまな健康法に取り組んできた人は多いだろう。

だが、中には効果がないどころか、
かえって寿命を縮めるものもあって……。

間違いだらけの「健康常識」
~早寝早起き、運動、半身浴、粗食……
60すぎたら寿命を縮めることもある

歩いてはいけない時間帯

「70歳になった頃からですね。自宅から10分ほど歩いて
最寄り駅近くの商店街まで出かけるのが、
何だか億劫になってきたのは。
脚が重くて、やたらと疲れてね。
帰宅したら、横になって休まないではいられませんでしたね。

これが本当に不思議だった。私は60代から、               
ずっと筋力トレーニングをしていたんですから」

東京・三鷹市在住の横山富士夫さん(74歳・仮名)は、こう語る。

「長寿の秘訣は、筋力にあり」「元気な人は筋肉を鍛えています」――。

テレビの健康番組で耳にした言葉が記憶に残り、
リタイアを目前にした60代から、筋トレを始めた横山さん。
高い料金を払ってスポーツジムに行くこともないと、
自宅で腹筋運動を続けていた。

初めこそ苦しかったが、次第にできる回数が増え、中年以来、
ぽっこり出ていた腹も引き締まり、調子は上々と思っていたという。
だが70を過ぎて、急激に体力の衰えを感じるようになる。

メディアで健康情報が溢れる時代。
テレビなどが勧める方法を実践しているのに、どうも調子がよくない、
かえって具合が悪くなったという人が、急増している。

いったい何が間違っているのか。横山さんの証言について、
『やってはいけない筋トレ』などの著書がある
スポーツ・トレーナーの坂詰真二氏は、こう指摘する。

「筋トレが健康の秘訣というのは本当ですが、
どういう筋トレをするかが問題です。
テレビのCMで盛んに腹筋マシンの宣伝が流れるせいか
『筋トレと言えば、まず腹筋』と考える人が多いのですが、これは大間違い。

腹筋運動ばかりを続けても、60代以上の方に
重要な足腰の筋肉はほとんど鍛えられません。

長寿のために始めるなら、まずスクワット。
週に2~3回でよいので試してみてください。
90歳を過ぎて現役だった女優の森光子さんも
スクワット運動だけは欠かさなかったといいます」

間違いだらけの健康常識。
足腰を鍛える運動としてブームとなっている
ウォーキングやジョギングについても、
勘違いしている人が多いという。

長寿を司る細胞内の物質テロメア研究の第一人者で、
日本各地で100歳を超えても健康な人々を調査してきた
白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二医師は、こう話す。

「私自身、朝に1時間のウォーキングをするよう心掛けていますが、
ウォーキングやジョギングをしている人を見かけることが本当に増えました。

ただ、私は中高年の方にはジョギングよりウォーキングを勧めています。
身体に強い負荷をかける激しい運動は
健康長寿のためにはよくないと考えています」

運動は筋力を高め、血行をよくするだけでなく、
長寿遺伝子のスイッチをオンにする効果もあると白澤医師は指摘する。

「ただし、それに必要な運動強度は、『うっすら汗をかく程度』。
長年、運動を続けてきた人ならともかく、
これまでとくに運動していなかった人が、
いきなり心拍数を上げて激しい運動をすることにはリスクがあります。

ウォーキングやヨガなどがちょうどいいのです」

長生きのためと意気込んで、無理をして走ることは、かえって命取りになる。
実際、『奇蹟のランニング』というベストセラー本の著者で
「ジョギングの教祖」と呼ばれた米国のJ・F・フィックス氏は、
ジョギング中に心筋梗塞を起こし52歳で急死している。

だが、白澤医師はさらに、歩くだけと思いがちな
ウォーキングにも注意点があると指摘する。

「週に3回、1回30分歩けば、骨粗鬆症を防げるといったデータもあり、
ウォーキングはお勧めなのですが、実は身体によくない時間帯があります。

身体の機能が目覚めていない起き抜けや、空腹時、食事の直後。
そして気温が下がる時期には、血圧の上がりやすい寒い時間帯です。
気候のいい日、食後1時間ほど経った頃に歩くのが一番です」

朝起きて一番にウォーキングに出かけるという方も少なからずいるだろう。
だが、そのタイミングで歩いてはいけない。

早朝の運動といえば、学校や公園で行われるラジオ体操も一般的だが、
これはどうなのか。「ラジオ体操のような動きは筋肉を傷める」
という主張も近年、インターネットを中心に広がっている。

その真偽について、前出の坂詰氏はこう語る。

「ストレッチの専門家たちの間でも
『反動をつけて行うストレッチはよくない』と、
ラジオ体操のような動きを否定する意見があったことは確かです。

反動をつけると筋肉が反射的に縮もうとする
『伸張反射』という現象が起こります。
それにあらがって無理に伸ばすことで、
ケガをする可能性があるとされたのです」

しかしこの伸張反射、実はゆっくりと筋肉を伸ばした場合にも
発生していることが次第に分かってきた。坂詰氏は続ける。

「過剰に勢いをつけるのでなければ、ラジオ体操はとてもお勧めの運動です。
ラジオ体操には多くの人が子供の頃から慣れ親しんでいて手軽です。

その上、腕を回す、胸を反らす、身体を前後左右に曲げる、
跳ぶなどさまざまな動きが含まれ、有酸素運動、バランス運動にもなる。
脂肪燃焼や筋力向上が期待できます」

ただし、ラジオ体操がもっとも効果的な時間帯は、早朝ではない。

「人間の体温が一番高くなるのは、夕方の4時から6時頃です。
筋肉を伸ばしたり、カロリーを消費するためには
この時間帯に行うほうが効果は高いでしょう」

歩くにしろ、ラジオ体操にしろ、無理に早起きをして、
身体の硬い起き抜けに行うのは、百害あって一利なしなのだ。

早寝・早起きは、昔から健康の秘訣と思われてきた。
だが、この「常識」も最新医学の見地からは間違いだ。
スリープクリニック調布院長の遠藤拓郎医師はこう話す。

「子供ならば『早寝・早起き』は間違いではありませんが、
60代、70代になってくると、『遅寝・遅起き・だらしなく』
がよいと私は勧めています。

人間の睡眠は、残念ながら歳を取るほど質も落ち、長さも短くなる。
2歳児は12時間、20歳でも8時間は眠れますが、
70歳になると健康な人でも、睡眠時間は6時間程度になってくるのです」

ところが、早寝・早起きが正しいと思いこんでいることで、
かえって生活のリズムがくるってしまう人が多いという。

「私の患者さんにも、70代で夜7時に寝るという人がいました。
すると6時間しか寝られないので、夜中の1時頃には目が覚めてしまう。
それからずっと起きていて、早朝に散歩に出る。

早起きしているので、次の日はより早く眠くなる。
夕方6時に寝て深夜0時に目が覚めて……
と次第次第に睡眠のリズムがくるっていくことになってしまう」

よく「寝過ぎるとボケる」などと言うが、
年齢を重ねると「長時間寝続ける」ことは通常、難しい。

よく見られるのは「昼間でもウトウトしている」人だが、
これも危険な状態だ。遠藤医師は言う。

「たとえば深夜の1時などに目が覚めてしまっていると、
昼には疲れ切ってウトウトする。すると夜はかえって眠れないのです。

私は、歳を取っても仕事やボランティアなどをして用事を作り、
とにかく深夜0時から6時に寝るようにしなさい、と言っています。
遅寝でいいから6時間寝て、昼間はウトウトしない。
そういう生活がよいのです」

半身浴? それとも全身浴?
 
早寝・早起きほど「常識」にはなっていないが、
近年、ブームになった健康法の中にも落とし穴はある。

東洋医学を積極的に取り込む「統合医療」に取り組んできた、
東京有明医療大学教授の川嶋朗医師はこう指摘する。

「ふくらはぎを揉むという健康法が近年、大きな話題を集めました。
高血圧、糖尿病、アトピーやがんなど万病を遠ざけるというのです。
しかし、これは危険な極論です。

ふくらはぎを揉むこと自体は、健康法としては理に適っています。
心臓から送り出された血液は、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割を果たして、
足先から心臓に戻される。

ですから、ふくらはぎを揉めば血液の巡りはよくなるでしょう。
しかし、それで病が治るというエビデンスはありません。

血圧の薬などをやめてしまったりすれば、かえって命の危険もあります。
純粋に日頃から血行をよくする健康法だと受け止めるなら、
取り組んで損はないでしょう」

他にも、免疫を高め、美容にもつながるとして
メディアでたびたび紹介される「半身浴」も疑わしいと川嶋医師は話す。

「半身だけお湯に浸かったほうが身体が温まる、などと言いますが、
これはまったくのウソです。

血行について考えても、全身浴なら水圧で全身の血管が圧迫され、
心臓に戻る血液の量が増えることで、自然と血流がよくなります。
しかし半身浴ではその効果も半減します。

熱めのお湯で半身浴をするより、ぬるま湯にゆっくり、
全身で浸かるほうが断然、健康にはいいでしょう」


「長寿には粗食が一番」とした健康法も多く流布している。
そうした健康法では一汁一菜、肉や脂は極力避けるなどと
「ヘルシー」と称される献立が推奨される。だが前出の川嶋医師はこう話す。

「肉や脂肪分を極端に避けることが健康につながるというのは、
大間違いなのです。一般的に、肉や脂肪を食べることで心配されるのは
コレステロールの増加です。

しかし実は、血中のコレステロール値が高いほうが、
肺炎やがんになりにくく、
むしろコレステロール値が低い人のほうが、
死亡率が高いことが統計から分かってきたのです」

もちろん、あまりの暴飲暴食は胃や腸を疲弊させるが、
肉も魚も思うさま食べてよいのだ。

あなたが健康のためにと心がけていることは、
実は大きな間違いかもしれない。

本当に健康な生活を目指すためには、
常に新しい情報に接して、自分の習慣を見直すことが大切だろう。

 「週刊現代」2016年5月28日号より
2016-06-08
読売新聞  2016年6月8日

失明恐れの強度近視、早期発見できる手法開発
…東京医科歯科大


近視で眼球が変形して成人後に失明した患者では、
学童期に既に眼底に異常が起きていることを突き止めたと、
東京医科歯科大学のチームが7日発表した。


日本人の4割が近視とされる中、
特に失明の危険性の高い患者の
早期診断法につながると期待される。

強度の近視には、眼鏡などで矯正でき視力を保てる人と、
矯正できずに失明する人がいる。

眼球に変形が生じ、失明する恐れのある近視は、
「病的近視」と呼ばれ、失明原因の20%を占める。

日本人の5・5%が病的近視とされている。

研究チームは、病的近視と診断され、
成人後に失明した19人の35眼について、
小児・学童期(5~15歳)の眼底画像を分析。

8割を超える29の眼球で、網膜への血流が途絶え、
視神経の周囲が萎縮するなどの異常があった。

こうした異常は、一般的な眼底検査でも見つけられるという。
2016-06-07
読売新聞  2016年6月6日


梅雨は、カビが繁殖するのに絶好の季節だ。
気温が上がり、ジメジメして、家の中の空気もよどみやすい。
カビが原因の病気で、6~10月頃に増えるのが、夏型過敏性肺炎だ。

トリコスポロンという菌を吸い込むことで起こる。
アレルギー性で、空せきや発熱などを繰り返し、だんだん息苦しくなる。

旅行などで家を離れると症状が軽くなったり、
毎年夏を中心に症状が表れたりする人は、この病気の可能性がある。

風邪が治りにくいと思ったら、
呼吸器内科などで原因を調べてもらった方がいい。

治療法は、カビからの隔離に加え、
ステロイド剤で炎症を鎮めるのが一般的。

慢性化すると、肺が線維化して硬くなり、呼吸ができなくなる。
一度壊れた肺の組織は元に戻らない。
肺に十分な酸素を送るための在宅酸素療法や、
重症化すると、肺移植が必要になることもある。

毎年新たに500人ほどの患者が出るとされる。
千葉大学真菌医学研究センター教授の亀井克彦さんは
「しつこい夏かぜや気管支炎と診断され、
知らない間に病状が進んでしまうことがある。
もっと多くの患者が埋もれていると思う」と話す。

患者に中年女性が目立つのは、この菌が好む台所や風呂場などで、
家事をする機会が多いためとみられる。

予防の基本は発生源を断つことだ。

「命にかかわるので、ハウスクリーニングをしても
症状が収まらなければ、引っ越しを勧めます」と亀井さん。

水回りを中心に掃除や換気をこまめに行い、
清潔と乾燥を保つことが大切だ。(赤津良太)
2016-06-06
読売新聞 2016年6月6日

「まひで悩む人の助けに」片手でつえ使う歩行訓練器、
自らも障害の大学助教が開発


脊髄の病気の後遺症のため、自らも歩行障害を抱えながら
福祉機器の研究開発に取り組む東京電機大(東京都足立区)
未来科学部助教の井上淳さん(33)が、
半身まひの患者用に片手でつえを使いながら
歩行訓練ができる補助器を開発した。

宮崎県都城市にある病院の理学療法士からの相談がきっかけで、
井上さんは「自分と同じようにまひに悩む人の助けになれば」と話す。

井上さんは大学時代の2004年、脊髄腫瘍を患い、
治療後も下半身にまひが残り、今も歩くのにつえが欠かせない。

進学した早稲田大大学院では、
自身の経験からリハビリ機器の研究に取り組んだ。

所属する研究室が都城市の藤元総合病院と
リハビリ用ロボットの共同研究をしていた縁で、
同病院を度々訪れていたところ、
理学療法士から患者の実生活に即した補助器を作れないかと相談を受けた。

井上さんによると、従来型の補助器は、下部にキャスターが付き、
両手でつかんで前に進むタイプがほとんどだ。

半身まひの患者は実生活では元気な方の手につえを使うことが多いが、
このタイプの補助器では片手でつえを使いながら歩く練習は難しい。
井上さん自身、つえを使う時に手足を出すタイミングの習得に
苦労した覚えがあった。

そこで井上さんは、まひがある側はアルミ製のパイプで囲んで
患者の体を保護しつつ、まひのない側は枠をなくし、
自由につえを使えるように工夫した。

安全性の確保のため、体を補助器と安全ベルトで結んで支えたうえで、
たとえバランスを崩しても自動的にキャスターが止まる仕組みも備えた。

同病院によると、従来型の補助器を使ったリハビリでは、
転倒しないよう見守る介助者が必要で、人手も時間もかかる。

開発した補助器なら介護の人手も少なくて済むうえ、
早くつえを使いこなすことができるようになれば、
社会復帰も早まる可能性が高いという。

13年から開発に着手し、15年に特許を出願。
同病院などの医療施設で患者に使ってもらいながら改良を進めつつ、
協力企業と具体的な製品化を進めたい考えだ。

井上さんは「脳卒中後のリハビリなどで、
歩行補助器が必要とされる人は今後さらに増えるとみられ、
製品化によって普及を図りたい」としている。(小園雅寛)
2016-06-06
産経新聞 2016.6.6 09:30
認知症の予防 運動やパズルの効果に期待


超高齢化で認知症予防の意識が高まる中、
運動や学習ドリルで中高年の認知機能の維持、
強化を目指す取り組みに関心が集まっている。

記憶力維持につながるとうたうサプリメントも製薬、
食品会社が販売し、人気だ。

厚生労働省の推計では平成37年には
認知症の高齢者が約700万人に上る見通しで、
これからも同様の動きが強まりそうだ。

組み合わせ

 「次は奇数のときに手をたたきますよ」

 4月中旬、全国でフィットネスクラブを運営する
コナミスポーツクラブ(東京)の「新百合ケ丘店」(川崎市)。
60~80代の会員5人が、
曲の拍子を数えながら前後にステップを踏み、
インストラクターの指示通りに手をたたいた。

同社は27年1月から、60歳以上が対象のプログラム
「OyZ(オイズ)運動スクール 脳活性化コース」を導入している。

足踏み運動などの有酸素運動と同時に、
リズムに合わせて手拍子を打ったり、
簡単な計算をしたりするなど頭を使う。

最初はうまくできなかった動作が
数カ月後にはできるようになる人もいるという。

国立長寿医療研究センターによると、
有酸素運動と簡単な計算の組み合わせは
認知機能改善に効果があるとされる。

週に1度参加する川崎市の80代の女性は
「運動もきつくないし、友達もできて楽しい」とほほ笑む。
千葉、愛知の両県、大阪府などの20店で開講しており、
今後、全国100店への拡大を目指す。

ドリル形式

医療・福祉関連のITサービスを手掛けるエストコーポレーション
(東京)は、漢字や数字を使った問題やクロスワードパズルを
掲載した冊子を郵送し、自宅で物忘れ対策ができる
「脳レク」の事業を27年9月に始めた。

認知症予防などに関心のある高齢者を主な対象とする。

冊子には、1日2ページ、10分程度のペースで
取り組む分量の問題を収録。

物忘れが気になって入会したという東京都の60代の女性は
「昨日何をしたか思い出せるようになってきた」と話す。
4週間分の冊子が届くコースの料金が月1058円。

週に1度の電話でのサポートや、匿名での会員同士の文通、
3カ月に1度電話でオペレーターと対話形式で簡単な質問に答えることで
脳の健康度合いを診断するサービスを追加できるコースもある。
29年3月末までに会員数を1万人に増やすことが目標だという。

サプリ

体にどのように良いか国の許可なく表示できる「機能性表示食品」で、
記憶力維持を掲げる商品の販売も相次いでいる。

大塚製薬のサプリメント「ネイチャーメイド イチョウ葉」は、
記憶力を維持する機能が報告されている成分を含むイチョウ葉を使用。

小林製薬の「イチョウ葉」や、
アサヒグループ食品の「シュワーベギンコ イチョウ葉エキス」
も同様の機能を表示したサプリメントだ。

大塚製薬によると、昨年12月に機能性表示食品として発売したことで、
従来のイチョウ葉サプリより取扱店が増え、販売は好調に推移している。

日本血管内治療学会理事長の岡田昌義医師は
「老化していく中で進行するアルツハイマー型や
脳血管性の認知症は完治することは難しい病気で、
予防が大切。

脳の働きの活性化には、
家族も含め人と会話することも重要だ」と話している。
2016-06-05
産経新聞 2016.6.5 07:00
【脳を知る】
行動制止すると怒りを爆発…前頭側頭型認知症、家族は無理に抑えず見守って


前頭側頭型認知症では、行動を無理に制止しようとすると、
興奮したり怒ったりすることも

60代の男性が妻に連れられ物忘れ外来に来られました。
男性は最近、少し物忘れが多くなり、車を運転中に赤信号を無視して走行したり、
甘いものばかり食べていたり、わけもなくうろうろと歩きまわったりと、
行動に変化がでてきたため受診されました。

さらに妻が、その男性の行動を制止しようとすると、
すごく興奮し、怒ってしまうということでした。

脳のMRI検査をすると、年齢のわりに脳の前頭葉と側頭葉に萎縮があり、
症状などからも「前頭側頭型認知症」と診断し、治療を開始しました。

少し気持ちを安定させる薬を飲んでいただいたり、
介護保険を申請しデイサービスなどを利用し、
妻の介護負担の軽減をはかりました。

そして、さらに大切なことは、家族の接し方です。

本人がしようとする行動を止めようとすると混乱することがあるため、
同じものばかり食べようとしたり、うろうろと歩きまわったりしても、
無理に本人のすることを止めず、見守るように説明しました。

そうしていくうちに少しずつ、
興奮したり、怒ったりすることが減ってきました。

前頭側頭型認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、
レビー小体型認知症とともに「四大認知症」の一つとされ、
前頭葉と側頭葉が萎縮してきて症状があらわれる認知症です。

前頭葉というのは、人の意欲や想像力、注意力、判断力、記憶力、
思いやりの気持ちなど、さまざまな働きがあります。

前頭葉の働きが衰えると、記憶力が低下し、
行動や感情をコントロールすることが困難になるため、
この男性のような症状が出ていたのです。

このような症状を無理に制止しようとすると、
本人は興奮したり、怒ったりすることがあります。

けがをしたり命にかかわったりするような行動は制止しないといけませんが、
それ以外は行動を止めず、見守るようにしましょう。

その他の症状としては、側頭葉には言葉を理解して言葉を出すための「言語野」という脳がありますので、
側頭葉の萎縮が強くなると、話しにくかったり言葉がぱっと出ないなどの障害も出る場合があります。

前頭側頭型認知症に対しては、他の認知症と同様に、
内服薬での治療と介護サービスの利用、そして家族の方の接し方が大切なのです。

(橋本市民病院 脳神経外科部長 大饗(おわい)義仁)

2016-05-31
国立健康・栄養研究所
読売新聞 2016年5月31日健康・ダイエット
第13回 EPA・DHA


食品に含まれている「油」には、                    
サラダ油やオリーブ油といった植物由来のもの、             
牛脂やラードといった動物由来のものなど、               
様々な種類があります。

サラダ油は液体ですが、牛脂は固体です。                
この違いは、油の構成成分である「脂肪酸」の性質の違いによります。

一般に、動物由来の油は「飽和脂肪酸」という              
二重結合を含まない構造を持つ脂肪酸の割合が高いため固体となり、    
植物由来の油は「不飽和脂肪酸」という                 
二重結合を含む構造を持つ脂肪酸の割合が高いため液体となります。

ところが、魚は動物ですが、その油は液体なのです。           
これは、魚由来の油に、                        
今回解説しますEPA(エイコサペンタエン酸)・            
DHA(ドコサヘキサエン酸)という名前の               
不飽和脂肪酸が豊富に含まれていることによります。 
栄養成分としてのEPA・DHA

EPA・DHAに限らず食品に油として含まれる脂肪酸は、        
体を動かすエネルギー源となる他に、                  
体を形作る細胞の外枠(細胞膜)の材料にもなっており、         
複数の種類の脂肪酸が正常に働くことで体の機能が維持されています。

私たちは、必要に応じて炭水化物などの別の栄養成分から         
脂肪酸を体の中で作り出す能力を持っています。
しかし、一部の不飽和脂肪酸は体の中で作ることが出来ず、         
食品から摂取する必要があります。

このような脂肪酸は「必須脂肪酸」と呼ばれ、              
欠乏すると皮膚炎などが発症します。

EPA・DHAはこの必須脂肪酸の一つで                
n-3系脂肪酸注)に分類される脂肪酸です。

このようにEPA・DHAは栄養成分としての役割を持っていますが、   
それとは別に独自の機能を持っていると考えられています。


血中脂質を改善する機能

EPA・DHAの機能性が注目されるようになったきっかけとして、    
1970年代にデンマークで行われたイヌイット(エスキモー)      
の食生活と健康に関する研究が挙げられます。

イヌイットの人々の暮らす地域は低温のため穀物や野菜などを       
栽培することが難しく、食事は漁で得られる魚などの生肉が中心でした。
通常、肉に偏った食生活を送ると心臓病による死亡率が非常に高くなる   
と予想されるのですが、結果はそうはなりませんでした。

この原因について研究が進み、魚の油に含まれるEPA・DHAに     
血中脂質を改善する機能(中性脂質を下げる作用や、           
HDL-コレステロール=いわゆる善玉コレステロール=を増やす作用)  
があることが明らかとなりました。

現在、中性脂肪が気になる方に適した特定保健用食品として、       
EPA・DHAを関与成分とした商品が幾つか許可されています。


認知機能への効果は現状では不明

DHAは体の中で脳や目に多く存在し、                 
特に脳において何らかの役目があるのではないかと注目されてきました。
DHAと脳・精神機能との関係については数多くの研究がなされており、   
DHAの値が低いと注意欠陥多動障害、アルツハイマー病やうつ病     
といった症状となるリスクが高まると報告されています。

しかし、DHAの摂取は、必ずしもこれらの               
疾病の予防や治療に効果があるとは言えず、さらなる研究が必要です。

また、DHAを含む健康食品は、                    
このような疾病の予防・治療目的ではなく、               
記憶力を向上し学習効率を高めると                   
期待して用いられる場合が少なからずあるように思います。

これについても、DHAの摂取により記憶力が高まったことを示す研究結果がある一方で、
効果が認められなかったとする報告もあるという現状です。

また、このような試験で評価される「記憶力」とは            
多くの場合非常に単純なものだということも重要です。

例えば、「4162357」という数字を覚えてもらって、        
数分後にそれが正確に思い出せるか、といった内容のテストが行われます。
学習において記憶は確かに重要ですが、全てではありません。

DHAと単純な記憶力に関する研究結果が、               
必ずしも学習効果に直結するわけではない                
ということにもご注意いただければと思います。


リウマチやアトピーの予防・治療の研究も

体の中では、EPA・DHAを基として                 
炎症を抑える作用を持つ幾つかの生理活性物質が作られます。

そのため、EPA・DHAの摂取によって                
炎症性疾患に効果がある可能性が考えられますが、            
実際にリウマチやアトピーなどの予防や治療に              
役に立つかどうか明らかにするためには、さらなる研究が必要です。


含有量が多いのはマグロ赤身よりトロ

EPA・DHAは魚に多く含まれていますが、              
その含有量は魚の種類によって異なります。               
含有量が多いのがイワシ、サバ、サンマ、マグロといった青魚です。     
また、同じ魚でも食べる部分によって含有量が違います。

EPA・DHAは脂肪の一部ですので、                 
脂肪が少ない部分だと含有量が少なくなります。
例えば、マグロだと、脂身(トロ)100gには             
EPAとDHAを合わせて約4.5gが含まれていますが、        
赤身だと0.15g程度しか含まれていません。

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、              
n-3系脂肪酸注)の摂取目安量を1日2g前後としています。       
適切な食品を選べば普通の食生活で十分な量を 摂 と ることができます。


EPA・DHAのサプリメント

EPA・DHAを含むサプリメントが多数流通しており、         
誰でも手軽に利用することができます。
ただし、EPA・DHAを大量に摂取すると、              
血液が固まりにくくなり、出血が止まりにくくなる可能性があります。

消費者庁が定めている栄養機能食品の規格基準では、           
サプリメント・健康食品として通常の食事に上乗せして摂取する場合、   
n-3系脂肪酸注)の1日量は2gを超えないようにとされています。

EPA・DHAの安全性・有効性に関する                
科学的根拠の詳細をお知りになりたい方は、               
以下のサイトをご参照ください。

国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト
⇒ EPA
⇒ DHA
⇒ 魚油(EPA・DHAを豊富に含む油)

(国立健康・栄養研究所 竹林 純)

注)n-3系脂肪酸:特定の化学構造を持つ
幾つかの不飽和脂肪酸をまとめた呼び方。
n-3系脂肪酸に含まれる脂肪酸には、
魚由来のEPA・DHAの他に、
植物油由来のα-リノレン酸などがある。

2016-05-23
読売新聞 2016年5月23日



血管のトラブルが引き起こす突然死を避けるには、どうしたらいいのか。

循環器専門医で池谷医院(東京都あきる野市)院長の池谷敏郎さんが
出演したBS日テレ「深層NEWS」の後半では、
血管事故につながる動脈硬化のメカニズムの解説とともに、
動脈硬化にどんな対策をとればいいかが、具体的に語られた。

(構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆「血管の老化」は生活習慣から

人は、血管とともに老化すると言われています。
年とともに血管はしなやかさを失って硬くなります。
そして、壁が厚くなり、血液が流れる内腔が狭くなる。
これが動脈硬化、すなわち「血管の老化」です。

生活習慣病などがあると、血管の中にコレステロールなどが溜まり、
プラークと呼ばれる瘤(こぶ)ができて、厚く硬くなっていくのですが、
プラークの表面は生活習慣病などによって脆くなります。

そこに、例えば血圧の急上昇などをきっかけに傷がつくと、
血管は 怪我けが をしたと思って、
一生懸命、血を固めて止めようとする働きをします。

怪我なら血が外に出ますので、外に血の塊ができますが、
血管の中にできたプラークに傷が付くと、
逃げ場を失った血液の塊が血管の中にできて、
内腔が一挙に詰まってしまいます。

これが心臓で起きれば心筋梗塞が起きますし、
脳であれば脳梗塞を引き起こします。

ただ、トラブルを起こす前の血管は、
プラークがあって動脈硬化を起こしていても、
内腔がまだ保たれていて血流があり、
普段の生活では症状が出にくいのです。

プラークができても血管には痛みが出ないので、
この状態は「サイレントキラー」、静かなる殺し屋と言われています。

生活習慣を改善して適切な治療をすることにより、
プラークを少し小さくすることが期待できます。

それ以上に重要なのは、
プラークを傷つきにくくすることが可能だという点です。

悪しき生活習慣を放置して、たばこを吸ったり、
食生活をいい加減にしたりしていると、
プラークがいつまでもしっかりとした膜で覆われず、
傷つきやすい瘤のままになります。

生活習慣の改善や適切な治療で、プラークを丈夫にすれば、
事故を起こさないで済む血管をつくることができるわけです。

一度老化した血管は二度と若返らないと信じている人は多かったのですが、
近年、治療法も確立し、少し血管年齢を若返らせることができる
と分かってきました。

◆体内時計を一定に

加齢により、誰もが生理的に動脈硬化を起こします。
これは仕方ないことですが、ここに悪しき生活習慣が加わると、
拍車がかかります。

具体的には、喫煙習慣は動脈硬化を起こす要因になります。

高血圧や高血糖も、危険因子です。
コレステロールや中性脂肪の数値が高い脂質代謝異常も、
動脈硬化を引き起こします。

また、肥満が高血圧、脂質異常、高血糖などにつながる
メタボリックシンドロームも、
動脈硬化を早く進めてしまう要因として注目されています。

こうした危険因子1つで動脈硬化になるリスクが3倍になるとすれば、
危険因子が2つある場合、例えば高血圧で喫煙ということになると、
リスクは3+3の6倍ではなく、3×3の9倍になります。

睡眠不足も要注意です。

通常、睡眠中は自律神経のブレーキに相当する
副交感神経が優位に働き、血圧は低くたもたれます。

しかし、睡眠不足になると、自律神経のアクセルに相当する
交感神経が活発に働き、血圧が上がりやすくなります。

また、睡眠不足によって食行動に異常をきたして食べ過ぎたり、
睡眠不足によって昼間に運動をするモチベーションが失われて
運動不足になったりすれば、生活習慣病が悪化します。

ストレスも同様で、神経を高ぶらせますから、
血圧の急上昇を招きます。

「ストレス食い」というのがあるように、
生活習慣病を悪化させる要因にもなります。

現代社会で、仕事による睡眠不足やストレスは避けがたい面もありますが、
まずは睡眠時間を確保するように努めてください。

とくに気をつけてほしいのは、起きる時間を一定にしておくことです。

自律神経を安定させるためには、早く寝ようが、遅く寝ようが、
自分の決めた時間になったら起きるようにすることです。

また、規則正しい時間の食事や、昼間の軽い運動は、
自律神経を整え、体内時計を一定にすることに役立つと言われています。

ストレス発散のためには、涙を流すのもいいでしょう。
昔の青春ドラマにあったように、大声を出して泣きながら
砂浜を走るなんていうのは、本当は一番いいのです。

といっても、なかなかできないでしょうから、
人知れず大きな声で泣いてみたり、
悲しいドラマを観て 他ひ人と事ごと で涙を流したりすると、
良い発散になると思います。

◆血液検査で血管年齢の自覚を

自分の血管年齢の自覚は、とても大事です。

女性の場合は、血管年齢の老化度と、
見た目の老化度が関連するという研究結果があります。

具体的には、血管年齢が老化している女性ほど、
顔のしみの面積や濃さが増し、目立ってくるのです。

男性はおそらく日焼けにも無防備なので、顔のしみの面積や濃さと、
血管年齢との因果関係が見いだしにくいのでしょうが、
潜在的には女性と同じ要素があると思います。

血管年齢を治療で若くしていくと、見た目も若返っていくことは、
私自身も臨床経験で実感しています。

血管の老化は生活習慣病と深くかかわっていますので、
血管年齢を知るには、検診の結果を
真しん摯し に受け止めることが大切です。

例えば、血糖値です。HbA1cいうのは
だいたい2か月間の血糖の平均値を表していて、
これが5.6を超えていたり、
あるいは空腹時血糖値が110を超えていたりすれば、
気をつけなければいけません。

高血糖は動脈硬化を引き起こす大きな要因です。

また、脂質代謝では、悪玉コレステロールが多くなると、
血管のコレステロールが増えてしまい、
動脈硬化になりやすいと言われています。

善玉コレステロールが多くなれば、
逆の働きをしますので、動脈硬化は起こりにくくなります。

中性脂肪に関しては、内臓脂肪が溜まる人は数値が上昇しやすく、
これが多いと、悪玉コレステロールが「超悪玉」となって小型化し、
動脈硬化を起こしやすいものに変わってしまいます。

また、中性脂肪が高いと
善玉コレステロールが減るという関係があります。

血液の状態を見れば、血液が汚れているかどうかが分かり、
汚れていれば、それを流している管にも影響が出るということです。

動脈硬化は血管の内側から始まります。
血圧も、少し高めの段階から動脈硬化にかかわってきますので、
注意してみておくべき項目です。

今は、血管年齢を測る機械も開発されています。
加速度脈拍計と言って、指先をセンサーに入れ、
脈の拍動を波形としてとらえ、
その形から血管の硬さを見ていく方法です。

血管は年齢とともに硬くなっていきますから、
だいたい何歳相当に硬くなった血管かということが、
脈の波形から分かるわけです。

医療機関にかなり普及していますので、
機会があれば、試してみてください。

血液から原因、血圧などを測り、
動脈硬化の危険因子をチェックするのと同時に、
血管側からの情報を見ていくことも非常に大事です。

◆突然死を裂けるためには

ここで、二択問題で突然死を避けるための
注意点を考えていきましょう。

突然死しにくいのは、ずばり、寒がりの人です。
暑がりの人は、寒さに無頓着な傾向があります。

寒冷刺激は血管をギュウッと収縮させ、血圧の急上昇を招きますから、
寒いのに薄着のままでいるなどして、寒冷刺激を受けると、
血管の事故が起こりやすいのです。

「このぐらいの寒さは我慢しちゃえ」ではなく、
「ちょっと羽織って出ようかな」とか、
かばんの中にマフラーを入れておくとか、
そうしたことで、突然死の予防につながるわけです。

正解は夕方の食後です。

朝起きてすぐは、自律神経の交感神経、
ブレーキとアクセルでいえばアクセルの方が、
ぐっと踏み込まれた状態です。

交感神経が緊張すると、血圧が上がり、心拍数が増えます。
血液もちょっと固まりやすくなります。

暖かくなると、寝汗もかきますから、
脱水になっていることもあります。

こんな時、水分を採らないまま外に出て運動するのは、
血管の事故を非常に引き起こしやすいので、
とくに朝早い時間帯は注意が必要です。

起床後1時間以内が、脳卒中や心筋梗塞が最も多いと言われています。
できれば起きて水分補給をし、朝食を軽くとって、
1時間くらいしたら運動に出かけるというのであれば、
それほど危険性はないと思います。

一方、夕方はお腹がすいてくる時間帯ですから、
若干、脱水になりやすい面があります。

少し水分補給をするとか、
少し食べてから運動された方がいいという意味で、
夕方の食後と申し上げています。

夕食後と言うと、お酒が入っていることもあるでしょうから、
お酒を飲んでの運動は、リスクが高まります。

ただし、お酒自体は、適量であれば
血管の事故のリスクを減らせると言われています。

適量とは、男性で日本酒1合、ちょっと多くみても2合くらいまでです。
女性の方がアルコールの代謝能力が低いと言われていますから、
適量は男性の半分ぐらいでしょう。

ビールなら中瓶1本くらい、
ワインならグラス2杯ぐらいまでが適量です。


◆チーズ、タマネギ、有酸素運動

生活習慣病の原因はなんといっても暴飲、暴食、運動不足ですから、
食べ過ぎ、飲み過ぎを控える大前提で申し上げれば、
注目する食材がいくつかあります。

 それは、まず魚貝類です。

魚貝類に多く含まれる脂肪酸のEPAとDHAには、
動脈硬化を防ぎプラークを安定させる働きがあるのです。

さらにチーズです。とくに、ブルーチーズやゴーダチーズの中に含まれ
LTPというたんぱく質は、動脈硬化を予防したり、
血管を広げて血圧を下げたりする役割が期待できます。

また、動脈硬化は活性酸素による酸化によって進んでいくのですが、
タマネギの成分であるクェルセチンは、この酸化を抑える働きがあり、
血管をしなやかに開いて動脈硬化を予防するのに役立つと言われています。

例えば、みそ汁にタマネギとゴーダチーズをちぎって、
10グラムくらいでいいのですが、
毎日飲むというのは、いいのではないかと思います。

食べ過ぎは圧倒的に炭水化物で起きますから、
「なんちゃって糖質制限」くらいで構いませんので、
麺類やご飯類を少し抑えることを推奨しています。

運動は、有酸素運動が有効です。
有酸素運動により筋肉の血流が増えると、血管の中が刺激され、
血管の内膜の内皮という細胞からガス状の一酸化窒素が出ます。

これが血管をしなやかに開いて、
動脈硬化の予防に役立つことが研究で分かっています。

鼻歌を歌えるぐらいの強度で、
少し時間をかけて運動するのがよいと思います。

30分も運動しなくても、細切れに運動するだけでも構いません。
その場で5分ぐらい走るだけでも、有酸素運動になります。
以前、この番組で紹介したゾンビ体操も参考にしてください。

長時間座っていると、血流が悪くなることにより、
動脈硬化だけではなく、がんの原因にもなることが分かってきています。

座っているより、立ってうろうろすることです。
どうせうろうろするなら、ちょこちょこ走ってみるとか、
大股で歩いてみるとか、こんなことも大事です。

有酸素運動以外で、血管の中の一酸化窒素を増やすには、
血流を1回30秒ぐらい止めてから血流を再開すると、
その刺激で一酸化窒素が出ます。

例えば、手足をぎゅーっと曲げて、うずくまるようにして、
その状態を30秒ぐらい保って、一挙にばーっと体を開いて、
手足をぶらぶらっとリラックスさせてみてください。

このとき、一酸化窒素が出て、血流が良くなるのです。

生活の中にうまく運動を取り入れることが、
動脈硬化の予防になり、突然死を防ぐことにもつながっていきます。

*池谷敏郎さんの著書

『人は血管から老化する』(青春出版社)

『突然死しないのはどっち?』(すばる舎)
2016-05-22
産経新聞2016.5.22 07:00
【脳を知る】
織田信長も罹った「糖尿病」 裕福な貴族の病気から現代病に


糖尿病。名前だけ聞くとあまり怖そうではありませんが、
実は恐ろしい病気です。

日本史上では藤原道長の晩年の健康状態を記した記録(「小右記」)が
糖尿病の病態と酷似しており、糖尿病の日本最古の記録ではないかと
いわれているそうです。

甘いものが好きな織田信長も糖尿病であった可能性が指摘されています。
当時は裕福な貴族などが罹患(りかん)する珍しい病気であったのでしょう。

今や貴族がかかる病気どころか、現代病とも言われています。

厚生労働省の「2012年国民健康・栄養調査結果」の推計によると、
糖尿病と糖尿病予備群の合計は2050万人で、
国民の5人に1人が該当するという結果でした。

糖尿病の初期は自覚症状がないか、あっても気づいていないことが多いので、
実はもっと多くの患者がいるのかもしれません。

一般的な糖尿病の初期症状は疲れやすい、
のどが渇きやすい、尿の頻度が増える、などです。

いずれも血液中の血糖値が高いことが原因で起こる症状ですので、
血糖値を測ることで診断できます。

糖尿病を放置していると、3大合併症(糖尿病性の網膜症、腎症、神経障害)
を起こしやすいことはよく知られています。

これらは目や腎臓、手足などの細い血管の
血流が悪くなることにより起こってくる合併症です。

一方、脳や心臓の太い血管も詰まりやすくなり、
脳梗塞(のうこうそく)や心筋梗塞になるリスクが高くなります。

血糖値が正常な人の脳梗塞の発症リスクを1とした場合、
糖尿病の人のリスクは男性で2・22、女性では3・63にもなります。

脳梗塞は脳の血管が詰まることにより脳の一部が壊死(えし)に陥る病気であり、
死病者数は年間7万人にのぼる怖い病気です。

最近の医療技術の進歩により、命を落とすことは少なくなってきたとはいえ、
命が助かっても重度の後遺症により不自由な生活を余儀なくされることは間違いありません。
それだけに脳梗塞は予防が大切なのです。

糖尿病あるいは予備軍と診断されたら、脳梗塞などの合併症を予防するためにも
血糖値をしっかり管理して悪化させないことが大切です。

もちろん薬の治療も必要ですが、食事療法や運動療法に十分気を配り、
それまでのライフスタイルを根本から改善するくらいの気持ちが必要でしょう。

また、健康診断などで血糖値が高めといわれた方も、
糖尿病への進行を防ぐことが脳梗塞の予防につながることを知っておきましょう。

(和歌山県立医科大学 脳神経外科准教授 小倉光博)

2016-05-19
産経新聞  2016.5.20 06:00


世界保健機関(WHO)は19日、2016年版の「世界保健統計」を発表、
15年の男女合わせた日本の平均寿命は83・7歳で、
データが得られた国の中で首位を維持した。

日本は20年以上連続で首位をキープしている。

男女合わせた世界の平均寿命は71・4歳で、
WHOによると00年から5歳延びた。
女性は73・8歳、男性は69・1歳だった。

 
男女別では、日本の女性の平均寿命が86・8歳と首位だったが、
男性は80・5歳で、首位のスイス(81・3歳)をはじめ
アイスランド(81・2歳)、オーストラリア(80・9歳)
などを下回り6位だった。

男女合わせた平均寿命が最も低かったのはシエラレオネの50・1歳。
アンゴラが52・4歳、中央アフリカが52・5歳など、
サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の低さが依然として際立っている。(共同)
2016-05-19
読売新聞  2016年5月19日

テーマ「現状と課題」 人は自分の死をコントロールできるのか


がん患者や高齢者を在宅で診る立場から 新城拓也


私は医師になり、20年になります。医師の修業に無我夢中で、
ただひたすら一人前になろうと努力した20代。
自分の専門を緩和ケアと終末期医療に定め、
がんの方々とホスピスで向き合った30代。

そして今、自分の診療所を作り、在宅医療の新しい形を模索する
40代を過ごしています。医師になってから1か月目から今までに、
2500人以上の方々の 看み 取りに関わってきました。

医師になってある程度のことができるようになってからは、
新しい治療や目覚ましい技術の進歩よりも、
亡くなりゆく人やそのご家族と深く関わることに、
自分の心が強く 惹ひ かれるようになりました。

自分の力は、緩和ケアと終末期医療の現場で一番 活い かされていると
実感しています。

多くの医師は関心を持たない分野なので携わる人も少なく、
自分なりに使命感を覚えながら活動しています。


がんの終末期、ホスピスや在宅で緩和ケアを受けながら過ごす人たち

私は、主にがんの方々の痛みを始めとするつらい症状をできる限り治めて、
生活の不自由を治療やケアと工夫で支える
「緩和ケア」を専ら実践しています。

また、通院している方だけではなく、
家から出ることができなくなった方には積極的に往診をして、
亡くなるまでの生活を支える仕事を続けています。

最近の研究では、緩和ケアを受けることで、
わずかな期間ですが長く生存できることが分かってきました
( http://jco.ascopubs.org/content/33/13/1438 )。

さらに、自宅で緩和ケアを受けながら療養した人と、
病院で療養した人とを比べても
ほとんど生存期間は変わらないことが分かりました
( http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cncr.29844/abstract?campaign=wolearlyview )。

緩和ケアを受けることで、
がんの痛みは薬で随分治められるようになりましたが、
弱り、動けなくなり、いつの日か亡くなっていくことを
薬で止めることはできません。

どんな人でもいずれの時からか、動けなくなり、
食べられなくなり、目を覚ましていられなくなります。

亡くなる前の2週間は、誰でも不自由な暮らしを強いられます。
こればかりは、将来どれだけ医療が進歩しても克服できない、
必ず通らなければならない人の道だと思います。

私が2002年から10年間働いたホスピスでの経験ですが、
緩和ケアの訓練を受けた医師や看護師が、
亡くなりゆく人たちの苦痛な症状を治め、心に寄り添い、 真摯しんし に
向き合うことで、心身が平穏になる方々が多くいらっしゃいます。

そして、実際に亡くなりゆく時間を過ごす人たちは、
死を意識しながら毎日を過ごしているわけではありません。


ホスピスは死を待つ所ではないのです。
患者さんたちは衰弱した身体で毎日どう暮らすか、
そして毎日をどう生きるか、ただひたすらに考えているように
私には感じられました。

自分が亡くなることはもちろん隠すことのできない事実で、
病気をもった自分自身が一番分かっていると思います。
それでもなお、亡くなることはまだ先のこととして、
今を生きている人たちがほとんどなのです。

実際に死に直面した人の気持ちと、元気な時に考える死のイメージ

さて、最近「エンディングノート」が本屋にも並ぶようになりました。
自分が元気なうちに、自分が病み、弱った時、
どうしたいのか書き留めるものです。

どんな治療を受けたいのか、
大事なことを判断できなくなったときは誰に委ねるのか、
自分が大切にしていることは何なのかを書くようになっています。

私はまだ、実際に診察している方から「エンディングノート」のような
亡くなるまでの対処を詳細に書かれたものを見せられたことはないのですが、
「苦しみがないようにしてほしい」「延命治療はしないでほしい」と
はっきり言われたり、書面を託されたりしたことは、幾度となくあります。


仕事で責任ある立場の人、家族のこれからについて道を示すべき人、
愛する人を残して先立つ人。

残される人たちにとってみれば、
亡くなった後のことをもっと話してほしいと思っていることでしょう。

しかし、重い病気をするとどこか 呑気のんき になるのか、
周りの人たちがこれからどうなるのかとハラハラしているのに、
本人は昼寝をしながら、いつもと同じように
日常的な会話をすることがほとんどです。

私が、「何か家族や他の人たちに残したい言葉はありますか? 
伝えたいことはありますか?」と聞いても、
「そうだなあ、特にないかなあ。まあ言いたいことは、
また自分で話しておくから」と言葉が返ってくることが多いのです。

私は内心、この先、残された時間は本当に短く、
もう話せなくなるかも知れないのにと思いつつも、
それ以上、言葉を続けることはしません。

「死を意識せず過ごしたい」というのもまた、
亡くなりゆく人たちの本心だと気が付いているからです。

亡くなる前に、改まった様子で家族それぞれに
言葉を残す人も確かにいらっしゃいます。

「今までありがとう」
「あなたと一緒に暮らしてきて本当に幸せだった」
と話す方もいらっしゃいます。

このように、別れの言葉を交わし合う方々は年に1人か2人で、
とても 稀まれ なことです。

「あの自転車は孫の●●にやる!」と急に話し出した高齢の男性がいました。
とっても大切にしている自転車なのかと思い、家族に聞いてみると、
もう壊れてさび付いた古いいわゆるママチャリとのことでした。

「あんなものあげて、どうするんだろうねえ」
と家族も不思議そうにしていました。

もうろうとする意識の中で、
何気なく浮かんだことを話していたのでしょう。

人が死に向かう時というのは、
こういうぼんやりとした意識の中を進みながら、
人生の夕暮れを過ごすようです。


人は自分の死をコントロールできるのか

多くの人たちはもしかしたら、
「自分の死をコントロールできる、覚悟できる」
と思っているのかもしれません。

しかし、私が出会ってきた亡くなりゆく人たちは、最期までどこか呑気に、
そして今まで通りの日常の連続を生きているように思えました。

自らの身体の衰えを通じて、
「死」の訪れを感じることはできるかもしれません。
それでも、ホスピスでも自分の家でも、過ごす場所にかかわらず、
最期の瞬間まで、今日を、明日を生きることを考え続け、

そして「もしかしたら、そういうこともある」という
心の中だけの架空の話として、「死」があるのではと感じます。

また、実際に死の床にある人たちは、身体の苦痛がなければ、
既にぼんやりとした意識の中で呑気に過ごしています。

そのような現実の時間に、以前はっきりした意識だったときに考えた
「エンディングノート」の内容をそのまま実践して良いのだろうかと、
私は疑問を感じます。

やはり、自分の想像できない自分の死への道程を「コントロール」し、
「デザインする」ことは、現実的ではないと私は実感しています。

皆さんは、誰でもいずれ体験する、自分が亡くなりゆく事について、
どのようにイメージしていますか?

【略歴】


 新城拓也(しんじょう・たくや) しんじょう医院院長

1971年、広島市生まれ。名古屋市育ち。1996年、名古屋市大医学部卒。
社会保険神戸中央病院(現・JCHO神戸中央病院)緩和ケア病棟(ホスピス)で10年間勤務した後、
2012年8月、緩和ケア専門の在宅診療クリニック「しんじょう医院」を開業。
日本緩和医療学会理事、同学会誌編集長。

共編著に『エビデンスで解決!緩和医療ケースファイル』
『続・エビデンスで解決!緩和医療ケースファイル』(ともに南江堂)、
『3ステップ実践緩和ケア』(青海社)、
単著に『患者から「早く死なせてほしい」と言われたらどうしますか?―本当に聞きたかった緩和ケアの講義』(金原出版)など著書多数。


さよならを言う前に~終末期の医療とケアを語りあう~

終末期医療やケアに日々、関わっている当事者や専門家の方々に、
現場から見える課題を問いかけて頂き、
読者が自由に意見を投稿できるコーナーです。

10人近い執筆者は、患者、家族、医師、看護師、
ケアの担い手ら立場も様々。

その対象も、高齢者、がん患者、難病患者、
小児がん患者、救急搬送された患者と様々です。

コーディネーターを務めるヨミドクター編集長の岩永直子が、
毎回、執筆者に共通の執筆テーマを提示します。
ぜひ、周囲の大事な人たちと、終末期をどう過ごしたいか
語り合うきっかけにしてください。
2016-05-19
産経新聞  2016.1.20 02:09


国立がん研究センター(東京都中央区)は19日、平成11~14年に
全国16施設で胃、大腸、肺など28部位のがんと診断された
患者約3万5千人の10年後の生存率が58・2%だったと明らかにした。

これほど大規模なデータから10年生存率が算出されるのは初めて。
同じ患者の5年後時点での生存率は63・1%で、約5ポイント下がった。

がんセンターの堀田知光理事長は「治療法は進歩しており、
今がんと診断された人の10年後の数値はもっと良くなるだろう」としている。

部位別でみると、10年生存率が高かったのは
甲状腺がん、前立腺がん、子宮体がん、乳がんなど。

一方、膵臓(すいぞう)がん、肝臓がん、食道がん、肺がんは低かった。
5年生存率と比べると、乳がんや肝臓がんで生存率が下がる傾向にあった。

がんセンターは、全国32カ所のがん専門診療施設が加盟する
「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協)の協力を得て、
加盟施設でがんの診断、治療を受けた患者約40万人のデータを集積した。

結果は、全がん協のホームページ

(http://www.zengankyo.ncc.go.jp/)

から閲覧できる。
2016-05-18
読売新聞 2016年5月18日

減塩アワード決定…塩控えめ食品に7社11製品


高血圧の患者や減塩に取り組む消費者の参考になる市販食品を表彰する、
日本高血圧学会減塩委員会の「第2回JSH減塩食品アワード」の受賞製品が決まった。


同委員会は2013年から、食塩含有量の少ない加工食品を
リスト化し、 ホームページ で紹介している。

こうした減塩食品の普及を目指すため、
15年からは減塩に成果を上げた製品を評価し、賞の授与を始めた。

          ◇

 今年は以下の7社、11製品が受賞した。

▽味の素「お塩控えめの・ほんだし」

▽ヤマモリ「地鶏 釜めしの 素もと 」「山菜五目 釜めしの素」

▽マルタイ「屋台とんこつ味 棒ラーメン」

▽一正 蒲鉾かまぼこ 「SHさつま 揚あげ 」

▽中田食品(梅干し)「おいしく減塩 うす塩味 塩分3%」
「おいしく減塩 しそ風味 塩分3%」
「おいしく減塩 はちみつ 塩分3%」

▽新進「国産野菜 カレー福神漬 減塩」

▽ユニー「スタイルワン だしのうまみ引き立つ しょうゆラーメン」
「スタイルワン だしのうまみ引き立つ シーフードラーメン」
2016-05-16
読売新聞 2016年5月16日
神経保護物質を治験、ALS患者に投与へ…東北大など


東北大学と大阪大学は13日、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬として
期待される物質「HGF」の有効性を確認する臨床試験(治験)を始めると発表した。


ALSは脳や脊髄の運動神経が障害を受け、全身の筋力低下などを引き起こす難病。

治験では、神経細胞を保護する働きがあるたんぱく質のHGFを、
脊髄に直接投与して病気の進行を遅らせることを狙う。
すでに2011~14年に計15人の患者に少量ずつ投与し、安全性を確認している。

今回の対象は、自立して日常生活を送れるなど症状が比較的軽いALSの患者48人。
東北大病院と阪大病院で半年間、HGFを2週間に1回投与して経過を見る。

参加の問い合わせは、主治医からのみ受け付ける。
2016-05-16
重症下肢虚血で治験へ、細胞移植し脚の切断防ぐ
読売新聞 2016年05月16日


動脈硬化などで血液が十分に流れなくなり、
脚の切断にもつながる病気「重症下肢虚血」に対し、
先端医療センター病院(神戸市)は、
新たな血管を作る細胞を移植して
血流を回復させる再生医療の臨床試験(治験)を年内に始める。


治験は再生医療製品の早期承認制度に基づいて進め、
2020年の承認を目指す。

この病気は、薬や器具を使って血管を広げる治療法はあるが、
脚の壊死えしが出た段階で治すのは難しい。
国内の患者数は約18万人と推計される。

同病院の川本篤彦・再生治療ユニット長らは、血管のもとになる細胞に変化したり、
血管を再生する効果のあるたんぱく質を分泌したりする細胞に着目し、研究を進めてきた。

この細胞は骨髄内にあり、「CD34陽性細胞」と呼ばれる。
治験では、患者からこの細胞を取り出し、患部周辺に約20か所注射する。

2016年05月16日 19時44分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
2016-05-16
がん診療の誤解を解く 腫瘍内科医Dr.勝俣の視点
読売新聞  2016年5月16日

がんに効く?食事療法の嘘 


先日、ある患者さんとお話ししていて、抗がん剤の治療がうまくいって、
がんをうまく抑え込むことができたので、
「しばらく抗がん剤をお休みしましょう」、と提案しました。


 すると、
「何かできることはないでしょうか? 何かしていないと不安なんです。
実は、私は、がんが再発してから、玄米、菜食にしていて、
牛肉も一切食べていないのです」
 と言われるので、

「大切なことは、○○さんの生活の質を大切にすることだと思います。
玄米、菜食が楽しくできるのなら、かまいませんが、
つらいものを無理にやる必要はありませんよ」
 とお話ししますと、

「そうなんですね。私は牛肉が大好きだったのですが、
がんが再発したので、何とかしようと思い、ずっと牛肉を食べずにいました」と、
涙を流してお話しされました。

上記のようなことは、多くの患者さんにも当てはまるのではないでしょうか。


「食事でがんを治す」がおおはやり

 「食事でがんが治る」
 「がんが消えていく食事療法」
 「食べ物で余命数か月のがんが消えた」

などの食事でがんを治すとうたった本は、
たちまちベストセラーになるそうです。

がんという病気になりますと、大抵の方はこれまでの生き方、
生活習慣を反省することが多いのではないかと思います。

完璧な生活習慣を送っていた、などという人は
ほとんど存在しないのではないでしょうか。

多くの方は、これまでの自分の生活習慣を反省し、野菜中心にしたり、
玄米食にしたり、ストレスがかからないように注意したりと、
色々なことをしたりするかもしれません。

では、医学的に食事ががんに与える効果は実際どうなのでしょうか?

がんと食事の関係を考える場合には、
予防的効果と治療的効果に分けて考える必要があります。


がん予防と食事

予防的効果というのは、がんになっていない一般の人が、
がんになることを予防するといった効果です。

予防に関しては、多くの研究がありますが、ハーバード大学の疫学研究で、
がん死亡に食生活が約30%影響しているという報告があります(注1)。

このことは、がんの治療効果を言っているのではなく、
食生活を改善することにより、がんの発生をある程度は
予防できるのではないかと言っているものです。

個別のがんの研究でも、野菜の摂取や、塩分を控えることで
がんの発生を予防できる可能性が示唆されています。

例えば、野菜不足や肥満が、食道がんや、大腸がん、
乳がんの発生原因になることがわかっています。

ただ、特定の食事やサプリメントを
推奨しているものではないことに注意してください。


ベータカロチン摂取はがんを増加させる!

ビタミンやサプリメントでがんを予防できるのか?
ということに、世界の研究者は古くから関心を抱いてきました。

実際に、ビタミンやサプリメントのがん予防効果を検証するために、
世界では多くの研究がなされました。

ある治療法が本当に効果があるのかを検証するのには、
治療群と治療をしないコントロール群とを無作為(ランダム)に振り分けて、
その長期的効果を検証する「ランダム化比較試験」が必要です。

このランダム化比較試験が治療介入を伴う研究法では、
最も信頼性が高い研究となります。

がん予防の研究でも、特定のビタミンを飲んでもらう群と、
飲まないコントロール群(プラセボ群)とにランダムに振り分けて、
がんの発生率を長期的に検証した研究が多く行われました。

その研究結果をまとめたもの(システマティックレビューと言います)を、
米国の政府機関の米国予防医学専門委員会(USPSTF)が
2013年に報告しています(注2)。

その結果は、2万7,658人を対象とした2つの研究では、
マルチビタミン摂取により、がんの発生をわずかに予防できたというものでしたが、

32万4,653人を対象とした24の研究結果は、
どのビタミン、サプリメント摂取(ビタミンA、C、D、葉酸、セレン、カルシウム)をしても、
がんの発生は予防できなかったという結果でした。

このうち、ベータカロチンと、ビタミンEを使った
予防研究は研究結果が一定して否定的でした。

そして、ベータカロチンを使った11万2,820人を対象とした
6つのランダム化比較研究をまとめた結果では、
何と、ベータカロチンを予防的に飲んでもらった群では、
がんを予防するどころか、喫煙者に対して、肺がんの発生が増えてしまいました。

これらの研究で使われたベータカロチンの投与量は、
1日30mgと大量のベータカロチンが使われました。

ベータカロチン30mgというと、
トマト1個にベータカロチンが0.8mg含まれると言われていますので、
トマト37個分に相当します。

 
ベータカロチンは、緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA前駆体です。
日本でも健康食品として一時期はやりました。

 
ベータカロチンを過剰摂取すると、なぜ、がんが増えてしまったのかは、
明らかではありませんが、偏ったものを過剰摂取することは、
正常細胞を痛めつけることにもなります。

細胞のがん化の機序はまず、正常細胞に傷がつくこと、
すなわち、遺伝子に異常が起こることから始まりますので、
ベータカロチンの過剰摂取が何らかの仕組みで遺伝子異常を引き起こしたのかもしれません。


がん予防は食事をバランスよくとること

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた
「日本人のためのがん予防法」には、がんに対する食事に関しては、

 偏らずバランスよくとる。
 * 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
 * 野菜や果物不足にならない。
 * 飲食物を熱い状態でとらない。
 と書かれています(注3)。

 ここでも、特定の食事やサプリメントは決して推奨していません。

偏った食事療法、サプリメント摂取などは、がん予防どころか、
がんを増加させることにもなりますので、注意が必要と思います。


がん体験者の食事について

がん体験者、がんサバイバーの方が、どのような食事を取ればよいのか?
ということに関しては、国立がん研究センターがん情報サービスで、
米国対がん協会(American Cancer Society)が
2012年に公表した、「がんサバイバーのための栄養と運動のガイドライン」
第4版を引用して解説しています。

こちらでも、特定の食事療法やサプリメントを推奨しているわけではなく、
「野菜、果物、全粒穀物を多く含む食事パターンにしましょう」と書いてあるのみです。

医学的な研究としては、早期乳がん患者を対象として、
低脂肪食を摂る食事療法群と、一般的な食事を取る群との
大規模なランダム化比較試験が行われました。

一つの研究(2437人を対象)では、低脂肪食群が、
乳がんの再発を24%低下させるという結果になりました(注4)が、

もう一つの研究(3088人を対象)では、低脂肪食群と、
一般食群とで再発率には差がありませんでした(注5)。

このように、医学的研究でも、特定の食事療法が、
がん体験者のその後の経過を改善するという確固たる
エビデンス(科学的根拠)が示されていません。

がんを予防するために、一般の方、また、がん体験者であったとしても、
特定の食事療法やサプリメントががん予防につながるという医学的根拠はありません。

がんを過度に恐れるあまり、自分で何とかしようと、
偏った食事療法やサプリメントに頼ろうとする人は後を絶ちません。

そのような食事療法は、決して楽なものでなく、
生活の質まで落としてしまうものです。

間違った情報に左右されないで、正しい情報を知って、
楽しい食生活を送ってほしいと思います。

 
次回は、食事療法の治療的効果についてお話しします。



参考

1. Harvard Report on Cancer Prevention. Volume 1: Causes of human cancer. Cancer Causes Control. 1996;7 Suppl 1:S3-59.

2. Fortmann SP, Burda BU, Senger CA, Lin JS, Whitlock EP. Vitamin and mineral supplements in the primary prevention of cardiovascular disease and cancer: An updated systematic evidence review for the U.S. Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2013;159(12):824-34.

3. 国立がん研究センターがん情報サービス. 日本人のためのがん予防法. http://ganjoho.jp/public/index.html.

4. Chlebowski RT, Blackburn GL, Thomson CA, Nixon DW, Shapiro A, Hoy MK, et al. Dietary fat reduction and breast cancer outcome: interim efficacy results from the Women’s Intervention Nutrition Study. J Natl Cancer Inst. 2006;98(24):1767-76.

5. Pierce JP, Natarajan L, Caan BJ, Parker BA, Greenberg ER, Flatt SW, et al. Influence of a diet very high in vegetables, fruit, and fiber and low in fat on prognosis following treatment for breast cancer: the Women’s Healthy Eating and Living (WHEL) randomized trial. JAMA. 2007;298(3):289-98.


勝俣範之(かつまた・のりゆき)
 日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授

1963年、山梨県生まれ。88年、富山医科薬科大卒。92年国立がんセンター中央病院内科レジデント。
その後、同センター専門修練医、第一領域外来部乳腺科医員を経て、2003年同薬物療法部薬物療法室医長。

04年ハーバード大学公衆衛生院留学。10年、独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺科・腫瘍内科外来医長。2011年より現職。

近著に『医療否定本の?』(扶桑社)がある。専門は腫瘍内科学、婦人科がん化学療法、がん支持療法、がんサバイバーケア。がん薬物療法専門医。
2016-05-15
産経新聞  2016.5.14 15:00
【健康神話を検証する】
美容、ダイエットと何かと話題の「水素水」 
実はかつてブームを巻き起こした「あの水」と同じだった…


ここ数年、スーパーなどでも見かけることが増えた「水素水」。
中には普通のミネラルウオーターの3倍以上の値段で売られているものもある。

医薬品ではないので効果・効能の表示はできないが、
何らかの健康効果を期待して購入する人が多いようだ。

実は「水素水」は、かつて別の名前で売られていた。
なぜ今、水素が注目されているのだろうか。(平沢裕子)

現在の水素ブームは、平成19年に日本医科大の太田成男教授(細胞生物学)の研究チームが
「水素ガスが有害な活性酸素を効率よく除去する」とする論文を
「ネイチャー・メディシン」(電子版)に発表したことがきっかけとされる。

活性酸素は、細胞や遺伝子を傷付け、がんや多くの生活習慣病を引き起こす
元凶とされるだけに、ラットでの研究とはいえ、水素ガスの効能に注目が集まった。

この論文の発表が報じられて以降、水素ガスを発生させて
水素水を作る機器や水素を含むサプリメント、
化粧品など水素をうたった商品が次々と登場した。

このうち、最もよく見かける水素水は、水素ガスが溶け込んだ水のこと。

ネット通販やコンビニなどで水素水を販売する飲料メーカーは「水素は健康で話題の素材。

今のところ効果は分からないが、人への研究がいろいろ進んでおり、
素材としての価値が高い」と説明、売り上げも好調という。

水素水は医薬品ではないので、
商品の宣伝として健康や美容への効果をうたうことはできない。

だが、ネット上には「がんが好転した」「ダイエットにいい」
「うがいをすると口臭予防になる」など、
一般論として水素水にさまざまな美容・健康効果があることを
うたったサイトが多数存在する。

こうした中、明治大情報コミュニケーション学部の石川幹人教授は、
水素水(活性水素水、電解還元水)に
一般に言われるような美容や健康への効果があるかを評定。

「疑似科学である」と結論付け、運営するサイト
「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」に1月、公表した。

疑似科学は「ニセ科学」とも呼ばれ、
科学的表現で科学を装っているが、とても科学とは呼べないものを指す。

『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)の著書もある石川教授は、
「今話題の水素水の多くは、電解還元水のことで、
かつてアルカリイオン水と呼ばれたもの」と指摘。

水素水の評定をしたことについて、「キャッチーな『水素』という言葉をつけることで、
売り上げを回復しようという意図が見えたから」と説明する。

アルカリイオン水は、アルカリ性の電解水のこと。

一般的な水は、水素と酸素からできており、それを電気分解すると、
酸素を多く含んだ水「電解酸性水」は陽極側に、
水素を多く含んだ水「電解水素水」は陰極側に生成される。

この陰極側に生成された電解水素水は、
以前は「アルカリイオン水」と呼ばれることが多かったが、
今は「水素水」といわれているわけだ。

つまり、中身は変わらないのに、一時期を経て、
同じ「水」が名前を変えて売られ、
あたかも新しい「水」として注目されているのが実情だ。

アルカリイオン水は、「体内を弱アルカリ性に変え、消化不良や慢性下痢、
アトピー性皮膚炎に効果がある」などとされ、健康ブームに乗って、
平成4年ごろから生成器が、15年ごろからボトル詰めの水が、
それぞれ急激に売り上げを伸ばし、一時は数百億円の市場規模となった。

今でもアルカリイオン水の生成器は市販されているが、
水素水の勢いに押され気味だ。


「飲んだ水素は胃の中で消えてしまうだろう」

また、水素水の中には、水を電気分解するのでなく、
濃度の高い水素水を水に溶け込ませるタイプもある。
こちらの場合は、アルカリイオン水とは区別される。

市販の水素水について、日本学術会議の副会長時代にホメオパシーなどの
疑似科学問題を扱ったことがある東京大の唐木英明名誉教授(薬学、獣医学)は
「高濃度の水素といっているが、それでも水素濃度が低過ぎる。

飲んだ水素は胃の中で消えてしまうだろう。

仮に、水素が血流に乗って体の組織に到達したとして、
それがどのような作用を発揮して疾病治療につながるかの説明がない」とし、
「水素には何かの効果があるかもしれない。

しかし、市販の水素水に効果があるかと言われれば、ゼロだろう」と手厳しい。

「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」の評定も、
「ヒトへの健康効果についての具体的な研究成果と呼べるものはないといってよい」

「仮にヒトに対しての抗酸化作用があったとしても、
そこから健康効果に結びつけるためにはまだいくつもの段階を経る必要があり、
仮説検証を繰り返し行わなければならない。

具体的な疾患への効果などは
『まだよく分からない』とするのが妥当」としている。

石川教授は「水素の健康効果はいろいろな研究が行われているというが、
結果はまだ出ていない。

研究途上のものは、場合によっては効果がないだけでなく、
有害という結果が出る恐れもある。

一般市民に向けて利用を促してはいけないと
科学的に判断すべきだ」と話している。

国民生活センターは今年3月、水素水生成器による活性酸素の抑制機能は、
必ずしも体内の活性酸素の量を減らすといった健康面への効果を示すものではないとして、
消費者に対し「買う際は慎重に判断して」と注意を促した。

同時に、「水道水に含まれる活性酸素の量を抑制する」とうたって
水素水生成器を販売する2事業者に対して、
水の活性酸素の量を抑制するとどんな効果があるのかを明確に記載するよう要望した。

2事業者は同センターに対し、効果については明らかにせず、
「法律遵守を徹底していきたい」と回答した。

また消費者庁は同月、「がんに効く」などとうたって水素水を販売した事業者に対して、
商品の効能に関する不実告知(実際は認められていないのに告知すること)
などを理由に一部業務停止命令を出した。
2016-05-12
イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常
読売新聞 2016年5月13日

漢方薬の選び方…煎じ薬とエキス剤、保険適用か自費診療か?


今日は、漢方薬の煎じ薬も実は保険適用であるというお話です。
本邦で保険適用となっている漢方エキス剤は約150種類あります。

エキス剤とは、インスタントコーヒーのようなイメージです。
インスタントコーヒーはお湯に溶かすと本当のコーヒーに非常に近くなります。
同じように漢方のエキス剤もお湯に溶かすと昔ながらの煎じた漢方薬に近くなるのです。

そもそも漢方薬の歴史は非常に古いのです。
日本漢方のバイブルとも言われる傷寒論という「書物?」は
約1800年前には出来上がっていたと言われています。
日本では卑弥呼が登場する頃です。

その傷寒論の中に現在の保険適用漢方薬の約半数が含まれています。
敢あ えて「書物?」と記載したのは、1800年前には紙や印刷技術が普及していません。
ですから当時は竹や木を糸で板状につなぎ合わせて、
そこに墨や漆で字を記載したそうです。竹簡とか木簡と言います。

そして保管するときはくるくると丸めて保管したのです。
ですから今でも百科事典などは「○○巻」とナンバリングすることがありますね。
そして一番重要な、そして力強いものは、
一番上に置いたので「圧巻」という言葉が生まれたそうです。

「圧巻」のくだりはテレビでご一緒した林修先生に教えてもらいました。
さて、問題はその傷寒論の原本が 何処どこ にもないことです。

現在ネットなどで「傷寒論」と検索して得られる画像の多くは、
紙と出版技術が進歩した宋時代の写本です。
1800年前に本当にあったかは実は疑問としても、宋の時代、
約1000年前には漢方の知恵は確実に存在していました。

漢方は足し算、西洋薬学は引き算で…

漢方は生薬の足し算の 叡智えいち です。
現代西洋薬学は引き算の知恵です。

何か薬効がある成分を含む生薬から精製分離という
化学的知恵が生まれたのは約200年前です。

僕は、「1804年に阿片からその主成分である物質が精製分離でき、
それをモルヒネと名付けたので、そこから現代西洋薬学が産声を上げた」
と講演会では説明しています。

そんな引き算の知恵ができるようになる前は、足し算を致し方なく行ったのです。
薬効がある生薬を足し合わせて、効果を増強し、副作用を減らし、
そして新しい作用を生む組み合わせを創り上げました。そんな知恵が漢方です。

生薬の多くは植物です。 希まれ に動物、鉱物なども使われます。
それらを通常は煎じたのです。お湯で煮詰めたのです。

ですから漢方薬の多くは名前の最後に「湯」が付きます。
一番有名であろう葛根湯もそうですね。
この葛根湯も実は傷寒論に登場します。


漢方の煎じ薬が自費診療となる場合

煎じ薬の利点は、生薬をいろいろと加減できることです。
構成生薬の分量の加減もできますし、また新しい生薬を加えたり、
特定の生薬を抜いたりもできます。
オーダーメイドの漢方薬が作れると言うことですね。

ブレンドコーヒーをマメの種類や量をいろいろ工夫して
より 美味おい しくするのと非常に似ています。
欠点は毎日煎じることはちょっと無理なことです。

煎じるには30分は必要ですから。また、携行には向きません。
つまり現代人がポケットにいれて持ち歩くという西洋薬のイメージからはまったく別物になります。

そこで、エキス剤が登場しました。煎じ薬を煮詰めて、
その成分を乳糖などに吹き付けて、そして 顆粒かりゅう にしています。
通常は5年間の有効期限があります。便利ですね。

さて、本邦では約150種類のエキス剤が保険適用されています。

医者に行って、そして処方箋をもらうと本当に安価に購入できます。
3割負担で1か月処方してもらって、
皆さんが薬代として支払うお金は平均1000円です。

1か月分でたった1000円なのです。素晴らしい我が国の保険制度ですね。
そして実は煎じ薬にも保険が適用されています。

ただ、その処方箋を扱える薬局が少ないのです。
院内薬局でも院外薬局でもいいのですが、たくさんの生薬を常備している必要があります。

生薬の値段が高騰している昨今、たいした利益にならない
保険適用漢方煎じ薬を扱うことができる施設は限られています。

生薬には品質があります。
素晴らしい生薬を 揃そろ えると保険適用のお金では赤字になります。
そこで致し方なく自費診療を行っている漢方医も少なくありません。

漢方と西洋医学なら…どちらを優先すべき?

でも折角、漢方のエキス剤も煎じ薬も保険適用なのですから、
まずどの医療機関でも扱える保険適用漢方エキス剤を試してみる。
そして治らない時は、保険適用の煎じ薬を試してみる。

それでも治らない時は自費の漢方薬を試してみるという順番が正しように思えます。

そして漢方が使える西洋医を自負している僕としては、
漢方薬は西洋医学の補完的薬剤と思っていますので、
西洋医学で治せる疾患は西洋医学が優先されるべきと思っています。

もしも保険適用の漢方煎じ薬を試したくても、近所にそんな施設がないときは、
僕が顧問をしている公益財団法人愛誠病院の上野クリニックにお越し下さい。
上野駅前です。板橋の愛誠病院の本院では煎じ薬は扱えません。
上野クリニックでは保険適用で漢方煎じ薬が処方出来ます。

人それぞれが、少しでも幸せになれますように。


新見正則(にいみ まさのり)
 帝京大医学部准教授

1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。
93年から英国オックスフォード大に留学し、98年から帝京大医学部外科。
専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。

2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると
移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。

主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、
「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、
「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、
「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。
トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。
2016-05-11
読売新聞 2016年5月11日


県立広島大(本部・広島市)などの研究グループは、
レモンを食べると体内でカルシウムの吸収率が上がり、
血圧を下げる効果があるとする研究結果を発表した。

研究成果は、足腰の衰えで歩行などが困難になる
「ロコモティブシンドローム」の原因となる
骨粗しょう症などの予防に役立てていくという。

13~15日に兵庫県で開かれる日本栄養・食糧学会で発表する。


同大学と県立安芸津病院(広島県東広島市)、
ポッカサッポロフード&ビバレッジ(本社・名古屋市)が共同研究を行った。

レモンの酸味の主成分・クエン酸に、
カルシウムの吸収を促進する作用があることに着目。

中高年の女性44人に、カルシウムを配合した
レモン果汁飲料200ミリ・リットルを半年間、
毎日飲み続けてもらった。

その結果、骨から血液中に溶け出るカルシウムの量が
平均で約14%抑えられ、骨密度は3か月で平均1.32%上がり、
半年後もほぼそのまま保たれた。

平均134.6だった最高血圧も、1か月で125.6まで下がり、
半年後まで効果は継続したという。

研究にあたった同大学の飯田忠行准教授は「カルシウムの吸収を促進し、
血圧を下げるメカニズムをさらに検証していきたい」と話していた。

研究は、レモンの需要拡大を目指し、生産量日本一の広島県と、
レモン製品を販売するポッカサッポロが2013年2月に締結した
連携協定に基づき、14年11月から行われた。
2016-05-05
AFP=時事 5月2日(月)10時58分配信

【AFP=時事】55歳以上で進行性のうつ病を患っているケースでは、
将来の認知症リスクが高まる恐れがあるとの研究論文が4月30日、発表された。
論文は、特定のうつ病について、認知症の初期症状である可能性があるとしている。

うつ病と認知症が強い相関関係にあることは、これまでの研究で知られていたが、
その詳細については分かっていなかった。今回の研究論文では、
初めてうつ病のタイプによって、その関係性に違いがあることが示されている。

うつ病には、一度のみ発症するものや何度も再発するものの他にも、
時間の経過とともに症状が軽減するケースや逆に悪化するケース、
さらには慢性的なケースもある。

また、その原因をめぐっては、日常生活での有害事象に対する反応であったり、
脳内化学物質や情報伝達機能の異常であったりとさまざまだ。

英精神医学専門誌ランセット・サイキアトリー(Lancet Psychiatry)に掲載された
研究論文では、オランダの研究チームが1993~2004年に、55歳以上を対象に
収集した3325人分のデータを分析。その後10年間にわたる追跡調査を行った。

研究開始当初、対象者全員にうつの症状がみられたが、認知症患者は一人もいなかった。
最終的には434人が認知症を発症し、このうちの348人がアルツハイマー病と診断された。

研究チームは、患者のデータをうつ病の種類に応じて5グループに分類した。

進行性のうつ病がみられたグループでは、
255人のうち55人が認知症を発症していた。
他のグループの発症率は約10%であったのに対し、
このグループでは約22%と約1.5倍高かった。

論文の執筆者らは声明を発表し、一定の年齢以上における進行性のうつ病が
認知症の初期症状である恐れがあるとしながら、

また、認知症と一部のうつ病では、
その原因が同じである可能性を研究は示唆していると述べた。
2016-05-04
産経新聞  2016.5.4 17:00
【食の安全考】
「減塩で健康」は本当なのか? 制限し過ぎで「不健康」にも…


世界的な減塩運動が進む中、海外で
「過度な減塩はかえって健康に悪い」とする論文も出てきた。

確かにWHO(世界保健機関)基準の食塩1日5グラム未満だと
ラーメンやすき焼きも1食分でさえ食べられず、
大方の日本人としては精神的な健康によろしくない。

ただし、日本人の塩分摂取量は世界的にも高水準で、
高血圧の専門家は「さらなる減塩が必要」。

では、ちょうどいい「塩梅」とは-。(平沢裕子)

そもそも減塩が勧められるのは、食塩摂取量が高血圧と関連し、
減塩し血圧を下げることで脳卒中など心血管疾患が減るという
研究成果が報告されているためだ。

主に欧米での研究結果から、WHOは1日5グラム未満を勧めており、
これを基に米国は1日5・8グラム未満を推奨している。

これに対して、米国医学研究所(IOM)が、2013年の報告書
「集団におけるナトリウム摂取-証拠の評価」で、「基準未満にすることが、
心血管疾患や全死亡(病気による死亡)を減少させる
あるいは増加させる証拠はない」と反論。

塩分量を制限し過ぎることで
逆に健康に悪影響を与える可能性を示唆した。

これまで塩分は減らせば減らすほど良いといわれていただけに、
この報告書は海外で大きな波紋を呼んだ。

しかし、食品安全委員会の佐藤洋委員長(医師)は
「弊害が起きるといわれる食塩摂取量は、1日2~3グラムとかなり少ない量。

これはほとんど塩味のない食事で、日本人でそこまで減塩している人はいない。
減塩し過ぎを心配する必要はないだろう」と指摘する。

日本高血圧学会・減塩委員会委員長で、製鉄記念八幡病院の土橋卓也院長も
「通常は、体から失われる食塩量は1日1・5グラム程度で、
1日2グラム摂取していれば塩分不足にならないといえる。

私たちが食べている食材には1日2グラム程度の食塩が含まれており、
エネルギーや各栄養成分を確保したうえで、
2グラム未満に減塩するのはきわめて難しい」。

もちろん、今後さらに研究が進めば、
WHOの1日5グラム未満の基準が見直される可能性もある。
その場合、世界一長寿国の日本の基準にならうということもあるのではないか。

「日本では平均寿命と健康寿命との間に、男性9年、女性12年の差がある。
つまり寿命の最後の約10年は要介護状態で生きているのです」と土橋院長。

ほぼ寝たきりの要介護5の原因の約3分の1は脳卒中、約5分の1は認知症で、
いずれも高血圧が関与しており、減塩が達成できれば健康寿命の延伸が期待できるという。

日本人の1日の食塩摂取量の目標値(厚生労働省)は、
男性が8グラム未満、女性が7グラム未満。

ただ、平成26年の国民健康・栄養調査では、実際の摂取量は
男性10・9グラム、女性9・2グラムと、どちらも2グラム以上多い。
やはり、さらなる減塩は不可欠なようだ。

ちなみに、土橋院長自身の1日の食塩摂取量は8・1グラムで、
ほぼ目標を達成しているといえる。

これは、自宅でしょうゆ差しを使わない
▽めん類の汁は残す
▽減塩食品を利用
-など、無理のない範囲で減塩に取り組んだ成果という。

土橋院長は「ラーメンも減塩でおいしいものが次々と発売されている。
『減塩=薄い、まずい』ではなく、調理の工夫や減塩食品の利用で、
減塩なのにおいしいと思うやり方が長続きのコツ。

男性で8グラム未満の目標は少し意識するだけで
比較的容易にできるので、試してみてほしい」と話している。
2016-05-03
成田崇信 | 管理栄養士、健康科学修士
2015年11月9日 16時20分配信


■雑誌の記事やドラッグストアでも目にする酵素
このところ健康関連の情報に「酵素」という文字をよく見かけます。

先日、ドラッグストアに入ったところ、酵素が摂れることをうたった
サプリメントを紹介するコーナーが作られていて、
現代人では不足しがちな栄養素である酵素という
大きなPOP付きの宣伝がされておりました。

また、雑誌などをめくると「朝の生ジュースでたっぷり酵素をとりましょう」、
「加工食品の摂り過ぎで酵素不足になる」というような
酵素を特集した記事も目にすることが増えているように思います。

これだけ酵素が推されていると、いままで酵素のことを気にしたことがなかった人でも、
もしかすると私も酵素不足かも?と心配になってしまうかも知れません。

今回は、酵素は食べないと不足するのか、そもそも酵素って何なの?
という基本的な疑問について簡単に説明してみようと思います。

■酵素は栄養素?
酵素というものはありとあらゆる生き物が
あらゆる生命活動を行うためには不可欠なものです。

呼吸をしてエネルギーをつくることや、食べた物を消化吸収し、
それを元に筋肉や血液をつくるのも酵素がなければ成り立ちません。

そんな大事なものが不足してしまうとすればそれは大変なことでしょう。

不足してしまう酵素なら食べものから補う必要があると
考えたのがアメリカの医師エドワード・ハウエルです。

最近みかける酵素の話の多くは彼の提唱した「酵素栄養学」が
元になっていると考えられますが、日本で酵素を食べるという話が
広まってきたのは新谷弘実医師のベストセラー内で
酵素を食べて補う必要があると書いたことが影響していると考えられます。

酵素栄養学の主張を簡単にまとめてみると次のようになります。

・身体には全ての酵素の元となる潜在酵素というものがあり、
あらかじめ決められた量をもって生まれてくる。

・酵素はたんなる触媒(化学反応を進めやすくする働きを持つ物質)ではなく
生命元素というエネルギーを充電したタンパク質である。

・潜在酵素がなくなれば生命活動を行うために必要な酵素もつくられなくなるので
消化酵素を節約することで寿命が伸び、病気を防ぐ事が出来る。

・酵素を節約するために酵素が含まれている生の食べもので補充するとよい。
加熱した食べものには酵素はないので消化酵素を余計に消費してしまう。


なるほど、はじめから決められた量しかないので節約しないと長生きできない、
なので生の食べものから酵素をとりましょう、という理屈のようです。

一見もっともらしく感じてしまいますが、
この中にはおかしな部分がいくつもありますので
一つずつ説明しましょう。

まず、潜在酵素という言葉ですが
栄養学や生化学の教科書には出てこない
酵素栄養学独自のものです。

生まれながらに決まった量があるとのことですが、
潜在酵素というものが身体のどこにどれだけあるのか
誰も確認したことはありません。

さらに、生命元素というエネルギーの正体も不明ですし、
それが存在する根拠として酵素栄養学の本に示されている
データもミジンコの成育温度と寿命の関係という
別分野の実験結果が示されているだけだったりします。


そもそも酵素はタンパク質で、食べものや身体に蓄えられた
アミノ酸から必要な時に必要な分がつくられるもので
不足する事は通常考えられないものですから、
食べもので補う必要はないのです。


■では酵素をたべても意味はないの?
潜在酵素はなくて不足も心配しなくてよいこともわかりました。

では、生の食べものに含まれる酵素を利用することで消化吸収をよくしたり、
健康増進効果が期待できるという話はどうでしょう。

例えば、加熱した食品や加工食品ばかり食べていると胃や腸が疲れてしまうから、
生の野菜や果物に含まれている酵素をつかって負担軽減のためにという理由で、
生野菜と果物の酵素ジュースが勧められたりしているようです。

これについても実際は逆で、生の食材よりも
加熱調理をした料理の方が消化が良くなり胃や腸に負担をかけません。

お腹の調子が悪いときには生野菜よりも
よく煮込んだ野菜スープが食べたくなることを考えれば分かるでしょう。
いくら酵素があっても生のジャガイモはかじりたくないですよね。

また、酵素によりデトックスとか生きた酵素が
血液を綺麗にするというような話もありえません。

酵素はタンパク質からできているので加熱により働きを失ってしまうのですが、
胃酸や消化酵素でも分解されてアミノ酸になってから身体に吸収されてしまいます。

酵素がその働きをもったまま身体に吸収されたら血液が壊されたり、
血管がやぶれたりと大変なことになりかねません。
生きた酵素が身体の隅々まで届くなんてことはないのです。

このように大抵は胃酸ですぐに働きを失ってしまう酵素ですが例外もあって、
チアミナーゼというビタミンB1を分解する酵素は
酸に強くて消化管の中でしばらくの間ビタミンB1を分解してしまいます。

そのため、チアミナーゼを沢山含んでいる生の川魚を食べ続けると
ビタミンB1欠乏症になってしまう可能性があるのです。
同じものばかり食べるのは身体によくないという事例の一つです。

■発酵食品との関係は?
体に良いとされる発酵食品は食べものや微生物に含まれる酵素を利用してつくられます。

発酵食品が体に良いとされる大きな理由は、
発酵によって元々の食品にはなかったビタミンや生理活性物質がつくられることです。

最近は酵素がたっぷりとれる発酵食品というキャッチコピーがありますが、
酵素をとる目的で発酵食品をとるのは意味がありません。
イメージ優先の便乗商法だと思って良いでしょう。

■今回のまとめ
食べものに含まれている酵素はタンパク質なので、
食べても栄養としてはアミノ酸になるだけです。

ありもしない効果を期待して貴重なお金や時間を損をしてしまうのはもったいないと思います。

・酵素という栄養素はありませんし
潜在酵素も存在しないので不足を心配する必要はありません

・酵素にこだわらず加熱食品も生の食品も両方上手にとりましょう

・食べた酵素が消化吸収されて身体の中で活躍することもありません

・発酵食品の良さは酵素が身体に働くからではありません

・酵素栄養学や生きた酵素という言葉をきいたらご用心

参考資料:
病気にならない生き方-ミラクル・エンザイムが寿命を決める 新谷 弘実 (著) サンマーク出版 (2005)
Howell. Edward. Enzyme Nutrition: The Food Enzymes Concept. Averypub Group Published (1985)
謎解き超科学 ASIOS編 彩図社(2013)

成田崇信
管理栄養士、健康科学修士
管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。
ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で
「食と健康」に関する啓もう活動を行っている。猫派。
著書:管理栄養士パパの親子の食育BOOK(メタモル出版)、共著:謎解き超科学(彩図社)
2016-05-03
読売新聞 2016年5月2日

[認知症のはてな](1)ほころび始める日常生活


料理の手順忘れる、書類作れない…


認知症は今や、誰にとっても、自分や身近な人がなりうる病気だ。

新コーナーでは、認知症の基本的な知識や困った時に役立つノウハウ、
支援やサービスの活用法を紹介する。

第1回は、認知症の種類と症状、早期発見につなげるポイントなどをまとめた。

「スーパーに出かけたのに何も買わずに帰宅したり、
通販で買った商品の支払いを忘れて督促状が何度も届いたりしたのが始まりでした」。

東京都目黒区の男性(73)が、妻(73)の変化に気づいたのは約10年前。
病院で脳のCT(コンピューター断層撮影法)画像を撮ったところ、
アルツハイマー型認知症と診断された。

症状は徐々に進み、「庭の木の上に子どもがいる」などと、
実際にはないものが見えると言うようになった。
男性は、介護保険の訪問介護などを利用して自宅で妻の世話を続けたが、
昨年6月、特別養護老人ホームに入所させた。

「もっと早く病気について知っていれば、妻の生活も違ったかもしれない」と話す。

認知症は、病気などが原因で脳の細胞が壊れることから発症する。

記憶が抜け落ちたり、日時や場所がわからなくなったり、
家事の段取りが立てられなくなったりする。
こうした「中核症状」は、認知症になれば誰にでも起こる。

さらに、周囲の人との関係や本人の性格によっては、
妄想や 徘徊はいかい といった「行動・心理症状」が表れる場合もある。

認知症にはいくつかの種類がある。
記憶障害を伴う「アルツハイマー型」が約7割を占め、
意欲の低下などが見られる「脳血管性」や、
幻視が特徴的な「レビー小体型」などもある。


家族や身近な人が「認知症かもしれない」と気づくには、
どこに着目すればよいだろうか。

認知症に詳しい順天堂大大学院の新井 平伊へいい 教授(精神・行動科学)は
「日常生活にほころびが出てきたら要注意」と話す。

例えば、「前から知っている人の名前を思い出せない」のは単なるど忘れの可能性が高いが、
「料理の手順を忘れる」「仕事で単純な書類を作れなくなる」などは認知症を疑った方がよい。

不安を感じたら、まずはかかりつけ医に相談する。
その際、新井教授は「医師が検査もせず、
『年のせい』で片づけるようなら、別の病院も考えて」と話す。

早期発見し、適切なケアにつなげる機会を逃す恐れがあるからだ。
詳しい診断を受けるには、専門医の受診が必要だ。

インターネットでも探せるが、
自治体の地域包括支援センターから紹介してもらうこともできる。

「種類にもよるが、15~20年かけて徐々に進行するのが認知症」と、新井教授。
本人も家族も無理のない生活を続けるためには、介護保険を使い、
ヘルパーやデイサービスなどの支援をうまく利用したい。

家族への支援もある。認知症の人や家族がお茶を飲みながら交流したり、
専門家の助言を受けたりできる「認知症カフェ」がその一つで、
41都道府県に655か所(2014年度)ある。

冒頭の男性は、現在、近くの認知症カフェでボランティアをする。
「自分の時は孤独だったが、これから介護をする人には、
こうした場所も利用してほしい」と話す。

25年に推計730万人

厚生労働省の調査では、65歳以上の認知症の人の数は2012年で約462万。
糖尿病の有病率を加味すると、25年には730万人になると推計される。

増え続ける認知症に対応するため、国は15年1月、
省庁横断の国家戦略「新オレンジプラン」を公表した。

「認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる社会」を目指し、
啓発活動の推進や、64歳以下で発症する「若年性認知症」への対策の強化などが掲げられた。

(板垣茂良)
2016-05-03
予防医学研究者・石川善樹の「続けたくなる健康法」
読売新聞 2015年6月22日

「座りすぎ」が健康に悪い、本当の理由


 こんにちは。

予防医学研究者の石川善樹です。

今回は、「座りすぎると健康に悪い」という話をします。

私たちは起きている時間のほとんどを、椅子の上で過ごすようになりました。
実際私もこの瞬間、写真のようなだらしない格好で、本ブログを書いています…。

ふた昔前なら、座ってばかりの人は少なかったので、あまり注目されていませんでした。
しかし、ようやく最近になって、なぜ座りすぎが健康に悪いのか、
そのメカニズムが明らかになってきました。

「ずっと座っていると、脂肪燃焼が止まってしまうのです」

そう述べるのは、ハミルトン教授(ミズーリ大学コロンビア校)。

私たちの筋肉には、リポたんぱく質リパーゼ(LPL)と呼ばれる、
脂肪燃焼に関わる酵素があります。
筋肉を動かさなくなると、この酵素が働かなくなるのです。

 一方で、

「座っていても、手作業やパソコンなどをしていれば、
腕の筋肉を動かすのでは?」と思うかもしれません。

しかしハミルトン教授によれば、
私たちの筋肉の大部分は足や背中についているため、
座って腕だけ動かしていても意味がないということです。

 では、どうすればよいのでしょうか?

「足の筋肉を動かせば、また脂肪の燃焼が始まります。
ダメなのは、何時間も座りっぱなしでいることです」

 と、ハミルトン教授は述べています。

つまり、何時間も座り続けるのではなく、
途中で立ち上がってちょっと散歩をすれば、
足や背中の筋肉が動き出すので、脂肪燃焼効果が得られるようです。

少しだけ散歩の効果

それにしても、ちょっとの散歩が、
どれだけの効果をもたらすのでしょうか?

別の研究によれば、30分毎ごとに立ち上がり2分間散歩することを続けたら、
半年で7104キロカロリー消費できるそうです。
体重にすると、1キロやせられる計算になります。

 ・・・・・・すごいですよね!

とはいえ、こんな簡単なことでも、
実際に実践しようとすると、難しいものです。

そこで私が取り入れたのは、
「座っている間はとにかくたくさん水を飲む」ということです。

そうすると、自然にトイレが近くなるので、
30分に1回は立ち上がり、散歩することになりました。

さらに言えば、普段はどうしても水分が不足しがちだったので、
体の調子も良くなってきたような気がします。

・・・・・・ぜひ、みなさんも、座りっぱなしを避けてみては、いかがでしょうか?


石川善樹(いしかわ よしき)
予防医学研究者・医学博士。(株)Campus for H共同創業者。
1981年 広島県生まれ。東京大学医学部卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。

「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして研究し、
常に「最新」かつ「最善」の健康情報を提供している。
専門分野は行動科学、ヘルスコミュニケーション、統計解析等。

著書に「疲れない脳をつくる生活習慣」(プレジデント社)。
2016-04-30
読売新聞  2016年4月15日

あの「うま味成分」で大腸がんリスク4割減―オランダ調査

オランダ人約5,000人の調査から、「うま味」成分として知られるアミノ酸の一つ、
「グルタミン酸」を食事からたっぷりとっている人では、大腸がんになる危険性が
最大で4割低下するとの結果が3月15日発行の米医学誌
「Cancer」(2016;,122:,899-907)に掲載された。

グルタミン酸といえば日本の食文化には欠かせない昆布に豊富に含まれる成分だ。
以前からグルタミン酸には疲労回復や脳の活性化、ダイエット効果などがある
と言われていたが、さらに大腸がんを予防する可能性も示されたことから、
昆布だしをきかせた和食が改めて見直されるかもしれない。

過体重や肥満の人ではリスク低下せず

調査を実施したのはオランダ・エラスムス医療センターのギルソン・ベローゾ氏ら。
以前、動物実験でグルタミンが大腸がんの発生を防ぐ可能性が示されていたことから、
今回の調査を実施したという。

対象は、1990年に55歳以上だったオランダ人の男女5,362人。
食事内容のアンケート調査からグルタミン酸の摂取量が推算された。

分析の結果、食事からのグルタミン酸の摂取量が1%増えるごとに
大腸がんを発症するリスクが42%低下することが分かった。

ただ、こうしたリスク低下はBMI(肥満指数)が25以下の人のみで認められ、
BMI25超の人ではリスクの低下は認められなかったという。

このことから、ベローゾ氏らは「過体重や肥満ではない人では、
食事からのグルタミン酸の摂取量が大腸がんリスクに関係することが分かった」と結論付けた。

グルタミン酸は昆布の他、チーズや緑茶、シイタケ、トマト、魚介類などに多く含まれる。

今回、グルタミン酸の健康効果として、新たに「大腸がん予防」の可能性が示されたが、
だからといってグルタミン酸のサプリメントなどを多用するのは控えた方が良いだろう。

今回の調査は食事に含まれるグルタミン酸について検討したものだからだ。

また、グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質でもあるため、
取り過ぎると神経の高ぶりや睡眠障害といった症状が出ることもあるので、
注意が必要だ。
2016-04-30
産経新聞  2016.4.30 06:00
【脳を知る】
意識障害、脳や臓器が深刻な事態 
居合わせたら救命措置を


意識障害の人を見つけたら、すぐに救命措置を

 初めまして。和歌山県立医科大学救急集中治療部の藤田浩二です。    
専門は脳神経外科です。このコラムを担当させていただくこととなりました。
よろしくお願いいたします。

県立医大病院の救急外来には、数多くの「意識障害」の患者さんが
救急車で搬送されます。皆さんが病人に出くわし、119番通報すると、
司令室より「意識はありますか?、呼吸はしてますか?」と、
まず意識の有無を問われます。

司令室が意識障害を重要な症状と考えているからです。
テレビやラジオのニュースで、「○○さんは意識不明の重体です」
という言葉をよく耳にします。

意識不明がまるで重体の枕詞(まくらことば)にように使われていますが、
それだけ意識障害は、生命の維持を脅かす代表的な症状なのです。

 「意識障害」とは外部からの刺激に反応できないことをいいます。

倒れていて全く反応のない「昏睡(こんすい)状態」は強い意識障害ですが、
その他にも色々な意識障害があります。

「意識混濁」は、ぼんやりしていたり眠り込んでいたりする状態です。
私たちが毎日行う睡眠はいわゆる生理的な意識混濁で問題はありませんが、
睡眠中でない状態での意識混濁は大問題です。

「意識変容」という意識障害もあります。
興奮したり異常な言動があったり、
その場にないものが見えたり聞こえたりする幻覚症状を伴います。

意識障害の患者さんのほとんどが脳の働きに異常をきたしています。

その原因は、脳卒中や頭部外傷、髄膜炎やてんかんなど、
脳自体の病気のこともありますが、
その他にも心臓の不整脈や心筋梗塞、肺は気管支ぜんそくや呼吸不全、
肝臓は肝硬変などが意識障害の原因であったりもします。

低血糖や高血糖、貧血や電解質異常、ビタミン欠乏、さらにはアルコール中毒、
薬物中毒などが原因で、脳機能を低下させることもあります。

このように「意識障害」は脳や他の臓器が深刻な事態に陥っている状態で、
迅速な処置が必要です。皆さんが意識障害の病人やけが人を発見した場合は、
大声で周囲の人を集め、119番通報し、救急車を呼んでください。

そして呼吸と脈の有無を確認してください。
全く反応のない患者さんであればAED(自動体外式除細動器)の準備が必要です。
患者さんを安全な場所に慎重に移動させ、呼吸があれば、やや頭を後ろに反らせ、
軽く膝を曲げて横向きに寝かせてください。衣服やベルトも緩めてください。

頭の後ろに倒すことで気道が確保されます。
横向きは嘔吐(おうと)した際の吐物による気道閉塞(へいそく)、
すなわち窒息の予防になります。

救急車の到着前にその場に居合わせた人の行う早期の救命処置は、
「意識障害」の患者さんの救命率を飛躍的に向上させる非常に重要な行為です。
しかし1人では決してできません。必ず大勢の人で力を合わせて行ってください。

(和歌山県立医科大学 救急集中治療医学・脳神経外科 講師 藤田浩二)

2016-04-26
産経新聞  2016.1.15 09:30
骨粗鬆症予防は「食べ合わせ」が肝心 
ホウレンソウ×ゴマはNGだがナッツ×ヨーグルトならOK


カルシウム不足などによって骨がもろくなる骨粗鬆(こつそしょう)症。
高齢になるほど患者数は増え、骨折から寝たきりにつながることもある。

骨をつくる栄養素を効果的に摂取できる「食べ合わせ」があるが、
健康に良いと思われている食材の組み合わせが、有効成分の摂取を妨げることもある。
正しい知識を身に付けて、食生活を改善することが予防の第一歩だ。(玉崎栄次)
                   
 ◆60代で5人に1人
骨粗鬆症は、骨密度が低下し、骨折のリスクが増える病気。
カルシウムやビタミンD、Kの欠乏、運動不足などが原因とされる。

女性ホルモンの影響などにより女性患者は男性の3倍以上。
日本骨粗鬆症学会などがまとめた「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」
(平成27年版)に基づき試算すると、骨粗鬆症(大腿骨頸部)を患う女性は、
60代で5人に1人、70代で5人に2人、80代で5人に3人と高齢になるほど増えていく。

「痛い!」。熊本県玉名市の女性(82)は2年前、自宅で夫を介助中、
腰に激痛が走り動けなくなった。病院へ行くと骨にひびが入っていた。
検査したところ、骨密度は同世代の平均値の半分以下。

「医師からは『長年の食生活が原因』といわれた。
確かに魚や牛乳をあまり口にしていなかった」と振り返る。

骨粗鬆症の予防には、牛乳・乳製品、魚介類、大豆・豆製品、海藻、ゴマなど、
カルシウムが豊富な食材を取り入れることがポイントとなる。

厚生労働省によると、1日当たりに推奨されるカルシウム摂取基準は
50~69歳女性で650ミリグラム(男性700ミリグラム)、
70歳以上では600ミリグラム(同700ミリグラム)。

例えば、レタスとキュウリのサラダ(一人前=カルシウム含有量15ミリグラム)を、
ヒジキの煮物(同168ミリグラム)に換えるだけで摂取量を大幅に増やすことができる。

栄養豊富な食材同士でも、一緒に食べることで
栄養価を打ち消し合ってしまう場合がある。
逆に、栄養価を最大限に引き出す組み合わせもある。
 
「骨をつくるカルシウムは吸収されにくい栄養素。
体内でカルシウム吸収を助ける成分を含む食材と食べ合わせることで
効率的に骨粗鬆症の予防につなげられる」。健康運動指導士で、
栄養学博士の白鳥早奈英(さなえ)さんはこう指摘する。

 ◆ビタミンDも重要
白鳥さんによると、骨粗鬆症予防で注意すべき食べ合わせがある。
例えば、ヒジキと大豆の煮物やホウレンソウのゴマあえだ。
いずれも家庭料理の定番で栄養価も高いが、
カルシウムの摂取を第一に考えた場合、好ましくない組み合わせなのだという。

大豆に含まれるフィチン酸はカルシウムの吸収を妨げる作用があり、
カルシウムの豊富なヒジキの効果を損なってしまう。

ホウレンソウに含まれるシュウ酸もゴマのカルシウム吸収を阻害する。
 
また、カルシウム補給に推奨される牛乳を、
ココアやきな粉と一緒に飲むとカルシウムの吸収率が下がる。

ココアもきな粉もそれぞれカカオ豆、大豆が原料で食物繊維が豊富。
食物繊維にはカルシウムを吸着する性質があるため、
体内に吸収されずに便として排出されてしまうのだという。

一方、小松菜と干しシイタケの食べ合わせは骨づくりに効果を発揮する。
干しシイタケに多いビタミンDには、カルシウムを骨に沈着させる効能があり、
牛乳に匹敵する小松菜のカルシウムを十分に骨づくりへとつなげられる。

「カルシウムとビタミンD」の食べ合わせは、
サクラエビとカツオ、ヒジキとサバなどでも同様の効果が得られる。

白鳥さんは「食生活の改善とあわせ、
30分程度の昇降運動を行うなどすれば、
骨粗鬆症予防に効果的だ」とアドバイスしている。
2016-04-26
産経新聞 2016.4.26 10:30


日常生活のさまざまな問題に前向きに対処する人は、
そうでない人に比べ、がんで死亡するリスクが低いとの研究を、
国立がん研究センターや東京大などの共同チームがまとめた。

全国10都府県に住むがんではない50~79歳の男女
約5万5千人を平均9年余り追跡した。

チームは被験者に、日常で経験する出来事や問題に
どのように対処しているかをアンケート。
回答として用意した6通りの行動パターンから判定する
「前向き」「逃避型」「特に定まっていない」などという態度の違いや、
特定の行動パターンによって、がんの発症や死亡のリスクに違いがあるかを調べた。

その結果、「解決する計画を立て実行する」「誰かに相談する」
「状況のプラス面を見つける努力をする」といった前向きな対処をする人は、
特に態度が定まっていない人と比べ、がんを発症するリスクには差がなかったが、
がんで死亡するリスクが15%小さくなっていた。

個別の行動パターンで見ると、プラス面を見つける努力をする人で、
がん死のリスクが小さかった。

脳卒中の発症リスクについても同じ地区の人々で同様の追跡調査をしたところ、
前向きに対処する人のリスクは低いという結果が得られた。

チームは、問題の解決に前向きな行動を取る人は、
検診を受けて病気を早く見つけたり早期に診断されたりする確率も高いため、
がん死亡リスク低減などの望ましい結果につながるのではないかとみている。
2016-04-26
産経新聞 2016.4.26 00:00

腸内細菌が大腸がん進行を抑制か  制御型T細胞の働き減衰で 大阪大チームが公表 


大腸がん組織に腸内細菌が入り込むと、がんに対する免疫機能が高まるとみられることを、坂口志文(しもん)・大阪大免疫学フロンティア研究センター教授らのチームが明らかにした。腸内細菌の活動を促進することでがんを抑える新しい治療法につながる可能性もあるといい、国際的学術誌ネイチャーメディシンの電子版に26日掲載された。

 坂口教授らは、大腸がんの患者から採取した組織を詳しく解析。がん組織に特定の腸内細菌が入り込むと「制御性T細胞」と呼ばれる細胞の働きが弱まり、がん細胞を排除する免疫の機能が高まるとみられることが分かった。

 制御性T細胞は、免疫の機能を抑制するとされる細胞で、坂口教授らが発見した。通常、免疫が自分自身を攻撃しないよう調節する役割を持つが、がん細胞を排除する機能も低下させてしまうとされる。

 坂口教授は「近年、がん細胞を排除する免疫の仕組みを利用した治療法が注目されているがメカニズムは良く分かっていない」と指摘。今回の研究は、腸内細菌を利用したがんの治療法や予防法につながる可能性があるという。
2016-04-23
産経新聞 2016.4.24 07:00
【脳を知る】
グラウンドゴルフで認知症の進行を抑制…薬、介護サービス、体を動かすことが大切

本人の前で医師に認知症の症状を話しにくいときは、
メモを手渡してみては

「キャッシュカードでの出金が難しくなってきた。
暗証番号を忘れてしまい、出金できなくなった」

 70代の女性が、夫に連れられて物忘れ外来に来られました。
この方は、家事もできており趣味のグラウンドゴルフにも参加しているのですが、
1年ほど前から物忘れが増えてきたとのことでした。

脳のMRI検査では、アルツハイマー型認知症で特徴的な海馬の萎縮が少しあり、
「MMSE」という物忘れの検査では、30点満点中22点
(23点から認知症の疑い)と、軽度の物忘れを認めました。

そのため、アルツハイマー型認知症の初期と診断し、
認知症の薬の服用を開始することにしました。

その後は、1年半ほどしたときに「冷蔵庫に入っているものを忘れてしまい、
同じものを買ってくるのです」と夫から相談がありました。

この頃より、本人の活動性を上げるために介護保険で
デイサービスに行ってもらうようにしましたが、
さらに半年後には、夫からメモを手渡されました。

本人がいる前では家での困った症状を言いにくいため、
メモに書いてくれたのでした。

メモには、「最近のことを忘れるようになった。話がかみ合わなくなった。
外出を好まなくなった。今までしていたことをしなくなった。
食事の味付けがおかしくなった」と書かれていました。

物忘れの検査では、2年前は22点だったところが17点に低下していました。

そこで、デイサービスの回数を増やし、認知症の薬をもう1種類追加すると、
本人は再びグラウンドゴルフなどの外出も喜んで行くようになり、
生活上の支障も改善したとのことでした。

このように認知症の症状が少しずつ進行するというのは、ごく通常の経過です。

認知症の薬は、現在は4種類あり、
どの薬も認知症の進行を遅らせる効果のある薬で治す薬ではありません。

認知症の治療で大切なことは、
できるだけ進行を遅らせて日常生活に支障がないようサポートしていくことなのです。

それはきっと、多くの方が分かっていると思いますが、家族にとってみれば、
「認知症が進行してほしくない」「せめて進行が止まってほしい」と望むものです。

認知症ができるだけ進行しないようにするには、薬の追加や変更などの調整をしたり、
介護保険のサービスを増やしたりすることが大切です。

また日頃から体を動かすことも大切です。今回の女性は、
グラウンドゴルフを続けられたことが進行を抑制することにもつながり、
本人も夫も喜んでくれました。

 (橋本市民病院 脳神経外科 医長 大饗(おわい)義仁)


2016-04-22
読売新聞 2016年4月22日

ちょっとした努力で防げる…エコノミークラス症候群


今日は「エコノミークラス症候群」のお話です。
ヨミドクターには各領域の専門家の先生がラインナップされていますので、
僕はなるべく記事がダブらないように、医療雑学、医療豆知識、
医療トリビアのような記事を書くことを常日頃心がけています。

しかし、今日は僕の専門領域のひとつである静脈外科のお話をします。


エコノミークラス症候群とは、飛行機の長時間のフライトで、座ったままでいると、
着陸後に突然胸痛や意識消失、そして死亡に至ることがあるために命名された病気です。

実際には、エコノミークラスだけでなく、ファーストクラスでも起きます。
医学的な名前は、「肺血栓塞栓症」といいます。
血栓とは血の塊、塞栓とは何かが血液に乗って流れてきて詰まることをいいます。
つまりどこかでできた血の塊が肺の血管に詰まり、
そしてそこで血の塊がどんどんと大きくなっていくという病態です。

どこで最初に血の塊ができるかというと、命に関わる血の塊は足
(ここでいう足は下肢のことです)にできます。足の静脈にできるのです。

動脈は心臓から血液を組織に送る血管、
静脈は組織から心臓に血液を送る血管です。

つまり動脈はきれいな水道水、静脈は下水といったイメージです。

静脈の血液は肺で酸素化されて、心臓に戻り、
そして動脈を通って全身に送られます。
エコノミークラス症候群は動脈ではなくて、静脈の血栓がその原因なのです。

ふくらはぎが血流ポンプの役割


血液は基本的には固まりません。
なんで固まらないかについては3つの要素があります。
<1>血液が流れていること、
<2>血液が正常な血管の中にあること、
<3>血液が固まりにくい状態になっていること、
の3点です。

人間は生きている以上、血液は流れているのではと思われるでしょうが、
例えば心臓細動という心臓の一部が震えている状態ではそこに血栓ができます。
そしてその血栓が 剥は がれて、動脈に沿って流れていくと、
脳梗塞などの原因になるのです。

動脈に比べて静脈は太いので流れが遅いのです。
そして静脈には動脈が心臓のポンプ作用でいつも血液が押し流されているような、
常時機能しているポンプがありません。 

静脈のポンプはふくらはぎなのです。
ふくらはぎを使えば、つまり歩けば、動けば、つま先立ちをすれば、
下肢の静脈血は勢いよく心臓に戻ります。

一方でふくらはぎの筋肉を使わないと
静脈血の流れは遅いか、止まっているのです。

また、重力によっても静脈血は心臓に戻ります。
頭の血液は自然と心臓にもどるのです。

また寝た状態であれば、つまり心臓と足が同じ高さであれば、
ふくらはぎを使用しなくても血液は重力に逆らう必要がないので、
易々やすやす と心臓に戻ります。

また血液は正常な血管の中にあれば固まりません。
一方で 怪我けが をすれば出血して血液は固まります。

つまり血管のなかから漏れ出したから固まるのです。
動脈硬化などがあると血管内膜が障害されますので、
血液が固まりやすくなります。

そして血液が固まりにくくなっているというのは、
まず血液を固まりにくくしているタンパク質があります。
そのタンパク質が少ない人や、また妊娠時などはそのタンパク質は低下しますので、
血液が固まりやすくなるのです。

そして水分が足らずに脱水状態になると
血液はいわゆる「ドロドロ」状態になるので固まりやすくなります。

歩行、水分補給、それに弾性ストッキングも…

つまり、エコノミークラス症候群は、狭い座席で、それも窓側などに座ると、
トイレに行くのも面倒で、隣の人に申し訳なく、つまり、水分を控えて、
そして足を下ろして、かつふくらはぎを使わない状態が持続して、
12時間近くを過ごします。

すると足の静脈に血栓ができて、それが、着陸してロビーに歩き出した途端に、
静脈壁から剥がれて心臓に向かいます。心臓を通過して、そして肺に詰まるのです。
その血栓の量が多いと、換気障害を引き起こして死亡します。
これが、エコノミークラス症候群のストーリーです。

同じことが、地震などの被災地で生じます。狭い車での生活です。
またトイレが汚い、遠いなどの理由で、運動量が極端に減ります。
また飲料水の不足で脱水状態になります。
足の静脈に血液の塊ができやすい状態ですね。

しかし、それは簡単に防ぐことができます。
つまり頻回に歩けばいいのです。
ふくらはぎを使えばいいのです。

またときどき足を心臓よりも上にあげましょう。
すると重力で血液は心臓に戻ります。逆立ちする必要はありません。
ほんの少し、足をあげればいいのです。

また、水は飲みましょう。
水分補給に心がけてトイレに頻回に行く人は
エコノミークラス症候群にはほぼなりません。

可能であれば、弾性ストッキングも履きましょう。
これは健康人が常時履いていてもまったく問題ありません。
僕はいつも、夏でも、弾性ストッキングを履いています。
エコノミークラス症候群は心がけで防げる病気です。
ちょっとした努力を欠かさず行って下さい。

 人それぞれが、少しでも幸せになれますように。

新見正則(にいみ まさのり)
 帝京大医学部准教授

1959年、京都生まれ。85年、慶応義塾大医学部卒業。93年から英国オックスフォード大に留学し、
98年から帝京大医学部外科。専門は血管外科、移植免疫学、東洋医学、スポーツ医学など幅広い。
2013年9月に、マウスにオペラ「椿姫」を聴かせると移植した心臓が長持ちする研究でイグ・ノーベル賞受賞。

主な著書に「死ぬならボケずにガンがいい」 (新潮社)、「患者必読 医者の僕がやっとわかったこと」 (朝日新聞出版社)、「誰でもぴんぴん生きられる―健康のカギを握る『レジリエンス』とは何か?」 (サンマーク出版)、「西洋医がすすめる漢方」 (新潮選書)など。トライアスロンに挑むスポーツマンでもある。

2016-04-21
在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
読売新聞 2016年4月22日

楽しい食事のあとには、我慢も少し。
塩分多めと感じたら、次の食事で調整しましょう


函館で食べた塩ラーメンは忘れられません。でも……


「管理栄養士です」と自己紹介すると、
「お料理が上手なんでしょうね~」とよく言われます。
結婚して、家族の料理を毎日作るようになってからは、
「冷蔵庫にあるもので、おかずを作る」という主婦の技術を身に付けましたが、
かつてはあまり料理が得意ではありませんでした。

今も「料理が好きです!」とは言えても、
「料理が得意です!」とは言えない自分がいます。

学生の頃に、「調理学実習」という、
さまざまな食材を使って料理をする授業がありました。
ある時、試験の課題が「鯵あじの三枚おろし」だったため、
練習のために前日の晩に自宅で15尾もの鯵をひたすら三枚におろしました。

テーブルには刺し身はもちろん、天ぷらやぬたが並び、
父が「おお~! 今日は鯵三昧ざんまいやな!」とビール片手に喜んでいましたが、
テストは不合格に終わってしまいました。しかも不合格者は100人中2人のみ。
先生からは、「三枚のうちの真ん中(骨の部分)に身が残りすぎです」と注意を受けました。



そんな私にも、得意料理はあります。「餃子ギョーザ」です。
キャベツや白菜にひき肉、にらなどを粗めのみじん切りにして、
食感を残すのが「しおじゅん流」です。

ひき肉に醤油しょうゆや塩を混ぜ込むことで、
野菜までしっとりとしてきます。

夫はこの餃子にたっぷりと「たれ」をつけ、
それをごはんの上にワンバウンドさせて食べ、
さらにたれの染みたごはんをかきこみます。

夫や娘たちも私の餃子が大好きなのはうれしいのですが、
ここで2つ懸念があります。何かはおわかりですか?

糖質、それに塩分の取りすぎです。

餃子は野菜とお肉がしっかり取れる栄養バランスの良いメニューです。
ただし、皮は小麦粉で作った「炭水化物」です。

ごはんと一緒にたっぷり食べてしまうと、
「糖質の取り過ぎ」になってしまいます。
塩気が強いので、ごはんもつい食べすぎてしまいます。
ちなみに私は餃子と一緒にごはんを食べません。

そんな話を夫にしたら、「ええーい、うるさーい! 
俺は炭水化物じゃなくて、餃子とごはんを食べているんだー!」
と言われてしまいました。

あまり栄養にこだわってしまうと夫婦の関係に影響が出ますので、
今では黙ってごはんも出すようにしています。


同時に塩分量も気になります。
塩は体に水分を保つ作用があるため、体内の水分量が多くなります。
血液の量も増えるため、心臓は一生懸命ポンプを動かし、
体の隅々に栄養や酸素を届けようとします。
その結果、血圧が上昇するのです。


世界保健機関(WHO)が推奨している1日の食塩摂取量の上限は5グラムです。
しかし、2014年国民健康・栄養調査の報告書(厚生労働省)によると、
日本人の平均食塩摂取量は1日10グラムです。

「塩分量と言われても、ピンと来ないなぁ?」と思われるかもしれません。
味噌みそ汁1杯で塩分は約1.2~1.5グラムですので、
日に3回飲むと約4グラムになります。

ラーメンはスープも飲み干すと約6グラムにもなります。
焼き鳥(たれ)は5本で約3グラム。

食事をたくさん取る人ほど、塩分摂取量も増えていきます。

高血圧の方は、医師から塩分制限を指導されることがほとんどだと思います。
しかし、減塩生活はなかなか難しいですね。

私自身は、ラーメンが大好きで、先日、仕事で函館へ行ったときに
飲んだ塩ラーメンのスープの味が忘れられません。
「うまみが凝縮したあのスープを我慢するぐらいなら、
いっそラーメンなんか食べない方がいい!」と思うくらいです。

だからといって、どんなにおいしいスープでも飲み干してはいけません。
スープをどんぶりから直に飲むのもおすすめしません。
「レンゲで3~5杯まで」と決めておくといいかもしれません。
そうすることで、レンゲ1杯のスープが愛いとおしく感じるものです。

せっかくですから、舌、のど、食道を全部使ってしっかり味わいましょう。

「しおじゅんのゆるっと塩分制限法」は、塩分を多く取ったと感じたら、
次の食事ではなるべく控えましょうというものです。
楽しい食事のあとには、我慢も少し必要です。

塩分の過剰摂取を毎日続けないようにするポイントは、
汁ものや漬物はなるべく控え、醤油はポン酢か、だし割わり醤油に変えて、
「かける」のではなく「つけて食べる」こと。

さらに、カリウムの力も借りましょう。
ナトリウム(塩分)を体外に排出させる働きを持つのがカリウムです。

朝食には、バナナとアボガド、豆乳で作ったスムージー、
名付けて「カリウムたっぷりドリンク」はいかがでしょうか
(腎機能が低下している方には、カリウムの取りすぎには注意が必要です)。

カリウムは水に溶けてしまうため、茹ゆでたり煮たりすると、
一部が流れ出てしまいますが、
果物ならカリウムの損失を気にせず、そのまま食べられます。

このように、糖質や塩だけではなく、「食べすぎちゃったかな」と思った時には、
その後の食事で調整すればよいと私は思います。

そうして健康的な食習慣を少しずつ身に付けていけば、
数年後には血圧も体重も下がっているかもしれません。

 毎日の食生活ですから、無理なく、楽しく、
美味おいしく継続できることが一番大切だと思います




塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)
「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」
在宅訪問管理栄養士

1978年、大阪市生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。
栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、
2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として
在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。
2016-04-21
産経新聞 2016.4.21 08:29

牛乳や乳製品の摂取は認知機能の低下を抑制しそうだとの研究結果を、
国立長寿医療研究センターが明らかにした。

平成24年までに高齢者330人を平均8年間追跡。
食習慣や3日間の食事記録などを基に、
牛乳や乳製品の摂取と、認知機能検査の結果との関連を解析した。

その結果、女性では摂取が増えると認知機能低下のリスクが小さくなった。
牛乳などが含む各種脂肪酸の摂取量との関係でも、
男女問わずリスクが低下する傾向が示されたという。
2016-04-20
Link de Diet 2016.4.6 , EurekAlert 


遺伝よりも食事や生活スタイルのほうが、
白内障の発症および重症度に大きな役割を与えるようだ、
という英国キングス・カレッジ・ロンドンからの研究報告。

本研究では、ビタミンCの豊富な食品の摂取が、
白内障の進行リスクを33%低下させることが示されている。

白内障は年齢とともに自然に発生し、目のレンズが不透明になり濁る。
現代の白内障除去手術にもかかわらず、
白内障は依然として、世界的に失明の主要な原因である。

研究チームは、食品やサプリメントからの特定の栄養素が
白内障の進行を防ぐのに役立つかどうかを調べた。
さらに、遺伝よりも食事などの環境要因がどのくらい重要であるかを調べた。

研究チームは、英国の女性の双子1,000組以上からのデータを検討した。
参加者は、ビタミンCのほか、ビタミンA、B、D、E、銅、マンガン、
亜鉛などの栄養素の摂取量に関して、食品に関するアンケートに答えた。

白内障の進行を測定するために、デジタル画像を用いて、
およそ60歳でのレンズの不透明度を検査した。
そして、約10年後、追跡調査のために324組の双子で測定を行った。

ベースライン測定時には、ビタミンCが豊富な食事は、
白内障リスクの20%低下と関連していた。

研究チームは、10年後、
より多くのビタミンCが豊富な食品を摂取すると報告した女性は、
白内障の進行のリスクが33%低下していたことを見出した。

白内障の進行にみられた差のうち、遺伝的要因は35%を占め、
食事などの環境要因は65%を占めていた。

このような結果は、遺伝的要因は以前考えられていたよりも
白内障の進行にそれほど重要でないことを示した初めてのものである。

ビタミンCが白内障の進行をどのように抑えるかは、
抗酸化剤としての強さと関連するかもしれない。

通常、眼の内部の流体には、酸化でレンズが濁るのを防ぐのに
役立つビタミンCが多い。食事からのビタミンCがより多いほど、
レンズの周りの流体中に存在する量を増やせるので、余計に保護できる。

研究チームは、調査結果が、ビタミンのサプリメントではなく、
食べ物を通しての栄養の摂取に関連することを指摘している。

「最も重要な発見は、食品からのビタミンC摂取量が、
白内障の進行から保護するように見えたことであった」
と研究著者のクリストファー・ハモンド教授は述べている。

「私たちは白内障の発症を完全に回避することはできないが、
ビタミンCが豊富な食事によって、発症を遅らせ、
大幅な悪化を避けることができるかもしれない。」

出典は『眼科学』。 (論文要旨)      
2016-04-20
読売新聞 2016年4月19日

ふくらはぎのむくみが危険サイン…エコノミークラス症候群、足動かして予防を


脚の静脈にできた血の塊が肺の血管に詰まる肺塞栓症
(エコノミークラス症候群)は、長時間足を動かさずに同じ姿勢を取り、
血流が滞ると発症しやすい。

呼吸が困難になったり、胸が痛くなったりして、命にもかかわる。

熊本地震でも、自宅の駐車場に止めた車内で寝泊まりしていた女性(51)が、
同症候群と見られる症状で死亡した。

高齢者や太った人、妊娠中、出産後の人は、特に注意が必要だ。

予防には、積極的に足を動かすことが重要だ。

歩行や、足の運動、ふくらはぎのマッサージなどで
血流をよくすることを心がける。

できるだけゆったりとした服装をして、
ぴったりとしたジーンズなどは避ける。

脱水も血流を滞らせるため、こまめな水分補給も大切だ。

ふくらはぎのむくみは危険サイン。
むくみや違和感があったら早めに医療スタッフなどに相談しよう。
2016-04-20
宅配牛乳で健康長寿に

超高齢化社会を迎えた日本では、単に長生きをするだけでなく
健康な期間をより長く保つ「健康寿命」の考えが重視され、
社会的に大きな関心事にもなっている。

最近では寝たきり老人や認知症罹患者の増加が顕著になり、
介護負担や医療費増大などが課題視されている。

そんな中、3月30日には東京都内で
「高齢者の低栄養問題 その予防と有効な対策」と題したセミナーが開催され、
「高齢者の食生活」に焦点をあて、専門家が各種研究を発表。

高齢者の低栄養の予防対策として牛乳・乳製品がクローズアップされた。

高齢者の低栄養問題 その予防と有効な対策

セルフケア能力の向上が重要

セミナーは2部構成で行われ、
第1部では最初に東京都健康長寿医療センター研究所副所長の
新開省二氏が「急増する高齢者の低栄養とその対策」と題した講演を行った。
 
新開氏は平成24年に厚労省の方針によって告示された
「健康日本21(第2次)」によって
高齢者の健康目標として取り上げられたのは、
「介護保険認定者の抑制」と「社会参加の促進」と報告。

特に前者については「認知症」「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」とともに、
「低栄養」が重点課題としてクローズアップされたことを示した。

また現在、「65歳以上の日本人高齢者の2~3割が低栄養状態である」
と調査結果を明示。

高齢者のBMIとアルブミン(タンパク質)の量についてみると、
どちらも高年齢になるほど低下し、BMI20以下または
血中アルブミン4.0グラム/dl以下が低栄養の基準であることを説明した。

このような結果を裏付けるように、高齢者の健康長寿の要因を
6年間の追跡調査から抽出したところ、「仕事、社会活動が活発」
「筋力が強い」「バランス能力が高い」「歩行速度が速い」ことに加えて、

血中の「アルブミンの高い」
「コレステロールが高い」
がプラス要因であることが判明。

高齢者の栄養状態と余命に関する研究では、BMI、血清アルブミン、
血清総コレステロール、血色素(ヘモグロビン)の各値が
高めであるほど生存率が高くなる傾向であることを示し、

「過剰に栄養を摂取している人に比べて
栄養不良の人のほうが約2.5倍生存率が低い」と語った。
 
続けて「小食で、タンパク質、脂質、鉄などが不足し、
カルシウム、葉酸、ビタミンB、D類なども不十分な状態」
と低栄養の主な原因を挙げ、このような状態を回避するためには
「不足しがちな動物性タンパク質を含む多様な食品を摂取し、
体に必要なさまざまな栄養素をしっかり補給することが必要」と説明。

具体的には一人ひとりのセルフケア能力の向上と制度、環境面の整備が重要とし、
前者は「高齢期の食についての正しい理解」「体力などの身体
機能の維持・改善」「咀嚼・嚥下機能の維持・改善」「食べやすい調理法の工夫」
「中食・栄養食品・介護食の上手な利用」を、
後者は「困難になりがちな買い物や調理へのサポート」
「孤食解消=会食の機会づくり」を対策として示した。

東京都健康長寿医療センター研究所 副所長
新開省二氏

食事と認知症発症に関係性

第1部では、新開氏に続いて
九州大学大学院医学研究院教授の二宮利治氏が演壇に上がり
「高齢者が摂取すべき高栄養食品としての牛乳の可能性」という題目で講演した。
 
二宮氏は人口増加率、住民の年齢、職業構成、栄養摂取状況が
日本全体とほぼ同様の傾向である福岡県久山町を
標準的なサンプル集団として昭和36年以降、生活習慣病の疫学調査を実施。

同時に対象者には脳卒中と虚血性心疾患、
さらには認知症の追跡調査も行っているという。  

講演の冒頭で久山町では近年、65歳以上の5・6人に1人(17・9%)
が認知症の有病者であることが示され、特に調査を開始以降、
「血管性はほぼ横ばいであるのに対し、アルツハイマー型は
この30年間で飛躍的に増えている」ことを報告。

同時に肥満、高コレステロール血症、糖代謝異常などの代謝性疾患については、
40歳以上の男女とも有意に上昇していることを示した。
 
また、代謝性疾患と認知症は、ともに時代ごとに増加しているため
「何らかの因果関係がある可能性がある」ことを示唆。

「耐糖能の悪化にともない、
アルツハイマー型認知症の発症リスクは有意に上昇し、
血管性認知症についても発症リスクを高める」と語った。
 
また、食事パターンと認知症発症の関係にも言及。
大豆、緑黄色野菜、海草類、牛乳・乳製品などの摂取量が多く、
反対に米、酒などの摂取量が低いパターンほど認知症の発症リスクが
低下するという調査結果(別表①)も示した。
 
その中で認知症の発症と関係の深い食事パターンとして、
特に牛乳・乳製品に注目。

予防効果を検証したところ、
牛乳・乳製品の摂取量に伴って発症リスクが低下し、
特に「1日97~197グラムを摂取している人は、
していない人に比べて約30%リスクが低下した」というデータ(別表②)が得られた。

97~197グラムは、牛乳では約100~200ミリリットルに相当する。
合わせて牛乳・乳製品に多く含まれるカルシウム、マグネシウムに着目すると、
いずれも予防効果があることが分かったという。
 
これらの調査結果から、牛乳は低カロリー、高栄養なことに加えて、
カルシウムなどのミネラルやビタミン類が豊富なことが分かり、
良質なタンパク質とミネラル、ビタミン類の良い供給源であることが判明。

同氏は「牛乳瓶一本程度(約200ミリリットル)の牛乳を
毎日摂取することの重要性」を説き、個人的意見としながらも
「宅配牛乳は毎日配達されるので買いに行く手間が省け、
買い忘れもないので無理なく飲めて
続けやすいというメリットがある」と推奨した。

九州大学大学院医学研究院 教授
二宮利治氏


肉体改造キープ 「タンパク質は大事」

第2部ではフリーアナウンサーの生島ヒロシさん(65)が
ゲストとして出席し、第1部で講演した新開省二氏、二宮利治氏とともに
「私の健康法・食事法」と題したトークセッションを行った。  

テレビCMでも話題になった肉体改造に成功。
約15㌔減量した生島さんは今も食事制限や運動を続け、
腹筋が割れた見事な体形をキープしているそうで、
秘訣は「体を冷やさない、寝るときは鼻呼吸のために口にテープを貼る。
朝起きたら首のストレッチとプランク(体幹トレーニング)とスクワットをする」
と独自の健康法を説いた。  

またセミナーのテーマでもある低栄養問題については
「メタボを気にして、タンパク質を取らない人がいるけれど、それはダメ。
健康な体づくりにはタンパク質が大事だから。

ゆで卵は毎日3個、肉と魚をたっぷり食べて、毎日牛乳を飲むのがいい」と強調。
特に牛乳については「良質なタンパク源でカルシウムが豊富。
サプリメントよりもコストも安くて手軽に取れるのがいい。

僕は子供のころに宅配牛乳を飲むようになってから風邪をひかなくなった。
今もオフィスで宅配牛乳をとっていて、
冷蔵庫にはみんなが飲めるようにいつでも牛乳やヨーグルトが入っている状態。
だからうちのスタッフは元気」とその〝効果〟を熱く語った。



《企画・制作》 産経新聞社生活情報センター
2016-04-19
ホントはどうなの?健康食品・サプリメント
国立健康・栄養研究所

読売新聞 2016年4月19日

第10回 ココナツオイル


最近、スーパーなどで身近に販売されている食用油の種類がずいぶん増えました。
今回は、その中でも最近注目を集めている「ココナツオイル」について解説します。

ココナツオイルの特徴

ココナツオイルはココヤシ(学名:Cocos nucifera)という
ヤシ科の植物のナッツから得られる油脂です。

ヤシ油とも呼ばれ、日本で常用される食品の標準的な成分値を示した
「日本食品標準成分表」には、こちらの名称で記載されています。

ヤシ科のアブラヤシ(Elaeis属)の植物の果実から得られるパーム油や、
種子から得られるパーム核油もヤシ油と呼ばれることがありますが、
ココナツオイルとは原料となる植物が異なります。

油脂は様々な種類の脂肪酸によって構成されています。

脂肪酸というのは、図のように、炭素(C)が鎖状につながった
一方の端にカルボキシル基(-COOH)がついた構造をしていて、
炭素の数やつながり方により、その種類や性質が異なります。

中でも、炭素の数が8~12個(10個までとする説もあります)
の脂肪酸を中鎖脂肪酸と呼びます。

ココナツオイルは飽和脂肪酸(二重結合がない脂肪酸)の
中鎖脂肪酸であるラウリン酸(炭素数12)が最も多く含まれ、
オクタン酸(炭素数8、カプリル酸とも呼ばれます)や
デカン酸(炭素数10、カプリン酸とも呼ばれます)の
割合も他の油脂より高い点が、一番の特徴と言えます。

ココナツオイルなのか? 中鎖脂肪酸なのか?

インターネット上では、ココナツオイルには、
ダイエット、便秘、美容、免疫、心血管疾患、糖尿病、認知症
などに対するとても幅広い健康効果が期待されているようです。

しかし残念ながら、ココナツオイルを食べてもらい、
その健康効果を食べなかった人と比べた、
という臨床試験は、今のところ見つかりません。

ココナツオイルの有効性の説明をよく読むと、
「ココナツオイルには中鎖脂肪酸が多く含まれています。
中鎖脂肪酸には……という効果があると言われています」
というものがほとんどです。

一つ目と二つ目の文章では、主語が変わっていることに、気づかれましたか? 

食品の効果を 謳うた う時によく使われる方法なのですが、
こうした情報を目にした時には、
効果があるかどうかの研究がされているのは後者
(この場合、中鎖脂肪酸)の方であって、前者(ココナツオイル)ではない、
という点に注意してください。

 中鎖脂肪酸は、炭素の数がそれ以上の長鎖脂肪酸と比較して、
吸収が速い、腸から肝臓につながる門脈という血管を通って運ばれるので分解が速い、
エネルギーとして利用されやすい、などの特徴があり、
ヒトを対象にした研究の結果から体脂肪蓄積の抑制が期待できるのではないかと考えられています。

ココナツオイルの主成分は中鎖脂肪酸ですので、
同様の効果が期待できる可能性はありますが、
それならば、ココナツオイルと脂肪酸の組成が似ている
パーム核油でも、中鎖脂肪酸を主成分となるように配合した調理油でも、
同じではないのか?ということになります。

ココナツオイルも油です

「ココナツオイルは体にいいものだから、毎日一生懸命食べている。
でも最近、何だかちょっと太ってきた。そんなはずはない。

だって、体にいいものだし。ダイエットにもいいって聞いたし」。

皆さんの周りに、そんな方はいらっしゃいませんか?

もし、見つけたら、教えてあげてください。「でも、それ、油だよ」と。

世の中に出回っている健康情報の中には、あたかも「いい食品」と「悪い食品」があり、
「いい食品」はいくら食べても大丈夫でどんどん食べるべきで、
「悪い食品」は食事から除去すべきである、というような極端なものがたくさんあります。

しかし実際は、同じ食品でも、誰が、どれだけ、どのように食べるか、によって、
「良い食品」にも「悪い食品」にもなります。

様々な健康効果の可能性が期待されているココナツオイルですが、
油ですので、大さじ1杯で約110kcalあります。

ココナツオイルを摂取したら、その分だけ何かの摂取量を減らさないと
全体の摂取エネルギー量はプラスになります。

日々の食生活では、何よりも全体のバランスが大切になってきます。

ココナツオイルを摂取するときにも、
1日の食事全体における脂質(油)の割合や、
摂取した油全体における各脂肪酸の割合を、
なるべく理想と考えられているものに近づけるように利用することが大切です。

何か「良い」という情報に飛びついて、
そればかりを食べてしまい全体のバランスが崩れると、
それは健康に「悪い」行動になってしまいますので注意してください。

アレルギーに注意

ココナツオイルはこれまでも世界中で利用されて来た食品ですので、
食べ過ぎに気をつければ安全に利用できます。

ただし、ココナツやココナツオイルによるアレルギーの報告がありますので、
もし、摂取してアレルギー症状が出た場合はすぐに中止してください。

また、品質の悪いココナツオイル製品のナフタレン汚染による中毒の報告もありますので、
表示等を参考に、品質のしっかりした製品を選択するように心がけてください。

ココナツオイルの安全性・有効性に関する科学的根拠は以下のサイトを参照してみてください。

⇒ 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト

 (国立健康・栄養研究所 佐藤陽子)

2016-04-17
アメリカの栄養士が常備している、7つの食品

1 卵

2 オーガニックのイチゴ、ブルーベリー、ラズベリー

3 ブロッコリー

4 ピーナッツバター

5 プレーンヨーグルト

6 アボガド

7 レモン


卵が、トップでした。


去年、長寿の秘訣を研究する結果、115歳の女性2人は、
毎日、卵を食べていると、ABCニュースが報じました。

アメリカの115歳の女性は、野菜が嫌いで食べず、
毎朝、ベーコンエッグを食べています。
政府は、野菜をたくさん食べましょう、とキャンペーン中ですが。

イタリアの115歳の女性は、生卵を3個、毎日べています。
幼いころ、病弱で医師から、毎日、生卵を3個食べなさいといわれ、
今でも続ける食習慣です。

このイタリア女性は、薬を常用していないとのこと。
2016-04-15
産経新聞 2016.4.15 10:30

料理こそ認知症予防 料理通して「達成感」が大事


食材を切ったり盛り付けたり、それを一緒に食べたりすることが、
介護予防や認知機能改善などに役立つとして注目されている。

料理体験に特化した介護施設もでき、認知症やまひなどの障害があっても
料理を通して達成感が得られると好評だ。(平沢裕子)

◆ハンバーガーに挑戦

 「カップの線までキャベツを入れてください」

3月下旬、東京都目黒区のデイサービス施設「なないろクッキングスタジオ」。
専属シェフの呼び掛けに、エプロン姿の参加者は「これぐらいかな」と、
千切りにしたキャベツをプラスチックカップの中に入れ始めた。

同施設が「フレッシュネスバーガー」を展開するフレッシュネス(中央区)
と共同で開催したイベントで、通所者12人が、
ハンバーガーやサラダ、野菜スープなど5種類の料理に挑戦した。

パンを並べたり、野菜を切ったり、肉を焼いたり、
それぞれが「できること」を担当し、完成した料理をみんなで食べた。

要介護1の石井喜代子さん(86)は、「孫にハンバーガーを買ってあげたことはあるけど、
作るのも食べるのも初めて。一度食べてみたかったの」とうれしそうに話した。

同施設は、全国で約300の高齢者施設を展開する
「ユニマット リタイアメント・コミュニティ」(港区)が昨年7月に開設。

他施設で輪投げや折り紙などのレクリエーションに比べ、
お菓子作りの人気が高かったことから、
料理作りに特化した体験型のデイサービス施設とした。

主に要介護1~5の認定者が対象で、
午前はランチ、午後はスイーツや夕食を作る。

開発本部の神永美佐子さんは「家では料理をしない通所者がほとんどだが、
ここでは自分で作って食べることを楽しんでいる。
切ったり火を使ったりする料理は頭を使う作業だけに、
脳の活性化にもつながっているのでは」と話す。

◆食べる楽しみも

「つだまちキッチン」(徳島市)は、料理を通して
楽しく訓練するデイサービス施設として昨年5月に開設。
要介護の高齢者に楽しんでもらうだけでなく、
料理をすることで体の機能がどれだけ向上するのか、評価や分析も行っている。

運営する社会福祉法人「あさがお福祉会」法人統括施設長の保岡伸聡さんは、
「料理ができることが自信につながり、見違えるように元気になる高齢者は多い。
将来的には併設するカフェの食事作りを手伝ってもらうなど就労支援にもつなげたい」と話す。

高齢者施設での料理活動は「料理療法」と呼ばれ、
認知症の行動・心理症状の緩和や生活の質(QOL)を高める効果が期待されている。

同療法について研究している京都教育大の湯川夏子准教授(食生活学)は、
「食事作りは、完成品が目に見えるため達成感が得られやすく、
何より食べる楽しみがある。

とくに施設で仲間と一緒に料理を作り、食べることは、
高齢者にとって大きな喜びにもなっている」と指摘する。

湯川准教授によると、食事作りは日常生活の一部だが、
同居の家族らが認知症やまひがあるなど介護が必要な高齢者に対し、
「もう料理はしなくていいよ」と台所から遠ざけてしまうことも少なくない。

しかし、要介護であっても、サポートがあれば料理ができる人は多い。
家庭でも、豆の筋取りや大根おろし、ゴマをするなど
可能な範囲で役割を持たせることが大切という。

湯川准教授は「料理をすることにはさまざまな効用がある。
家庭や施設で広く取り組んでほしい」と話している。
2016-04-13
Link de Diet 2016.4.11 , EurekAlert 


特定の種類の腸内細菌が、免疫系を通じて
脳卒中の重症度を低下させうることを発見した、
という米国ワイルコーネル医科大学からの研究報告。

この発見により、世界で第2位の死因である脳卒中を減らせるかもしれないという。

本研究において、抗生物質を組み合わせて治療したマウスに、
2週間後、脳卒中の最も一般的なタイプである虚血性脳卒中を誘発させた。

抗生物質で治療したマウスは、
薬物治療を受けていないマウスよりも、
脳卒中が約60%低下した。

研究チームによれば、腸内の微生物環境が、
脳を保護するために免疫細胞に指示を与え、
脳卒中の低下に関与しているという。

「我々の実験は、これまで知られていなかった
脳と腸の関係を示している」とヨーゼフ・アンラザー准教授は述べている。

腸内細菌叢は、脳卒中のアウトカムに関与する。
これは、医療において、どのように脳卒中をとらえ、
脳卒中リスクを定義するかに影響を与えるものである。」

この結果は、腸内細菌叢の構成を変更することが
脳卒中を予防する革新的な方法になる可能性を示唆している。

これは、心臓手術を受けた患者、あるいは、
脳内に複数の閉塞血管をもっている人など、
ハイリスク患者に特に有効となる可能性がある。

保護のためのメッセージが細菌のどの成分からのものであるか
理解するためには、さらに研究が必要である。

細菌は脳と化学的に相互作用しないが、
免疫細胞の挙動を変えることによって、
神経生存に影響を与えるようである。

腸からの免疫細胞は、脳の外側の髄膜において
脳卒中に応答するように、組織化され、指示されている。

「最も驚くべき発見の一つは、免疫系が脳の外側から
応答を指揮して脳卒中を小さくするということであった。
ちょうど、指揮者は楽器を演奏しないが、
他に指示をして最終的に音楽をつくるようである」
とコスタンティーノ・イアデコラ博士は語っている。

腸と脳の新たなつながりは、患者や“リスクのある”個体において
食習慣を変えることによって達成されるかもしれない。
このことは、将来的に脳卒中を予防するための有望な意味をもっている。

「そのためには、薬物によるよりも、広範囲に達することができる
食事介入のほうがはるかに簡単である」とアンラザー准教授は述べている。

「これは、現在の研究からは少し外れた未来の音楽といえる。
食事は細菌叢の組成に最大の効果があり、有益な種と有害な種が識別されれば、
私たちは食事介入でそれらに対処できる。」

出典は『ネイチャー医学』。 (論文要旨)      
2016-04-12
読売新聞 2016年4月11日

低体温症に気をつけろ<上>万病につながる危険因子


原因不明の体調不良は、体の深部の体温低下が原因になっている可能性がある――。
BS日テレ「深層NEWS」に出演した
東京都港区の芝大門いまづクリニック院長の今津嘉宏さんは、
低体温が臓器の機能低下をもたらし、万病の引き金になる危険性について訴えた。

 (構成 読売新聞編集委員 伊藤俊行)

◆体の深部と皮膚の温度は違う

低体温という言葉自体は、よく知られていると思います。
それは、単に体温が低いことだと思っておられるかもしれませんが、
正確ではありません。

寒い季節に体が冷えると調子悪いのだが、
よく原因が分からないという人は、
低体温が原因の一つになっている可能性があるのです。

そもそも、本人が「自分の調子が悪いのは低体温のせいだ」
と自覚している人は非常に少ないのです。

人間の体温は、36.5度のプラスマイナス1度が正常値とされていて、
下は35.5度から上は37.5度の間であれば正常ということになります。

しかし、体温は人それぞれですから、体温計で測っていても、
低体温であることに気付くのは難しい面があります。

体温計そのものの癖もあるので、ある体温計で測ると36度なのに、
別の体温計で測ると37度ということもあります。
ですから、低体温症は数字ではなかなか分かりません。

体のどの部分を測るかで、温度が違うということもあります。
体の中の温度と皮膚の温度は違います。

「風邪をひいて熱が出た」という時の体温は、
皮膚の温度を指して言っているわけですが、
病気と関連してくる体温とは、体の芯の部分の温度なのです。
これを、「深部体温」と呼びます。

僕たちのような外科医ですと、手術後の患者さんを診るとき、
鼻から喉にかけてチューブを通し、胃袋まで入れてその温度を測ったり、
あるいは、肛門の方からチューブを入れて直腸の温度を測ったりします。

いずれも深部体温を測っているわけですが、
一般的にはふだん、深部体温を測ることはありません。

◆深部体温低下で臓器の機能不全

低体温の怖さは、低体温が原因で病気になっていることに
本人が気付いていないことです。

病院に行って血液検査をし、心電図をとって、
いろいろ調べてみても、体調の悪さの原因が分からない、
そんな時は、低体温を疑ってほしいと思います。

冷たい水に手を入れると、冷たく感じますが、
だんだんその感覚に慣れてしまいます。

ところが、水から手を出すと、指の動きは悪くなっている。
低体温の問題は、これと似ています。

体の中で低体温になると、肺、心臓、肝臓、腎臓などの機能が低下してしまい、
知らず知らずのうちに体の中のバランスが悪くなり、
臓器の機能不全を引き起こすのです。

低体温は、免疫機能の観点からも問題です。
体の中で一番大切なのは、毒物を解毒して代謝することです。

そのためには酵素の働きが重要ですが、
低体温によって酵素の働きが低下してしまうのです。

ばい菌が入ってきても、それをやっつける力、
分解してなくしてしまう力が衰えてしまいますので、
免疫力が落ちて、病気にかかりやすくなります。

 
外科医としての経験から言うと、
健康な人に比べ、がんの患者さんたちの体温は低めです。
もちろん、本人はそのことに気付いていない。

僕のところで扱ったいくつかの症例をもとに詳しくみていきましょう。

低体温症に気をつけろ<上>万病につながる危険因子

 図1の女性は月経によるホルモンバランスの変化に伴う体温の変化を、
2週間単位で経験しています。その分、男性よりも体温の変化に敏感です。
女性は、不妊症と分かって、タイミング療法やホルモン療法などを続けましたが、
どちらもうまくいきませんでした。

「なんでなんだろう?」と考えて僕のところに来たのですが、
僕は原因について、子宮、卵巣、体全体の機能の低下によって
引き起こされたと考えました。

つまり、低体温によって、酵素がきちんと働かず、
ホルモンのバランスを悪くしているのではないかと考えたのです。

便秘も、低体温が原因だと疑われます。
腸の動きが滞ると便秘になります。

もちろん、逆にお 腹なか が緩くなってしまう方もいるのですが、
多くはお腹の動きが悪くなって便秘気味になるのです。

体温と睡眠は無関係だ、バラバラだと考えている人は多いでしょうが、
実は極めて密接な関係があります。

小さな赤ちゃんが眠そうな様子を見ていると、手がぽかぽかしてきて、
ほっぺたが赤くなって、体温が上がっているはずです。

体温の上昇で睡眠が促され、その後、
寝た時に、体温はすっと下がる仕組みです。
体温が下がれば下がるほど、眠りは深くなっていきます。

一日で最も体温が低い時間帯は朝一番であることが、それを物語っています。


この男性は、夏も冬も手が真っ赤になっています。
夏なら、太陽光線にあたって日焼けするということかもしれませんが、
冬場に赤くなるというのは、しもやけによるものです。
皮膚の反応が敏感なのでしょう。

体の温度が上がりやすく、下がりやすい。
そのため、外に出ると手足が冷たく白くなっていて、
部屋に帰るとぱっと赤くなる。
おそらく、そんなことを繰り返していらっしゃるのだと思います。

これがなぜ、低体温と関係するのかと言えば、低体温症の人は、
体に備わっている様々な体温調節の仕組みをうまく使うことができないからです。
その結果、熱しやすく冷めやすい症状につながるわけです。

風邪をひきやすいのも、低体温と関連していると思われます。

子どものころ、薄着をして外を駆け回っていたら、
「風邪引くよ」「体冷やしちゃダメだよ」と注意されませんでしたか。

まさに、それと同じで、風邪をひきやすいのは、
免疫力が低下しているということですから、
低体温が隠れている可能性があるのです。

この男性のように、幼少期にしもやけになりやすかった人は、
低体温になりやすい体質である可能性があります。

もちろん、体形や体質は、筋肉隆々の人、か細い人、
中肉中背の人と、人それぞれですが、幼少期の状態をみると、
将来、低体温になるのではないかという大体の予想がつきます。

もっとも、そういう体質の人は、成長する間に、
本人が低体温であるという自覚がなくても、
防御策、予防策をほどこしている場合があります。

この男性の場合も、そうした策をとっていたと推測されますが、
営業職のストレスによって、深部体温が下がってしまった可能性があります。

◆冷え性と低体温の違いとは?

冷え性の人は、それを自覚しています。
手足が冷えるとか、お腹が冷えるとか、
はっきりと自分で分かっている時には冷え性だと言えます。

低体温は自分で分からない。
そこが、冷え性と低体温の差です。

ふつうの体温計で測っても、冷え性と低体温の違いは分かりにくいので、
本人の自覚があるかないかで、分ければいいと思います。

本人に「冷えている」という自覚があって、
それだけで済んでいるなら、冷え性と呼んでいいでしょう。

そこに、調子の悪さや病気などが伴うようなら、
低体温がプラスされているのではないかと疑ってみればいいと思います。

冷え性であっても、深部体温が標準であれば、
例えば手足の冷えに対しては手袋や厚手の靴下を身に着ければ、
温かくすることはできます。これは病気ではありません。

ところが、冷え性であろうとなかろうと、深部体温が低くなっていると、
いろいろな病気が発生してきますので、これは病気だと考えられるのです。

◆運動不足は低体温の原因に

低体温の原因の一つとして明らかなのは、運動不足です。

子どものころは、走り回ったり、知らないうちに
汗をかいたりすることをいっぱいしませんでしたか。

汗をかくということは、体の中から水分が出て、
それが空気中に揮発することです。
これによって体温は下がります。

つまり、運動することによって、
それだけ、体温が上がっていることを意味しています。

大人になって、事務や家事などをして、
子どものように外を飛び回らなくなると、
なかなか汗はかきません。

そうなると、体の中で温度が下がり始めてくると考えていいでしょう。

さきほどの図2で登場した営業マンのように、
精神的なストレスも体温を下げる原因になります。
現代はストレス社会と言われていますので、この点も十分に注意が必要です。

生活習慣、生活環境、生活のリズムなどが、低体温には影響しています。

小さな子どもでも、受験戦争で精神的ストレスがたまると、
深部体温が下がることがあります。

ですから、年代や性別によって、低体温になりやすい、
なりにくいということに、大きな差が見られるわけではありません。

ただし、加齢によって、健康のトラブルに巻き込まれやすくなりますし、
抵抗力が低下し、体力も落ちてきます。運動量も減る人が多いですね。

そうした様々な要因が重なって、
高齢者の方が低体温になりやすいリスクがあるとは言えるでしょう。

人間の身体は生ものですから、環境に左右されやすいのです。

例えば、空調です。部屋の温度が下がってくると体も冷えやすくなります。
夏場でもクーラーのかけすぎで体が冷えると、風邪をひきます。

温度だけでなく、湿度も重要です。
乾燥している中で温度も低くなると、
体が冷えやすくなるからです。

室内にいても、体を動かさずに楽をしていると、
体の熱は発生しにくくなり、低体温の原因になります。
2016-04-11
産経新聞 2016.4.11 12:00
【ストレス社会で働く(4)】
ストレスチェックで職場環境改善を「やらなければ意味半減」


昨年11月に鬱(うつ)病と診断され、今年2月に職場復帰した映像制作会社に勤める
30代の男性社員が、新宿ストレスクリニック(東京都新宿区西新宿)で
TMS(経頭蓋磁気刺激)治療を受け始めて2カ月以上が経過した。


大脳の背外側前頭前野に磁気刺激を与えることで、
薬のいらない画期的な治療として米国で目覚しい成果を挙げている治療で、
同クリニックは治療に使う機器を国内最大となる89台(新宿・梅田・名古屋合わせて)を所有。

日本では保険が適用されないため高額な治療費がかかるのがネックとなっている。

「調子はよいと感じているのですが」。男性が苦笑しながら話す。
数回目となるTMS治療に立ち会った医師から「効果が出ていないようだ」との報告があり、
主治医である川口佑院長の問診を受けた後だった。

目下の悩みは治療時間の確保だ。
心理士や主治医による問診がなければ、待合時間を含めても1回1時間で済むのだが、
それすら仕事が佳境を迎えるとなかなか確保できないという。

男性は「ついつい以前のように仕事にのめり込んでしまう」と吐露する。

昨年12月から始まったストレスチェック制度の目的は一時予防だ。
メンタルヘルスの不調者を出さないよう対策を打つわけだが、
発症してしまったら自らの意志で治療を受けなければならない。

男性は薬を服用せずにTMS治療を選んだからこそ、
眠気や倦怠感、頭痛などの副作用に悩まされることなく、
仕事に打ち込むことができる側面もある。

「早く以前のように仕事がしたい」。
効果はまだ出ていないというが男性の前向きな言葉に
完全寛解の日は必ず来るのではないか、と期待する。

鬱症状と診断された筆者が長期休養したのは2年以上前の話になる。
それから1年後に光トポグラフィー検査を受ける機会があった。
双極性II型障害(躁鬱病)と診断され、TMS治療を受けて現在に至る。

循環気質と呼ばれる遺伝的気質のため、
相変わらず朝が極端に弱く夜になれば元気になるが、
勤務制限も解除され健常者とともに支障なく仕事をこなしているつもりだ。

筆者の症状とは違うが、男性にも効果を持続するのに必要とされる
30回まで治療を受け続けてほしい。
そして職場も男性が治療を受けられる環境をつくってほしい。

同クリニックで治療を受けた患者のうち2割は効果がなかったという現実がある一方、
改善すれば以前と変わらぬ100%の力で会社に貢献できる可能性もあるのだから。

「ストレスチェックして集団分析すれば問題が見えてきます。
それに対して職場環境改善が必要です。

努力義